Sinnò me moro

Amore, amore, amore, amore mio, In braccio a te, me scordo ogni dolore! Vojo resta co'te, sinnò me moro, Vojo resta co'te, sinnò me moro, Vojo resta co'te, sinnò me moro…  Nun piagne amore

Sinno me moro(Un maledetto imbroglio 刑事)

自己紹介 成田悦子毎日少しずつ主に英文学の過去の小説を紹介しています。私の遣り方は原文をそのまま生かし、イギリス人、イギリスという国そのものの文字を通した姿を過去に遡って見せ、貴方同様私が学ぶ

自分の写真
暑いし, リチウム電池入りロボ県内, Japan
GooNTTレゾナントは私のブログを4つ非表示にし、「詩を全部削除しろ」と詩人である私に言っています。

Gooは猥褻サイトの記事は問題がないと言います。私の住所・氏名・電話番号まで書き込んで「きちがい、前科三犯」と書くサイトの規約違反を指摘しても、「貴方は一体どうしたいのですか?」と言います。削除して欲しいに決まっています。そんなことも分からないのに、「鳥居正宏」という偽名の社民党員の要請で四つのブログを非表示にしています。私は「鳥居正宏」の中傷記事を書いたことは一度も無く、中傷されたコメントを載せたことが一度あっただけです。しかしそのコメントは、社民党と自公政権が不正に侵入して直ぐに削除して非表示の要請があった時にはありませんでした。あれから20数年Gooも消えます。私が消えていないことはいい兆し。正義は私の下にある。当面翻訳中心の生活です。

成田悦子翻訳小説.orgで翻訳中 「Youth 」Joseph Conrad, The Grapes of Wrath Jhon Steinbeck

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ブログ 成田悦子翻訳小説.org Youth Joseph Conrad, The Grapes of Wrath Jhon Steinbeck

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2022年5月10日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

ヘンリは、市長やエンジニアと一緒に二等私室の中に先頭に立って入って行ったが、私はその長官を引き止めた。彼の腕に触れ、スチールの寝棚に関し、そこに既婚者用のダブルの寝棚がなかったのは何故かについて、何か馬鹿げたことを彼に質問しながら。私は、私にキスをして欲しい、と言おうとした。彼は、寝棚に凭れて私をぐるっと捩じった。それで金属が私の背中を横切る痛みの線を作り、そして私にキスをした。その時、彼は随分驚いたようだったので、私は笑い、彼にキスを返した。それなのに、何事も進展しなかった。それは、二度と進展しないのだろうか?市長がヘンリと一緒に帰って来た。彼は言っていた。「切羽詰まっても、僕たちは、二百年間は、部屋を見付けられます。」その夜、ヘンリが公式の夕食にいた時、モーリスの電話番号を手に入れようとして、長距離電話を頼んだ。私は、ベドゥでそれが繋がるのを待ちながら横になった。私は六週間、私の約束を守りました、と私は神に言った。私は貴方を信じられず、愛せもしませんが、私は私の約束を守りました。もし私が再び生き生きと蘇らなければ、私はだらしない女に、只のだらしない女になるつもりです。私は全く故意に、自らを壊そうと思います。年毎に、私はますます使い古されます。もし私が私の約束を破れば、貴方は、より以上に少しでもそれを好みますか?私は、余りにも笑い過ぎて、彼女たち相手の、肉体関係がなくても彼女たちに触れている三人の男を持つバーのあの婦人たちのようになるでしょう。私は、既に粉々に砕け落ちています。

143 

2022年5月9日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 只、私が動こうとするという意識を持てば、彼はそれに応える。私は、何故しようとしないのかしら?私は見知らぬ人と約束したことはなく、モーリス一筋だった。ヘンリと一緒にわたしの残りの人生を、一人寂しく過ごせない、誰も私を認めず、誰も私に刺激されず、ヘンリが他の人と話す事に耳を傾け、チェダ洞窟のあの山高帽のように、会話の滴りの下で化石化する。


1944.7月15

 ダンスタンとJardin des Gourmetsで昼食をとった。彼は言った・・・


1944.7月21

 家でダンスタンと一緒に飲む。その間、ヘンリを待った。全て・・・へ向かう


1944.7月22

 Dと夕食をとった。彼は、もっと飲もうとして、その後、家に来た。何れにせよ、それは、進展しなかった、それは、進展しなかった。


1944.7月23-1944.7月30

 D.が電話した。私は出かけると言った。ヘンリと旅立った。南英に於ける民間防衛。チーフ行政区長官たちと行政区エンジニアとの会議。爆風問題。深刻なシェルタ問題。生きている振りをするという問題。墓の上の人形のように、来る夜も来る夜も並んで眠っているヘンリと私。海上の‐ビグウエルの新たに補強されたシェルタの中で、そのチーフ・長官は、私にキスをした。

142

2022年5月8日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

ヘンリは、寡婦年金が、それが十年前と同じ重さに達する、もう一シリング上げられるかどうかについて統計だらけのマロックとの長い議論を始めた。彼らは、生活費について争い、それは、非常に学究的論争だった。彼らは揃って、国は、ともかく、それを値上げする余裕がない、と言った。国家安全省のヘンリのチーフに話し掛けようとしたが、Vis以外のことを話すにしても、何も思い付く筈がなかった。すると私は突然、誰彼となく階下に降りたことや埋もれたモーリスを見付けたことについて、無性に話したくなった。勿論、私は全裸だった、と私は口にしたかった。何故なら私は、服を着る余裕がなかった。サー・ウイリアム・マロックは、振り返るぐらいはしただろうか、或いはヘンリは聞こうとしただろうか?彼は、手持ちの対象以外、何事にも耳を傾けようとしない素晴らしい得意技を持っていて、あの時期の手持ちの対象は、1943年の間の生活費の目録だった。私は、全裸だった、と私は口にしたかったのは、モーリスと私は、夜通し愛を育んでいたから。私はヘンリのチーフを見た。彼はダンスタンと呼ばれた男だった。彼は、崩れた鼻を持ち、彼の殴られた顔は、陶工の間違い―輸出を拒絶された面構えのように見えた。彼は、しようとする何事も、思うに、笑顔で通した。彼は、不機嫌でも無関心でもあるまいとする―彼は人間という者が何かしでかしたことのように、それを受取ろうとする。

141

2022年5月7日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 彼は、福音書の書かれた年代に関して話し、如何に早いものであろうと、クライストゥが生まれて百年以内に書かれてはいない。私はそうしたものが、それ程早いと認めたことはなかった。それにしても、私は、伝説が始まった時、それは、実に重要だということを見ようがなかった。次に彼は私達に、福音書の中で、ガドゥであることを主張したことはない、と話したが、一体、そこにクライストゥのような、そんな男がいたのか、ともかく福音書は、モーリスがやって来るのを待ち、見ることもないこの閉塞感に比べたら、何が重要なのか?銀髪の婦人は、彼の名、リチャードゥ・スマイズとシェダー・ロウドゥの彼の住所が印刷された小さなカードゥを配った。そこには、訪問し、個人的に彼に話す者への招待書きがあった。大半の人がカードゥを受取ろうとせず、婦人が会費を請求したかのように、立ち去り、草の上にそれを捨てる者もいた(私は、幾つか拾う彼女を見た、節約のためだと私は思った)。それは、とても悲しそうだった―悍ましい痣、誰も興味を示さないことについて語ること、そして捨てられたカードゥは、折り返された親睦の申し込みのようだった。私は、私のポキトゥにカードゥを押し込み、そうする私を彼が見るのを望んだ。

 サー・ウイリアム・マロックが、夕食に来た。彼は、ロイドゥ・ジョージの国民保険のアドゥヴァイザの一人で、極めて老練で有力だった。ヘンリは、勿論年金ともはや関わりはなかったが、彼は、その種に関心を持ち続け、当時を思い出したがった。モーリスと私が初めて夕食を共にし、全てが始まった時、彼が働いていたのが、寡婦年金ではなかったか?

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2022年5月6日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 1944.7月9


 ヘンリと一緒に8.30に間に合った。空席の目立つ一等客室。ヘンリは、イギリス委員会の議事録を声を出して読んだ。パディントンでタクシを捕まえ、ヘンリを省で降ろした。今夜家にいるよう、彼に約束させた。タクシ乗務員は、間違って、私を14番を過ぎた南側に運んだ。ドアは修繕し、正面の窓が板張りしてあった。死を連想するのは怖い。誰でも、とにかく、もう一度生きているという実感が欲しい。私が北側に着くと、そこには、「何も転送しないで。」と、彼らに話した為に、転送されなかった古い手紙があった。古書のカタログ、古い請求書、「緊急、転送請う」と記された手紙があった。私は、それを開けたくなり、だからこそ、仮にも、未だ私は生きているのに、私はそれをカタログと一緒に引き千切った。



1944.7月10


 もしたまたま、共有地で私がモーリスの所へ駆け込んでも、私は私の約束を破ることにはならないと思った。そこで私は、朝食後と、昼食後に又、そしてもう一度夕方にうろうろ歩き回ったが、彼を見ることはなかった。私は、六時以降、ヘンリが夕食に客を招いたから、外にいられなかった。演説家が、六月にいたように、又そこにいた。そして痣のある男は、今尚、クライストゥ教を攻撃していたが、誰も気にしていなかった。喩え単に、誰かの為に約束を守ろうとしなくて良い、と彼が私を納得させられても、奇跡は起こらないということを、貴方は信じない。そして私は行って、しばらくの間、彼に耳を傾けたが、ずうっと折に触れ、モーリスが、目に入るかも知れない、と辺りを見回していた。

139

2022年5月5日木曜日

The End of the Affair/GrahamGreene 成田悦子訳

 私は、膝まづき、ベドゥに頭を乗せ、私が帰依出来たらと願った。親愛なる神よ、と私は言った―何故親愛なる、何故親愛なるか?―私に信仰させる。私は信仰する筈がない。私を作り替えて下さい。私は言った。私は意地悪でペテン師で、私は自らを退けます。私は私自身のことは何も成し得ません。私に信仰させて下さい。私はきつく私の目を閉じ、私の爪を私の手の掌の中に、痛み以外、何も感じられなくなるまで、押し付けた。そして私は言った。。私は信じます。彼を生き返らせて下さい。その時、私は信じます。彼に機会を上げて下さい。彼に彼ならではの幸福を感じさせて下さい。 これをして下されば、私は信じます。が、それだけでは十分ではなかった。信じれば傷付かない。だから私は言った。私は彼を愛していますから、もし貴方が彼を生き返らせて下されば、私は何か致します。私はとてもゆっくりと言った。私は、永遠に彼を諦めます。只、見込みがあれば、彼を生き返らせて下さい。そして私は押し当て、押し当て、やっと皮膚を突き破れた。そして私は言った。人々は、互いを見もしないで愛せるでしょ。彼らは、全生涯を通じて、貴方を見もせずに、貴方を愛します。するとその時、彼が、ドアから入って来た。その上、彼は生きていた。そして私は、今、彼なしで始まることの苦しみを思いながらも、私は、彼が、再びドアの下で無事に死んでくれたらと思った。

138

2022年5月4日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

二人が互いに愛し合った時、彼らは、キスに於ける愛情の欠如を偽装出来ず、彼の手に触れて、そこに残されたその僅かな息遣いがあるかどうか、見極めようとしなかったのか?もしも私が彼の手を取り、それを私の方に引けば、それは、ドアの下から、全て自ずと隔たろうとすると分かっていた。今やっと私は、これが、ヒスティアリアだったと分かる。私は、騙された。彼は、死んでいなかった。ヒスティアリア発症時に、人が取り決めることに、人は責任があるのか?又、どんな取り決めを、人は打ちのめすのか?私は、今、ヒスティアリア気味で、全てをここに洗いざらい書いている。しかしそこには、僕は不幸だ、と誰にでも何処ででも、言ってのけられる一人の人物がいるわけではなく、彼らは私に何故と質問し、その質問が決まって始まり、そして私は必ず行き詰まる。私は行き詰まっている場合じゃない、ヘンリを守らなければならない。オウ、地獄へ、ヘンリと一緒に地獄へ。私は、私という者の真実を受け入れようとする誰かを求め、保護は要らない。もし私が、意地悪で、ペテン師なら、意地悪でペテン師を愛する人は、そこには一人もいない?

 私は、床に膝まづいた。私がそんなことをするなんて、分別を失くしていた。私は、今まで、子供のようにそんなことをしようとしたことさえなかった―私の両親は、私以上に祈りを盲信しなかった。私にはまるで口にすべき思いが、胸になかった。モーリスは死んだ。死滅した。魂のようなそんなものは、そこにはなかった。私が彼に上げた半分の幸福さえ、血のように彼の外に流れ出た。彼は二度と幸せになる機会を得ようとはしない。誰かと一緒に、と私は考えた。誰か他に彼を愛し、彼を私が出来る以上に幸せに出来たら。それなのに、今、彼は、その機会を持とうともしない。私は、膝まづき、ベドゥに頭を乗せ、私が帰依出来たらと願った。

137

2022年5月3日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 私は、何故「親愛なる神」と書くのか?彼とは親しくない―私にとってではなく、彼はそうではない。もし彼が実在するなら、その時には、彼は、私の心の中にこの誓いという考えを入れ込み、だから私は、その所為で彼を遠ざける。数分毎に、灰色の石造りの教会や酒場がその輪郭を崩して後方に駆け抜ける。不毛の地は、教会と酒場が溢れている。それに複合的な店、それに自転車に乗った男達、それに草と牛、そして工場の煙突。貴方は、タンクの水を通して魚のように砂じゅうに、それらを見る。そしてヘンリも、タンクの中で待つ、私のキスの為に彼の鼻を持ち上げながら。

 私たちは、あのサイレンに注意を払いもしなかった。それに関心がなかった。私たちは、そんな風に死ぬことを、恐れなかった。しかしその時は、急襲が次から次へと続いた。それは、普通の急襲ではなかった。新聞は、未だに発言を許されていないのに、誰も彼も知っている。これは、私たちが警告されていなかった新たな事態だった。モーリスは、もしも地階のそこに誰かがいたら、と階下へ見に行った―彼は私を気遣い、私は彼を気遣った。私には、何かが起ころうとしているのが分かった。

 彼は、通りのそこで爆発があった時、二分も経ってはいなかった。彼の部屋は、裏にあり、ドアが巻き込まれて開く以外、何も起こらなかったが、幾らか石膏が落ち、私は、爆弾が落ちた時、彼は建物の前にいた事を知った。私は、階段を下った。そこいら中、がらくたと壊れた手すり子で散らかり、玄関ホールは、凄まじい散乱の最中にあった。初め、モーリスは目に入らなかったが、その後私は、彼の腕がドアの下から外に出ているのを見た。私は彼の腕に触れた。私は、それは死んだ手だったと誓ってもいい。

136

2022年5月2日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

私は自分のをしょっちゅう忘れる。フロイトは言うだろう、それも、ヘンリの番号だから、それを忘れようとするのだ。しかし私はヘンリを愛す。私は、ヘンリに幸せになって欲しい。私は、只今日、彼を避けるだけ、彼は幸せで、私は背を向け、モーリスは背を向ける、つまり彼は物事を知ろうとしない。彼は、私が疲れているようだねとか、それは祟りだと思うよとか言う―彼はもはや、あの頃の伴侶を維持しようとして悩もうともしない。

 今夕はサイレンが鳴った―私は、勿論昨夕のことを言っているが、それは何と関係があるのか?不毛の中、そこにはどんな機会もない。不毛の外に、私が望めば出て行ける。私は明日、帰途の列車を捕まえ、彼に電話でベルを鳴らせる。ヘンリは、おそらく未だ田舎にいるだろうから、私たちは一緒に夜を過ごせる。誓いが全てではない。あの大切な―誓い、私が今まで全く知らなかった誰かへの、私が心底信じてはいない誰かへの。私が誓いを破ったのを、私と彼以外、誰も知らない。―それに彼はいないでしょ?彼はいられない。貴方は、慈悲深い神も、この絶望も持てない。

 もし私が帰ったら、私たちは何処にいるのでしょう?サイレンが鳴る前に、その前の年、私たちが、昨日いた場所。終わりを恐れる互いに対して苛立つといい、そこに何も残っていなかった時、命と共に何をすべきか思い巡らしながら。私はもうこれ以上あれこれ考えなくていい。―そこには恐れるものは何もない。これが終わり。それでも親愛なる神よ、愛に向かうこの欲求を抱え、私はどうしましょう。

135

2022年5月1日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene  成田悦子訳

 昨日、私が彼を待っている間に、共有地のとある場所に演説者が現れた。I.L.P.(独立労働党)と共産党、それに冗談ばかり言う男、又、そこには、クライストゥ教を攻撃している一人の男がいた。南ランダン合理主義者協会、或いはそれに似た何らかの名称。彼は、片頬を覆った痣さえなかったら、美貌だったろうに。彼の聴衆は、ほんの少人数で、ヤジを飛ばす人はいなかった。彼は既に死んだ何ものかを攻撃していたが、何故、彼が面倒を引き受けるのか、私は不可解だった。私は、数分立ち止まり、耳を傾けた。彼は神の論争に対して主張していた。私は実際は分からなかったが、そこには―私が一人きりではないと思う、この臆病な窮乏を除く何かがあった。

 私は、心変わりして、彼は家に戻るよと言う電報を送ったかも知れない、と唐突な不安を抱いた。私が何を最も恐れるのか私には分からない―私の落胆か、或いはモーリスの落胆か。それは、私たち二人同時に、同じ様に動かす。私たちは、口論で荒捜しをする。私は私自身に腹が立つし、彼は私に腹が立つ。私は家に戻ってみたが、そこに電報はなく、その上、モーリスに会うのに、十分遅れ、彼の怒りに触れそうで、イライラが募って行った、ところがその時、予期せぬことに、彼は私に優しかった。

 私たちは、以前、こんなにも長い一日を過ごしたことはなく、一緒にいる為に、そこには丸一晩があった。私たちは、レティスにロウルパンにバタ‐割当量を買った―私たちは、たくさん食べられなかった、それは、もう暑かった。それは今も暑い。誰も彼も口々に言う、何て心惹かれる夏かしら、それに私は、ヘンリと落ち合うために田舎へ向かう汽車の中。やがて全て通り過ぎる、未来永劫。私は怯える。これが不毛だ。そこには、辺り一面、誰もいない、何もない。もし私がランダンに居たら、直ぐに潰されるかも知れない。何れにせよ、もし私がランダンに居たら、電話に向かい、私が愛情で分かる唯一の番号のベルを鳴らそうとする。

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2022年4月30日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

仮に、時々彼が女を買えば、私は文句を言うの?もし私たちがそこで互いを所有出来なくても、不毛の地にあって、どんなつましい付き合いからも、彼を奪い取りはしない。時に、もし時が来たら、彼は一杯の水さえ拒もうとするに決まっている、と私は思う。彼は、私を、何一つ誰一人傍に寄せず、一人になってしまう、こんな完全な孤立へと追い遣ろうとする。―世捨て人のような、ところが、彼らは一人ではなかったし、又そう彼らは言う。私はそこまで混乱させられる。私たちは、互いに対して何をしようって言うのでしょう?彼が私にしていることを、私は彼に、そっくりそのまま、承知の上でしているから。時には、私たちはとても幸せで、生きている内に、もっと不幸せを思い知るなんてことは、私たちにはなかったわ。それは、まるで私たちが同じ像に関わって、共に働いているかのようだった。互いの居心地の悪さの外側を切り取るばかりで。それにしても私は、そのデザインを知りもしない。


1944・6月17 

 昨日、私は彼と一緒に家に戻り、私たちは何時ものことをした。私は、その荷を下ろす為に神経を用いず、それどころか好んで向かう。何故なら、今書いている間に、時は、既に明日になり、昨日の終わりになることを、私は恐れている。私が書くことを続ける限り、昨日は、今日であり、私たちは未だ一緒にいる。

133

2022年4月29日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

もし私が、彼を安心させられさえしたら、それで私たちは、穏やかで、幸福で、無作法でも不摂生でもなく愛せる。そうして不毛の地は、視野から後退する。命ある内は、多分。

 もし人が神を信じられるとしたら、彼は不毛の地を満たそうとするか?

 私は、何時も良く思われ、褒められたがった。例えば一人の男が、私の方を振り向けば、例えば一人の友だちを失えば、私は酷い危険を感じる。私は夫を手放せもしない。私は全てが、全ての時が、何処も彼処(かしこ)も欲しい。私は、不毛が怖い。神は貴方を愛し、彼らは教会で、神が全てです、と言う。賞賛を必要としないということを信じる人々、彼女たちは男と一緒に眠ることを必要とせず、彼女たちは安心感を得る。しかし、私は信用をでっち上げられない。

 丸一日、モーリスは、私に思いやりを見せた。彼は、私にしょっちゅう他の女をこんなにも愛したことはない、と私に話す。彼は、そう頻繁に口にすることで、彼は、私にそれを信じ込ませようとする。何れにせよ、私が単純にそう信じるのは、丁度同じように、私は彼を愛すから。もし私が彼を愛すのを止めたら、私は、彼の愛情を信じるのを止めようとする。もし私が神を愛したら、私への彼の人の愛を信じようとする。それを必要としても、それでは十分ではない。私たちは、先ず愛さなければならないのに、どうしていいか分からない。それでも、私はそれを必要とする、どれ程、それなしでいられない。

 終日、彼は優しかった。只一度だけ、一人の男の名前が気になり、私は、彼の眼差しがあらぬ方向に動いたのを見た。私が他の男と未だに眠る、と彼は思い、そしてもしそうしたら、それは、それ程重大なことだろうか?

132

2022年4月28日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 それから、僕は初めから帳面に取り掛かった。彼女は、毎日、日記に記入していなかったし、僕は、全ての記載を読もうとは思わなかった。彼女がヘンリと一緒に行く芝居、レスタラントゥ、パーティ―僕が何も知らないその暮らしの全ては、未だに傷付ける力を持っていた。



1944・6月12


 時に、私は彼を愛しているし、永遠に彼を愛す、と彼を納得させようとすると、本当に疲れ果ててしまう。彼は、法廷弁護士のように私の言葉を攻撃し、それを曲解する。もし私たちの恋が終われば、彼の周りを囲むに違いないその不毛を、彼は恐れている、と私には分かる。それなのに、私が丁度同じように感じていても、彼は理解しようとしない。彼が声を出して何を言っても、私は黙って私自身に言い聞かせ、そのことをここに書く。一人では、不毛の地に何も築くことは出来ないのか?時に、私たちが何度も愛を育んだ一日の後、私は、性の終わりに至る、それが可能かどうか危ぶむ。彼も又、訝しく思い、不毛が生じるその地点を恐れている。もしも私たちが互いを見失えば、その不毛の地に居て、何をするのか?一人で、その後どうして生き続けるのか?

 彼は、過去や現在や未来を嫉妬する。彼の愛は、中世の純潔ベルトゥに似ている。彼は、私と一緒にそこにいて、私に包まれている時だけ、彼は何とか安心する。

131

2022年4月27日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 1946・2月12日

 二日前、私はあれ程の平穏と静けさと慈しみの感覚を持った。暮らしは、又幸せの方向に向かっている。しかし昨夜、最上階でモーリスに会うために、階段を上っている夢を見た。私が階段の最上階に着いた時、私たちは愛を育むことにしていたので、私はまだ幸せだった。私が来たと彼に呼び掛けたが、答えたそれは、モーリスの声ではなかった。道に迷った船に警告する霧笛のように、大声で伝え、私を怯えさせたのは、見知らぬ人のそれだった。私は考えた、彼は、彼のフラトゥを貸していなくなってしまった。彼が何処にいるのか、私は知らない。そして又階段を降りようとすると、私の腰より水位が上がり、ホールは、霧でどんよりしていた。その時、私は目覚めた。。私は、もう内心穏やかではなかった。私は只、過ぎた日に何時もそうであったように、彼が欲しい。私は、彼と一緒にサンドゥウイチを食べていたい。私は、バーで彼と一緒に飲んでいたい。私は疲れ、私はもう何の苦しみも欲しくない。私は、モーリスが欲しい。私は、普通の堕落した人間の愛情が欲しい。親愛なる神よ、私は貴方の苦しみを貰いたいのですが、今は、それが欲しくはありません。暫くそれを持ち去って、他の時にそれを与えて下さい。

130

2022年4月26日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 BOOK THREE

・・・何もかも通り過ぎる、そうして私たちは終わってしまった。貴方(神)以外は。私たちのどちらかの所為ね。私は、ひと時、ささやかな恋心を、費やしながら、それを、こちらへ又あちらへと外へ向かって、この男そしてあの上へと手を伸ばしながら、命ある時を夢中で過ごしたのかも知れない。けれども初めての時でさえ、パディントンに程近いホテルで、私たちは、私たちに備わる全てを出し尽くした。貴方(神)が裕福な人に教えるように、私たちに浪費することを教えようとして、貴方(神)は、そこにいた。その結果、或る日、私たちには、この貴方(神)という愛以外、何も残っていなくてもよかったのに。何れにせよ、私には貴方(神)は立派過ぎた。私が苦痛の為に、貴方(神)を頼みにすると、貴方(神)は、私に安らぎを下さった。それを彼にも上げて下さい。彼に私の安らぎを上げて下さい―彼はそれをもっと必要としています。

129

2022年4月25日月曜日

The End of the Affair/ Graham Greene 成田悦子訳

僕はこれを、或る事件の記録として取り扱いたかった―パ―キスの事件の一つ―取り扱われるべきだったが、僕はそれ程の冷静さを持ち合わせていなかった。何故なら、僕が日記を開いた時、僕が気付いたことは、僕が期待していたものではなかったから。嫌悪と疑いと嫉妬は、僕を遥か彼方へ駆り立てて来た。僕は、見知らぬ人からの愛の告白のように、彼女の言葉を読んだ。僕は、彼女に対して、多くの根拠を求めて来た―随分頻繁に、彼女を嘘の中に追い詰めたのではなかったか?―そして今ここに、僕が彼女の声を信じられなかった時、信じることが出来た記述の中に、その完全な答えがあった。それは、最後の二頁にあったから、僕は、先ず読んだ、そして確かめるために、終わりにもう一度読んだ。愛すべき親や神以外、誰かに対して貴方の中に、何もないと分かっている時、貴方が愛されるということを発見することも、信じることも、それは、不思議なことです。

128

2022年4月24日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「それは、全て人間の本質で、サー、人間の愛情ですよね。それに広くも、高級でもないその部屋。パ―キス婦人は、あの頃存命中でしたが、私は、彼女に詳細を話すのは、気乗りしなかったんです。彼女は、事によったら邪魔になりました。」

 「僕は必ず記念品を大事にしますよ。」 

 「もしも灰‐皿が話せたら、サー。」

 「本当に、そうだね。」

 何れにせよ感銘深い思いを持ったパーキスでさえ、すっかり言葉尽きた。その手の最期の圧迫、少々べとべとした(おそらくそれは、ランスの手に触れて来たから)、そして彼は行ってしまった。彼は、誰かが又会いたくなる、そういう人の一人ではなかった。やっと僕は、サラーの日記を開いた。僕は、全てが終わった1944六月のその日を探そう、と先ず思った。そして僕はその理由を見付けた後で、そこには、他の日付がたくさんあるから、僕は僕の日記とそれらを見比べながら、正確にそこから学べたらいい、どのように、彼女の愛は尽きたのか。 

127

2022年4月23日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「それにしても、貴方が本当に記念品を憤慨しないのであれば、サー・・・」

 「勿論僕はそうしない、パ―キス。」

 「私は、ここに或る物を持っています、サー、それには、関心と有用性があるのかも知れません。」薄用紙に包まれた物を、彼はポキトゥから取り出し、それを僕の方へと、気遣いながら机を横切って滑らせた。僕は、それを開いた。それは、ホテル・メトゥロポウル、ブライトゥリングスィー、と記された安価な灰‐皿だった。「そこには実際、それに纏(まつ)わる或る由来があります、サー。貴方はボルトン事件を覚えていますね。」

 「僕は覚えていると迄は、言えない。」

 「それは大騒ぎになりました、サー、その当時。レイディ・ボルトン、彼女のメイドゥとその愛人、サー。皆、同時に見つかりました。その灰皿は、ベドゥの傍らに位置していました。レイディの脇腹の上に。」

 「貴方は、実に小さな博物館を集めなければならなかった。」

 「私はそれをサヴィジ氏に上げようとしました―彼は殊更に、関心を持ちました―しかし私は今、晴れ晴れとしています、サー、私はそうしなかった。私は、貴方が署名を見つけるだろうと思います。貴方の友人が、彼らの煙草を消す時、噂話を思い出すでしょうが、そこに貴方の解答の一塊があります―ボルトン・ケイス。彼らは皆それについてもっと聞きたいでしょう。

 「それは、人騒がせな感じだ。」

126


2022年4月22日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 僕は、パ―キスの結末を見たいということは、かなり自覚していたし、彼の言葉は、僕の罪悪感を目覚めさせた。僕はその男を急いで立ち去らせることが出来なかった。彼は言った。「私は考えていました、サー、私は貴方にささやかな記念品を差し上げるつもりです―しかし、それは正(まさ)しく、貴方が受け取りたくないものです。」欲しがられるとしたら、どんなに不思議だろう。それは自動的に確かな忠誠を喚起する。そこで僕はパ―キスに嘘を吐いた。「僕は何時も僕たちの会話を満喫しました。」

 「何れにしても、サー、大変不運な中での始まりでした。あの馬鹿げた間違いもあり。」

 「貴方は、もう貴方の若者に話しましたか?」

 「はい、サー、が只、何日かして、紙屑籠での成功の後に。それが、棘を取り去りました。」

 僕は帳面を見下ろして、読んだ。「とても幸せ。Mが明日戻る。」僕は、一瞬。Mが誰か思い巡らした。誰かが愛された、と思うと、どんなにか妙でもあり、不慣れでもあった。誰かの存在は、一度は、他の誰かの一日に、幸福と単調の間の相違を作ろうとする力を持ってはいた。

125

2022年4月21日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「私は、貴方が満足されたらと願っています、サー。」

 「実に満足。」

 「それでそのことを、貴方はサヴィジ氏にその通りに書くでしょう、サー。彼は依頼者から酷い報告書を受取りますが、良いものは、なかなか書いて頂けません。依頼者は、満足すればするほど、彼は忘れ、私たちを直ぐにでも心の外に追い遣ろうとします。貴方は、彼らを先ず咎めようがない。」

 「僕は、書くつもりです。」

 「ええ、ありがとうございます、サー、若い者に優しくして頂きました。彼は、少しばかり取り乱しましたが、私にはそれがどうしてか分かります―ランスのような若造に対して、アイスに限度を設けるのは難しい。彼は、苦労して貴方からそういうものを頂いている、と一言、言いました。」僕は無性に読みたかったが、パ―キスは手間取った。おそらく彼は、彼を覚えていようとする僕を、実際は信用していなかったし、僕の記憶に、そのしょげた眼差しや、あのけちな口髭を印象付けたかった。「私は、私たちの付き合いを満喫致しました、サー―もし、嘆かわしい次第にも拘らず、楽しみにしていたことを話させて頂けるなら。私たちは必ずしも、彼らが称号を持つ場合でさえ、真の紳士の為に働くとは限りません。

124

2022年4月20日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

「そこに人間の本質が潜んでいます、サー、貴方が日記を取って置くのは、貴方が、物事を思い出したいから。そうでなければ、何故それを取って置きます?」

 「貴方はこれを見たの?」僕は尋ねた。

 「私はその本質を確かめました、サー、それで、一つの記載から、彼女は慎重なタイプではない、と判断しました。」

 「それは今年のものではないね。」僕は言った。「それは、二年も前のものです。」一瞬、彼は落胆させられた。

 「それは僕の目的に適いますよ。」僕は言った。

 「それは都合良く妙技をするに決まっています、サ―,もし何一つ償われなかったら。」

 その日誌は、大判の会計簿に記載され、くだけた肉太の筆跡が、赤と青の線で横線を引いてあった。そこに日記の記載はなかったので、僕はパ―キスを安心させられた―「それは、何年もに亘っています。」

 「何かが読むために、彼女にそれを外に持ち出させなければならなかった、と私は推測します。」それは可能か、僕はあれこれ思い巡らした。僕に関する、僕の出来事に関する或る記憶が、この当日、彼女の心を横切り、その何事かが、彼女の平和を乱したのかも知れない。僕はパ―キスに言った。「僕はこれを手に出来て嬉しい、実に嬉しい。貴方には分かるでしょう、僕たちは、今やっと、僕たちの勘定を締められる、と僕は心底思う。」

123

2022年4月19日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 Ⅷ

パ―キスは言った。「それはもう実に簡単でした、サー。そこにはこんな混乱がありました。マイルズ婦人は、私が省出身の彼の友人の一人だと思い、マイルズ氏は、私が彼女の友人の一人だと思いました。」

 「それは素晴らしいカクテイル・パーティでしたか?」あの最初の出会いと、知らない人と一緒のサラーの観察を再び思い出しながら、僕は尋ねた。

 「高い成果と、私は言うべきでしょう、サー、それにしてもマイルズ婦人は、少し場違いなように思われました。酷くしつこい咳を、彼女はしていました。」僕は、満足して彼の話を聞いた。多分、このパーティでは、小部屋のキスも又触れることもなかった。彼は茶色い紙包みを僕の机にのせ、自信を持って言った。「私はメイドゥ経由で、彼女の部屋への道を知りました。もし誰かが私に気付いたら、私はトイリトゥを探していたことにしようとしたのですが、誰一人気付かなかった。そこにそれが、彼女の机の上に出してありました。彼女はその日、その上で作業をしなければならなかったのです。勿論、彼女は非常に慎重であるかも知れません。しかし私の日記の経験では、そうした物は、決まって物事をばらすのです。人々はそのささやかな符号を考案しますが、貴方は直ぐにそれらを見破ります、サー。又それは物事を省きますが、貴方は何を省いたかを直ぐに学びます。」彼が話している間に、僕は帳面を出して、それを広げた。

122

2022年4月18日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 再び彼は拒絶された愛人のように、欲求不満の柔軟さの素振りを見せた。如何に数知れぬ臨終の‐床から彼は締め出されて来たか、僕は突然ぞっとした。僕も又、彼に何らかの希望のメシジを捧げたい、と思うに至った、が、その時だ、頬の向きが変わり、僕は単に尊大な演技者の表情を見たに過ぎない。彼が不憫で、不適格で、時代遅れに成り果てた時、僕は好ましく思った。アイア、ラスル―彼らは今日流行(はやり)ではあるが、僕は彼の書庫そこに多くの論理的実証主義者がいたかどうかどうか疑った。彼は単に十字軍戦士に肖っただけで独立したものではない。

 玄関先で、―僕は彼が危うい専門用語グドゥ‐バイを遣わなかったということに気付いた―僕は迷わず彼の美しい頬を一突きした。「貴方は僕の友人、マイルズ婦人に会うべきだ。彼女は興味深い・・・」そこで僕は止めた。その一突きは、まともにあたった。痣がより濃い赤に染まったようで、僕は、彼が不意に顔を背けると同時に、ミス・スマイズが「オウ、私の愛しい人が。」と言ったのを聞いた。そこには、僕が彼に痛みを与えたことに疑いの余地はなく、とはいうものの痛みは彼同様僕にもあった。僕の一突きが、外れていたらとどれだけ思ったことか。

 外の排水路で、パ―キスの若者は気分が悪くなった。僕は彼を吐かせた。訳も分からずそこに立ったまま、彼も又、彼女に夢中だったのか?これに対する結末は、そこにはないのか?僕は今、Yを発見することに苛立ったのか?

121

2022年4月17日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

将来の埋め合わせ、報奨、処罰も何にもない。」片方の頬が隠れると、彼の顔には狂った気品が加わった。

「それから僕たちは天国のようなこの世を作り始めます。」

 「そこには最初に説明されるべき恐ろしい運命があります。」と僕は言った。

 「僕は貴方に僕の蔵書を見せてもいいのですが?」

 「それは、南ランダンで最高の合理主義者の蔵書です。」ミス・スマイズは説明した。

 「僕は改宗する必要はありません、スマイズさん。僕はそれがあるからといって、何一つ信じません。今も今後も例外なく。」

 「それは、今も今後もずっと、僕たちは対処しなければならない。」

 「奇妙なことは、それらが希望の時になるということです。」

 「誇りは、希望のふりをすることができる。又、自己本位も。」

 「それには、何かに付け、それを用いて何か果たすべきことがある、と僕は思わない。それは突然降りかかる、分けもなく、或る匂いが・・・」

 「アー。」スマイズは言った。「花の構造、ディザインからの論拠、時計屋を必要とする時計に関するあらゆるその仕事。それは、古風だ。シュヴアイゲンは、二十五年前全てを答えた。僕に貴方を案内させてください・・・」

 「今日は駄目。僕は、本当に、あの子を家に連れて帰らなければいけない。」

120

2022年4月16日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「貴方には孫がいるんですか?」

 彼は憂鬱そうに言った。「僕には子供はいません。僕は、子供のいる貴方が羨ましい。それは。重い義務と重い責任がある。」

 「貴方は彼に何を聞きたかったんですか?」

 「僕は彼にここでくつろいで欲しかった。その後戻ってもかまわないから。そこにある非常に多くのことを、子供に話したい人がいます。世界は、どのように存在に至ったのか。僕は、彼に死について話したかった。僕は、学校で彼らが入れ込む嘘の全てから、彼を救い出したかった。」

 「三十分でしてしまうには、かなり多い。」

 「誰でも一粒の種を撒けます。」

 僕は、悪意を持って言った。「それは福音書の引用ですね。」

 「オウ、僕も又堕落してしまった。貴方はそんなことを僕にどうしても言わなければならないことではない。」

 「人々は、実際、貴方の所に来るんですか―閑静に便乗して?」

 「貴方は驚くでしょ。」ミス・スマイズは言った。 「人々は希望のメシジを待ち焦がれています。」

 「希望?」スマイズは言った。「喩え、この世の誰もが、僕たちがここにあるもの以外、他に何一つないと気付いても、そこにあるに違いないどんな希望も、貴方には見えないのですか?」

119

2022年4月15日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

一瞬、僕は彼女から解放された。若者が言った。「僕は吐き気がする。僕はもう一杯オリンジエイドゥを飲んでもいい。」

 ミス・スマイズは言った。「いい子だから、飲まない方がいいと思うわ。」

 「本当に、僕は彼を連れて行かなければなりません。その方がきっと貴方がたのためになるでしょう。」

僕は痣が十分に視界に留まるようにした。僕は言った。「僕は、大変申し訳なく思います。もし僕が何かに付け、貴方がたに嫌な思いをさせたのなら。それは全く不測の事態で。僕は、たまたま貴方がたの信仰を共有しません。」

 彼は驚いて僕を見た。「ですが、僕は何も持ちません。僕は何ものも信じません。」

 「僕は、貴方が不服なのではと思い・・・」

 「僕は、居残って計略に嵌るのは嫌です。僕を放免して下さい。僕は余りにも懸け離れてしまっている、ブリジスさん、僕は分かります、しかし僕は、時々心配になります。というのは、人々は典型的な言葉によってでさえ思い出すのではないかと―例えばグドゥ‐バイ。例えば僕の孫は、神のような言葉が、スワヒリの言葉よりもっと僕たちには、重要であると、知ろうとさえしなということを信じられたら。」

 「貴方には孫がいるんですか?」

118

2022年4月14日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「もし貴方が望むのでしたら、帰っていいんです、当然。しかし若者をここに残して頂けませんか?―30分だけなら?僕は彼に話したい。」彼はパ―キスの助手に見覚えがあり、彼に詰問するつもりだということが僕の身に振りかかった。

僕は言った。「何か貴方が彼に尋ねたいことがあれば、貴方は僕に尋ねていいんですよ。」どんな時も、彼は僕の方へ、彼の痣のない頬を向けた。僕の怒りは、込み上げた。どんな時も、僕はそれが消えた醜い黄色い頬を見た。僕は信じられなかった。―紅茶を入れるミス・スマイズと一緒の、花柄のクレトン更紗の間のここで、性欲が存在するということが信じられない以上に。しかし落胆は、何時も答えを生み出し、落胆は今僕に尋ねた。それは愛で欲望ではない、と貴方はそんなにも評価したいか?

 「貴方と僕は、年を取り過ぎた。」彼は言った。「それでも、校長や聖職者―彼らは、丁度、自らの嘘で彼らを堕落させ始めたばかりだった。」

「貴方が意味する地獄とは何か、僕には分からない。」僕は言って、急いで付け加えた。「すみません。」スマイズに向かって。

 「そこに貴方はいるし、貴方は見ている。」彼は言った。「地獄、そしてもし僕が貴方を怒ったら,同じように、貴方はマイ・ガドゥと言おうともしない。」

 僕は彼に衝撃を与えたような気がした。彼は非国教徒牧師かも知れなかった。彼は日曜日の度に働く、とミス・スマイズは言った。それにしても、サラーの恋人であるような、そんな一人の男を如何にこっ酷く傷付けよう。突如としてそれは、彼女の重要性を削いだ。彼女の愛の出来事は、悪ふざけになった、彼女は彼女自身、僕の次のディナ・パーティで、コミクの逸話として使われるかも知れない。

117

2022年4月13日水曜日

The End of the Affair/ Graham Greene 成田悦子訳

そして僕は彼の頬の剝き出しの痣をまじまじと見ながら考えた、そこには何処にも、無傷なところはなかった。一つの盛り上がり、一つの不具で、それらは皆、恋を始めさせる引き金を持っている。

 「貴方の来訪の本当の目的は何ですか?」彼は突然僕の思いの中に押し入った。

 「僕は、ミス・スマイズに話しました―ウィルスンという方を・・・」

 「僕は貴方の顔を覚えていませんが、貴方の息子さんのは覚えています。」まるで彼が若者の手に触れたかったかのように、彼はつっけんどんな欲求不満の素振りを見せた。彼の眼差しは、或る種、型に嵌らない優しさを湛えていた。彼は言った。「貴方は、僕を恐れることなどない。僕はここに人々が訪れることには慣れています。僕は貴方に保証します、僕は只、役に立ちたいだけ。」

 ミス・スマイズは、説明した。「何方でもよく後退(あとじさ)りなさいます。」僕の人生では、それは、何事に関しても、全てだったと思えなかった。

 「僕は丁度ウィルスンという人を捜していました。」

 「そんな男は其処にはいないと僕が知っているのを、貴方はご存知です。」

 「もし貴方が電話帳を貸して下されば、僕は彼の住所を調べられるのですが・・・」

 「もう一度、腰掛けて。」彼は言い、陰気げに若者のことをじっと考え込んだ。

 「僕は、お暇(いとま)しなければなりません。アーサの具合も良くなり、それにウィルスン・・・」彼の曖昧さは、僕を容易く意地悪にした。

116

2022年4月12日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

それからラムプの灯かりの中に歩み寄った。彼の左頬を覆った重症の青黒い痣(あざ)は、凡そ非凡の焼き印と見紛(みまが)うばかりだった。―僕は彼に敵意を持って来たものの、彼は、どんな鏡で自分を見たところで、露ほども慢心する筈がない。

 ミス・スマイズは言った。「私の兄弟は、リチャドゥ。ブリジス氏。ブリジスさんのお子さんの具合が良くないの。私がこの人たちに、入るようお願いしたの。」

 若者を見やりながら、彼は握手した。僕は彼の手の渇きと熱に気が行った。彼は言った。「僕は、以前貴方のとこの若者を見掛けました。」

 「共有地で?」

 「おそらく。」

 彼は部屋のわりに、余りにも力強かった。クレトン更紗とは、釣り合いがとれない。彼の妹が、ここに座るのか、それにしても彼らは、他の部屋で…或いは、彼らが愛を育む間、彼女を使いに出すのか? 

 ところで、僕はその男を見ていた。そこには留まりたいものは微塵もなかった。何故なら―今、彼の出現によって放免された様々な疑問の全てを除いたから―何処で彼らは出会ったのか?彼女が初め主導したのか?彼女は彼の中に何を見たのか?如何に長く、如何に頻繁に、あの二人は愛人関係にあったのか?そこには、僕が魂によって身に付けた彼女が書いた言葉があった。「貴方に書く或いは貴方に話す必要が何もなくなった。・・・私は恋し始めているだけ、と知っています。それにもかかわらずもう、私は、貴方を除いた全ての物と人を捨てたい。」

115

2022年4月11日月曜日

the End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「いえ。」彼女は言った。「リチャドゥ。お子さんの具合は、どうです?」

 「最悪。」パーキスの養子は言った。

 「私たちは彼の体温を測った方がいい、と貴方は思います?」

 「僕にもう一杯オリンジ‐スクワシュを頂けますか?」

 「それは何んともなきゃ、いいのよ。」ミス・スマイズは、途惑った。「可愛そうなお子さん、。多分、彼は、熱があるのね。」

 「僕たちは、十分貴女の邪魔をして来ました。」

 「私の兄弟は、もし貴方がたに居て頂けなければ、私を許しはしません。彼は、とても子供が好きなんです。」

 「貴女の兄弟は、中にいらっしゃいますか?」

 「私は彼が今来るか来るかと期待しています。」

 「仕事から帰宅を?」

 「そうですねえ、彼の働いている日は、正直申しまして日曜日です。」

 「牧師?」僕は敵意を隠し持って尋ねると、途惑っている答え「正確には違います。」を受取った。懸念の様相が、僕たちの間に、カートゥンのように降りて来て、彼女の個人的な悩みと共に、彼女はその背後に退いた。彼女が立ち上がると同時に、玄関ホール・ドアが開き、そこにXはいた。ホールの暗がりの中、ハンサムな俳優の顔を持つ男という印象を得た―しょっちゅう鏡の中でそれそのものを見ているという顔も又、低俗の趣、すると僕は、悲しく、満足とは無縁で、あの女はもっといい好みをしていたらなあ、と思った。

114 


2022年4月10日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「彼の名前は、アーサですか?」

 「アーサ・ジェイムス。」僕は言った。

 「それはかなり古典的な名前ですね。」

 「僕たちは古風な家族です。彼の母親は、テニスンが好きでした。」

 「その方が、ですか・・・?」

 「はい、僕が言うと、彼女は憐れみを持って、その子供を見た。

 「彼は、貴方には慰めでしょうね。」

 「それに心配の種。」僕は言った。僕は羞恥心を感じ始めた。彼女はそんなに疑わなかった。それで、僕はここでどんな良いことをしていたのか?僕はXに会うことに、少しも近付けなかった。ベドゥの上の男に、顔を提供することの代償として、少しでも幸せになるつもりか?僕は僕の戦術を修正した。僕は言った。「僕は、自分のことを紹介した方がいいようです。「僕の名前は、ブリジスです。」

 「そうしますと、私の方は、スマイズです。」

 「僕は、前に何処かで貴女に会ったような気がしてなりません。」

 「私は、そう思いません。私は、顔のことは大変よく覚えています。」 

 「多分僕は、貴女を共有地で見掛けたことがあります。」

 「私は私の兄弟と一緒に、時々そこへ行きます。」

 「見込み違いでなければ、ジョン・スマイズですか?」 

113

2022年4月9日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「彼を中に来させて、座らせて上げなさい。」ミス・スマイズは言った。

 「それは大変ご親切なことで。」

 サラーは、どれだけ頻繁に、このドアを通って、狭く散らかったホールへと消えたのだろう、と嘆かわしく思った。ここ、Xの家の中に僕はいた。多分、フックの茶色いソフトゥ帽は、彼のものだ。僕の後釜の指―サラーに触れ―今開けたこのドアの取手を毎日回した指。雪で鉛色の午後を通して燃えているガスーストウヴの黄色い炎に、ピンクの傘の付いたラムプに、クレトン更紗の緩めのカヴァの屑綿に。「私は、貴方の可愛らしい少年に、水の一杯でも取って来てもいいのですが?」

 「それは大変ご親切なことで。」僕はさっきそう言ったのを思い出した。

 「それともオリンジ‐スクワシュなんかは。」

 「君は悩まなくていいから。」

 「オリンジ‐スクワシュ」若者は、断然言った。又間を置いて「どうか」、彼女がドアを通って行く時。とうとう僕たちだけになり、彼を見た。彼は、クレトン更紗の上で、背中を曲げながら実に具合が悪そうに装った。もし彼が僕にウインクをしなかったら、僕は、多分、かどうか不可解に思った・・・ミス・スマイズがオリンジ‐スクワシュを運んで、戻って来た。そこで僕は言った。「ありがとうと言いなさい、アーサ。」

112

2022年4月8日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

それから僕たちは父と息子のように手に手を取って、共有地を横切り、シダ―・ロウドゥへ向かった。サラーと僕には、どちらにも子供がいない。強い欲望や嫉妬やパーキスの報告書といった、こそこそした職業の中より、結婚することや、子供を持つことや、甘ったるく退屈な平和の内に、共に静かに暮らすことの中、そこにはもっと生(せい)の感覚が在ったのではないだろうか?

 僕はシダ―・ロウドゥの最上階でベルを鳴らした。僕は若者に言った。「覚えて置くんだよ。君は具合が悪い。」

 「もしその人達が、僕にアイスをくれたら・・・」彼は始めた。パ―キスは、予め備えるよう訓練して来た。

 「その人たちは、くれないに決まってる。」

 僕は、ドアを開けたのは、ミス・スマイズだと思った。―チャラティ・バザーの灰色でくたびれた髪の中年婦人。僕は言った。「ウィルソン氏は、ここに住んでいらっしゃいますか?」

 「いえ、御免なさい。」

 「仮に、彼が下のフラトにいても、たまたま貴方がご存じないのでは?」

 「この家に、ウィルソンという名の者はいません。」

 「オゥ親切な方。」僕は言った。「私は、はるばる若者を連れて参りましたが、今しがた、彼は具合が悪くなりました・・・」

 僕は若者を見ないようにしたが、通路からミス・スマイズは、彼をじっと見ていた。彼は静かに、効果的に彼の役割を果たした。サヴィジ氏は彼のチームのメムバとして、彼を認めることを自慢しただろう。

111

2022年4月7日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「それは、ガラハドだよ。ランスロトゥは、グイネヴェレとベドゥの中で見付けられた。」何故僕たちは、無知をからかいたがる悪癖を隠し持つのか?つまり妬(ねた)みなのか?パーキスさんは、悲し気に言った。彼を裏切ったかのように、彼の若い者を横目で見ながら、「僕は 聞いたことがなくて。」



翌日―彼の養父に意地悪をしたくなって―僕たちがシダー・ロウドゥに出かける前に、僕は、ハイ・ストゥリートゥで若者にアイスを御馳走した。ヘンリ・マイルズはカクテイル・パーティを開いている―そうパ―キスさんは、報告して来たので、リスクは避けられた。彼の衣服を真っ直ぐにグイっと引っ張ってから、彼は若者を僕に預けた。若者は、顧客と一緒の彼の初舞台のお目見えという光栄に則(のっと)った彼の一張羅でめかし込んでいた。それなのに僕は、僕の最もみすぼらしいのを身に着けていた。苺アイスが少々、彼のスプーンから零(こぼ)れ、彼のスーツにしみを作った。僕は、最後の一滴が飲み干されるまで、黙って座っていた。間を入れず僕は言った。「もう一杯?」彼は頷(うなず)いた。「又、苺?」

 彼は言った。「ヴァニラを。」かなり経ってから付け加えた。「どうか。」

 彼は二杯目のアイスを随分ゆっくりと、指紋を除去するかのように、念入りにスプーンを舐めながら食べた。

110

2022年4月6日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「僕は貴方と同感です、サー。それは僕だって避けて通ることです。その時が迫れば、僕は若い者にも、それを避けるようにして貰います。」彼の悲しげな眼差しは、彼の若い者が見せるあらゆる動きを追った。「彼はアイスを欲しがったのです、サー、僕は駄目だと言いました、こんな天気でなければな。」すると彼は、アイスへの思いが彼を凍らせたかのように少し震えた。瞬間、彼が「専門家というものは、その尊厳を身に着けていらっしゃいます、サー。」と彼が言った時、彼の意味するところが,僕には何だか分からなかった。 

 僕は言った。「貴方の若者を、僕に貸してくれますか?」

 「もし貴方が、その場で、不愉快になることはない、と僕に保証して下さるのなら。」彼は不安そうに言った。 

 「僕はマイルズ婦人がそこにいる時は、立ち寄りたくないんです。この場面では、万人に通じる資格を手に入れるだろう。」

 「しかし、何故若い者を?」

 「僕は、彼が具合が悪いようで、と言うつもりです。僕たちは間違った住所に来てしまいました。彼らは暫く彼を休ませざるを得ないでしょう。」

 「そういうことなら、この若い者の能力の範疇です。」パ―キスさんは自信ありげに言った。「それに誰もランスに抵抗できません。」

 「彼はランスと呼ばれてるんだね?」

 「サー・ランスロットゥに肖(あやか)りまして、サー。Of the Round Table(円卓の)。」

 「驚いたね。確か、あれは、かなり不愉快なエピソウドゥだった。」

 「彼は、聖杯を見つけました。」パーキスさんは言った。

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2022年4月5日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「僕はベルを鳴らして、直接歩いて中に入り、傷付いた夫のように彼を慰めましょうか?」僕はパーキスさんに尋ねた(彼は、約束してA.B.C.で僕に会っていた―それは彼が彼と行動を共にする若者を使っているという彼独特の暗示で、彼をバーに連れて入ることは出来なかった。)

「僕はそれに反対です、サー。」パーキスさんは、彼のティーにスプーン三杯の砂糖を加えながら言った。彼の若者は、聞こえないテイブルに、オリンジエイドゥとロウルパンと一緒に座った。彼は、入って来た誰も彼も観察した。彼らは、彼らの帽子やコウトゥから、その薄い湿り気の多い雪を振り落した。まるで彼は後で報告書を作ることにしているかのように、その抜け目のない、茶色のビードゥのような目をして、凝視した―おそらく彼はパーキスの訓練の断片を、持ち合わせていた。「御存知でしょう、サー。」「パーキスさんは言った。「貴方が快く証拠を提供しなければ、法廷内で事を複雑にします。」

 「それが、法廷に届くことはない。」

 「平和的な決着を?」

 「興味の欠如。」僕は言った。「誰も、スマイズという名の男のことで、まともに騒ぎ立てたりする筈がない。僕は何とか彼に会いたいんだ。以上。」

 「最も安全な方法は、サー、計量器検査人ですよ。」

 「僕が、ひさし付きの帽子で仮装する筈がない。」

108

2022年4月4日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

やっとそこに恋の最期があるように、憎しみの最期がある。六か月後、僕は一日一杯サラーのことを思わず、そしてそれで僕は幸せだと悟った。それでも、完全に憎悪の最期は、訪れようがなかった。何故なら、一度、出来れば絵葉書を買い、歓喜に満ちたメシジをその上に書きたくなって、文房具店に僕は入ったから―誰に分かる?―時々刻々の痛み、ところが、その時までに僕は彼女の住所を書いてしまっていた。僕は傷付けたいという渇望を見失い、道路に葉書を落とした。それは不思議だった、憎しみはヘンリとのその邂逅で、再び息を吹き返そうとしていた。僕はパーキスさんの次のリポートゥを開くに連れ、愛情も又それだけでそんな風に息を吹き返せるものかどうか、思いあぐねたのをおぼえている。

 パーキスさんは、彼の仕事を首尾よく終えたー粉は効き、フラトゥは突き止められた―シダ―・ロウドゥ16の最上フラトゥ。占有者、ミス・スマイズと兄弟リチャードゥ。ミス・スマイズは、ヘンリが夫であると同程度に、姉妹として便利だったかどうか、僕は不可解に思った。そして僕の隠れた俗物根性は、その名前によって呼び覚まされた―そのy、末尾のe。僕は シダー・ロウドゥの中で、彼女はスマイズと同じくらい卑しいものになったのか?彼は、この二年で、愛人の長い鎖の端っこになったのか、或いは、僕が彼を見た時(そしてパーキスさんの報告書の中でという程、曖昧にではなく、僕は、彼を見ることを決定付けられていた)、1944六月に、誰かの所為で、彼女は僕を捨てたのに、僕はその男を見ようとしているのか?

107

2022年4月3日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 終に、万事に付け最悪の結末となった。想像することやイミジを心に描くことは僕の専門だ。一日中五十回、それに差し当たり僕は夜の間起きていた。カートゥンは上がったままで、その演目は始まるのだった。何時も同じ演目、恋するサラー、Xと一緒のサラー、僕たちが揃ってして来たのと同じことをしている、彼女自身の特別な遣り方でキスをするサラー、セクスの中で彼女自身を弓形に曲げ、苦痛に似たその呻き声を発しながら、自暴自棄のサラー。僕は直ぐに眠れるように、夜にピルを飲むことにしている。しかし、昼間迄僕を眠らせてくれるピルが、僕にはどうしても見つからない。自動装置だけが、日中の気晴らしだった。静寂と轟の間の数秒間、僕の心は、サラーから解放された。三週間が過ぎ、イミジは、初めと同様に、明瞭で常習的で、そこでは、彼らはずっと終わる気が全くないように見えた。そうして僕は、自殺について、実に真剣に考え始めた。そこで僕は、殆ど希望の感覚と言っても良いものと一緒に、僕の睡眠薬を取って置いた。僕は結局、このように無期限に続ける必要はない。僕は自分自身に語りかけた。それからその日付が迫り、その芝居はどんどん進行し、僕は自分自身を殺さなかった。臆病からではなかった。僕を止めたのは、一つの記憶だった―V₁が落下した後、部屋に入った時、サラーの顔に浮かび上がった落胆の様相の記憶。彼女は本当に、僕の死を期待していなかったのか、Xとの彼女の新しい出来事は、彼女は初歩的な良心の類を持ち合わせていなかったために、彼女の良心を少しも傷付けていない。もし今僕自身を殺したら、彼女は全く僕のことで気に病むこともありはすまい。そして確かに、共に過ごした僕たちの四年後、そこには、Xと一緒であっても、気苦労の瞬間はあるに違いない。

106

2022年4月2日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

その後何日も、当然、僕に希望はなかった。それは単に偶然の一致に過ぎなかった、と僕は思った、電話は応じられなかったし、一週間後、僕がメイドゥに会って、マイルズ夫妻について尋ねると、彼女は田舎で不在だと分かり、僕は戦時中書簡は失われるもの、と自分に言い聞かせた。毎朝毎朝、僕はポウストゥ‐ボクスのがたがたいう音に耳を澄ましながら、意識的に女主人が僕の郵便物を取りに行くまで、僕は二階にじっとしていようとした。僕は手紙に目を通さず、落胆が後回しになるようにして、望みはできる限り息づかせて置いた。僕は順番にそれぞれの手紙を読むことにして、僕が積み重ねの底に達した時、やっとそこにサラーからのものはない、と僕は確信できた。それから四時の郵便まで、生活は色を失い、そしてその後は、再び夜通し電話で連絡することにした。

 およそ一週間、僕は彼女宛に書かなかった。プライドゥが僕を引き留めていた。僕はそれを完全に捨てた。不安の内に書きつつ、苦々しく、北側へ向けた宛先を書いた封筒に、「緊急」と「どうか転送を」と印を付けつつ、終に或る朝、僕はそれを完全に捨てた。僕は返事を貰わず、そこで同時に、僕は希望を放棄した。やがて彼女が何を言ったか、こと細かに思い出した。「人々は、生涯彼の人にまみえることもなく、神を慈しみ続けるでしょ?」僕は嫌気が差して思った。彼女は、常にその自らの鏡に申し分なく姿を映そうとする。彼女は彼女自身に、それを高潔に思わせるために、信仰を捨て去ることと混同する。彼女は、今、彼女がXと寝たいと認めようとしない。

105

2022年4月1日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「爆弾は、二つも一か所に落ちない。」僕は言った。しかし機械的に、それはしばしば誤りを立証して来た迷信の一つだったから。

 「貴方は怪我をしているのね。」

 「僕は、歯を二本失くした、それだけ。」

 「こっちに来て。貴方の顔を私が洗ってあげるわ。」彼女は、僕がもう一つのの異議を行う間もなく、―手当てを終えた。僕が嘗て知り合った女は、同じように速く手当てができない、彼女は僕の顔をゆっくりと注意深く洗った。

 「貴女は床の上で何をしていたの?」僕は尋ねた。

 「祈っていたの。」

 「誰のことを?」

 「生きとし生けるもの全てのことを。」

 「階下に降りた方が、もっと気が利いていたよ。」

彼女の真剣さは、僕を驚かせた。僕は彼女をそのことから離れてからかいたくなった。

 「私はそうしたのよ。」彼女が言った。

 「僕は貴方に聞いていなかったよ。」

 「そこには誰もいなかった。ドアの下から伸びている貴方の腕を見るまで、私には貴方が見えなかった。私は貴方が死んだと思った。」

 「貴女は近付いて、試してみたってよかった。」

 「私はそうした。私はドアを持ち上げられなかった。」

 「あそこには僕を動かすくらいの隙間があった。そのドアは僕を押さえ付けていなかった。僕はどうにかこうにか起きようとした。」

 「私には分からない。私は貴方は死んだものと確信した。」 

 「だったら、そこで随分祈ったんだろうね?」僕は彼女をからかった。

 「奇跡をそっちのけにして。」

 「貴方にはもう望みがなければ」彼女は言った、「貴女は奇跡のために祈れる。そういうことは起きるでしょ?亡くなった人に。そして僕は亡くなった人だった。」

 「警報解除までいなさい。」彼女はその頭を振り、歩いてさっさと部屋から出た。僕は階段を彼女に付いて降り、僕の意志とは逆に困らせ始めた。「今日の午後、貴女にお目にかかれます?」

 「いいえ、だめです。」

 「明日の何時か・・・」

 「ヘンリが帰っているの。」

 「ヘンリ。ヘンリ。ヘンリ―その名は、僕たちの関係が続く限り、鐘を鳴らす。愛が死に絶え、愛着や習慣は日常の努力の末に得るというその無念さと共に、幸福とか楽しみとか、陽気とかのムードゥを悉(ことごと)く削ぎながら。「貴方はそんなに怯えなくていいわ。」彼女は言った。「愛情は尽きない・・・」そうして二年余りが、ホールでのあの出会いと「貴方?」以前に、過ぎ去った。

104

2022年3月31日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

  「爆弾が二つも、一か所に落ちない。」僕は言ったものの自動的に、それはしばしば誤りを立証して来た迷信の一つだったから。

 「貴方は怪我をしているのね。」

 「僕は、歯を二本失くした、それだけ。」

 「こっちに来て。貴方の顔を私が洗ってあげるわ。」彼女は、僕がもう一つのの異議を行う間もなく、―手当てを終えた。僕が嘗て知り合った女は、同じように速く手当てができない、彼女は僕の顔をゆっくりと注意深く洗った。

 「貴女は床の上で何をしていたの?」僕は尋ねた。

 「祈っていたの。」

 「誰のことを?」

 「生きとし生けるもの全てのことを。」

 「階下に降りた方が、もっと気が利いていたよ。」

 彼女の真剣さは、僕を驚かせた。僕は彼女をそのことから離れてからかいたくなった。

 「私はそうしたのよ。」彼女が言った。

 「僕は貴方に聞いていなかったよ。」

 「そこには誰もいなかった。ドアの下から伸びている貴方の腕を見るまで、私には貴方が見えなかった。私は貴方が死んだと思った。」

 「貴女はやって来て試してみたってよかった。」

 「私はそうした。私はドアを持ち上げられなかった。」

103

2022年3月30日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 ドアの下から抜け出し、埃を払った。僕は地下室に向かって呼び掛けたが、そこには誰もいなかった。爆破された出入口を通り越し、僕は灰色の朝の光を見ることができた。崩壊したホールから外に伸びているそこはかと知れない喪失感に見舞われた。僕は木だと悟った。それは明かりを締め出して来た一本の木が、単に存在に終止符を打ったに過ぎず―そこには倒れた幹さえ跡形もなかった。かなり離れて、管理人が口笛を吹いていた。僕は二階に上がった。最初の飛行は、手すり子を失わせ、石膏に深く足部がめり込んでいた。それにしても家屋は、実際、あの当時の標準では、酷く痛手を受けてはいなかった―真面(まとも)な爆風を受けたのは、僕たちの隣人だった。僕の部屋のドアは開けっ放しで、僕にサラーが見えた通路伝いに襲来していた―彼女はベッドゥから離れ、床に蹲っていた。―恐怖から、と僕は思った。

彼女は馬鹿馬鹿しい程、有りのままの子供のように、幼く見えた。僕は言った。「あれは接近した一撃だった。」

 彼女はさっと振り向き、恐怖で僕を見つめた。僕は、ドゥレシング‐ガウンは破れ、石膏で全身粉だらけだったのに、気付いていなかった。僕の髪は、それで白くなり、僕の唇や頬は血に塗れていた。「オゥ神様。」彼女は言った。「貴方は生きているのね。」

 「貴女は、がっかりしたようだね。」

 彼女が床から起き上がると、彼女の衣服に手が届いた。僕は彼女に告げた。「貴女が去っても、今は、何もいいことはない。」「間もなく警報解除があるに違いない。」

 「私は帰る方が良かったのね、」

102

2022年3月29日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

  彼女は言った。「速く戻って。」

 僕が階段を駆け下りるに連れ、僕は上空に次の自動装置が飛来したのを耳にする、とその時、エンジンが停止したのか、唐突な待ちかねていたかのような静けさに変わった。僕たちは、尚も、学ぶ機会をものにしなかった。それは、グラスの列から出るため、水平になるために危険の瞬間だと。僕は一度もその爆発音を聞いたことがなく、僕は五秒か或いは五分後、様変わりした世界で、目を覚ました。僕は未だ両足が付いていて、僕は暗さに途方に暮れた。誰かが僕の頬の中に冷たい握り拳(こぶし)を押し付けているように思った。僕の口は血でしょっぱかった。僕の精神状態は、数秒間、僕が長い旅行をして来たかのようで、疲労の感覚を除くと、全てはっきりしていた。僕はサラーに関する記憶が全くなく、、僕は完全に、不安、嫉妬、危険、憎悪から解放されていた。僕の心は、白紙で、その上に誰かが幸福のメセイジを書くには持って来いの山場に丁度差し掛かっていた。僕はそのことを確かに思った。僕の記憶が蘇った時、書くことは続けようと僕は幸せになろうと。

 しかし記憶が戻った時、それはそんな風ではなかった。僕は先ずそれを悟った。僕はあおむけに倒れ、光を締め出しながら、僕の上で平衡を保っていたのは、玄関ドアだった。何か他の瓦礫がそれを受け止め、僕の身体の上で、数インチそれを吊っていた。その異変は、後で、その影によるかのように、肩から膝にかけて傷付いていると、自ら気付いたそれだった。僕の頬に密着していた握り拳は、そのドアの磁器の取手で、それは、僕の歯二本を強打して折った。その後、やっと、僕はサラーやヘンリや恋の終わりという怯えを思い出した。

101

2022年3月28日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 その襲撃が始まった時、僕たちはベッドゥで只横たわっていただけだった。それには全く相違点はない。死は、そうした時期に、決して重大事ではなかった。―初めの内、僕でさえ、そのことをよく祈ったものだ。全滅を免れること、それは起床、着衣、走り去ろうとする緩いスピードゥのテイル‐ライトゥのように、共有地の反対側へと、彼女の懐中電灯が道を横切るのを見守ることを、永遠に妨げようとする。来世は、結局、死の瞬間の無限の延長として存在し得るかどうか、時に不可解に思いもしたが、それは、僕が選び、もし彼女が生きていれば、無条件の信頼、無条件の喜びの瞬間、考えることそれは不可能だから、口論することそれが不可能になったその瞬間が、僕が未だに選んでしまう瞬間だった。僕は彼女の忠告に不満を漏らし、パーキスさんが得た彼女の記述の断片を伴ったその言葉「玉葱」の僕たちの使い道を、苦々しく比べた。が、僕の知らない後継者宛の彼女のメセイジ読むことは、もし僕が、どれ程彼女が自暴自棄になりかねないか知らなければ、少しも傷付けようとしない。いや、Visは、愛の行為が終わるまで、僕たちに影響を及ばさなかった。

僕は、僕が持つ全てを使い果たして、彼女の胃の上の僕の頭共々仰向けになろうとしていた。そして彼女の味覚―水のように薄く捕えどころがない―僕の口の中で。自動装置の一つが共有地の上に墜落し、僕たちに南側をずっと下った所で、グラスが割れたのが聞こえた時

 「僕たちは地下室に行くべきだと思う。」僕は言った。

 「貴方の女主人は、そこにいるのね。私は他の人々に顔を合わせられない。」

 所有の後に責任という弱みが生じ、誰かが誰かを忘れてしまえば、何者に対しても責任のない、単なる恋する人だ。僕は言った。「彼女は離れた所にいるかも知れない。僕は、降りて見て来よう。」

 「出かけないで。どうか出かけないで。」

 「僕はちょっといなくなるだけ。」それが誰彼となく使い続けた文言で、人はあの当時、一瞬は、優に無限の長さに成り得るということを知っていた。僕はドゥレシング‐ガウンを着て、僕の懐中電灯を見つけた。僕はそれを殆ど必要としなかった。空は今灰色で、明りの点いていない部屋の中に、彼女の顔の輪郭が見えた。

100

2022年3月27日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

  それは1944六月、後にVisと呼ばれた物の最初の夜だった。僕たちは空襲に不慣れになっていた。1944二月、短期の呪文から逃れ、そこでは、電撃戦が1941の大規模な最終的急襲で消滅して以来、何も起こらなかった。サイレンが鳴り、最初の自動装置が上空に飛来し、2、3機が、僕たちの夜間防御を突き破った、と僕たちは推定した。或る者は、警報解除が、一時間後も尚、発されなかった時、不満感を露わにした。僕はサラーに話しているのを覚えている。「誰もが不注意になっていた。為すべきことは、余りにも矮小。」それにあの瞬間、僕のベッドゥで、暗い中、横になりながら、僕たちは僕たちの初めての自動装置にお目にかかった。それは共有地を横切って低く通過し、僕たちは 火だるまの一機やその異常な低く張りのあるマルハナを、制御を失くしたエンジン音だと勘違いした。二番手、それから三番手とやって来た。僕たちはその時、僕たちの防御に関する僕たちの意識を変えた。「それらは、鳩のように彼らを撃っている。」僕は言った。「続けるからには、彼らは必死に違いない。」それにしても夜が明け始めた後でさえ、これは何か出来立ての物だと僕たちが悟ったところで、何時間も何時間も、彼らは遣り続ける。

99

2022年3月26日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 Ⅴ

彼女は僕に言った―それは、彼女があの密会から玄関広間の中に雨の雫を滴らせながら入って来る前、彼女から僕が聞いた殆ど最後の言葉だった。「貴方はそう恐れる必要はない。愛情は果てない。先ず、私たちは他の者をそれぞれ見ないでしょ。彼女はもう彼女の決意を固めてしまっていた。それなのに、電話がリンとも鳴らない翌日まで、そのことを知らなかった。しかし、誰かの口をこじ開ける沈黙が、突如として探り当てる。彼女は言った、私の愛しい人、私の愛しい人。人々は、神を慈しみ続けるわね。全身全霊、彼の人に間見えもせずに。

 「それは僕たちの愛の有り様とは、ずれている。」

 「私は、時には、何か他の有り様があるなんて鼻っから思い込まない。」彼女は既に何処かの誰かの影響下にあると認めるべきだと僕は考える―僕たちが最初に二人だけになった時、彼女はそんな風に話したことはなかった。僕たちの世界から、神を除くことに、僕たちは大いに喜んで賛成した。僕は彼女の行く手を照らそうとして注意深く懐中電灯を向けた。彼女はもう一度言った。「何もかもみな正しいに違いないわ。もし私たちが十分に愛し合っていれば。」

 「僕はこれ以上は、専心できない。」僕は言った。「貴女は全て手に入れた。」

 「貴方には分からない。」彼女は言った。「貴方には分からない。」

 窓からグラスが、僕たちの足元に砕け落ちた。古いヴィクトウリアのステインドゥ・グラスだけは、ドアの上にしっかりと固定されてそのままだった。グラスは白くなった、そこでそれは、子供たちが、雨で湿った畑の中か、道端に沿って割った氷のように粉状になっていた。彼女は又、僕に言った。「恐れないで。」彼女が、五時間後の今尚、蜂のように南からブンブン唸りながら着々と北上するその見慣れない新兵器を差し向けたのではない、と僕には分かった。

98

2022年3月25日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「僕は推察する―行き詰まって―僕たちは恋の終点に辿り着いてしまった。そこには、僕たちが一緒に出来ることは何か他にある筈がなかった。彼女は、買い物や料理をしたり、貴方とぐっすり眠ったりできるでしょうが、僕と一緒に彼女は愛を育むことしかできなかった。」

 「彼女は貴方をとても好ましく思っていた。」

僕を楽にすること、それが彼の仕事だったかのように、僕の目が、涙と共に傷付いたそれであるかのように、彼は言った。

 「或る者は好みでは満足しない。」

 「そうだね。」

 「僕は続く上に続く、決して擦り減らない愛情が欲しかった・・・」僕はこんなことをサラー以外、誰にも話したことはなかったが、ヘンリの返事は、サラーのものとは違った。彼は言った。「そういうのは、人間の本質の範疇にない。人は満足しなければならない・・・」何れにせよ、それはサラーが言ったことではなかった。そうしてヴィクトウリア・ガードゥンで、ヘンリの横に座りながら、一日が果てて往くのを見守りながら、僕は全「出来事」の終わりを、記憶に刻み付けた。

97

2022年3月24日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「どうして彼女は貴方を置いて去らなかったか?」

 「そりゃあ、僕まで退屈で馬鹿になったからでしょう。だけど僕は生まれつきそういう風じゃない、ヘンリ。貴方が僕を創るんだ。彼女は貴方を捨てない。その内僕は嫌な男になって行った、不平と嫉妬で彼女をうんざりさせては。」

 彼は言った。「人々は貴方の著作に素晴らしい見解を持つ。」

 「そして彼らは、貴方が一流の委員長だと言う。僕たちの仕業は、どんな生き地獄と関係しているのか?」

 彼は、「僕はそれが齎すものの他には、何も知らない。」南の川岸の上の灰色の積雲を見上げながら、悲し気に言った。。カモメは艀(はしけ)を越えて低く飛び、発砲塔が、冬の日差しの中、崩壊した倉庫の間に黒く佇んでいる。雀に餌をやっていた男は去り、茶色い‐紙包みを持った女、露天商は、駅の外の暗闇で動物のように吠えた。それはまるで地上全体で鎧戸が上がっているかのようだった。間もなく僕たちは、僕たち全員、自らの装置に見捨てられてしまう。「僕は不可解に思う、何故、貴方はあの時期、僕たちに姿を見せようとしなかったの?。」とヘンリは言った。

96

2022年3月23日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 彼のものである妻の性質を彼に教えていいものか?

 毒は、再び僕の中で効いて来た。僕は言った。「貴方は十分安定した収入源を持つ。貴方には、彼女が形作った習性がある。貴方は担保に過ぎない。」彼は真剣に、注意深く耳を傾けた。僕は、委員会を前に、宣誓の上で、証拠を提供する目撃者であるかのように。僕は不毛にも続けた。「貴方が他の男にそうであった以上のトゥラヴルなど、僕たちには何でもなかった。」

 「他の男もいたの?」

 「時々僕は、貴方はそのことを全て知りながら、関心がないのかと思った。時々僕は、貴方に対してそのことを持ち出そうかと切に思いはした―それでは遅過ぎるが、僕たちが今しているように。僕は貴方に、貴方のことを僕がどう考えるか、打ち明けたかった。」

 「貴方が何を考えたって?」

 「それは、貴方は彼女のヒモだった。貴方は僕を食いものにしたし、貴方は誰も彼も食いものにして、今、貴方は最も遅れたものを食いものにしている。永遠のヒモ。何故貴方は腹を立てない、ヘンリ?」

 「僕は全く分からない。」

 「貴方は気付かないままに食いものにした。貴方は彼女とどのように愛を育めばよいか、知ろうともせずに食いものにする。だから彼女は、何処か他に目をやるしかなかった。貴方は、好機を恵んでやっては、食いものにする・・・貴方は、退屈な人、愚か者になっては食いものにした。だから今この時、退屈でも愚かでもない誰かが、シーダー・ロウドゥで彼女とあちこち遊び回っている。」

95

2022年3月22日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 彼は垂れたその頭で、彼の足元を見つめながら、そこに座っていた。それで僕は、僕自身の所為で、随分長い間、酷くお高く留まって、僕の敵に対して申し訳ないと思うのは、僕にしては珍しいような気がした。僕はその帽子を静かに彼の傍の座席に降ろし、歩いて行こうとしたが、彼が上を向くと、彼は泣いていたように僕には見えた。彼は非常に遠い道を旅するしかなかった。涙は、イギリス委員会とは別世界のものだ。

 「僕は済まないと思う、ヘンリ。」僕は言った。如何に安易に悔恨の動作によって、僕たちの罪悪感から逃れられると信じることか。

 「座って。」ヘンリは、彼の涙の権威で勧め、僕は彼に従った。彼は言った。「僕は考えていた。」「貴方は二人分の愛人だったの、ベンドゥリクス?」

 「どうして貴方はそう思うの・・・?」

 「それが、唯一の解説だから。」

 「僕は貴方が何を言っているのか分からない。」

 「それは、唯一の容赦でもある、ベンドゥリクス。貴方がしたことは、―不条理だと、見てはいけない?」彼は話しながら、彼の帽子を回転して、メイカー名を調べた。

 「僕が恐ろしく馬鹿だ、と貴方は思っている、と僕は推測する。何故、彼女は僕を置いて去らなかった?」

94

2022年3月21日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 Ⅳ

僕は彼に追い着くか、或いは少なくともフワイトゥホールからの長い距離を先回りして、彼を視界に捕らえようとした。というのも僕は彼の帽子を、僕が持って行ってやりたかったから。ところが彼は何処にも見当たらなかった。僕は何処へ行こうか決めかねて折り返した。近頃、それは最悪の時刻だ。そこにあるのは、有り余るほどのそれ。僕はチャーリング・クロス地下に近い小さな本屋の中を見た。この時間にサラーは、角の周辺で待ち伏せるパ―キスさんと一緒に、シーダー・ロウドゥの粉を塗したベルに、彼女の手を置いているのではないだろうか。仮に僕が時間を巻き戻せたところで、僕はそうしようとしたと思う。僕は、ヘンリを徒歩で側に行かせようとした。ところが僕は、僕に何か出来ることがあるとすれば、とっくの昔に、出来事の道筋の変更をしているのにと疑心暗鬼になるばかりだ。ヘンリと僕は、今や、僕ら流に、連合軍で、無限の潮流に逆らった連合軍だ、僕たちは。

 僕は道路を横切り、露天商を過ぎ、ヴィクトウリア・ガードゥンの中に入った。さほど多くはない人々が、曇った吹きっさらしの中、ベンチに座っていた。僕は、忽(たちま)ちの内に、ヘンリを探し当てたものの、彼と認めるには少々僕には時間がかかった。戸外で、帽子もなく、彼は、匿名の人、放浪者ら、貧しい郊外から上って来た誰も知らない人々―雀に餌をやる老人、Swan & Edger’sと記された茶色い―紙包みを持った婦人と合流したように見えた。

93

2022年3月20日日曜日

The End of the Affair/Graham greene 成田悦子訳

 「どんなリポートゥを?」その言葉が発せられた時、ヘンリの仕事は、彼の心に初めピンと来なかった。

 「イギリス委員会。」

 とうとう彼が行ってしまうと、ヘンリが口を開いた。「さあどうかそのリポートゥを僕にくれ、そして僕を通してよ。」

 幹事が僕たちといる間、彼は物事を考え過ぎていたんじゃないだろうか。だから僕は彼に最終リポートゥを手渡した。彼はそれを火の中に直接載せ、火掻き棒でそれをしっかり叩き込んだ。その身振りは威厳を放っていたと思わざるを得ない。「貴方はどういうつもりなんだ。」

 「別に。」

 「貴方は事実から放免されてはいない。」

 「事実を道連れに地獄へ?」ヘンリは言い放った。僕は以前彼が暴言を吐くのを耳にしたことはなかった。

 「僕は何時でも貴方に写しを持たせられるんだよ。」

 「僕を直ぐにでも行かせてくれないか?」ヘンリは言った。悪魔がその仕事を終えようとした。僕は毒液から液を抜き取ったと勘付いた。僕は炉格子から足を外し、ヘンリを通した。彼はクラブから直ぐに歩いて出て行った。彼の帽子を忘れたままで、その黒い傲慢な帽子、それが、僕は共有地をずぶ濡れで横切って来るのを見たことがあった―それは老人のようだった、何週間も前のことでもないのに。

92

2022年3月19日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「僕が料金は全部持つよ。」

 「それじゃあ悪魔のようなずうずうしさになる。」彼は立ち上がったが、僕は彼が暴力行為なしで傍を通り過ぎて受取れないような所に彼を閉じ込めたものの、暴力はヘンリの柄じゃなかった。

 「確かに貴方は彼女のことをはっきりさせた方がいい。」

 「はっきりさせたいことなどない。僕は行かなきゃ、ねえ。」

 「貴方は報告書を読んだ方がいい。」

 「僕はそのつもりはない。」 

 「それなら、秘密の訪問についてその一端を、僕が貴方に読み聞かせるしかない、と僕は思います。彼女のラヴ・レタ-を、僕は私立探偵に書類整理ということなので返した。我が親愛なるヘンリ、貴方は適切に庭へ導かれた。」

 彼が僕を殴ろうとしていた、と実際僕は思った。もし彼がしたら、僕は喜んで殴り返そうと、サラーが、自らの考えで、随分長い間、実に馬鹿げたことに、忠実であり続けたこの愚か者を殴り返そうとしたが、その瞬間、クラブの幹事が入って来た。彼は、長いグレイの顎髭と、スープのシミが付いたべストゥを身に着けた男で、彼は、ヴィクトリア朝詩人のように見えた。が、実際に、彼は嘗て知っていた犬の少し悲しい回想を書いた。(For Ever Fidoは、1912、大きな成果を上げた。)「ああ、ベンドゥリクス。」彼は言った。「長い間、僕はここで貴方に会ったことがない。」僕がヘンリに彼を紹介すると、理容師の素早さで彼は言った。「僕は毎日、あのリポートゥを追いかけていました。」

91

2022年3月18日金曜日

The End of the Affair/Graham Greeme 成田悦子訳

壁伝いの角は、その場所に何と相応しいことかと思った。旧-式の炉格子の上に僕の足を載せながら、ヘンリを片隅にしっかりと閉じ込めた。

僕は僕のカフィを掻き雑ぜ、言った。「サラーはどう?」

 「かなり元気。」ヘンリはごまかして言った。彼は、彼のワインを、不安と、疑念を持って味わった。彼は忘れていなかった、と僕は思う、ヴィエナ・ステイクを。

 「未だ貴方は心配してるの?」僕は彼に尋ねた。

 彼は不幸せそうにその凝視を移した。「心配?」

 「貴方は心配している。貴方がそう僕に話した。」

 「僕は覚えていない。彼女はかなり上手くやってる。」彼は弱々し気に説明した。僕が彼女の健康に言及したのに。

 「貴方は前にあの私立探偵に相談したの?」

 「僕は貴方がそのことを忘れてくれたらと願った、僕は良くなかった。―分かってるでしょ、そこにはこの英国委員会の企画がある。僕は働き過ぎだ。」

 「僕は貴方に会うように進めたのを覚えている?」

 「僕たちは二人共少し働き過ぎに違いない。」

 彼は頭上の古い角目掛けて、急に立ち上がった。寄贈者の名前を読もうとして彼の目を見開きながら。彼は愚かにも言った。「貴方に、たくさん頭があるようだ。」僕は彼を容赦するつもりはなかった。僕は言った。「僕は2、3日後に彼に会いに行ったんだ。」

 彼は彼のグラスを置いて言った。「ベンドゥリクス、貴方は全く抜け目がない・・・」

90

2022年3月17日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

日刊新聞の記者らは、制作する紙が全くなく、学校警備官は、ブラムリやストゥリーサムへ帰宅していた、牧師たちにその日に何があったのか、僕は全く知らない―多分彼らは、彼らの説教を準備するために屋内にいる。作家について言えば(彼らのためにクラブが設立された)、彼らの殆ど全員が壁に掛けてある―コナン・ドイル、チャールズ・ガーヴィス、スタンリ・ウエイマン、ナットゥ・グールドゥ、特別に任命され、その上著名で、よく知られた顔を持っていた。貴方が片手の指で数えられる生存者。僕が何時もクラブで寛(くつろ)いでいたのは、そこには、作家仲間に会う可能性がさほどないから。僕はヘンリがヴィエンナ・ステイクを選んだのを覚えている―それが彼の潔白の現れだった。

 僕は 彼が何を注文し、ウィーナー・シュニツ゚ェルのような何かを期待しても、彼にはどのような裏もなかったと心底信じる。彼は、ホウム・グラウンドゥから離れ、彼は、寛ぐには余りにも気分が悪かったので、皿の上で論評し、何とかしてやっと、ピンクのべとべとした混合物を詰め込んで、きれいに平らげた。僕はフラッシュライトゥの前の、その尊大な様子を覚えていて、彼がカビネットゥ・プディングを選んだ時、彼に警告しようとするどのような試みもしなかった。忌まわしい食事の間(その日そのクラブは、許容範囲を超えていた。)、僕たちは何に関しても、苦心して話さなかった。ヘンリは、報道陣に日々報じられた英国委員会の会報向けの内閣機密の顔を添えようと全力を尽くした。僕たちがカフィを求めてラウンジの中に入ると、擦り切れた黒いバス織りのソウファの中、火の側に全くぽつんとしている自分達に気付いた。

90

2022年3月16日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 彼は、英国委員会の委員長に任命され、今、彼は「The Last Siren]と名付けられた英国フィルムの祝祭の夕べを担当していた。彼の腕にしがみつくサラーと一緒に、フラッシュを浴び、青白い上に目を丸くして。彼女はフラッシュを避けるように、彼女の頭を低くした。それでも、罠にかけ、又指を阻止した結び目の多い髪を寄せ集める、そのことを、僕は認めようとした。突然、僕は僕の手を差し出し、彼女に。彼女の頭の毛と彼女の隠れた毛に、触れたくなり、僕は僕の側で横になっている彼女が欲しくなり、僕は枕の上の僕の頭を彼女の方へ向けられるようになればと願い、僕はその殆ど感知できない匂いや彼女の肌の味わいを求めたところで、そこにいたのは、新聞記者のカメラに、自己満足と百貨店的頭の自信共々、面と向かっているヘンリだった。

 僕は、1898にサー・ウォルタ・ベサントゥによって贈られた雄鹿の頭の下に座り込み、ヘンリ宛に書いた。彼と話し合いたい或る重要な問題を抱えているので、僕と昼食を摂れるか、と書いたー彼は来週の内、どの日を選んでも構わなかった。かなりすばしっこく彼はベルを鳴らした、それがヘンリの典型で、同時に、僕は彼と昼食を摂るべきだと提案した―これほど難しい客である男を、僕は今まで知らなかった。僕は何が口実だったのか、正確に思い出せないが、それは僕を怒らせた。彼の所有するクラブは。或る特別美味しいワインを持っていると彼は言った、と僕は思うが、本当の理由は、義務という感覚が彼をうんざりさせたからだった―負担のない食事の僅かな義務でさえ。どんなに僅かでも、彼の義務がありそうだと、彼は少なからず推測した。彼は土曜日を選び、その日、僕のクラブは殆ど空いていた。

89

2022年3月15日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

彼がしなければならないことは、次にサラーがこの方向へ出かける時には、彼女の先周りをして、粉を塗した三軒のベルの埃を払うことだった。「そこには、勿論、証拠物件Aから離れ、問題の当事者による姦通の証拠の欠片もありません。仮にこれらの報告書の強みに基づいて、このような証拠が、法的処置を視野に入れるに伴い、求められるとすると、屋内の当事者を尾行すること、それは、適当な間隔を開けた後、必要かも知れません。当事者を確認できる二番目の目撃者が求められます。行為の最中の当事者を押さえること、それは全く必要ありません。衣服の確かな乱れや動揺は、判事によって十分維持されるでしょう。」

 憎悪は肉体的愛情に実に近い。それはそれ自体の危機と同時に、それ自体の平穏の終結を兼ね備えている。可哀そうなサラー、と僕が思ってしまったのも、パーキスさんの報告書を読みながら、この瞬間が僕の憎悪のオーガズムであり、今、僕は満足しているから。僕は、彼女がいたからこそ、がんじがらめにしてしまい、彼女に対して済まないとやっと思った。彼女は恋愛の他に何事にも傾倒したことがなかったのに、あらゆる動向を見張っているパ―キスと彼の若い者が、今はいる。彼女のメイドゥを使った企み、呼び鈴への粉塗布、多分、彼女が最近満喫したのは唯一平和だけだったそのことへの凄まじい噴出計画。僕はその報告書を引き千切り、スパイ共を呼んで彼女から引き離そう、と心が半ば動いた。多分、僕はそうしようとした。もし、僕が属したみすぼらしいクラブで、「タトゥラ」を公開せず、ヘンリの写真を見なかったら。ヘンリは今は成功し、去年の誕生日には、彼は省の彼の業務に対して、C,B,E.を叙勲した。

88

2022年3月14日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 Ⅲ

それで僕は、悪魔の計略に備え、心からの熱中をパーキスの次のリポートゥで発見出来たらいいと思った。ついに彼は現実に恋愛を嗅ぎつけてしまって、今や彼は、そっと近付いてリトゥリーヴァのように、直ぐ後に続く彼の若い者、それを仕留めた。彼はサラーが彼女の時間の大半を何処で過ごしていたか発見した。そのこと以上に、彼は訪問は秘密だとはっきりと知っていた。僕は、パーキスさんが抜け目のない探偵だ、と自ら立証して来たことを、認めざるを得なかった。「問題の当事者」が、16番の方へシーダー・ロウドゥを歩いて下った時、丁度その時に、家の外にマイルズのメイドゥを連れて出るのに、彼の若い者の助けを彼が取り決めた。サラーは立ち止まり、その日が非番のメイドゥに話し掛けると、メイドゥは、彼女を若いパーキスに紹介した。それからサラーは、歩き続け、次の角を曲がった。そこでパ―キス自身が待っていた。彼は狭い道を歩く彼女を見て、そこで引き返す。彼女は、メイドゥとパ―キス青年が視野から外れたのを確認すると、彼女は16番のベルを鳴らした。パーキスさんはそこで16番の居住者の調査に取り掛かった。これが、さほど簡単ではなかった。その家屋は、屋根の中で分けてあり、彼にはサラーが三軒のベルの内、どれを鳴らしたかを知っても、大した意味はなかった。彼は数日内の最終報告を約束した。

87

2022年3月13日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 主観的神の法外な起こりそうにないことを鵜呑みにできる人々は、何故、主観的な悪魔を受け付けないかを、僕は全く理解しなかった。僕はとても親密だったので、僕の想像力の中で、その悪魔は働く術を心得ていた。サラーは嘗てどのような声明も作ったことはなく、それは、彼の狡猾な疑念に対する証明になった。それでも、彼は何時も彼女があれやこれやを言葉にするまで、待とうとした。それが起こるずっと前に、彼は僕たちの口論を、駆り立てようとした。彼は愛の敵程には、サラーの敵ではなく、つまり、どんな悪魔もいると考えられているんじゃないのでは?もしそこに愛する神が存在すると、、悪魔は、その愛の最も弱く、最も不完全なまがい物でさえ、破壊に至らせる。彼は愛の性(さが)が募ったら嫌になってしまうんじゃないか、それに僕たち皆、反逆者になり、愛を根絶しようとする彼を助ける罠にかけてしまうんじゃないか?そこにもし、僕たちを使い、こんな僕たちのような人物から遠い、彼の死者を作る神がいれば、悪魔も又、彼の大望を抱く。彼は僕自身のようなこんな人物さえ、可哀そうなパーキスでさえ、彼の死者になることへと訓練しようと、夢見かねない。喩え何処でそれを見い出しても、愛を滅ぼそうと、借りた熱狂で準備する。

86

2022年3月12日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 それにしても確かに、このパブに僕を連れて入ったそれは愛情ではなかった。僕は僕自身に、共有地からのあらゆる道、それが嫌だったと打ち明けた。僕はずうっと自分自身に説くに連れ、彼女のこの話を書きながら、永遠に僕の秩序から彼女を締め出そうとするのは、もし彼女が死んだら、僕は彼女を忘れられる、と何時も説得して来たから。

 僕はパブの外に出た。済ませたに見合う彼女のフイスキと一緒に彼女を、彼女のプライドゥ用軟膏としてパウンドゥ紙幣を残して。そしてニュー・バーリントン・ストゥリートゥを電話ボクスまで歩いて上った。僕は僕用の懐中電灯も持たず、僕が僕の番号のダイアルを回すことを完了してしまう前に、僕は競争相手の後に又競争相手に行き当らざるを得なかった。その時僕は、電話が鳴っている音を聞き、僕は僕の机の上に置いてある電話を思い描いてしまった。例えば彼女が椅子に座っているか、ベッドゥで横になっているかで、サラーがそれに辿り着くのに何歩歩かなければならないか、僕は正確に知っていた。それでも僕は、それが30秒間、留守の部屋で鳴り続けるままにした。それから僕が彼女の家に電話すると、メイドゥは未だ中にはいないと僕に話した。灯火-管制中に共有地をあちこち彼女は歩いているのではないかと思った―その頃、より安全な場所は其処にはなかった。そして僕の時計を見ながら、僕は思った、もし僕が愚か者でなければ、僕たちは一緒にあと三時間は過ごしていた。僕は一人で帰宅し、本を読むことにした。しかしずうっと、僕は鳴らない電話に耳を澄ましていた。僕のプライドゥが、彼女にもう一度電話しようとする僕を引き留めた。とうとう僕はベッドウに向かい、睡眠薬‐一回分の服用量の2倍を飲んだ。挙句の果て、朝、僕が知った冒頭は、何事もなかったかのように僕に話す、電話でのサラーの声だった。僕が受話器を置くまで、そこには、再び完全な平和のようなものがあった。ところが、直ぐに僕の頭の中のその悪魔は、彼女にはあの三時間の浪費は、全く何の意味もなかったという考えを促した。

85

2022年3月11日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

彼女はサラーより若く、彼女は19を超えている筈もなく、その上美しく、寧ろ損なわれていないと誰かが言っても構わなかったが、それは只、駄目になるようなものが極端に少なかったからだ。僕は犬か猫の類を求める以上に、彼女を全く欲しくはないと気付いた。彼女は僕に、ほんの二、三軒下ると最上階に素敵なフラットゥを彼女が持っていると話した。彼女は支払わなければならない何を借りて、彼女の年齢は何歳で、何処で生まれ、カフェで一年働いた、と僕に話したが、僕は紳士だと直ぐに見抜いてしまった。彼女は、自分にそれをくれた紳士の名前を付けたジョウンズと呼ぶカネアリを飼っていると言った。彼女は、ロンドンでの襤褸菊(のぼろぎく)を得ることの難しさについて話し始めた。僕は思った、もしサラーが今も僕の部屋にいれば、僕は教会の鐘を鳴らせる。例えば僕が庭を持っていれば、僕は彼女のカネアリを時々思い出すかどうか、その少女がぼくに尋ねているのを聞いた。彼女は言った。「貴方は尋ねている私のことを気にしないでしょ?」

 僕のフイスキの向こうの彼女を見ながら、僕は思った、何て奇妙な、彼女に全く欲望を感じない。僕が大人になって入り混じった全ての年月の果てに、全く突然といった風にそうなった。サラーに向かうこの激情は、単なる肉欲を永遠に封じた。二度と再び愛情のない女を弄ぶことは出来はしない。

84

2022年3月10日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 その夕べ、僕がピカディリに着いた時、僕は尚も、僕の憎悪と不信でがんじがらめだった。世界の何ものよりずっと、僕はサラーを傷付けたかった。僕は、僕と共に女を再び迎え入れ、僕がサラーを抱くその同じベッドゥの上に、彼女と横になりたかった。それで、彼女を傷付ける唯一の方法は、自分自身を傷付けることだ、と僕には分かっていたかのように、振舞った。通りでは、この時までに、それは暗く静かになっていた。が、見上げると、月のない空の上方に、小さな塊とサーチライトゥの光線を動かした。戸口や使われていない避難所の入り口に、女たちが立つそこでは、貴方は顔を見られない。彼女たちは、ツチ蛍のように彼女たちの懐中電灯で合図しなければならなかった。サックビル・ストゥリートゥを上る全ての道は、その小さな明かりが、点いたり消えたりしていた。サラーは今何をしているのかと気を回そうとする自分自身に気付いた。彼女は帰宅したか、それとも彼女は僕が戻って来ると思って、待っていたか?

 一人の女が彼女の明かりををぱっと点けて言った。「私と一緒に家に来たい、ねえ?」僕は僕の頭を振り、歩き続けた。通りを上ってもっと先で、その女は、男に話しかけていた。彼女がその顔を彼のために照らした時、僕は、何処かしら若く、暗く、幸福で、未だ損われていないものをちらっと見た。動物、それは未だ自らの監禁状態に気付いていなかった。僕は通り掛かり、そこで彼女たちの方へと道を引き返した。僕が近付くと男は彼女を一人残し、そこで僕は話し掛けた。「一杯どう?」僕は言った。

 「後で私と家に来るってことでは?」

 「いいよ。」

 「話が速くて嬉しいわ。」

 僕たちは通りの頂上のパブに入り、僕は2杯のフイスキを注文した。が、彼女が口にしても、サラーの所為で彼女の顔を見られなかった。

83

2022年3月9日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

  僕は書き始めた時、これは憎悪の物語だと言ったが、僕は納得していない。多分僕の憎悪は、僕の愛情同様、実に欠陥がある。僕はまさに今、書くことで目覚め、机に寄り、鏡の中に僕そのものの風景を捕えて、やっと僕は思った、憎悪は本当にそんな顔つきをしているのか?僕たちはその誰もが、子供の頃に見た筈のその顔を思い起こした。ショップ・ウインドウから、僕たちの方を振り返ろうとすると、顔立ちがその息でぼやけた。僕たちが、中のきらきらした手に入らない物に、あんなに思い焦がれて見入ったので。

 それは、1940・5月のきっとあの時だった、その時、この口論は勃発した。戦争は、数多くの素晴らしい方法で僕たちを助け、それは、如何に僕が戦争を、かなり質の悪い、当てにならない殆ど僕の情事の共犯者だと見做したかである。(慎重に、僕はその言葉「情事」の苛性ソウダを僕の舌の上に始まりと終わりのその暗示と共に置こう。)この時までに、僕はドイツ人が低地三国を侵略して来たと、考えている、屍のような春は、開花の匂いで甘い香りがしたが、僕には何の関係もなく、それどころか二つの実際の出来事―ヘンリは国防省へ配置され、遅くまで仕事をしたし、僕の女主人は、空襲を恐れて地下室へ移り、もはや階上の床の上には、望まない訪問者のために手すりの向こうで見張りながら潜む者さえいなかった。僕自身の暮らしは、この不自由な足の所為で、全く変わらなかった(子供の頃の事故の結果、僕はもう一方のものより短い片足を持っていた)。只、空襲が始まった時は、学校長になる必要性を感じた。まるで僕が戦争に署名をしたかのように振舞おうとしたのは、その時期だった。

82

2022年3月8日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

彼女は一年近くの間、僕に誠実だった。彼女は僕に大きな喜びを齎した。彼女は僕のむら気に付いて来て、僕は束の間の喜びの外(ほか)、お返しに何を与えて来たか?この目を見開いたまま、この情事にのめり込んだ、このことは何時か終わるしかないと知りながら、それでも尚、不安感、望みのない未来の論理的確信は、鬱病のように伝わる。僕は彼女を苛め、そして又苛めようとする。まるで僕が、ドアの現在に未来を、望まれない、早過ぎる客を伴いたかったかのように。僕の愛情と不安は、分別のように振舞った。もし僕が罪を信じたら、僕たちの行動は、殆ど違っていなかっただろう。

 「貴女はヘンリには妬いてしまうんだ。」僕は言った。

 「いいえ、そうなる筈ないわ、そんなの馬鹿げてる。」

 「もし貴女の結婚が、脅かされているように見えても・・・」

 「そうなってしまうなんてないの。」彼女は寂しそうに言った。そして僕は侮辱的彼女の言葉に応じて階段を降り、通りへと一直線に歩いて出た。これが終わりか、僕自身に演技を仕掛けたのかと問いかけた。そこにはもう二度と戻る必要はない。喩え僕の秩序から彼女を締め出せても、前進し続けるだけの、穏やかで仲の良い結婚に行き着かないじゃないか?それから多分、僕が嫉妬を感じさえしなくなったのは、僕が手放しで愛そうとしなかったから。僕は只安全域に留まろうとしたに過ぎず、この自己憐憫と嫌悪は、手に手を取って保護者のいない馬鹿のように暗くなっていく共有地を歩いて横切った。

81

2022年3月7日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

パーキスさんのその日々以前でさえ、僕は彼女を調べようとしていた。僕は些細な嘘、僕についての彼女の懸念を除くと、何一つ意味のない言い逃れに、彼女を罠に賭けようとした。あらゆる嘘に対して、僕は背信へと誇張しようとし、又最も開かれた声明でさえ、僕は隠された意味を読み取ろうとする。何故なら、他の男に触れるも同然の彼女の考えに、僕は耐えられず、僕はそれをずっと惧れ、そうして僕は,最も何気ない手の動きに、愛情表現を予測した。

 「貴方は私に惨めであるより、少しでも幸せであって欲しくはないの?」彼女は耐えられない論理で尋ねた。

 「僕は寧ろ死ぬか、貴女が死ぬのを見る方がいい。」僕は言った、「他の男と一緒なら。僕は常軌を逸してはいない。それが普通の人間の愛情だ。誰にでも聞くといい。誰も彼も皆、同じことを言うに決まっている―もし彼らが全てを愛したら。」僕は彼女に二の足を踏んだ。「恋をする誰もが妬いている。」

 僕たちは僕の部屋にいた。日中の安全な時間に、そこに来ていた。晩い春の午後、愛を育むために。一度は僕たちは暇な時間を持ち合い、そうしておきながら、僕はその全てを口論で浪費した。そこになかったのは、育みたくなる愛情だった。彼女はベッドゥに座って、言った。「ごめんなさい。私、貴方を怒らせるつもりじゃなかった。貴方が正しい方がいいわ。」それでも僕は彼女を一人にしては置かない。僕が彼女を嫌になったのは、彼女は僕を愛さなかったと考えるようになったからだ。僕の秩序から外れて欲しかった。どんな不満を、彼女が僕を愛しているのか、愛さないのか、僕には今も分からない、僕は彼女に対して、抱くようになったのか?

80

2022年3月6日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

僕の嫉妬の程度で愛情を測り、その基準では、勿論、彼女は、僕を全く愛せなかった。

 その口論は、何時も同じ形態を採り、僕は或る特別な場合を描写するだけ。何故ならその場合に、口論は行為―僕は書き始めると、結局、多分彼女は正しく、僕が悪いという感慨に向かうというこの不確かさがなければ、ついに、何処にも導かない馬鹿げた行為で終わったのだから。

 僕は怒って言ったのを覚えている、「これはまさに、貴方の何時もの冷淡さからの遺物だ。冷淡な女は、決して妬かない、貴女は単に並みの人間の感情に未だ追いついていなかっただけだ。」

 彼女は、どんなクレイムもつけなかったということが、僕を怒らせた。  「貴方は正しいかも知れない。私は貴方に幸せになってほしいと言っているだけ。私は貴方が不幸せであるのは嫌。私は貴方を幸せにするなら、貴方がどんなことをしても気にしない。」

 「貴女は只許しが欲しい。もし私が他の誰かと寝ると、貴女は同じことが出来ると思う―何時でも。」 

 「それは、ここにもあっちにもどっちにもないの。私は貴方に幸せになってほしい、それが全て。」

 「貴女は僕のために僕のベッドゥを作るつもりなの?」

 「多分。」

 不安は恋人たちが感じる最悪の感覚だ、時に、最も平凡な結婚はより良く見える。不安は意義を捩(よじ)り、信頼に毒を盛る。厳重に包囲された都市においては、あらゆる見張りが、潜在的な反逆者だ。

79

2022年3月5日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 彼は僕を絵画の一部としても、認めようとさえしない、と僕は思うし、僕自身への注意を引こうとする凄まじい願望を感じる。彼の耳に大声で叫ぶために「お前は僕を無視できない、ここに僕はいる。喩え後々何が起ころうと、サラーはその時僕に思いを寄せているんだ。」

 サラーと僕は、嫉妬に関する長い口論をしょっちゅうやったものだ。僕は過去のことでさえ妬いた、それが上り坂に差し掛かると、そのことについて彼女は僕に率直に言った。全く意味をなさない情事(ヘンリがひどく痛ましく、引き起こし損ねたあの決定的な引き付けを何とかして見つけようとする無意識の願望を除いて)彼女は彼女の愛人に対して、彼女がヘンリに対するのと同じくらい誠実だったが、安心感を僕に与えようとして何かが(疑いなく、彼女は僕に対しても誠実であろうとするから)僕を怒らせた。そこにあったのは、彼女が僕の怒りを一笑にふそうとした時期だった、まるで、それが本気だったと簡単に信じるのを拒絶したかのように、まるで彼女自身の美しさを彼女が信じるのを拒むかのように、そして僕はと言えば、まるで怒りの最中にあろうとでもするかのようだった。何故なら、彼女は、僕の過去も僕の可能性のある未来をも、妬くのを拒絶したから。僕は、愛情が僕のものより少しでも別の形態を採り得たという事を信じるのを拒絶した。

78

2022年3月4日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

  僕は手紙の断片に「論評はない。」と書き、それを封筒に戻して、パーキスさんの宛先をそれに書いたが、夜中に目が覚めた時、自分自身に対して、全てのことをすっかり読んで聞かせることが出来た。そして「捨てなさい」という言葉は、様々な身体的画像を結んだ。僕は眠られず、そこで横になった。憎悪と欲望で、僕を次から次へとちくちくと刺す記憶、寄木細工の床に扇形に広がる彼女の髪、そして軋むその段、僕たちが、道路から外れた溝で横になった田舎の或る日、僕は固い地面の上の頭髪の間に、霜の輝きを見ることが出来た。そして重大局面の瞬間に、一台のトゥラクタが押しながら側に近付いたが、その男は決して頭を向けなかった。何故憎悪は欲望の命を奪えないのか?僕は眠るために何かを供給しようとした。喩え僕が代用品の可能性を信じていたにしても、僕は小学生のように振舞おうとした。しかしそこにあったのが、僕が代用品を探そうとした時期だとしても、それは機能しなくなっていた。

 僕は嫉妬深い男だった―こうした言葉を書くのは愚かに思える、僕は想像する、嫉妬の長い記録、ヘンリの嫉妬、サラーの嫉妬、パーキスさんが極めて不器用に追跡していたその他の嫉妬を。この全ては過去のものであるという今、僕は、記憶が特に生々しくなる時だけ、ヘンリについての僕の嫉妬を痛感する(何故なら僕は、もし僕たちが、彼女の誠実と僕の欲望を引き連れて、結婚していたら、僕たちは終生幸せでいられただろうと僕は誓うから)、しかしそこには尚、僕のライヴァルの嫉妬が残っている―耐え難い一人よがり、自信、そして成功を表現するために、痛々し気で不適格なメロドラマ的言葉を彼は何時も楽しむ。

77

2022年3月3日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「私は貴方に書く必要も、又話す必要性も持ち合わせない。私が話そうとする前に、何もかも知っている。それでも誰かが愛し、誰かが何時も使って来た変わることのない、使い古した手口を使う必要性を感じます。私は只愛し始めていると自覚しています。それなのに、もう私は全てを捨ててしまいたい。貴方ではない誰も彼も、怯えと習癖だけが、私を引き留めます。愛しい人・・・」そこにはもう何もない。それは私を厚かましく睨み上げ、そこで僕は、彼女が嘗て僕に宛てた覚書全てのどの目鼻立ちも、何故忘れてしまったのかと、思わざるを得ない。僕はそれを取って置こうと思ったのか、もしそれが彼女の愛情に対して、それ程完全にこれまで明かして来たのなら、僕のそれを取って置くことへの不安のために、彼女は何時もあの頃、彼女はそれを「針金の間に」置いたように、僕に手紙を書くのに神経を使った。しかしこの最後の恋は、針金の籠を飛び出した。それは視野の外のそれの間に置かれるのを拒んだ。そこには僕が覚えていた一つの婉曲語句「玉葱」があった。愛は、「玉葱」に、行為そのものでさえ「玉葱」になった。「もう私は全てを捨ててしまいたい。貴方ではない誰も彼も。」それに玉葱を僕は思った、嫌悪を伴った、玉葱を―それが僕の持ち時間で辿る径だった。

76

2022年3月2日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

僕は、彼のあの若い者の面前で、パーキスさんの漫然とした責任逃れの非能率的報告書を、彼の口の中に押し込んで潰したくなるきっかけが、そこにあった。(どんな目的のために?)ヘンリを傷付けるため?それとも自分自身を傷付けるために?)僕は肉体関係の中で、混乱を極める道化師を登場させた。肉体関係。その言葉でさえ、パーキスさんの報告書を平手でぴしゃりと打った。彼は一度も書いたことがなかったのか、「私はシェダーロウドゥ16で行われていた肉体関係の直接的な証拠は持っていませんが、当事者は確かに騙す意志を見せました。」?しかしそれが後だった。この彼の報告書の中で、サラーが彼女の歯医者と彼女の仕立て屋を訪れる約束を書き留めた二つの機会に関して、それだけは覚えがあった。彼女は彼女の予約に、姿を現さなかった。もしそれが存在したとしても。彼女は気晴らしを避けた。それからパーキスさんのその薄いウェイヴァリ筆跡で、安い便箋に藤色のインクで書かれた大まかな文書の頁を捲りながら、僕は大胆で均整の取れたサラー自身の筆跡を見た。僕がおよそ二年後にそれを認めるなど、僕は考えもしなかった。

 それは報告書の裏にピンで留められた単なる紙屑だった。それには赤い鉛筆で大文字のAと記されていた。そのAの下に、パーキスさんは書いた、「可能な進捗のために重要なその全ての証拠書類は、書類整理のために返却されるべきです。その断片は神屑籠から持ち出され、それが恋人の手によってであったかのように、注意深く撫で付けてあった。そして確かに、それは恋人に向けて話されたに違いなかった。

75

2022年3月1日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 Ⅱ

「親愛なるサー。」手紙は言った。「私と私の若い者が、17番で女中と親密に連絡を取らせて頂いて報告できるようになり、嬉しく思います。今回は、私は素晴らしい速さで調査を進行することが出来

ました。と申しますのも、私は時々、当事者の予定簿を横目で見ることが可能です。それにこのように動向を手に入れ、同様に、日毎当事者の紙‐屑籠の中身を点検しています。そこから、私は興味深い証拠物件を同封して置きます。どうかそれをご意見と共に返却して下さい。渦中の当事者も又、日記をつけていて、何年もの間、ずっと一冊を保持していますが、今後、私は私の友人として、より大きなな安心のために言及する女中が、今までそれに手を伸ばせなかったのです。その当事者は、同じ物を錠と鍵の下に置いておくという具合のようであること、それがよいのか、或いは、疑惑を起こさせる情況なのかも知れません。ここに添付した重要な証拠物件から離れ、当事者は、盲目に見做されるしかない彼女の予定簿に従って取り決められた会う約束を守ることもなく、時間の大半を費やしているように見えます。しかし個人的には、この依頼の調査に当たって、卑しい見方をしても、或いは偏見の眼差しを向けても、いい気はしません。真実そのものが、あらゆる当事者のために望まれます。

 僕たちは悲劇によってのみ、傷付くのではなく、怪奇も又、武器を運ぶ、品位を落としめる、とんでもない武器を。

74


一週間で4千人くらいの訪問者になりました。

フランスが2千人近くでトップです。

改竄されてしまう可能性がありますから、読んで置いて下さい。

2022年2月28日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

その瞬間だけが、重要だった。永遠は、時の延長であってはならない、と言われているが、時に僕には、彼女の自暴自棄は、あの不思議な数学的無限の点、広がりを伴わない、空間を占有していない一点に触れるように思われた。時には何が重要だったか―彼女が一時(いっとき)から一時迄(そこには再びその言葉が登場する)その過去全て、その違った男達全てを知ってしまっても構わない、或いは彼女が真実の同じ意識で同じ陳述をしようとするかも知れない未来全て?そのように、僕も又、彼女を愛していると答えた時、彼女ではなく、僕が嘘吐きになった。僕は時間の自覚を失くしたことは一度もなかったから。僕には現在はここにはない。それは、何時も去年か、来週かである。

 「他には誰もいない。何れ又。」と彼女が言った時。彼女は嘘を吐こうともしなかった。そこに数学的点は存在しない、それが全てだが、という時間における矛盾がある。彼女には、僕が持つ以上の溢れる程の愛の能力があった。僕は時間の周りのそのカートゥンを下げることが出来ず、僕は忘れられず、僕は恐れることが出来なかった。愛のその瞬時にあってさえ、僕は罪の証拠を集めようとする警官に似ていた。やがて七年以上後に、僕はパーキスの手紙を開けた時、その証拠が僕の辛辣に添えるために、僕の記憶の中のそこに全てあった。

73

2022年2月27日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 僕には、自分がどういうつもりなのか正直なところ分からなかった。―僕はヘンリの様子は、自責の念を目覚めさせるのに好都合だったが、彼女は自責の念の抹消の格好の方法を持っていた。僕たちの休息と違って、彼女は自責の念に付き纏われていなかった。彼女の見解で事が為された時、それは遂行され、自責の念は、その行為と共に消えた。もし彼がちょっとどころでなく業を煮やして、

僕たちを捕えたとしても、彼女はそれをヘンリの不当と思おうとした。カサリック教徒は、過去の死手から、懺悔で解放されるとずっと言われている―確かに 尊重して、お前は彼女を生来のカサリック教徒と呼んだ。しかしながら、彼女は僕がそうする程度に、殆ど神を信じなかった。或いはそう僕がその時思い込みはしたが、今は不可解だ。

 この僕の本が、きちんとした経過を辿ることに失敗しても、それは僕が未知の領域に迷い込んだからだ。僕は地図を持たない。僕は時に、僕がここで何か降ろそうとしているものが本物かどうか、疑わしい。僕はあの午後、彼女が問い質(ただ)されることもなく、僕に突然、「私は、私が貴方をそうする程、誰も何ものも嘗て愛したことはなかった。」と言った時、これ程までの完璧な信頼の感触を得た。半ば食べかけのサンドゥウイチを彼女の手に持って、そこで椅子に座りながら、彼女は自分自身を彼女が硬木の床の上で五分遡(さかのぼ)ってしてしまったのと同じくらい、完全に捨てていた。僕たちは、僕たちの大半は、そんなに完全に陳述するのを躊躇った―僕たちは思い出す、そして僕たちは予知し、やがて僕たちは疑う。彼女は、全く疑いを持たなかった。

72

2022年2月26日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「彼が聞いていたら。」僕は言った。「彼が通りがかった時。」

 「彼は、それが何だか知ろうともしなかった。」

 僕にはどう見ても疑い深いように見えた。彼女は退屈な優しさを以って、「可哀そうなヘンリ」を説明したから。それはたまたま起こったことではなかったー丸十年の内にではなく、しかし全く同様に、僕たちは僕たちの安泰をそれ程確信してはいなかった。僕たちは耳を傾けながら、その段が再び軋むまで,静かにそこに座っていた。僕がかなり不必要に声高に言った時、僕の声は自分自身に、掠(かす)れて不誠実に聞こえた。「あの玉葱のあるシーンを、貴女が好きでよかった。」そこでヘンリがドアを押して開け、中を見た。彼は、グレイのフランネルカヴァを載せたホットゥ‐ウォ-タ‐ボトゥルを運ぼうとしていた。「ヘロウ、ベンドゥリクス。」彼は囁いた。

 「貴方は自分でそれを取って来ちゃいけないわ。」彼女は言った。

 「君たちの邪魔をしたくなくて。」

 「昨夜のフィルムについて話していたの。」

 「貴方が欲しいものなら何でも手に入れるといい。」彼は僕に囁いた。彼はサラーが僕のために出したクラレットゥをちらっと見て、「彼に『29』をあげたら。」、とそのフランネルカヴァの中のホットゥ‐ウォ-タ‐ボトゥルを握りしめながら、彼は彼の特徴のない声で囁き、又ぶらっと出て行って、そして又、僕たちだけになった。

 「気になる?」僕は彼女に尋ねたが、彼女は彼女の頭を振った。

71

2022年2月25日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

  誰かが誰かを求めたあの日々、そこにはどんな疑問もなかった―僕たちは欲望の只中に共にいた。ヘンリは彼の緑のウールのガウンを着て、二つの枕に寄りかかってきちんと座り、彼のトゥレイを抱えていた。そして部屋で下に、支えのためのシングル・クションを置いた硬材の床の上、それにドアは半開き、僕たちは愛を育んだ。その瞬間が来た時、ヘンリが頭上でそれを聞くのを懸念して、その未知の哀れで怒ったような自暴自棄の叫び声を削ぐために、彼女の口の上に、そっと僕の手を置かなければならなかった。

 思い巡らすと、僕はまさに彼女の頭脳を啄(ついば)むつもりだった。僕は彼女の側で床の上に蹲り、僕がこれを二度と見てはいけないかのように見守り、そうして見守った―一貯まりの酒に似た茶色い曖昧な色をした髪、彼女の額の汗、激しい呼吸、彼女はレイスを走って来たかのようで、今、若い陸上競技選手のように、勝利の過度の疲労で横になっていた。

 するとその時、階段が軋んだ。瞬間、僕たちは僕たちのどちらも動かなかった。サンドゥウイチはテイブルの上に食べずに積み重ねられ、グラスは満たされていなかった。彼女は小声で言った。「彼は階下に行ったわ。」彼女は椅子に座り、彼女の膝に皿を、彼女の側にグラスを置いた。

70

2022年2月24日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「ヘンリが風邪を移されたの。彼は家にいるわ。」

 「もし貴女さえここに来れるなら・・・」

 「私は電話に出るために、家に居なきゃいけない。」

 「彼が風邪を移されたからってだけで?」

 昨夜、僕はヘンリに親しみと同情を感じた。それにもかかわらず、もう彼は敵になって、馬鹿にされ、憤慨され、密かに動きを止められた。

 「彼は完全に彼の声を失くしたの。」

 僕は彼の病気の不条理に、意地の悪い喜びを感じた。 

寡婦年金についてしわがれた声で無駄に囁く、声の出ない文官。僕は言った。「貴女に会うには何か方法はない?」

 「でも、勿論。」

 「通話中一瞬の沈黙があり、僕たちは切られたんだと僕は思った。僕は言った。「ヘロウ。ヘロウ。」しかし彼女はそれが全てだと思って、注意深く、落ち着いて、素早く、適当な答えを直ぐ僕に伝えられたら、と考えていた。「私は一時にヘンリにベッドゥでトゥレイを与えるつもりよ。私たちは私たちで、居間でサンドゥウィッチを食べたらいいわ。私は貴方がフィルムについて話したいようだと彼に伝えるわ―それとも貴方のあの小説を。」彼女は直ぐ電話を切り、信頼の感覚が断たれて僕は思い付いた、何回前から、丁度こんな風に、彼女は計画するようになったのか?彼女の家に行き、呼び鈴を鳴らした時、僕は、敵兵―或いはパーキスや彼の若い者が、数年後、彼女の行動を見張ろうとしているように、彼女の言葉を待ち構えている探偵のように、思えた。その時ドアが開き信頼は回復した。

69

2022年2月23日水曜日

The End of the Affair/ Graham Greene 成田悦子訳

 そこには何時も僕たちが会えない理由があった―歯医者又は理容師との約束、ヘンリがもてなした時、彼らが単独で一緒だった時。彼女自身の家の中で、僕を裏切るような機会(恋人の自己本位で、非実在の義務というその暗示を伴ったその言葉を、僕は既に使っていた。)を彼女は持とうとしないということを、自分自身に上手く説明していなかった。ヘンリが寡婦年金に取り組んでいた間か、或いは―彼は間もなくその業務から配置転換されたからか―ガスマスクの配布や公認の段ボール箱のデザインのその業務へ。僕は、最も危険な境遇にあって、喩えそこに欲望があったにしても、愛を育むことが可能かどうか分からなかったから?不信は恋人の立身出世に連れ増大する。何故か、僕たちが互いを見たまさに次の時、僕は不可能に電話をしてしまった、まさにそんな具合に。それは身に降りかかった。

 僕はの僕の心にじっと留まっている、彼女の最後の用心をの助言の悲しさと共に目覚め、起床の三分以内の電話の彼女の声が、それを一掃した。前にも後にも、電話で只話すだけで、まるで気分をそんなに変えられる女を、僕は知らなかった。又、彼女が部屋に入って来るか、僕の傍らに彼女の手を置く時、彼女は忽(たちま)ち僕が別れの度に見失う絶対の信頼を築いた。

 「ヘロウ。」彼女は言った。「貴方は寝てるの?」

 「いや。僕は何時貴女に会える?今日の朝?」

68

2022年2月22日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 事実上僕が遠ざけるものを、まるで愛したかのようなこうした表現を綴ろうとする己を発見するのは妙だ。時に僕は、僕そのものの思いを認めない。「暗闇」のような表現について、或いは、祈る者について、僕が何を知ろう?只一人の祈り手でさえ誰が持とう?それが全てであり、死によって、夫人の衣服、匂い、クリームのポトゥ(壺)といった使う者がいなくなった所有の中に、取り残される夫のように、僕はそういうものを受け継いでいた・・・

それでも未だに、そこにはこの平和があった・・・

 それは僕がそうした戦争の最初の数か月をどう思うかである―それは、いんちきな戦争と同じく、いんちきな平和だったのか?それは、疑念と期待のあの数ヶ月、一貫して安楽や安心の腕を伸ばしていたように今は思える。しかしその平和は、僕は想像する、当時でさえ意見の相違と疑いによって、何度も中断されたに違いないと。只悲しさや諦めといった心持ちの他に、全くうきうきした気分もなく、あの初めの夕べ、家に帰り着いた、丁度そのように、そうして繰り返し繰り返し、僕は、数多くの男達の中の唯一の者―差し当たりお気に入りの恋人だという確信と共に、以前は家に戻って来た。僕があれほどまでに憑りつかれたように愛したこの女だから、夜、僕が目覚めたら、直ぐに僕の頭の中に彼女への思いを探し、眠りを投げ打ち、僕のために彼女の時間の全てを放棄するように思われた。それでも尚、全く確信の感触を得られなかった。愛の行為で、僕は尊大であっても許された。しかし一人僕はひたすら不信を、しかめっ面や不自由な足に求めずにはいられなかった―何故僕を?

67

2022年2月21日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 BOOK TWO

1

不幸の感覚は幸福のそれより頗(すこぶ)る伝え易い。窮乏にあると、僕たちは僕たち自身の実在に気付くようだ。喩え不条理な自己中心癖の形態を成していようとも、この僕の痛みは、個別的である。一瞬怯(ひる)むこの神経は、他にではなく僕に属す。しかし幸福は、僕たちを壊滅させる。僕たちは自らの主体性を失う。人間愛という言葉は、神という彼らの目を説明するために、聖者らによって使われて来た。そしてそこで、僕は想像する、僕たちが女に対して感じる愛の激しさを説明するために、僕たちは祈る者、黙祷、瞑想の言葉遣いを駆使するとよかった。僕たちは、記憶、知識、聡明さを捨てもし、そして僕たちは、剥奪、ノチェ・オスクラ、そして時に報酬として、短い平和のようなものを経験する。愛の行為それ自体は、一瞬の死と描写されて来た。そこで恋人たちは、時に短い平和も経験する。

66

2022年2月20日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

  僕は共有地の彼女の脇に、彼女の家を見た。ヘンリの明かりは、彼の書斎のドアの下を照らし、僕たちは二階へ向かった。居間で僕たちは、身動きできないように、互いの体に寄りかかり、僕たちの手を取り合った。「彼が上がって来そうだ。」僕は言った。「今にも。」

 「私たちは彼の気配を耳で聞けるのよ。」彼女は言い、彼女はぞっとするような明晰さで、付け加えた。「あそこには何時も軋む一段があるの。」

 僕は僕のコウトゥを脱ぐ暇もなかった。僕たちはキスをして、階段の軋みに耳を傾け、ヘンリが入って来た時、彼女の顔の冷静さを悲しく見守った。彼女は言った。「私たちは、きっと貴方が上がって来て、私たちに飲み物を下さるわ、と期待していたところなの。」

 ヘンリは言った。「勿論。貴方は何を飲む、ベンドゥリクス?」僕は飲み物は欲しくないと僕は言った。僕にはしなければならない仕事があって。

 「貴方は夜には仕事をしない、と言ってたと僕は思うのだが。」

 「オウ、こういうのは数に入れていない。批評。」

 「面白い本?」

 「ではない、かなり。」

 「僕に貴方の能力があったらなあ―出来事を書き留めるだけの。」

 サラーはドアに向かう僕に目を遣り、僕たちは又キスをした。その瞬間に、僕が好ましく思ったのは、サラーではなくヘンリだった。それはまるで、過去の男全員、未来の男全員が、現在を覆う彼らの影を投げかけたかのようだった。彼女は僕に聞いた。彼女は何時も、キスや頭の中の囁きの背後の意味を、読み取るのが速かった。

 「何でもない。」僕は言った。「僕は朝、貴女に電話するよ。」

 「私が貴方に電話するわ、その方がいいでしょ。」彼女は僕に伝え、それに用心をと、僕は思った、用心かと、彼女が、このようなことの指揮の取り方を如何によくよく心得ているかを。そこで又僕は、何時も―「何時も」は彼女が使って来た表現だった―軋んだというその段を、又思い出した。

65

2022年2月19日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

その半分は消えた―変わらず利用されるホテルは、粉々に爆破され、その夜、僕たちが愛情を育んだ所は、継ぎ接ぎだらけだった。それがブリストルだった。そこにはホールに鉢植えのシダがあり、僕たちは青い髪の女支配人によって最高の部屋を見せられた。本物の大きな金箔を貼ったダブルベッドゥや赤いヴェルヴェットゥのカートゥンや等身大の鏡のあるエドゥウオードゥ七世時代の部屋を。(アーバックル・アヴェニューに来た人々は、トゥイン・ベッドゥを要求しなかった。)つまらない詳細は、とてもよく覚えている。支配人は僕たちが夜泊まりたいかどうか、どうなさいますかと僕に尋ねた。部屋代はショートゥ・ステイで15シリングかかり、電気ミーターは数シリングかかるだけで、僕たちは、二人の間で、一枚も持ち合わせていなかった。しかし僕は他に何一つ覚えていない―サラーは初めどんな様子だったか、或いは僕たちがどんなことをしたか、それを除けば、僕たちは揃って神経質で、愛を育むには最悪だった。それは重要ではなかった。僕たちは始めてしまった。―それが核心だった。そこには、その時に賭けた全人生があった。オウ、それにそこには、僕が何時も覚えているもう一つのことがある。僕たちの部屋(30分後「僕たちの部屋」)のドアに凭れ、僕がもう一度キスをして、彼女のヘンリへの帰宅を思うとどれだけ厭になるか言った。彼女は言った。「心配しないで。彼は未亡人の件で忙しいの。」

 「彼の貴女へのキスを考えただけで厭だ。」と僕は言った。

 「彼はしないのよ。玉葱以上に彼が嫌うものなんか全くないんだもの。」

64

2022年2月18日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 それはありそうもないが、恋に落ちるのはまさにその時だ、と僕は断言できるような気がする。それは、勿論、単に玉葱では済まなかった―それは後であんなにもしばしば僕を幸せにしたり惨めにもした率直という一人前の女のその思いがけない感覚だった。僕はクロスの下に僕の手を置き、彼女の膝の上にそれを広げた。すると彼女の手が下りて来て、適格に僕のを捕えた。僕は言った。「それは美味しいステイクだ。」そして彼女の答えを詩のように聞いた。「私が今まで食べた中で、それが最高だわ。」

 そこには追跡も誘惑も全くなかった。僕たちは僕たちのお皿にステイクを半分、クラレットゥ三分の一を残して、僕たち二人、同じ心の同じ意志で、メイドゥン・レインの中に出て来た。ぴったり前と同じ場所で、出入り口と鉄格子(排水口)の側で、僕たちはキスをした。僕は言った。「僕は恋をした。」

 「私も。」

 「僕たちは家に帰れない。」

 「いいわ。」

 僕たちはチャーリング・クロス駅経由のタクシを拾い、僕はアーバックル・アヴエニューへ、僕たちを乗せていくよう運転手に話した―それは、彼らがイーストゥボーン・テラス、贅沢な名前、リッツ、カールトンやその類を持つパディントン・ステイションの側に沿って古くから立つホテルの列、に彼ら自身の間で与えた名前だった。こうしたホテルのドアは、何時も開いていて、貴方は日中一、二時間、何時でも部屋を取れる。一週間前、僕はテラスを再訪した。

63

2022年2月17日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 そのシーンは成功だった。言葉或いは筋に僅かな誇張もなく、何は取り敢えず、普通の単純な挿話を通して、激情の意味するところを、伝えることを望んで来たし、それは機能していた。ちょっとの間、僕は幸せだった―これが書くことだった。何か他に惹かれることは、世界になかった。僕は家に帰って、そのシーンを繰り返し読みたくなった。僕は何か新たなもので勝負したかった。僕は願った、どれだけ願ったか、そのことを、夕食にサラー・マイルズを招待していなかったら。

 後で―僕たちがルールズに戻ると、彼らは僕たちのステイクを今しがた取って来てくれたところだった―彼女は言った。「貴方が書いたのよ、あのシーン、そこにあるわ」

 「玉葱について?」

 「そうよ。」そして丁度その瞬間、玉葱の一皿がテイブルに置かれた。僕は彼女に言った―その夕暮れ、彼女を強く求めることなど、僕の心を過(よぎ)りもしなかった―「それでヘンリは玉葱を気にする?」

 「そう。彼はそんなものには耐えられないわ。貴方はそんなものが好き?」

 「うん。」彼女は僕にそんなものを取ってくれた。それから彼女自身も取った。

 玉葱の一皿を越えて、恋に落ちることは可能か?

62

2022年2月16日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 彼らはウオーナーズやその他で僕の本の一つのフィルムを見ていた。一部「誇示する」ために、一部、キスは儀礼的であるため、何故か従わされなければならないと僕は思ったから、一部又、僕は未だに文官の結婚生活に興味があったから。僕はサラーに僕と一緒に来るよう頼んだ。「僕は、そりゃあヘンリに愉快じゃない依頼だと思う?」

 「どうってことないわ。」彼女は言った。

 「彼はこの後、夕食で私たちと一緒になる筈だった?」

 「彼はたくさんの仕事を自分で持ち帰っているの?或るお粗末な自由主義者が、議会で来週、未亡人について質疑を問い質そうとしている。」自由主義者は―確か彼はルイスと呼ばれたウェールズ人だったと思う―私たちのベッドゥは、あの夜、私たちのために作ったと、貴女は言っても構わなかった。」

 そのフィルムはいいフィルムではなかった。そして、時々それは、状態を見るには酷く痛み、それは、僕には随分現実的で、映像のありきたりの在庫の中に巻いてあった。僕はサラーと一緒に何か他のものに行きたかった。先ず僕は彼女に言って置いた。「あれは僕が書いたものじゃない、貴女も知っているでしょ。」しかし僕はそう言い張ることができなかった。彼女は同情して、彼女の手で僕に触れた。僕たちは、子供や恋人たちが用いる天真爛漫な抱擁に、僕たちの手を取り合ってそこに座った。突然しかも予期せぬことに、たった数分の間、そのフィルムは生き返った。これは僕の小説だということも、これは僕の台詞回しだったことも僕は忘れ、安レスタラントゥでの慎ましいシーンに、純粋に心動かされた。恋人同士が玉葱付きステイクを注文して、彼女の夫はその匂いを好まなかったから、娘はちょっと玉葱を食べるのを躊躇った。恋人が傷付き、腹を立てたのは、彼女の躊躇いの背後に何があるか、彼には分からなかったから。それは彼女の帰宅時、避けられない抱擁を、彼の心に齎した。

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2022年2月15日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 Ⅶ

嫉妬は、又そう僕は常々信じていたのだが、欲望と共にのみ在る。旧約聖書の作家らは、その言葉「嫉妬する神」を使うことを好み、おそらくそれは、神の愛の信仰を表そうとする彼らのおおざっぱで遠回しな方法である。がそこには様々な欲望の種類があると僕は想像する。僕の欲望は、今、愛より憎しみに近く、ヘンリを僕が信頼するには訳があり、サラーが一度僕に話したことからすると、彼女に対しては、僅かな欲望でも感じることを長く止めて来た。そして未だに、僕は思う、そうした日々、僕と同じくらい彼は嫉妬した。彼の欲望は単に仲間付き合いのためにあった。彼は初めてサラーの信頼から締め出されたと思った。彼は悩み、落胆していた―彼は、何が行われていたか、何が身に降りかかろうとしていたか、知らなかった。彼はひどく無防備の中を生き続けていた。限界に向かって、彼の窮地は、私のものより酷かった。僕は何一つ所有していないという安心感を持っていた。僕は僕が失った以上持つことは出来なかったが、彼は尚も、食卓での彼女の存在、階段での彼女の足音、ドアの開け閉め、頬へのキスを所有していた―僕は今、もし他にもたくさんあるとすると、疑わしく思う。しかし一人の飢えている男には、どんなに多くとも、そのくらいがずっと相応しい。

そしておそらく何がそれを悪化させたにせよ、彼は一度は僕が持ったことのないような安心感を満喫したことがあった。。何故か、パーキスさんが共有地を横切って引き返したその瞬間には、彼はサラーと僕が嘗て恋人だったと知りもしなかった。そして僕がその言葉を書く時、僕の頭は、僕の意志に逆らって、苦悩が始まったその地点に、否応なしに連れ戻す。

 僕がサラーに電話する前、メイドゥン・レインでの不器用なキスの後、丸一週間が過ぎ去った。彼女はヘンリは映画を好まず、だから彼女は滅多に行かないと夕食で触れていた。

60

2022年2月14日月曜日

The End of the Affair/GrahamGreene 成田悦子訳

  「僕はそれを楽しんだ、パーキスさん。」僕は皮肉抜きで言った。「心配しないよう心掛けなさい。貴方の若い者は、貴方を手本にするしかない。」

 「彼は彼の母親の頭を持っています、サー、」と彼は悲しそうに言った。「私は急がなければ。そりゃあ外は寒いというのに、私は離れる前に、いい避難場所を彼に見つけてやりました。それにしても彼は非常にすばしっこいものですから、濡れないでいるとは思えない。経費に署名して頂けますか、サー、もしそれを承認して下さるなら?」

 僕は僕の窓越しに、彼を見守った、彼の薄いレインコウトゥと共に姿を現し、彼の古い帽子が消えて行くのを。雪は勢いを増し、既に三つ目のラムプの下、彼は泥が透けて見える小さな雪だるまに似ていた。僕が十分の間、サラーのことも、僕の嫉妬のことも考えなかったということは、驚きを伴って僕の身に降りかかった。僕は他人の悩み事について考えられるほど,人間味を増していた。

59

2022年2月13日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「貴方は彼に、僕がその男を確認できると話せなかったの―まさにそのことを、それとも僕に関心がなかった?」  

 「貴方は親切にそのことを示唆して下さる、サー、しかし貴方はこれをあらゆる角度から見なければならない。私は私の若い者にも、そうしないとは言いません。しかし彼はどんなことを考えようとするでしょう、もし彼が貴方と交わって近付けば―調査の成り行きで?」

 「それは必要ない。」

 「それでもそういうことは十分に起こり得ます、サー。」

 「どう、今回は彼を家に残して置きませんか?」

 「それではことを悪化させます、サー。彼には母親がいず、それは彼の学校の休日のことで―サヴィッジ氏の十分な承認を得て。いえ、あの時私自身馬鹿なことを致しました。それで私はそのことを正視しなければなりません。只彼が本当にさほど気真面目でなかったら、サー、が彼は私が浮浪者を作る時、それを心に仕舞い込みます。或る日プレンティス氏―それはサヴィッジ氏の助手で、かなり厳しい方です、サー、―は言いました。『貴方の他の浮浪者たちは、パーキス、』その若い者達の聴取の中で。それは初めて彼の目を開けたことです。」彼は法外な決意の様子と共に立ち上がった。(他の男の勇気を誰が測っていいものか?)そして言った。「私は私の問題について話しながら、貴方を守っていました。」

58

2022年2月12日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 突然傷を負い、今や次の企てを立ちすくんで待っているかのように、彼は彼の口を少し開けて僕をじっと見た。僕は言った。「僕は過ちというものは、度々起こると思います、パーキスさん。サヴィッジ氏は僕に伝えて置くべきだった。」

 「オウいえ、サー。」彼は居心地悪そうに言った。それから、彼は彼の頭を垂れて、彼の膝の上に置いた彼の帽子の中を見ながら、そこに座っていた。僕は彼を元気づけようとした。「そんなのは本気じゃあない。」僕は言った。「もし貴方が外側からそれを見ていれば、、それは実に全くおかしい。」

 「しかし私は内側にいます、サー。」彼は言った。彼は彼の帽子を回し、外の公有地と同じくらい湿り気のある侘びしい声で続け、「それはサヴィッジ氏ではなく、私が気を付けます、サー。貴方が専門的職業の中で会うのと同じくらい部下を理解しています―それは僕の若い者です。彼は私について大いなる認識を持って始めました。」彼は彼の窮乏の深みから、非難しながら脅えた笑顔を取り出した。「彼らがする読書の種類を貴方は知ってらっしゃる、サー、ニック・カーターズやそのようなものを。」

 「何故そもそも彼がこのことについて知って置くべきだったか?」

 「貴方は子供を連れて真面目に振舞った、サー、すると彼はきっと疑問点を尋ねます。どのように僕が究明するのかを、彼は知りたがるでしょう―それが彼が学んでいることです、徹底的に究明するために。」

57

2022年2月11日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「教会?」

 「ロウマン教会、サー、メイドゥン・レインの。貴方はそこら一帯にそれを見つけるでしょう。しかし祈るためではなく、サー、座るために。」

 「貴方はそれさえすっかり知っているんでしょ?」

 「当然、私は当事者について中へ入りました。誠意を持っているように見せようとして、私は二、三席後ろで膝まづきました。私は貴方に保証できます、サー、彼女は祈らなかった。彼女はロウム信者ではないでしょ、サー?」

 「いや。」

 「それは暗いところで座るためでした、サー、彼女が落ち着くまで。」

 「もしかして、彼女は誰かに会おうとしていた?」

 「いいえ、サー、彼女はそこにたった三分いただけで、誰にも話しかけていません、喩え貴方が私に聞いても、彼女は心ゆくまで泣きたかったのです。」

 「ことによると。しかし貴方は手口が間違っています、パーキスさん。」

 「手口、サー?」

 僕は明かりが僕の顔をもっと十分捕えるように、移動した。

 「私たちはそこまで手口に触れたことがありません。」 

 今や僕が僕の物笑いの種を引き受けてしまったものだから、彼には気の毒だと思った―元来非常に憶病な誰かを、尚、更に脅えさせたとしたら気の毒に思った。

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2022年2月10日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「僕はその場所を知っている。」

 「私は私の報告書を要約しようとしてしまいました、サー、絶対必要なものへ。」

 「全くその通り。」

 その報告書は続いた。「昼食後当事者たちは一緒にメイドゥン・レインを上手へ向かい、普通の食料雑貨店の外で分かれました。私は彼等は素晴らしい感動の下で苦しんでいるという印象を持ち、もしこの調査にそう言っても構わないのなら、彼らは望ましい幸せな結末のために分かれるのかも知れないということが私には思われました。

 又彼は心配して僕を遮り「貴方は私的接触を許そうとしますか?」

 「勿論。」

 「私の職業でさえ、サー、私たちは時々感動した私たちの感情に気付きます。それに私はその女性が好きです―問題の当事者、その人が、です。」

 「私は紳士か問題の当事者に随行すべきかどうか躊躇いましたが、私は私の指示は前者を許さないだろうと決めました。故に私は後者に従いました。彼女は非常に興奮した様子で、チャーリング・クロス・ロウドゥへ向かって少し歩きました。それから彼女はナショナル・ポートゥレイトゥ・ギャラリに入りましたが、二、三分いただけです・・・」

 「何かもっと重要なことがありますか?」

 「いいえ、サー。彼女は腰を下ろす場所を探していただけだと思います。次に教会に入りましたから。」

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2022年2月9日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

  「私と私の若い者は、最も近い長椅子に腰掛けました。」僕は読んだ。「当事者とその紳士は、明らかに非常に親密で、堅苦しさはなく、愛情を籠めて互いを遇し、或る時には、テイブルの下で手を握っていたと私は思います。当事者の左手、その種のぎゅっと握ることを大抵それとなく示す紳士の右手も又、視野の外にありました。私ははこのことを確心出来ませんでした。短くて親密な会話の後、彼らはルールズ同様その客に知られた閑静で人目につかないレスタラントゥへ、徒歩で向かいました。テイブルより寧ろ長椅子を選んで、彼らはポーク・チョップを注文しました。」

 「ポーク・チョップは重要ですか?」

 「それは身元確認の目印になるかも知れません、サー、もし頻繁に耽溺するとしたら。」

 「貴方はその時男の身元確認をしなかったの?」

 「貴方は気付くでしょう、サー、読み進めれば。」

 「私がこのポーク・チョップの注文を観察した時、私はバーでカクテイルを飲みましたが、どのウエイタからもバーの向こう側の女性からも、その紳士の身元確認を引き出せなかった。」にもかかわらず、私は私の質問を、曖昧で無頓着な態度で表現しました。それは明らかに好奇心を刺激し、そこで私は出た方がいいと考えました。しかしヴォードゥヴィル劇場の舞台門衛と馴染みになることによって、僕はそのレスタラントゥを観察下にして置ける。」

 「どのように?]僕は尋ねた。「貴方は馴染みになりましたか?」

 「『ベドゥフォードゥ・ヘッドゥ』というバーで、サー、当事者たちが間違いなくチョップの注文に専念しているのを見ながら、その後。劇場へ彼を同伴して戻りました。そこにはステイジ・ドアが・・・」

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2022年2月8日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

    1月19 地下鉄      2シリング4ペンス

      瓶入りビア    3シリング

      カクテイル    2シリング6ペンス      

                 苦みのパイントゥ 1シリング6ペンス

 彼は又僕が読むのを妨げた。「そのビアは私の良心にかけてほんの少量です、サー、私が不注意のためにグラスを駄目にしたからです。しかし、何か報告すべきことがあるとすれば、私は縁を少しだけでした。貴方もご存知のように、サー、期待外れの週が時にはありますが、それにしても今回は二日目に・・・」

 勿論僕は彼だと思い当たった、彼のまごつかされた若い者を。僕は一月19の下を読んだ(僕は一月18に下らない動向の記録が一つだけあるのを、一目で勘付いてしまった。)「問題の当事者は、ピカディリ・サーカス行きバスで行きました。彼女は動揺しているようでした。彼女はカフェ・ロイアルへエア・ストゥリートゥを上へと進みました。するとそこに、紳士が彼女を待っていました。私と私の若い者は・・・」

 彼は僕を一人にして置こうとしない。「貴方は気付かれるでしょう、サー、それは違う筆跡です。私は僕の若い者に、何とはなしに人目を憚(はばか)る性質の場合、決して報告書を書かせません。」

 「貴方は彼に十分な注意を払っていますね。」と僕は言った。

53

2022年2月7日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「彼は料金に入っているのですか?」

 「私が私の報告書を作る間だけです、サー。」

 「彼は何歳ですか?」

 「12過ぎ。」まるで彼の若い者が時計であるかのように、彼は言った。「若者は有用な上に、コミック以外何一つ要らない。おまけに誰も彼に気付きません。少年たちは生まれながらの浮浪者です。 

 「それじゃあ若い人にとって半端な仕事のように思う。」

 「そうですね、サー、彼は、現実の重要性を分かっていません。もしそれがベッドゥルームの中で急に起こることになれば、僕は彼を後に残して去ります。」

 僕は読んだ。

   1月18 二夕刊       2ペンス

      地下鉄帰り     1シリング8ペンス

      カフィ.ガンターズ   2シリング

僕が読んでいる時、彼は綿密に僕を監視していた。「カフィの場所は、僕が望んだ以上に高くつきました。」彼は言った、「しかしそれは注目されずに、僕が飲めた最少額でした。」

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2022年2月6日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳 

 「オウはい。座って下さい。煙草を嗜みますか?」

 「オウいいえ、サー。」彼は言った。「職務中は厳禁―勿論、潜伏目的を除いて。」

 「しかし今は職務中じゃないでしょう?」

 「一応マナーで、サー、はい。私の報告書を作る30分間、私は丁度交代させられたところです。サヴィッジ氏は貴方がどれだけそれを好もうと週決めで―経費を含むと言いました。

 「何か報告することがありますか?」僕が感じたのは落胆だったか、或いは興奮だったかどうか、僕には定かではなかった。

 「それはまるっきり白紙の紙ではありません、サー。」彼は悦に入って言い、桁外れの数の書類と封筒を、手頃なものを探して彼のポキットゥから取り出した。

 「どうか座って下さい。貴方は僕を不安にする。」

 「尤もです、サー。」座りながら、彼は僕を更に近くでちらりと見た。「私は以前貴方に何処かで会いましたか、サー?」

 僕は封筒から最初の一枚を取り出した。それは男子生徒のものであるかのような非常にきちんとした筆跡で書かれた経費請求書だった。僕は言った。貴方はとても奇麗に書きますね。」

 「それは僕の若い者です。僕は彼を実地で訓練しているところです。」彼は慌てて付け加え、「僕は彼のために一切要求しません、サー、今のように、私が彼を料金に委ねなければ。」

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2022年2月5日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 ルールズでのサラーとの昼食後一週間、僕はどんな仕事も全く手につかなかった。そこでそれは再び動く―僕は、僕は、僕は、まるでこれが僕の物語であるかのように、サラーや、ヘンリ、そして勿論、僕が未だ彼を知ることも、ましてや彼を信じることさえなく遠ざけている、第三者ではなく。

 僕は朝の内に仕事をしょうとして、しくじって来た。僕は、昼食と一緒に酒を飲み過ぎて、午後は無為にした。暗くなってから、僕は明りを消して窓辺に立ち、完全に暗い共有地の向こうに、明りの点いた北側の窓が見えた。それはそれは寒くて、もし僕が近くで体を丸めて、その時それが焦げようと、僕のガスの炎だけは僕を暖めた。僅かな雪の薄片が、南側のラムプの向こうで舞い、厚く湿った指で窓ガラスに触れた。僕はベルが鳴っているのに聞こえなかった。僕の女主人は、ドアをノックして言った。「貴方に会うためにパーキスさんて方が、」

文法に適った冠詞によって、このように僕の訪問者の社会的地位を仄めかしながら。僕はその名前を聞いたことがなかったが、彼を中に案内するよう彼女に話した。

 僕はその穏やかで申し訳なさそうな目、その天候次第で湿気る長い時代遅れの口髭を前に何処かで見たことがあった。 

僕の読書のラムプを僕が点けただけで、近‐視のように目を凝らしながら、彼はその方へ近寄った。

彼は言った。「ペンドゥリクスさん、サー?」

 「はい。」

 彼は言った。「名前は、パーキスです。」それが僕に何か意味でもあるかのように。彼は付け足した。「サヴィッジ氏の部下です、サー。」

50

2022年2月4日金曜日

The End of the Affair/Graham Grrene 成田悦子訳

 僕たちの恋は、小さい生き物が罠にかかり、死に向かって血を流しているようで、僕は目を閉じ、その首を力を籠めて捩じらなければならなかった。

 その内僕は何時も働けなくなった。小説家の書くことの大半は、僕が言って来たように、無意識に席を選ぶ。それらの最初の言葉が紙の上に現れる前、それらの深さで最後の言葉が書かれる。僕たちは僕たちの物語の詳細を覚えていて、僕たちはそれらをでっち上げはしない。戦争はそうした深い海の‐洞窟を悩ませなかったが、今は戦争より、僕の小説―恋の終わりより、遥かに大きく何か重要なことがあった。それは、物語のように、今徹底的に働かされることだった。彼女を嘆かせる的を射た言葉、彼女の唇にどこまでも自発的に生じたかのように見える、が、その水底の大洞窟で研ぎ澄まされていた。僕の小説はのろのろ歩き、しかし僕の恋は、霊感のように終わりに向かって急いだ。

 彼女が僕の最後の本は好きじゃなかったと言っても、僕は驚かない。それは何時も意に反して、救いもなく、人は生きて行くしかないということ以外に、どんな理由もなく書かれた。批評家らは、それは技術者の仕事だと言った。何らかの情熱はあったんだというのが、僕に残された全てだった。おそらく次の小説と一緒に、情熱も甦るに違いなく、興奮は、何か人が意識的に知らずに済ませた記憶を再び呼び覚まそうとするだろう。

49

2022年2月3日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 爆弾は真っ先にそうした昼間を急襲して、1944のヴィスは、彼ら自身好都合な夜の習慣に従った。しかしかなりの頻度で、僕がサラーに会えるのは、午前中だけだった。何故なら午後には、彼女たちの買い物を終えた、誰か、友達から全く手に入れたことがなく、夕方のサイレンの前に、仲間と噂話を欲しがった。時に彼女は二列の間に割り込み、僕たちは青物-食料雑貨店主や肉屋の主人に挟まれて恋をしようとした。

 しかしそんな状況下でも、仕事に戻るのは全く簡単だった。人は幸せである限り、人はどのような鍛錬にも耐えられる。仕事の習慣をすっかり止めるのは、不幸だった。僕たちがどれだけ頻繁に口論したか、僕がどれだけ頻繁に神経質な苛立ちで、彼女をいびったか、僕が悟り始めた時、僕たちの恋が運命付けられていると気付いた。恋は、始まりと終わりを持った恋の‐出来事へと変質してしまった。それが始まったまさにその瞬間を僕は示すことができた。とうとう或る日、最後の時を僕が指図できるとしたらそうすべきだと僕は知った。僕は互いに対して何を言ってしまったか再現しようとした。僕は怒り、或いは自責の念へと僕自身を煽り立てた。そして常に僕がペイスを強いていたと分かった。僕は僕の暮らしの外で愛すといことだけ押し進め、尚も押し進めていた。僕が恋は続くということを信じ‐させられたら、僕は幸せだった。僕は、一緒に暮らすことさえ構わなかったし、そうすれば恋は続いたのに、と僕は思う。しかし、もし恋が滅びるしかなかったら、僕は急いでそれを滅ぼしたかった。

48

2022年2月2日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 Ⅵ

若い人がその信じる仕事の習性を築き上げる時、一生持続し、どのような破局にも耐えようとする。二十年に亘り、一週間に五日間、およそ一日平均五百語になった。僕は一年で一つの小説を産み出せる。そしてそれは、校正やタイプ原稿の訂正時間をも念頭に入れてのことだ。僕は何時も非常に几帳面で、僕の仕事の割り当てが終われば、場面の最中であってさえ、僕は打ち切る。今もあの頃も何時だって、朝の仕事中、僕は僕が何をしたか、僕の原稿の上の数百の印を外して数える。印刷所は念入りな僕の仕事の概算ペイジ数を整える必要はなく、僕のタイプ原稿の頁の最前列に数字を書き込んである―83,764と。僕が若かった頃、恋愛沙汰さえ、僕のシェデュールを変えようとはしなかった。恋愛沙汰は昼食後、そしてどんなに遅くても、僕はベッドゥに向かう状態であればよしとした―僕が僕自身のベッドゥで眠る限り―僕は朝の仕事をもう一度読み、その上で眠ろうとした。戦争でさえ、僕に影響を及ぼすのは難しかった。不具な脚は、僕を陸軍から締め出し、僕が民間防衛にいた時、僕は職務の静かな朝の当番を望んだことがなく、僕の同僚の労働者たちは只々大喜びした。

僕は結果として、熱心故の全く上辺だけの名声を手に入れた。それでも、僕の机、一枚の紙、そのペンから、ゆっくりと、几帳面に滴るばかりの割り当て分の仕事に向かうと、ひたすら熱中した。僕の自らに‐課した鍛錬を滅茶苦茶にするには、サラーを必要とした。

47

2022年2月1日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 僕は歩道に立ち止まり言った。「貴女はストゥランドゥに行くつもりでしょ?」

 「いえ、レスター・スクェアへ。」

 「僕はストゥランドゥへ行くつもり。」彼女は出入口の中に立っていた。通りは閑散としていた。「僕は、ここでグッドゥ‐バイを言おう。貴女に会えて良かった。」

 「そう。」

  「貴女が都合がよければ、何時でも僕に電話して。」

 僕は彼女の方へ動いた。僕の足下に格子(排水口)の感触があった。「サラー」僕は言った。彼女は彼女の頭を、鋭敏にあちらへ向けた。例えば誰かが来れば見るために、例えばそこに時刻があれば見るために、彼女は確かめているかのようだった・・・しかし彼女がもう一度曲げた時、咳が彼女を襲った。彼女は出入口の中で、体を二つに折り曲げ、咳き込みそして咳き込んだ。彼女の目は、それに連れ赤くなった。彼女の毛皮のコウトゥに包まれ、彼女は窮地に追い詰められた小さな動物のように見えた。

 「気の毒だね。」

 僕は酷にも言った。まるで僕が何かを奪われて来たかのように。「それじゃあ、付き添わなきゃいけないね。」

 「そんな、只の咳よ。」彼女は彼女の手を差し伸べて言った。「グッドゥ‐バイ―モーリス。」その名前は辱めのようだった。僕は「グッドゥ‐バイ。」と言いはしたが、彼女の手を取らなかった。僕は脇目も振らず、急いでいる印象を与えようとして、大急ぎで歩いて離れた。そしていなくなるとほっとした。

それから僕がもう一度咳が始まるのを聞いた時、僕は節を、何かしら陽気で、冒険的で、幸せそうな、口笛で吹けたらと願った。それにもかかわらず、僕は音楽を求める耳さえ、持ち合わせなかった。

46

2022年1月31日月曜日

The end of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「勿論。」

 「私、最後のはあまり好きじゃなかったわ。」

 「ちょうどあの頃、何かにつけ書くことは死闘だった―平和が来そうで・・・」

それに僕はまさに都合よく、平和が去ってしまうと言ったかも知れない。

 「私は時々貴方が保守的な考えに戻ろうとするんじゃないかと心配だった。―私が嫌った人へ。何人もの人がそうなってしまった。」

 「一つの本は、僕を一年は書くことに向かわせる。」

 「仮に貴方が知ってしまったら、どんなに些細でも貴方は復讐しなければならない・・・」

 「勿論、冗談で言っているんだ。僕たちは一緒にいい時間を持てた。僕たちは大人だったし、僕たちは知っていた。こういうことは、或る時終わってしまうと。今は,貴女も分かっているように、僕たちは友達のように会えるし、ヘンリについて話もする。」

 僕は勘定書きを支払い、僕たちは外に出て二十ヤードゥ通りを下ると、出入口と格子(排水口)があった。

45

2022年1月30日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 食物は僕たちのつまらないお喋りを遮り、彼女は、僕たちが食事を終えた時だけ、何故彼女がそこにいるかの僅かな気配を、見せただけだった。「私は、私と一緒に昼食を摂るよう貴方にお願いしたわね。」と彼女は言った。「私、ヘンリについて貴方に聞きたかったの。」

 「ヘンリ?」僕は繰り返し、僕の声が落胆と無縁であるように務めた。

 「私は、彼が心配なの。先日の夜、貴方は彼をどうやって見つけたの?彼は何だか変じゃなかった?」

 「僕は可笑しなところにはまるで気付かなかった。」と僕は言った。

 「私は貴方に尋ねたくて―オウ、私、知ってるのよ、貴方はとても忙しいって―貴方は時折彼を調べているかどうかを。私は彼は寂しいんだって思っているの。」

 「貴女と一緒なのに?」

 「貴方も知っているでしょ、彼は本当に私のことに全く気付いていなかったの。何年もじゃないの。」

 「多分彼は、貴女がそこにいない時、貴女のことに気付き始めたんだよ。」

 「私たちはそれ程出かけてはいないわ。」彼女は言い、「最近、」と、彼女の咳は都合よくその話の輪郭を壊した。その時で、発作は終わり、彼女は彼女の策略を考え出した。しかしそれは真実を避けようとする彼女に相応しくなかった。「貴方は新しい本に取り掛かっているの?」彼女は尋ねた。それは他人が話しているようで、コクテイル・パーティで会う見知らぬ人のようで。南アフリカのシェリーを巡る初めての機会にさえ、彼女はその見解に傾倒しなかった。

44

2022年1月29日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 貴女が左手側のメイドゥン・レインを上ると、そこに出入口と、互いに一言もなく僕たちが通り過ぎた格子(排水口)がある。初めての食事の後、僕がヘンリの性質について尋ね、彼女が僕の関心に好意を寄せた時、僕は地下鉄に向かう途中、そこでかなり不器用に彼女にキスをした。何故僕がそんなことをしたか、僕には分からない。多分鏡の中のその画像が、僕の心の中に入り込まなければ、と言うのも僕は彼女に好意を寄せるつもりはなかったから。僕はもう一度、彼女を捜すつもりさえ特になかった。彼女は余りにも美しく、近寄ろうとする思いで僕をわくわくさせた。

 僕たちが座った時、昔馴染みのウエイタの一人が僕に言った。「貴方がこちらにいらっしゃってから、ほんとに久し振りです、サー。」それにしても僕はサラーに僕の事実に反する主張をしなければよかった。

 「オウ。」僕は言った。「僕は最近二階で昼食を摂っています。」

 「それに貴女、奥様、またまたお久しゅうございます・・・。」

 「二年近く。」彼女は僕が時々嫌がる正確さで言った。

 「ところが私は、覚えています。貴女が何時も好んだのは大きなラーガーだった。」

 「貴方がたは、素晴らしい記憶力で感動させるわね、アルフレッドゥ。」すると彼はその記憶振りに満足してニコニコ微笑んだ。彼女は何時もウエイタたちと仲良くやる芸当を持っていた。

43

2022年1月28日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

僕は彼を睨み倒そうとしたが、そんなことは簡単だった。彼は、長い髭と小鹿‐に似た目を持ち、慌てて視線を外した。彼の肘が彼のビアグラスを捕え、それを床に転がした。そして彼は混乱に打ちのめされた。彼は僕の写真で僕を知っていたのかも知れず、それは僕のせいで起こったことだから、同時に僕は気の毒に思った。彼は、まさに僕の数少ない読者の一人かも知れなかった。彼には彼と席を共にしている幼い少年がいた。彼の息子の面前で、父親に恥をかかせるとは、何と酷なことを。その少年はウエイタが急いでやって来た時、頬を赤らめ、彼の父親は不必要な猛烈さで謝り始めた。

 僕はサラーに言った。「勿論、貴女が好むなら何処ででも、貴女は昼食を摂らなくちゃね。」

 「貴方も知っているわ、私ははそこへ、前に行ったことがなかった。」

 「そうだね、そこは貴女のレスタラントゥではなかったよね?」

 「貴方はそこへしょっちゅう行くの?」

 「そりゃあ僕には便利だもの。週に二、三回。」

彼女は不意に立ち上がり、言った。 「行きましょ。」そして突然咳の発作に襲われた。 それは彼女の小さな体にしては、大き過ぎる咳のように思った。 彼女の額はその排除に連れ汗ばんだ。 

 「 それ性質が悪いね。 」

 「何でもないわ。ごめんなさい。」

 「タクシ?」

 「私は歩く方がいいわ。」

42

2022年1月27日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 僕は彼女を信じようとはしなかったが、彼女の舌に乗った言葉を聞きたがった。おそらく単にそれを自ら拒絶する満足を僕に与える為に。ところがその信用‐させるというゲイムを、彼女はすることがなく、それから突然、意外にも、彼女はこんな甘美さと大きさの声明を伴った僕の予約を打ち砕こうとする。・・・或る日、私たちの関係は終わるでしょうという彼女の憶測を、僕が惨めに思った嘗てを、僕は覚えている。「僕は貴方を愛するように人を愛したことは、決して決してなかったし、僕には二度とない。」さて、彼女はそれを知らなかった、と僕は思ったが、彼女も又、信じ‐させるという同じゲイムをした。

 彼女は僕の側に座って、ラーガー一杯を頼んだ。「僕はルールズにテイブルを予約した。」僕は言った。

 「私たち、ここにいることは出来ない?」

 「そこは僕たちが何時も行っていた所だよ。」

 「そうね。」

 おそらく、僕たちはその挙動からして、不審そうに見えていた。余り離れていないソウファに座った小男の関心を引いて来たことに、僕はやっと気付いた。

41

2022年1月26日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 Ⅴ

僕はテイブルに新聞を広げて置き、何度も繰り返して同じ頁を読んだ。僕は出入口をを見たくなかったから。人々はひっきりなしに入って来て、彼らの頭を上下に動かすことによって、馬鹿げた期待を曝け出すそうとする者の一人に、僕はなりたくはない。僕たちは皆、自ら失望に整列してしまうということを、幾ら覚悟すればいいのだろう?夕刊には、何時もの殺人や巧妙な砂糖菓子-配給制限に関する議会の小競り合いがあり、彼女は、今五分遅れていた。彼女が僕の時計を見ている姿を目撃するとしたら、僕の不運だった。僕は、「ごめんなさい。私、バスで来たの、交通の便が悪くて。」と言う彼女の声を聞いた。

 僕は言った。「地下鉄の方が速いよ。」

 「分かってるけど、私、速く着きたくなかったの。」

 彼女はよく真実によって僕を狼狽させた。僕は真実より更に多くを、彼女に言わせようとした―僕たちが恋愛中だった日々、私たちの事が決して終わらないようにと、一日でも、私たち結婚しましょうよなどと。

40

2022年1月25日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「いいえ、いいえ未だです。私たちは変えたところよ。それはマコーレイ6204。私は貴方にお願いしたことがあったの。」

 「そう?」

 「そんなに心配することはない。僕は貴女と昼食を食べたかった、それだけ。」

 「勿論、私、嬉しいわ何時?」

 「貴方は明日はなんとか出来ない?」

 「いや、明日はだめ。貴女も分かっているように、僕は只、この契約に繋げようとしただけ・・・」

 「水曜日は?」

 「木曜日にしようか?」

 「いいわ。」彼女は言い、そうして僕は単音節語に殆ど失望したに決まっている―僕たちのプライドゥは、僕たちを欺く。

 「その時カフェ・ロイアルで、僕は一人で貴女に会おう。」

 「貴方の都合が良ければ。」彼女は言った。僕は彼女の声から、彼女はそのつもりだったと言えるかも知れない。「木曜まで。」

 「木曜まで。」

 僕の手に電話の受話器を持ったまま、僕は座り、誰も知りたくもなかった卑劣で愚かな男のようで、嫌気が差した。僕は彼女の番号を回した。僕は彼女が電話口を離れる前に、彼女を捕まえなければならなかった。そして言った。「サラー。明日でいいよ。僕は何が何だか分からなくなってしまった。同じ場所。同じ時間。」それから、静かになった器械の上、そこに僕の指を、期待すべき何かと共に置いた。僕は自分自身に対して思った。僕は覚えている。これはどんな希望も、似通った感触を持っているということだ。

39

2022年1月24日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 非常に‐訓練されたメイドゥの声は、僕の鼓膜の中で、その番号を繰り返した。僕は言った。「マイルズ婦人はいらっしゃいますか?」

 「マイルズ婦人?」

 「そちらは、マコーレイ7753ではありませんか?」

 「はい。」

 「僕はマイルズ婦人に話したいのですが。」

 「貴方は間違った番号に掛けましたよ。」そして彼女は電話を切った。時に連れて、些細なことが変わり過ぎるということは、僕には今まで起こったことがなかった。

 その住所氏名録で、僕はマイルズを調べたが、その古い番号は、未だそこにあった。その住所氏名録は、日付から一年以上経っていた。電話が再び鳴った時、僕は丁度問い合わせに掛けようとしていた。するとそれはサラー、彼女自身だった。彼女は多少戸惑いながら、「そちらは貴方ですか?」と言った。彼女はどんな名前でも僕を呼んだことがなく、今や、年月を経た愛情のない彼女は、途方に暮れていた。僕は言った。「話しているのはベンドゥリクス。」

 「こちらはサラー。貴方は私の伝言を受取っていないの?」

 「オゥ、僕は貴女に電話を掛けようとしたが、僕は契約を切らなければならないところだった。で、今、貴女の番号を受信するなんて予想外だ。それは、その名簿にはあるのに、と僕は思うのだが?」

38

2022年1月23日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 Ⅳ

僕がサヴィッジ氏の所から帰宅し、僕の女主人が、マイルズ婦人が電話を掛けて来たところです、と僕に話した時、僕は正面のドアが閉まり、ホールに彼女の足音を聞くと、何時も感じた張り合いに気付いた。僕は数日前、僕の視覚は、愛にではなく、勿論、感傷にでもなく、僕が機能し続けられる記憶に目覚めてしまったという乱暴な望みを持った。もし僕がもう一度―どんなに素早く、荒々しく、それでいて満足の行かないままであれ、彼女を自分のものにすれば、僕は再び安らかになるだろう。僕は僕という装置から彼女を洗い流したら、その後、僕は彼女の下を去ろう、彼女無しの僕を。

 十八カ月の沈黙の後、その番号にダイアルを回すのは、奇妙だった。マコーレイ7753、それに僕は、その最後のアラビア数字がうる覚えだったので、僕のアドゥレス帳でそれを調べなければならなかったのは、更に奇妙だった。鳴り響く音に耳を傾けながら、僕は座った。そしてヘンリが役所からその内戻って来ないだろうか、もし彼が出たら何と言えばいいだろう、とあれこれ思い巡らした。その時僕は、真実と共にあれば、もうこれ以上の過ちは何一つないと悟った。嘘は、僕を見捨て、それがまるで僕の唯一の友ででもあるかのようで、僕は寂しく思った。

37

2022年1月22日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

  「僕は戻らなくちゃあ。」彼は言った。「僕は彼女にその全てを任せてはいけない、ベンドゥリクス。」そして彼は僕たちが一年で互いを知り尽くしたかのように、僕の腕に彼の手を置いた。彼は彼女からその手真似を習ったのか?結婚した人々は、互いに似て来る。僕たちは一緒に歩いて帰り、僕たちがホールのドアを開けた時、僕は、キスからか、離れようとする二つの人間が、小部屋から鏡の中に写ったのを見た。―一人はサラーだった。僕はヘンリを見た。

 彼は見なかったのか、それとも気にしなかったかのどちらか―それとも他に、僕は考えた。何とも不幸せな男であるに違いない。

 サヴィッジ氏はそのシーンを妥当と考えただろうか?僕は後で知ったのだが。彼女にキスをしていたのは、恋人ではなく、それは妻が一週間前、有能な水兵と駆け落ちした年金省のヘンリの同僚の一人だった。彼女は、その日初めて彼に会った。僕はそれほど断固として余地を与えられなかった。彼が未だにそのシーンの一部を占めてしまうのは、好ましくないように思える。

 僕はあの過ぎた時を、そのままにして置きたかった。僕が1939を書く時、僕は僕の像の全てが甦ろうとするのを感じる。憎悪は愛情と同じ腺を操作するように思う。それは同じ行動を生み出しもする。もし僕たちが、如何に受難の物語を演出すべきか教えられなかったら、クライストゥを愛したそれが、嫉妬深いデュウダス(ユダ)か、或いは小心なピーター(ペテロ)だったかどうか、単に彼らの行動から言えただろうか?

36

2022年1月21日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 陽は共有地を横切って、丁度沈むところで、草地がそれと共に薄暗くなっていた。遠くの家並みは、ヴィクトーリア風に焼き付けられて、小さい、正確に線で描かれた、ひっそりとした家々があり、只、子供が一人、ずうっと遠くで泣いていた。十八-世紀の教会は、草の島の玩具のように立ちーその玩具は、暗闇でも、乾いた崩れ難い天気でも、外に置き去りにされても良かった。それは、貴方が見知らぬ人に信頼を寄せる時間だった。

 ヘンリは言った。「僕たちは皆、何て幸せでいられるのか。」

 「そう。」

 僕は、彼の目に涙を溜めて、彼自身のパーティから離れた共有地のそこに立つ彼を、非常に好ましく思えた。

僕は言った。「貴方は愛すべき家を手に入れた。」

 「僕の妻がそれを探した。」

 「僕は彼にたった一週間前に会ったばかりだった―他のパーティで、その当時彼は、年金省にいて、僕は僕の題材の為に彼を引き留めて長話をした。二日後、案内状が届いた。僕はサラーがそれを彼に送らせた、と後で教えられた。「結婚して長いの?」僕は彼に尋ねた。

 「十年。」

 「貴方の細君は、魅力的だと僕は思う。」

 「彼女は僕には大いに助けになる人だ。」と彼は言った。

 気の毒なヘンリ。それにしても一体何故、僕は気の毒なヘンリと言ってしまうのだろう?彼は最後に勝ち札―優しさ、謙虚、そして信頼のカードゥ、を持っていなかったのか?

35

2022年1月20日木曜日

The End of the Summer/Graham Greene 成田悦子訳

僕はサラーに気付き、彼女は上手くやっていたからか、ああした年々、幸せの感覚は近付きつつある嵐の下、長い間瀕死の状態にあった、と僕は思う。誰もが酔い潰れた人々に、子供達に、滅多に他の場所にはないそれに気付いた。僕は、彼女が僕の本を読んだことがあり、その物をそのままそこに置いてあると言ったから、一辺に彼女を好きになった。―作家としてより、寧ろ人間として直ぐに遇された僕自身がいた。何であれ、僕は彼女との恋に落ちようなど見当もつかなかった。彼女は美しかった、美しい女たち、殊(こと)に彼女たちがその上聡明であれば、一つのことに向かって、僕の中の或る深いねじけた感情をかき混ぜる。心理学者が コフェテュア・コムプレクスと名付けたかどうか僕には分からないが、僕は何時も、或る心的又は肉体的優越の感覚無しに、性的欲情を自覚し難いと察していた。彼女について僕が注目したのは、彼女の美と彼女の幸福、それに彼女は彼等を愛しているかのように彼女の手で、人々に触れるという彼女の癖だった。僕は彼女が僕に言った唯一つのことだけ、想い出せる。

「貴方は大勢の人を毛嫌いしているようにしか見えないわ。」おそらく僕が、僕の作家仲間について、手厳しく話して来たからだ。僕は覚えていない。

 それは、何というひと夏だったのか。やってみようとも正確に呼び名を示すつもりもない。ー僕は、凄まじい程の痛みに、どうしてもそこへ引き返さなければならなかったが、その暑苦しく、混み入った部屋を抜けたこと、不味いシェリーを随分飲んだ後、ヘンリと一緒に共有地をどんどん歩いたことを、僕は覚えている。

34

2022年1月19日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 Ⅲ

「それで、何かもっとあれば、貴方は関連していることを僕に話せますか?」サヴィッジ氏が言ったのを僕は覚えているー探偵は、当を得た糸口を選び出す前に、自らのちょっとした題材を集めようとする小説家と同じくらい、それが重要であると分かっていなければなりません。しかしその見分けることが、如何に困難かー現実の主題の公開が。外側の世界の凄まじい重圧は、ように僕たちを圧倒する。今やっと僕は、僕自身の物語を書くに至り、その問題は、尚も同じではあるが、もっと悪いことにー随分多くの更なる実状がそこにあり、今直ぐ僕はそれらのことを、別に創り上げなくていい。耐え難いシーンから、人間の特性を如何に掘り出せるか―日刊新聞、毎日の食事、バターシーに向かう車の軋り、パンを探してテムズ川を上ろうとするカモメ、やがて1939の初夏、子供たちがそれぞれのボウトゥを走らせる公園の上空にきらきら光っているーそうした輝きの一つが、戦前の夏を咎めていた?僕は、喩え僕が十分長く考え尽くしたとしても、僕は、ヘンリが催したパーティで、彼女の後(のち)の恋人を見つけられたかどうか疑わしい。僕たちは初めて互いを見た。スペイン戦争の所為で、不味い南アフリカ産シェリーを飲みながら。

33

2022年1月18日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

それは、貴方がそのことを考えあぐねて訪れる時、実に立派な商売、潔白の看破では通らない。何故なら、愛人は殆ど決まって、潔白ではないでしょ?彼らはどんな罪も犯したことがなく、彼ら自身の心の中で、彼らは、「自身以外のどんな人も傷付かなければ」、悪いことは全くしなかったということだと、彼ら自身の心の中で確信している。古くなった下げ札が、彼らの唇の上に、予め用意されている。だから彼らは信じ、そしてだからこそ、僕が愛した日々、僕は当たり前のように信じた。

 そして僕たちが料金の段に至った時、サヴィッジ氏は驚くほど節度があり、一日に三ギニー、それに経費、「勿論、どちらも満足されるに違いない。」彼はそうしたことを「変なカフィー」と僕に説明した。貴方は御存知ですか、時々僕たちの部下は、立ち飲みせざるを得ません。」僕は承認しないフイスキについて、間の抜けた冗句を作ったが、サヴィッジ氏は、しゃれに気付かなかった。「僕は或るケイスを知りました。」彼は僕に話した。「一か月の調査が、適切な時に、ダブル一杯で節約された時、―僕の依頼人が今までに支払ったのは、最も安いフイスキ。」何人かの彼の依頼人は、日毎の報告を受取りたがった、と彼は説明したが、僕は彼に、僕は週毎のもので満足します、と話した。

 情事そのものは、ひどく急ぎ足で跡形も失せ、彼は僕がヴィゴウ・ストゥリートゥに出かけるその時までに、僕をほぼ納得させてしまった。これは遅かれ早かれ男という男に降りかかる面談という縛りだったと。

32

2022年1月17日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 僕には透明な一本-線のフールスカプに書くことにへの愛着があり、頁の上の滲み、紅茶の痕は、それを使用不能にするし、僕は嫌な訪問者の場合、僕の文書を仕舞い込んで置かなければならないという根拠のない思いが、僕を捕える。僕は言った。「喩え彼が僕に警告を発したとしても、それはもっと安心していてもいいんでしょう・・・」

 「確かに、しかし必ずしもそれは通用しません。貴方の住所、ベンドゥリクスさん、それに電話番号は?」

 「それは個人回線ではありません。僕の女家主が内線を持っています。」

 「僕の部下全員、卓越した思慮分別を使いこなします。貴方は毎週報告書が欲しいですか、それとも、単に最終調査を受け入れる方がいいですか?」

 「週毎に。それは完成しないかも知れません。多分何も探り出すことはありませんから。」

 「貴方は貴方の医者に行って、何も悪いところは見つからなかった?貴方もご存知でしょう、ベンドゥリクスさん、男は僕たちのサーヴィスの必要性を感じるという実情が、殆ど例外なく、報告すべき何かがそこにはあるということを意味します。」

 取引するためにサヴィッジ氏がいたのは、僕は幸運だったと思う。彼は、普通にいる彼の職業の男達より不愉快ではないということで勧められたが、僕は彼の自信は嫌がられると察する。

31

2022年1月16日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「はい。」

 「彼女の年は?」

 「僕は知らないなあ。3-8?」

 「貴方は彼女がどのような味方を持っていても分からないんですね?」

 「はい、それに僕は彼女の祖母の名も知りません。」

 サヴィッジ氏は僕に忍耐強い笑顔を向けた。僕は一瞬、彼は彼の机を離れようとして、又僕を宥めていると思った。「僕にはよく分かります、ベンドゥリクスさん、貴方は調査の経験がなかったんですね。メイドゥというものは、非常に適切なのです。彼女は彼女の雇い主の癖まで、僕たちに実に多くのことを話してしまいます。―もし彼女が快く引き受ければ。最も簡単な調査でさえ、どれだけ多くのことが的を射ているか、貴方は驚くでしょう。彼は確かにあの朝、彼の核心を立証した。彼は彼の小さい走り書きの手書きで、頁を覆った。一度彼は僕に尋ねるために、彼の質問を打ち切り、「貴方の家に近付こうとする僕の部下に、もしそのことが緊急に必要でも、貴方は異議を唱えますか?」僕は気にしない、と彼に話したが、直ぐに僕自身の部屋に、何等かの悪影響を認めようとしているような気がした。「それが避けられるなら・・・」

 「勿論。勿論。僕は理解しています。」そして僕は心から信じ、彼は理解に努めた。彼の部下の存在は、家具を覆った埃のようでもあり、煤のように僕の書籍にシミを付けるだろうが、彼は驚異も怒りもまるで感じなかっただろう。

30

2022年1月15日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 サヴィッジ氏は、僕を苛々した子供扱いして、僕の袖に彼の手を置いた。「嫉妬を恥ずかしがることはない、ベンドゥリクスさん。僕は何時も本当の愛情の印として、それを迎え入れます。さて、僕たちが話し合おうとしているこの女性、彼女が今も―他の人と親密であると考えるに足りる理由を持っていますか?」

 「彼女の夫は彼女が彼を欺いている、と考えています。彼女は私的逢瀬を重ねています。彼女は何処に彼女がいたのか、嘘を吐きます。彼女は持っていますー秘密を。」

 「ああ、秘密、そうですか。」

 「その中身は何でもないことかも知れません、勿論。」

 「僕の長い経験では、ベンドゥリクスさん、そこには殆ど変わることなくあります。」彼は論述をどんどん前に進めるために、目下のところ、僕を十分安心させたかのように、サヴィッジ氏は彼の机に戻り、書く準備をした。名前。住所。夫の職業。彼の鉛筆を持ち、ノウトゥに向かって構え、サヴィッジ氏は尋ねた。「マイルズ氏はこの面談を知っていますか?」

 「いいえ。」

 「僕達の部下が、マイルズ氏の配下にあってはいけませんか?」

 「確かに不味い。」

 「それでは複雑になってしまいます。」

 「貴方の報告書を、後で彼に見せても構いません。僕には分からない。」

 「貴方は家族について何らかの実情を、僕に提供出来ますか?メイドゥはいますか?」

29

2022年1月14日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

「貴方の時間を役立てて下さい。」

 僕は彼の他の患者連中のように、混乱を来していた。

 「続けるべきことは、実際何一つありません。」僕は説明した。

 「ああ、そこが僕の仕事ですね。」サヴィッジ氏は言い、「貴方は心的状態、周囲の状況を、只、僕に伝えて下さい。僕たちは、ベンドゥリクス婦人を審議しているように、僕は思いましたが?」

 「正確じゃない。」

 「しかし彼女はその名前で通している?」

 「これでは全く食い違って行く一方です。いいえ、彼女は僕の友人の妻です。」

 「じゃあ、その人が貴方を寄こしたんですか?」

 「いいえ。」

 「もしかして貴方とその女性は―親密なんですね?」

 「いえ。僕は1944年からたった一度、彼女に会っただけです。」

 「心配なのですが、僕は全く分かっていないんじゃあないでしょうか?これは要監視のケイスです、と貴方は仰った。」

 その時まで、彼がひどく怒りを覚えているということを、僕は察知していなかった。「誰でも、愛すことも憎むことも出来ない。」僕は彼に急にばらした。「それほど長く?少しでも、勘違いをしないで下さい。僕はまさに貴方の嫉妬深い依頼人と同様で、僕は安心にちょっとでも背くことは主張しないのですが、僕のケイスの中に、時の‐ズレがありました。」

28

2022年1月13日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 僕は始めた。「僕には分からないのですが、貴方の手数料は、どんな監視代ですか?」サヴィッジ氏は縞模様のネクタイをゆっくり撫でた。彼は言った。「今はそのことは心配しないで、ベンドゥリクス。この下準備の相談に、三ギニー請求します。しかしもし貴方がこれ以上続行することを望まなければ、僕は、経費を全く戴(いただ)きません。全く要りません。最高の宣伝を、貴方はご存知でしょうが。」ー彼は温度計のように、中に決まり文句を滑り込ませー「満足した依頼人です。」

 普通の状況では、 僕たちは皆、殆ど似たような行動をとり、同じ言葉を遣うと僕は思う。僕は言った。「これは非常に単純な事例です。」すると僕は、サヴィッジ氏は僕が話し始める前に、実はその事を全部承知しているのではないかと、八つ当たりで警戒した。僕が言わなければならないことは、サヴィッジ氏を不可解であるとする材料は何一つなく、彼が暴けたこともなく、その年、既に何十回も明るみに出されたことは何もなかった。医師でさえ、時に患者にかき乱されるが、サヴィッジ氏はあらゆる症状を熟知しながら、唯一つの病気に従事する専門医だった。

 彼は身の毛がよだつほど優しく言った。

27

2022年1月12日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 そこにはハーパーズ・バザーやライフや一揃いのフランス・ファッション雑誌があり、中を僕に見せた男は、ちょっと気を使い過ぎだったものの、身なりは良かった。彼は火に面した椅子に僕を誘引し、かなり注意深くドアを閉めた。僕は患者のような気がして、僕は嫉妬向けの名だたるショック療法を試すに足りる病人、すっかり患者を決め込んだ。

 サヴィッジ氏について、僕が気付いた最初の事は、彼のネクタイで、それは或るOB会を表し、次に、粉末の微(かす)かな赤らみの下、彼の顔の何と奇麗に剃られていたことか、そしてその次は彼の額、鼠色がかった髪は後退し、ぴかぴかと光った。職務について回る理解、同情、気遣いの合図の-輝き。彼が手を握る時、彼は微妙な捻(ひね)りを僕の指に加えたな、と僕は気付いた。彼はフリーメイスンに違いなく、もし僕が抑圧を跳ね返せたら、僕は多分、異例の請求額を是認しただろう。

 「ベンドゥリクスさん?」彼は言った。「座って下さい。それは、最高に心地良い椅子だと僕は思います。」彼は僕のためにクシャンを叩き、僕がその中に我が身を上手く沈めるまで、僕の側に気遣って立っていた。それから彼は、まるで僕の脈拍に耳を傾けようとするかのように、僕の側に真っ直ぐな椅子を引き寄せた。「さあ貴方自身の言葉で、何もかも僕に話して下さい。」と彼は言った。僕は僕自身の所有するもの以外に、僕が使えていた何か他の言葉を想像出来ない。僕は当惑し、苦々しく思い、僕は同情を求めてにここに来たのではなく、何らかの実質的助力の代償を支払うためその余裕があったら。

26

2022年1月11日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 僕は簡単に出そうもない、一冊の本を書こうとしていた。僕は僕の日常的五百語を駆使しても、その役儀は、どうしても生気が漲(みなぎ)らない。書くことの多くは、人の日々の皮相に依存する。人は買い物、所得税申告、思いがけない会話に心を奪われるかも知れないが、無意識の流れは、先行きを計算に入れながら、静かに澱みなく続く。人は不毛の下に蹲(うずくま)り、机上にて意気込みは消え失せる。が突然、言葉は空気からのように出て来て、絶望的行き詰まりに閉塞されたかに見えた情況が、前方へ揺るぐ。仕事は自分が眠り、買い物をし、友人と話していても、完成した。何れにせよこの憎悪と疑念、破壊に向かうこの激情は、その本より深く埋もれて行った。ー代わりに無意識が、それに作用した。或る朝、僕が目覚めて気付くまで、まるでそれを夜通し企みでもしたかのように、この日、僕はサヴィッジ氏を訪ねることにした。

 何という風変りな所蔵品が、信頼された職業にあるのか。人は自分の弁護士を、自分の医師を、自分の聖職者を信用する、僕は提案する、もし、自分がカソリックなら、そのリストゥに自分の私設刑事を加えた。ヘンリの他の依頼人にじろじろ見られるという思いは、全く間違っていた。その事務所は、二つの待合室を持っていて、その片方に、一人で通された。それは、ヴィゴウ・ストゥリートゥで貴方が期待するものと、微妙にかけ離れていたーそこには一弁護士の所有する出張所の何となくだらけた雰囲気があった。むしろ歯医者に似ている待合室には、流行りの読み物の選りすぐりも備えてあった。

25

2022年1月10日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 Ⅱ

何日経ったのか、僕には言いようもない。以前の不安が甦り、あの陰鬱な精神状態で、自分では、その日々を目が見えない人が明るさの変化に気付けない以上に、もう語れない。僕の行動の針路を僕が決めたのは、七日目か二十一日目だったか?僕には今も、三年経った後、共有地の縁(へり)伝いに、池の辺(ほとり)か、十八‐世紀の教会のポウチカウの下の離れた所から、ドアが開き、サラーがその爆破されず、よく‐磨かれた階段を降りて来るという万が一の可能性に賭けて、彼らの家を観察している不審者の曖昧な記憶がある。正しい時刻は、一切打たなかった。雨の日々が終わると、夜は霜が降りて晴れはしたが、壊れた‎フエザー‐ハウスには、男も女もどちらも現れることはなく、僕は二度と、暗くなってから、共有地を横切るヘンリを見たことはない。おそらく彼は、僕に話してしまったことを気に病んだ。彼は非常に在り来りの男だったから。僕は冷笑しつつ、付属物を書き、それに未だ、もし僕が自らを試すとすれば、僕は只、誰もがそれらの藁葺きや石の中、随分平和そうに見えて、休憩を思い起こさせる車が通る大通りから見る村々のような、在り来り向け賞賛と信任だけを探す。

 僕はあの曖昧な日々か週ごとだったか、サラーの夢を随分見たのを覚えている。時々僕は痛みの感覚で、時には満足して起きようとする。もし一人の女が、一日中誰かの思いの中にいるにしても、夜、彼女の夢をどうしても見てしまうとは限らない。

24

2022年1月9日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 彼女は何時も、僕を「貴方」と呼んでいた。「そちらは貴方?」と電話で、「貴方に出来る?」「貴方はそのつもり?」「貴方はするの?」僕が想像しさえすれば、馬鹿みたいに、一時(いっとき)に、ほんの僅かの間、世界に唯一の人「貴方」がいて、それは僕だった。

 「君に会えて嬉しい。」僕は言ったーこれは皮肉からなる一場面だった。「歩いて出かけたの?」

 「はい。」

 「酷い夜だね。」僕は咎めるように言った。

するとヘンリが、明らかに心配して付け足した。「お前はずぶ濡れだ、サラー。お前は、その内、冷えてお前の疫病神を掴むよ。」その通俗的知識による決まり文句は、時々、凶運の通告書のように、会話を通して降りかかる。しかし、喩え僕たちが、彼は真実を口にすると分かっていても、僕は、僕たちのどちらかが、彼女のために多少なりとも心からの不安を感じたところで、僕たちの神経、疑念、憎悪に穴を開けるかどうか疑わしい。

23

2022年1月8日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 僕は何時も、彼女の出現に対するその機械的反応によって、いらいらさせられて来た。それは全く無意味だからー誰しも判で押したように、婦人の出現を歓迎出来ない。喩え人が恋愛中でも。それで僕はというと、彼女らが一度も恋の渦中にあったことはない、と彼女が僕に打ち明けた時も、サラーを信じた。そこには、更なる心からの歓待があり、憎悪や不信という僕の僅かな間隙を縫うように、僕は信じた。少なくとも僕に対しては、彼女は彼女持ち前の正義の範疇にある人でー注意深く操られるべき一片の磁器にも似た家族の片割れではない。

 「サルーアー。」彼は呼んだ。「サル―アー。」音節に間(ま)を開けながら、耐え難い不実を伴って。

 彼女がホールの階段の最下部で立ち止まり、僕たちの方を振り向いた時、どうして彼女を見る他人を装えよう?僕は嘗て、彼らの行動による以外、僕の偽りの役儀さえ詳細を記述出来た例(ためし)がない。それは何時も、小説の中で、読者は、どんな惰性で彼が選ぶ役儀であろうと、想像することを許されるべきである、と僕には思えた。僕は彼に出来合いの図解を与えたくない。もう僕は、僕自らの技巧によって暴かれる。僕はサラーに代わる他のどんな女も求めてはいないし、僕は読者に、一体となった開けた額(ひたい)、そしてくっきりとした口、頭蓋骨の形態を見て欲しいが、僕が表せることは、「はい、ヘンリ?」次に「貴方?」と言いながら、濡れたレインコウトゥのまま振り向く漠然とした姿である。

22

2022年1月7日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene  成田悦子訳

  彼はそれを見た。まるでそれが他の誰かのものであるかのように。

 「それにしてもこれは突拍子もない。」彼は言った。「僕は何をあれこれ考えていたのか、解せない。貴方に話したのが最初で、それから貴方に聞いたのがーこの事。人は友だちを介して、人の妻を探ってはいけない。そこでその友だちは、彼女の愛人だと偽る。」]

 「オゥ、済んでないよ。」僕は言った。「しかしどれを取っても、姦通でも、窃盗でも、敵の火刑からの逃走でもない。未完の事は、何れ為される、ヘンリ。それが今風(いまふう)ってもんだよ。僕は自分でそれらの殆どをやってのけた。」

 彼は言った。「お前はいいやつだよ、ベンドゥリクス。僕が必要としたのは、それ相応の話だったー僕の頭をすっきりさせるために。」そして今度は、彼は本当に、ガスの炎に向けてその手紙を持ったままでいた。最後の小片を灰皿に置いた時、私は言った。「名前はサヴィッジ、住所は1ヴィゴ・ストゥリートゥ159か169のどちらか。」

 「それを忘れるんだよ。」ヘンリは言った。「僕が貴方に何を話したか、忘れて。思慮が足りないんだもの。最近、頭痛が酷くなる一方だった。僕は医者に診てもらうつもりだ。」

 「あれはドアだった。」と僕は言った。「サラーが入って来た。」

 「オウ。」彼は言い、「あれはメイドゥだよ。彼女は映画に出かけた。」

 「いや、あれはサラーの歩調そのものだ。」

 彼はドアに向かい、それを開けると、無意識に彼の顔は、上品さと愛情の不合理な塹壕に落ちた。

21

2022年1月6日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

おかしい、僕は思った、お前はヘンリを凡そ想像力に富んだ男、と決めて掛かってたんじゃないのと。僕の優越はぐらつかされ、焦らそうとするお馴染みの欲求が、僕の中で目を覚ましたのを感じた。僕は言った。「何故僕を行かせないの、ヘンリ?」

 「貴方を?」僕は、もし僕があまり遠くへ行ったら、喩えヘンリだって、疑い始めるかも知れない、と一瞬疑わしく思った。

 「そう。」僕は危険を冒して言った。もしヘンリが過去を少しでも学んだら、今、それが、何故重要なのか?それは彼にとって、よりいいだろうし、おそらく、彼の妻をもっと上手にカントゥロウルするよう彼に教える。「僕には嫉妬深い愛人を装うことなど、何でもない。」僕は続けた。「嫉妬深い愛人たちは、嫉妬深い夫たちより、敬意に値し、嘲笑に値しない。彼らは文学の重しということで、支持されている。愛人を裏切れば、悲劇になり、喜劇になることはない。トゥロイラスを考えてみるといい。僕がサヴィッジ氏と面談した時、僕は、僕の自尊心は失くさないだろう。へンリの袖が渇き切ったのに、彼は未だ火の方へ、それを向けたままだったので、今や、布が焦げ始めていた。彼は言った。「貴方は本当に、僕のためにそんなことをしてくれるの、ベンドゥリクス?」すると彼の目に涙が滲んだ。彼はこの友情の絶大な印に、期待することも、値することも全くなかったかのように。

  「勿論、ぼくはするよ。貴方の袖が焦げている、ヘンリ。」

20

2022年1月5日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene  成田悦子訳

 彼は憤慨して言った。「それに僕は何時も、貴方は彼女の友人だと思っていた。」まるで手紙を書いたのは、僕だったかのように。

 「勿論。」僕は言った。「貴方は、僕がこれまで要したよりずっとたくさん、彼女を知っている。」

 「いろんな手段で。」彼は憂鬱そうに言い、それで僕は、僕が彼女を最高に知った、その真の手段を考えていたのだと分かった。

 「貴方は僕に尋ねた、ヘンリ、もし貴方が愚か者だと僕が思っていたらと。僕はただ、その思いの中に、馬鹿にしたものは何一つない。僕はサラーにも、何も言ったことはない。」

 「僕には分かっている、ベンドゥリクス。ごめん、僕は近頃、十分眠っていない。僕は夜中に目覚めた。この不快な手紙をどうすべきか、全く見当がつかなくて。」

 「それを燃やせばいいじゃないか。」

 「僕に出来たらなあ。」彼は未だ彼の手に、それを持っていたので、一瞬、僕は彼がそれを燃やすつもりだ、と真底思った。

 「それとも、行ってサヴィッジに会えば。」僕は言った。

 「だけど、僕は彼に、彼女の夫ではないような振りが出来ない。全く考えてもみてくれ、ベンドゥリクス、他愛もない嫉妬に駆られたどの夫も、同じ戯言を口にしながら座った一つの椅子に収まって、机の前のそこに座っているしかないことを・・・そこには待合室があって、だから僕たちが通る度に、僕たちには互いの顔が見えるって、貴方に想像出来る?

19

2022年1月4日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene  成田悦子訳

  僕は言った。「それは人が笑っていいようなことではない。喩え思うことは、取り留がなくても・・・」

 彼は待ち望んでいたかのように、僕に尋ねた。  「そりゃあ、取り留めはない。貴方は僕が馬鹿だと思いもするでしょ・・・?」

 ちょっと前なら、僕は進んで笑いもしただろう。そう今でさえ、僕が只々嘘を吐くしかない時、以前の様々な妬みが甦った。夫と妻は、人が妻を憎めば、人は夫も憎まずにはいられない、それ程までに切っても切れない骨肉なのか?彼の質問は、彼が騙すには、どんなに気楽だったかを、僕に気付かせた。余りにも安易だから、窃盗罪を共謀するホテルのベッドゥルームに、ばらの覚書を置き忘れる男を好む、彼の妻の不貞に、彼は僕を、凡そ密通者のように思い、僕は嘗て、僕の恋人に良くして来たその資格故に、彼を憎んだ。

 彼のジャキットゥの袖が、ガスの前で蒸気を上げているのに、彼は繰り返した。尚も僕から目を反らしながら、「勿論、貴方が僕を愚か者だと思たって、僕は気にせずに話す。」

 その時、悪魔が話した。「ああいや、僕は貴方が愚か者だとは思わない、ヘンリ。」

 「貴方は、そんなことは・・・出来る、と本当に思っているということ?」

 「勿論、そりゃあ出来ます、サラーは人間だ。」

18

2021年12月30日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

  「僕は分からない、ヘンリ。」

  僕はこの男宛に書き、僕の家族の知人が、私立刑事斡旋所についての僕の忠告を頼みにしている、としておいた。。そりゃあ、ぞっとするよ、ベンドゥリクス。彼は表向きの理由を通して見破らなければならなかった。  

  「貴方は実際そのつもりで・・・?」

  「僕はそのことでは、少しも動かなかった。」それでもその手紙は、僕に思い出させながら、僕の机の上の、そこでじっとしていた。それはひどく馬鹿げているから、それを読もうともしない彼女を、信用出来るとは思えないでしょ。彼女は一日に十二回もここに入るのに。僕は引き出しの中に、それを仕舞い込んだりしない。それでも未だ、僕は信用出来ない・・・彼女は今、散歩に出ている。徒歩、ベンドゥリクス。」雨は彼の防具にも浸透し、ガス灯の方へ彼の袖の縁を向けたままにした。

  「貴方は何時も、彼女の特別な友だちだった。ベンドゥリクス。誰もが決まって言う、誰もではないが、夫は、女性というものを知る、実に最後の人物であると・・・僕は今夜思った。共有地で貴方を見かけた時、もし僕が貴方に話して、貴方が僕を笑ったら、僕はその手紙を焼いてしまえるのにと。」

  彼はそこに彼の湿った腕を伸ばしたまま、僕から目を反らしながら座った。僕は笑いたくないとは、思いもしなかった。それどころか、出来るなら、笑いたかった。

17

2021年12月29日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

   彼は誰か彼を押したかのように、安楽椅子に座り、「ベンドゥリクス、僕は何時も、一人の男が成し得る最悪の事、まさしく最悪の事態を、想定して来た・・・」僕には予想外、何処までも限りなく打ち沈み、無知故の平静、あの当時、僕は確かに、張り枠の針の上に居て然るべきだった。

  「貴方が僕を信用出来るのは、分かっている、ヘンリ。」それは可能で、僕は彼女が手紙を取って置いたのでは、と思った。僕はそんなに書いて来なかったが。それは作家が陥るプロフェッショナルならではの危険である。婦人は彼女たちの恋人の重要性を、過大視しがちで、彼女たちは分別のない字句が、五シリングに値付けされた自著の目録に記された「関心がある」が明らかになる時、その期待外れの日を、決して予知しない。

  「じゃあ、これをちょっと見て。」ヘンリが言った。

  彼は僕に手紙を差し出しーそれは僕の手書きのものではなかった。「続けて。それを読んでみて。」ヘンリは言った。それはヘンリの或る友人からで、彼は書いた。「貴方が助けようとしているその男は、159ヴィゴウ・ストゥリートゥ、サヴィッジという奴に該当するのではないか、と私は提案します。私は彼を有能で思慮深いもの、と思っています。それと彼の使用人は、普通にいるその種の奴らよりましで、厭らしくはないよう見えました。」

16

2021年12月28日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 もしかしたらチャンスがあるかも知れないという理由だけでも、僕は開戦を歓迎したかった。たとえそれが僅かであろうと、彼の側のちょっとした戦術の誤りの所為で、僕は勝っていたかも知れない。それに、僕が非常に強く勝ちたいと願ってからも、それ以前も、僕が生まれてこの方、一度も好機に恵まれたことはなかった。優れた本を書こうという願望でさえ、そう頑なに持ってはいなかった。

  彼はその赤い縁の付いた目で、僕を見上げ、言った。「ベンドゥリクス、僕は心配している。」僕はもはや、彼を贔屓にすることが出来なくなった。彼は苦悩の卒業生の一人と化した。彼は同じ学校に合格していながら、初めて僕は、対等な者として彼について考えた。僕は彼の机の上の、オクスフォードゥを背景にした、そのはしりの褐色の写真の一枚に見覚えがある。彼の父親の写真、それを見ながら、ヘンリに多少なりとも似ているか(それはほぼ同じ年代、四十半ばに写された)、いや、少しも似てはいないと僕は思った。それを違わせているのは、口髭ではなくーそれは、自信、森羅万象に精通していること、周りの事を熟知していることから来るヴィクトーリア朝の見掛けだった。と、突然、僕はまたもや親密な仲間意識を覚えた。僕は彼の父親(大蔵省にいた)を好きになろうとして来たのに、もっと彼を好きになった。僕たちは、他人同士だった。

  「貴方は何が気懸かりなの、ヘンリ?」

15

2021年12月27日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 ヘンリの書斎の中同様、これまで利用されたにしても、極めて稀だった、と僕は直ぐに感じた。ギボンのセットゥは、嘗て開かれたか、またスコットゥのセットゥは、只そこにあるだけかどうか、僕は疑った。なぜならそれはーおそらくーディスカス・スラウアのブロンズの模造品のように、彼の父親のものだったから。それにしても、彼の利用しない部屋の中では、彼は余計幸せそうだった。単にそこは彼のもの、彼の所有物という理由だけで。僕は辛辣さと羨望と共に思った。もし人が一つの物を確実に所有したら、人はそれをどうしようと自由だ。

  「フイスキ?」ヘンリが聞いた。僕は彼の目を思い出し、昔日やった以上に飲んでいるのだろうかと怪訝に思った。確かに彼が注ぎ出すフイスキは、気前のいいダブルだった。

  「何が貴方を悩ませているの、ヘンリ?」僕はその古参の文官に関する小説を、とっくに放棄してしまっていた。僕はもはや、コピイを探ろうともしなかった。

  「サラー。」彼は言った。

  二年前、と丁度そんな言い回しで、彼が言っていたら、僕はぎくっとしただろうか?いや、僕は大いに喜んだと思うー人は確かにどうしようもなく、騙すことが嫌になる。

14

2021年12月26日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 ーここは彼の環境に相応しくない。彼の目の白いところが充血しているのに気付いた。おそらく彼は、彼の眼鏡をちゃんと掛けずにいたんだ。ーずうっと、随分大勢の他人がいたし、或いは、それは涙の名残りだったのかも知れないが。「ベンドゥリクス、僕はここでは話せない。」彼は前に何処かで話す習慣でもあったかのように言った。

  「サラーは帰るだろうか?」

  「僕はそうは思わない。」

  僕は飲み代を払った。するとそれが、いっそうヘンリの心配の徴候を露わにした。ー彼は安易に他の人々の持て成しを受け入れたことはない。彼は、僕たち他の者が探し回っている間もなく、彼の掌に準備したお金を握って、車上の人になるのが常だった。公有地の通りは、未だ雨の中を走ったが、そこはヘンリの家に遠くはなかった。彼は、アン女王時代の扇形欄間の下の掛け金を外す鍵を持って、中に入り、呼んだ。「サラー。サラー。」僕は返事を待ち焦がれながらも、返事を恐れはしたが、誰も答えなかった。彼は言った。「彼女は未だ外出中だ。書斎に入って。」

  僕は一度も、書斎に入ったことはなかった。僕は決まって、サラーの友人だったし、僕がヘンリに会っても、それはサラーの縄張りの上でのことだった。調和と無縁、終わりも計画性もなく、あらゆる物が、まさしく同じ週に属しているように見えた彼女の居間。何故なら、過去の感覚、或いは過去の多感の象徴として、引き続き残すことを許された物は何もなかったから。全ての物は、そこで費(つい)えた。

13

2021年12月25日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

   「ベンドゥリクス、僕は心配なんだ。」

 「僕に話すといい。」

  彼に話しをさせるのは、ラム酒だ、と僕は期待した。それとも、彼について僕が如何に多くを知っているか、彼はある程度気付いたのか?サラーは誠実だったが、僕たちの経て来たような関係では、貴方は一つの事か或いは二つを拾い上げるしかない…彼には彼の臍の残物に奇体がある、と僕は知った。何故なら、僕自身の母斑が、以前サラーにそのことを思い出させたから。彼が近視に悩んでいたと僕は知っていたが、見知らぬ人相手に、眼鏡を着けようとはしない。(それで僕は、未だに、彼らの中に彼を見かけた事がない、赤の他人のままだった。)僕は彼の十時のお茶の好みを知り、僕は彼の睡眠の習慣まで知った。僕が既に、随分多くを知っているということに、もう一つの事実が、僕たちの関係を変えはしないということに、彼は気付いているのか?「彼は言った。「僕はサラーを心配している、ベンドゥリクス。」

  バーのドアが開き、僕にはその明かりの中に浮かび上がる激しく降る雨が見えた。小さい浮かれた男が飛び入り、「やあ、皆さん。」やはり誰も答えなかった。

  「彼女は病気?貴方が言うと思って・・・」

  「いや、病気じゃない。僕はそうは思っていない。」

彼は居心地悪そうに、辺りを見回した。

12

2021年12月24日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

その壁は、常套句で落書きされていた。「お前を地獄に落とす、家主、それにお前のデカ胸妻。」「全ての女衒(ぜげん)と売春婦どもへ、浮かれた梅毒と幸せな淋病を。」僕は急いで、また、元気のよい紙の長い旗とグラスのカチンという音の方へと出た。時に僕は、慰めのために余りにも接近し過ぎて、他の男達の中に、僕自身が反映されているのを見る。するとその時、僕は聖者や天使を信じられたらという、非常に大きい願望を持つ。僕はヘンリに、僕が見て来た二つの台詞を繰り返した。僕は彼を憤慨させたかったのに、彼が只「嫉妬は、恐ろしい行いだ。」と言った時、僕を驚かせた。

  「貴方はデカ胸妻についての一説のつもりで、言っているの?」

  「その両方とも。貴方が惨めな時、貴方は他の人々の幸せを羨む。」僕は国務省で学ぶ事を、今まで彼に期待したことはなかった。そしてそこで―表現の中にー僕のペンの外に、またもや辛辣さが漏れる。何とうっとうしい、つまらない特性か、この辛辣さは。もし僕ができるとすると、僕は愛情を籠めて書こう。もし僕が愛情を籠めて書ければ、僕はもっと違った男になるだろう。僕は愛を捨てようとしたのではない。しかし、突然バー―テイブルの光沢のあるタイル張りの表面を横切る何かを、僕は感じた。愛情と肩を並べる程、過激なものは何一つない、おそらく不運の道連れ以上のものも、何一つない、僕はヘンリに言った。「貴方は惨めなの?」

11

2021年12月23日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「ヘンリは重要な会議の前に、彼の息をすっきりさせるために、何時もコフィ・ビーンを食べるの?」彼女は彼女の頭を振り、静かに泣き始め、僕は勿論、その理由を心得ない振りをした。ー単なる疑問、それが、僕の性格について、僕を悩ませて来た。これはヘンリへの攻撃ではなかったし、非常に洗練された人々は、時にコフイ・ビーンを食べる・・・だから僕は続けた。 彼女はしばらく泣くと、眠りに就いた。彼女はぐっすり眠る人だったのに、僕は加えた攻撃通りに、彼女の眠る権限まで奪った。

  ヘンリは彼のラムをあっという間に飲み、藤色とオリンジの長い旗の間をみすぼらしくうろうろするばかりの彼の凝視。僕は尋ねた。「いいクリスマスだった?」

  「とても素晴らしかった。とても素晴らしかった。彼は言った。

  「家で?」ヘンリは僕の言葉の抑揚が、妙に聞こえたのか、僕を見上げた。

  「家?そう、もちろん。」

  「それでサラーは満足したの?」

  「うん。」

  「ラムをもう一杯飲む?」

  「僕の番だ。」

  ヘンリが飲み物を取って来る間、僕はお手洗いに入った。

10

2021年12月22日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 国防-僕は、貴方が貴方の片割れを憎み、どのような武器でも捜し求める時、その時その時の後に、それを笑うのが常である・・・僕の本の喜劇的要素、笑い草になった人物のためにコピー、またもやコピーの目的で、僕は只、ヘンリに組みして来ただけ、とサラーに熟慮の上で話した時、潮時はやって来た。彼女が僕の小説を嫌になり始めたのは、その時だった。彼女はヘンリ(僕はそれを否定することが出来なかった。)に非常に大きい忠誠心を抱き、あの雲で覆われた時間に、悪魔が僕の頭脳の咎を引き受けると、僕は無害なヘンリまで恨み、僕は小説を使って書くには生々し過ぎるエピサウドゥを捏造しようとする・・・サラーが、一度僕と共に一晩を過ごした時(書き手が彼の本の最後の言葉のために先んじて探し求めるように、僕はそのために先んじて探し求めた。)、僕は折々、一時(いっとき)に何時間も完全な愛のように思われたそのムードゥをぶち壊す出任せによって、突然その機会を台無しにしてしまった。二時近く、僕は拗(す)ねて眠りに落ち、三時に目覚め、彼女の腕の上に僕の手を置いて、サラーを起こした。僕はもう一度、万事見事に振舞おうとしていた、と僕は思う。僕の犠牲が、眠りと僕に対するあり余るほどの信頼で、ぼんやりして美しい彼女の顔つきを変えるまで。彼女は口論を忘れてしまい、僕は彼女の忘れっぽさの中にさえ、新たな動機を探った。我々人間が如何に捻じれているか、それでも尚、神が我々を創ったと彼らは言う。が、完璧な均衡化ほど単純で、空気ほど透明ではないどのような神をも、想像することは難しい、と僕は理解する。僕は彼女に言った。僕は五章について考えている内に、目が覚めてしまった。

9

2021年12月21日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

僕はヘンリと寸分違わず寝てはいなかったが、僕は次の極めて酷いことをした。僕が夕食にサラーを誘い出した最初の夜、僕は文官の妻の脳を突(つつ)いて、穴を開けんばかりの冷血な意志を持った。彼女は僕が何を狙っているか知らず、彼女は考え、僕は確信し、僕は彼女の家族の暮らし振りに心底興味を持ち、おそらくそれが、彼女の僕への好意を、最初に呼び覚ました。「ヘンリは何時に朝食をとるの?」僕は彼女に聞いた。彼は役所へ地下鉄、バス、それともタクシで行ったの?彼は夜、家に彼の仕事を持ち帰ったの?彼はそれに王室の紋章の付いた書類鞄を持っていた?僕たちの友情は、僕の関心に基づいて開花し、彼女はたいそう喜んだので、誰もがヘンリを真面目に扱うべきである。ヘンリは、しかし象が重要であるように、どちらかと言えば重要で、彼の局の大きさ故に、重要である。救いようもなく、不真面目を貶(けな)されっぱなしという重要のとんでもない類がある。ヘンリは年金省ー後に内務省になった、内の重要な事務官補だった。

8

2021年12月20日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

   「彼女は映画館にいるの?」僕は尋ねた。

 「ああ、いや、彼女は今までほとんど行ってないよ。」

 「彼女は何時も行ってたんじゃ。」

  ポンテフラクトゥ入江は、未だ紙の長い旗や紙のベルや市場の華やかさを偲ばせるもの、藤色やオリンジでクリスマスのために飾られ、若い女主人は彼女の客を軽く見て、彼女の胸をバーに凭せかけた。

  「素敵。」ヘンリが言った、そのつもりもなく。幾分当惑した様子、臆病で、彼の帽子を掛ける所を探して、辺りをじろじろ見た。彼が以前、パブリック・バーに行った中で最も近いのは、彼が省の彼の同僚と一緒に、昼食を食べたノーサムバーランドゥ・アヴェニューから離れた焼き肉リストゥラントゥだった。という印象を得た。

 「貴方は何を飲みますか?」

 「僕はフイスキでかまわないよ。」

 「僕も。だけど貴方はラムを付き合わなければいけませんよ。」

  僕たちはテイブルに座り、それぞれののグラスを弄んだ。僕はヘンリに言わなければならないことは、さほどなかった。もし僕が1939年に、主役として古参の文官を扱った小説を書き始めていなければ、ヘンリもサラーもよくよく知ろうとして、骨を折ろうとしたかどうか、僕は疑わしく思う。ヘンリ・ジェイムスは嘗て、ウオルタ・ベサントゥとの討論の中で、十分な才能を持った若い婦人は、近衛連隊の兵舎の食堂の窓をひたすら越える必要があり、近衛歩兵旅団に纏(まつ)わる小説を書くために、内部に目を向けるにしても、彼女の編の或る場面では、もし単に詳細に関して照合するつもりなら、彼女は近衛連隊と寝る必然性を探ろうとしただろうに、と僕は考える。

7

2021年12月19日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

「僕たちが貴方に出会ってから随分経つね、ベンドゥリクス。」何かしら分けがあって、僕はその異名によって知られた男である。-僕は、僕の文学上の親たちが僕に寄せた、僕の友人たちはかなり気取っていると思うモーリスを、万事有用であれ、名付けられない方がよかった。

 「久しぶりだ。」

 「どうしたことか、一年以上ーになるね。」

 「6月、1944年の」僕は言った。

 「それ以来かーそう、そう。」馬鹿者、僕は思った、一年と半年の間に、何一つ変だと思わないなんて馬鹿だ。僕たちの両「脇」を五百ヤードゥも、ぺしゃんこになった草は隔てていなかった。サラーに話したところで、何も彼に起こらなかったのだ。「ベンドゥリクスはどうしている?ベンドゥリクスを招待するのはどう?」彼女の返事は、嘗て彼には・・・風変り、逃げ口上で、怪しく思われなかったのか?僕は池の中の石同然、完全に彼らの視界から抜け落ちてしまっていた。さざ波は一週、一か月の間、サラーを悩ませたのかも知れない、と僕は思いはするが、ヘンリの目隠しは、しっかりと括りつけられていた。僕は僕がそれから利益を得た時でさえ。彼の目隠しを、仇(あだ)と思って来た。他も又利益を得られる、と知っていた。

6

2021年12月18日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「ベンドゥリクス」彼は愛情を籠めて言ったが、それでも世間は言っただろう。彼には憎悪の理由があり、僕にはないと。

  「貴方は何をしようとしてるの、ヘンリ、雨の中?」誰でも焦(じ)らしたくて抑えられない衝動にかられる男たちがいる:誰一人受け容れない男達、その美徳。彼は口籠りながら言った。「ううん、僕は少し外気に触れたくて。」思いがけない一陣の風と雨の最中(さなか)、北の方角へ輪を描いて持って行かれないように、彼はどうにかこうにか彼の帽子をしっかり押さえた。

  「サラーはどうしてる?」そうしなくてもそれは奇妙に思われたかも知れないから、僕は聞いた。彼女が病気、不幸せ、臨終以上に僕を喜ばせるものは何もなかったが。僕はあの当時、彼女が経たどんな苦悩も僕の持ち物を軽くし、仮に彼女が死んだら、僕は自由になれるだろうと思い遣った。僕はもう人が、僕の卑しい暮らし向き故に、想像してしまうどんなことも思うまい。僕は哀れで無邪気なヘンリを好ましくさえ感じられて、僕は思うに至った、もし彼女が死んだらと。

    彼は言った「ああ、彼女は夕時何処かへ出かけている。」すると又、僕の心の中のあの悪魔を仕事に差し向けた。ヘンリが他の質問者に、ちょうどそんな風に、返事をしなければならなかった以前が思われる。しかし僕だけは、サラーが何処にいるか知っていた。「一杯やろうか?」僕は尋ね、僕の不意打ちに彼は僕に近付き、自ら歩調を合わせた。僕たちは前に、彼の家の外で、一度も飲んだことはなかった。

5

2021年12月17日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

僕は雨を突いて散歩に出かけ、近所の居酒屋で一杯やろうと思った。少し混み合ったホールは、 見知らぬ人の帽子やコウトゥばかりで、僕は誰か他の人の傘を偶々(たまたま)手に取ったー二階の男が、仲間を招待していた。それから僕はステインドゥーグラス・ドアを後ろ手に閉め、1944年に爆破され、一度も修繕していない階段を注意深く降りた。僕にはその時を思い出す理由があり、どれほどステインドゥ・グラスが頑丈で不格好でヴィクトーリア朝風で、僕たちの祖父自ら為そうとしたように、衝撃に立ち向かった。

 僕は公有地を横切り始めるやいなや、違う傘を掴んだことを自覚した。それは漏れ穴を生じ、雨が僕の防水レインコウトゥの襟の下に流れ落ちた。程なくして僕はヘンリを見かけたのだ。僕はいとも容易く彼を避けられた。彼は傘を持たず、ラムプの灯かりで、僕には彼の目が雨で見えなくなっている、と見受けられた。黒い葉のない木々は、何の守りにもならなかった。それは壊れた送水管のように周りに立ち尽くし、雨は彼のこわばった黒っぽい帽子から滴り落ち、彼の黒い文官用オウヴァコウトゥを流れとなって伝わり落ちた。もし僕が彼を追い越して真っ直ぐ歩いて行けば、彼は僕に目をくれようともしなかっただろう、僕は歩道から二フィートゥ避(よ)けて通ることで、避け難くした。何れにせよ僕は声をかけた。「ヘンリ、貴方はおよそ見ず知らずの人だ。」僕たちが古い友達であるかのように、彼の目が輝くのを見た。

2021年12月16日木曜日

The End of the Affair/ Graham Greene 成田悦子訳

 何故彼に話しかけるべきだったか?一時(いっとき)でも憎悪が大きく広がらなければ、どのような人間への告発の中でも使えない。僕はヘンリーを憎んだ―僕は彼の妻サラーもまた憎んだ。そして彼は、僕は推察する、あの晩の出来事の後、間もなく、僕を憎むために現れた。彼は確かに折々に、彼の妻やその他の者を憎むしかなく、あの当時、誰かを信じるに足りず、僕たちは幸運だった。そう、これは愛についてというより断然、憎悪の記録である。よってもし僕がヘンリとサラーの好意に甘えて、何か言うために登場すれば、僕は期待に応えましょう。僕は偏見を向こうに回して書いている。何故なら、近い―真実、僕の近い―憎悪の表明でさえ、選ぶことは僕のプロフェッショナルな自負だから。

 こんな夜に外でヘンリに会うのは、思いがけなかった。彼は彼の慰めとなる人を好み、つまるところー或いは寧ろ、と僕は思った―彼はサラーを所有した。僕にとって慰めは、悪しき場所か時の、悪しき記憶に似ている。人は寂しければ、人は苦痛に寄り添う。僕が不道徳をして過ごしたベッドゥの中にも、居間ー南ー公有地の横、他の人々の調度の名残りの中に、あり余るほどの慰めがあった。

2021年12月14日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

                                             To C

男は未だj実在しない彼の心の中の場所を持ち、それらが実在を確保してもよいという指図に、それらの中に悩みながら入り込む。

                レオン・ブロイ


The End of the Affair

Graham Greene

成田悦子訳


BOOK ONE

一つの物語は、始まりは言うまでもなく、終わりさえ持たない。思いのまま人は、振り返り、同じく前方を見晴らし、経緯(いきさつ)のその瞬間を選ぶ。「人は、選ぶ」と、プロフェッショナルな作家の揺らぐ自負から、僕は言う。その人ー彼は何かにつけ、真正面から注目される中ーその専門的技量ゆえに称えられて来たが、僕自身の事実に照らし合わせて、公有地のあの真っ暗で湿った一月の夜、1946年、降る雨の広大な川を傾きながら渡ろうとするヘンリ・マイルズの様子を選ぶだろうか。それとも、こうした像が僕を選んだのか?僕の職業の慣例に従うと、まさにそこで始まると、好都合であるし、正しいが、もしあの時、僕が神を信じていたのなら、僕は僕の肘を引っ張る手、暗示、「彼に話しかけて。彼は、まだ貴方と会ってない。」を信じても、また良かった。

2021年12月4日土曜日

My Lost City34/Francis Scott Key Fitzgerald

もっといいお話にしたいので、今日から少しずつ手を加えます。2022/10/27~11/29


My Lost City

Francis Scott Key Fitzgerald

There was first the ferry boat moving softly from the Jersey shore at dawn―the moment crystallized into my first symbol of New York. Five years later when I was fifteen I went into the city from school to see Ina Claire in The Quaker Girl and Gertrude Bryan in Little Boy Blue. Confused by my hopeless and melancholy love for them both, I was unable to choose between them一so they blurred into one lovely entity, the girl. She was my second symbol of New York. The ferry boat stood for triumph, the girl for romance. In time I was to achieve some of both, but there was a third symbol that I have lost somewhere, and lost for ever.I found it on a dark April afternoon after five more years. 

'Oh, Bunny,' I yelled. 'Bunny!' 

そこには、初め、夜明けにジ+ージ海岸から、音もなく滑り出すフェリ・ボウトゥがあった。一 その瞬間は、僕のニュ一・ヨークの最初の象徴として結晶するのだ。五年後、僕が15になった時、ザ・クエィカ・ガールの中のアイナ・クレアやザ・リトゥル・ボゥイ・ブルーの中のガートゥルードゥ・ブライアンに会いたくて、僕は、学校から街中(まちなか)に通い詰めた。彼女達のどちらも追い求める、僕の為す術のない、切なく熱い思いに当惑し、僕は、彼女達の間(はざま)にあって、選ぶに選べなかった。一挙句の果て、彼女達は、その娘(むすめ)、一人の魅力的な存在の内に影を潜めた。彼女は、僕のニュ一・ヨークの二番目の象徴だった。フェリ・ボウトゥは成功の姿を、その娘(むすめ)は恋の姿をしていた。その内、僕は、両者の何れかを手に入れる筈だった。が、何処かで見失い、やがて永遠に失ってしまった三番目の象微が、そこに現れた。

更に五年後、暗い四月の午後、僕はそれを探し当てた。

「オウ、バニ。」僕は叫んだ。「バニ!」

He did not hear me―my taxi lost him, picked him up again half a block down the street. There were black spots of rain on the sidewalk and I saw him walking briskly through the crowd wearing a tan raincoat over his inevitable brown get-up; I noted with a shock that he was carrying a light cane.

彼は、僕に耳を貸さなかった―僕のタクシは、彼を見失い、通りを半ブロック下って、再び彼に同行した。そこで、歩道は雨の黒い斑点で覆われ、僕は、彼らしいお決まりの茶の服装の上に、黄褐色のレインコゥトゥを着て、人込みを颯爽と歩く彼を見た。彼は、ほっそりとしたスティクを持っていたので、僕は、衝撃と共に注目した。

“Bunny!” I called again, and stopped. I was still an undergraduate at Princeton while he had become a New Yorker. This was his afternoon walk, this hurry along with his stick through the gathering rain, and as I was not to meet him for an hour it seemed an intrusion to happen upon him engrossed in his private life. But the taxi kept pace with him and as I continued to watch I was impressed: he was no longer the shy little scholar of Holder Court―he walked with confidence, wrapped in his thoughts and looking straight ahead, and it was obvious that his new background was entirely sufficient to him. I knew that he had an apartment where he lived with three other men, released now from all undergraduate taboos, but there was something else that was nourishing him and I got my first impression of that new thing the Metropolitan spirit.

「バニ!」僕はもうー度呼び掛け、そして止めた。僕は、末だプリンストンの一学生だったが、彼は、ニューヨーカに相応しかった。これは、彼の午後の散歩だ。勢いを増す雨を突き、彼のスティクを持ったこの急ぎ足、それに、僕は、彼にー時間会う予定はなかったので、自らの私生活に専心する彼に偶然出食わした事は、侵害のように思われた。それでもタクシは、歩調を合わせ、僕は、見守り続けるに連れ、自ずと感心した。彼は、もはや、ホゥルダ・コートゥの内気な目立たない学生ではなかった。―彼は自信を漲らせて歩いた。自身の思索で身を包み、真直ぐ前を見据えながら、それに、彼の新しい背景は、彼にはすべからく満ち足りたものであるということ、それは明らかだった。彼が他の三人の男と暮らすアパートゥを、彼は持ち、今や、あらゆる大学生としての禁制から解放されているんだと、僕は悟った。 何れにせよ、そこには、彼を育んでいる他の何かがあり、僕は、その新しい事実、都会人の気風といった僕の第ー印象を得た。

Up to this time I had seen only the New York that offered itself for inspection - I was Dick Whittington up from the country gaping at the trained bears, or a youth of the Midi dazzled by the boulevards of Paris. I had come only to stare at the show, though the designers of the Woolworth Building and the Chariot Race Sign, the producers of musical comedies and problem plays, could ask for no more appreciative spectator, for I took the style and glitter of New York even above its own valuation. 

この時まで、僕は、見物のためにそのものを提供するニューヨークだけを見て来たー僕は訓練された熊をポカンと見ているお上りさんのディック・フィッティントンか、はたまたパリの大通りに目が眩んだミディの若者だった。僕は、ショウに見入るためにだけやって来た。尤(もっと)も、ウールワース・ビルディングのデザイナやチャリアトゥ・レイス・サイン、ミュージカル・コメディのプロデューサや問題劇は、この上なく目の肥えた観客を招けはしても、僕は、それ自体の評価の上に尚、ニュー・ヨークの様式や華麗さを求めたんだもの。

But I had never accepted any of the practical anonymous invitations to debutante balls that turned up in an undergraduate's mail, perhaps because I felt that no actuality could live up to my conception of New York's splendour. Moreover, she to whom I fatuously referred as 'my girl'was a Middle Westerner, a fact which kept the warm centre of the world out there, so I thought of New York as essentially cynical and heartless — save for one night when she made luminous the Ritz Roof on a brief passage through.

それにしても、僕は、学部学生の郵便物の中に、折り返した舞踏会デビューへのありきたりの匿名の招待状の一枚も、全く受け取ったことがないのは、おそらく、僕が、どんな現実も、ニュー・ヨークの光輝から成る僕の考えを実践できないと感じていたからだ。その上、僕が愚かにも「マイ・ガール」と呼ぶ彼女は、米国中西部出身者で、そこ以外、世界の最も居心地の悪い所にして置くという事実、だから僕は、本質的に冷笑的で薄情なのでー短時間の通過時、彼女がリッツの屋上を明るくした時、一夜のために貯蓄するニュー・ヨークを思った。

Lately, however, I had definitely lost her and I wanted a man's world, and this sight of Bunny made me see New York as just that. A week before, Monsignor Fay had taken me to the Lafayette where there was spread before us a brilliant flag of food, called an hors d'oeuvre, and with it we drank claret that was as brave as Bunny's confident cane -but after all it was a restaurant, and afterwards we would drive back over a bridge into the hinterland. 

最近、とかく、僕は明らかに彼女をなおざりにしがちで、それどころか僕は、男の世界を求め、バニに属するここの光景は、まさにそのまま、ニュー・ヨークを僕に見せた。一週間前、モンシニョール ・フェイは、食物の光り輝く旗、オルドゥーヴルと呼んだ、を僕たちの前に広げてみせるラファイアットゥに僕を連れて行き、僕たちは、それと一緒に、バニの自信に満ちたスティクと同様、恐れを知らぬクラレトゥを飲んだーが結局、それはいちレスタラントゥであり、その後(あと)僕たちは、後背地の中へと橋を越えて車で引き返すのだ。

The New York of undergraduate dissipation, of Bustanoby's, Shan-ley's, Jack's, had become a horror, and though I returned to it, alas, through many an alcoholic mist, I felt each time a betrayal of a persistent idealism. My participance was prurient rather than licentious and scarcely one pleasant memory of it remains from those days; as Ernest Hemingway once remarked, the sole purpose of the cabaret is for unattached men to find complaisant women. All the rest is a wasting of time in bad air.

学生遊興の、バスタノビの、シャン―リの、ジャックのニュー・ヨークは、恐怖の様相を呈し、そして僕は、そこに帰って行きはしたが、ああ、幾重ものアルコールの靄(もや)を押し分けて、僕は、その度毎に、固執する理想主義の背信が身に沁みた。僕の関係者は、放蕩なと言うより寧ろ好色で、それの愉快な記憶一つ、当時から殆ど残っていない。アーネストゥ・ヘミングウェイが、嘗て忠告したように、キャバレイの唯一の目的は、無所属の男たちに好意的な女を見つけることにある。全て休養というものは、酷い空気の中での時間潰しだ。

But。that night, in Bunny's apartment, life was mellow and safe, a finer distillation of all that I had come to love at Princeton. The gentle playing of an oboe mingled with city noises from the street outside, which penetrated into the room with difficulty through great barricades of books; only the crisp tearing open of invitations by one man was a discordant note. I had found a third symbol of New York and I began wondering about the rent of such apartments and casting about for the appropriate friends to share one with me.

しかしあの夜、バニのアパートゥメントゥで、生きることは、芳醇で恙(つつが)なく、僕がプリンストンで愛すに至った全ての見事なまでの蒸留だった。戸外の通りからの、街の喧騒と混じり合ったオゥボゥのゆるやかな演奏、それは、書籍の巨大なバリケィドゥを通過する困難を伴いながらも、部屋の中に浸透した。只、一人の男によるバリバリと引き千切る招待状の開封が耳障りな音だった。僕は、ニュー・ヨークの三つ目の象徴に気付き、そして、僕は、こんな賃貸アパートゥメントゥに疑問を持ち、僕と一部屋を共にするのにふさわしい友人を求めることに目を向けるようになった。

Fat chance - for the next two years I had as much control over my own destiny as a convict over the cut of his clothes. When I got back to New York in 1919 I was so entangled in life that a period of mellow monasticism in Washington Square was not to be dreamed of. The thing was to make enough money in the advertising business to rent a stuffy apartment for two in the Bronx. The girl concerned had never seen New York but she was wise enough to be rather reluctant. And in a haze of anxiety and unhappiness I passed the four most impressionable months of my life.

実のある巡り合わせー翌二年間、彼の衣服の切断に対する有罪判決と同じくらい、僕自身の運命の数知れぬ支配を許した。僕が、1919年、ニュー・ヨークに戻った時、僕は、生きるにはあまりにも混乱を来していたので、ワシントン広場の熟した修道主義のピァリアドゥは、夢想されることもなかった。問題は、ブリンクスで二人用の風通しの悪いアパートゥメントゥを借りるために広告店で十分なお金を作ることだった。当の恋人は、ニュー・ヨークを一度も訪ねなかったが、彼女は、賢明過ぎてかなり気が進まないようだった。そうして、不安と不幸の靄(もや)の中で、僕は、僕の生涯で、最も印象的な四カ月を過ごした。

New York had all the iridescence of the beginning of the world. The returning troops marched up Fifth Avenue and girls were instinctively drawn east and north towards them—we were at last admittedly the most powerful nation and there was gala in the air. As I hovered ghost-like in the Plaza Red Room of a Saturday afternoon, or went to lush and liquid garden parties in the East Sixties or tippled with Princetonians in the Biltmore Bar, I was haunted always by my other life—my drab room in the Bronx, my square foot of the subway, my fixation upon the day's letter from Alabama—would it come and what would it say?—my shabby suits, my poverty, and love. 

ニュー・ヨークは、何もかもこの世の始まりの玉虫色がかっていた。帰還軍隊は、五番アヴェニュー(南北の通り)を行進して北上し、女たちは、本能的に彼らの方へと東や北に引き寄せられたー僕たちはついに許されて、最も勢力の漲(みなぎ)る国家を成し、どこもかしこもお祭り騒ぎだった。僕は、亡霊ーの如く、土曜の午後のプラザのレドゥ・ルームの中をうろつくか、或いは、東60の酒と液体ガードゥン・パーティに向かうか、或いは、ビルトゥモア・バーのプリンストン関係者と一緒に飲むかだったのだが、僕は、何時も僕のもう一つの生活ーブロンクスの僕のつまらない部屋に取りつかれ、地下鉄の僕のくそ真面目な足取り、アラバマからのその日の手紙に向ける僕の凝視ーそれは届くのか、それは何を言おうとしているのか?ー僕のみすぼらしいスーツ、僕の窮乏、そして愛情。

While my friends were launching decently into life I had muscled my inadequate bark into midstream. The gilded youth circling around young Constance Bennett in the Club de Vingt, the classmates in the Yale-Princeton Club whooping up our first after-the-war reunion, the atmosphere of the millionaires' houses that I sometimes frequented—these things were empty for me, though I recognized them as impressive scenery and regretted that I was committed to other romance. 

僕の友人たちが、人並みに世間に出て行こうとしている間、僕は流れの真っ只中を、僕の場違いな遠吠えを押し分けて進んで来た。クラブ・ドゥ・ヴィントゥで若いコンスタンス・ベネットゥの周りを取り囲む上辺だけ立派な若者、僕たちの戦-後初めての再会に歓声を上げるイエィル‐プリンストン・クラブの級友たち、僕が、時に付き合う百万長者の家々の雰囲気、ーこうした事は、僕には虚しく、僕は、それらを印象的な景観として認め、僕がもう一つの物語に傾倒していることを悔いはしたが。

The most hilarious luncheon table or the most moony cabaret—it was all the same; from them I returned eagerly to my home on Claremont Avenue—home because there might be a letter waiting outside the door. One by one my great dreams of New York became tainted. The remembered charm of Bunny's apartment faded with the rest when I interviewed a blowsy landlady in Greenwich Village.She told me I could bring girls to the room, and the idea filled me with dismay—why should I want to bring girls to my room?—I had a girl. 

最も楽しい昼食のテイブル、或いは最も夢心地のキャバレイーそれは、皆同じだった。それらから、僕は、クレアモントゥ・アヴェニューの我が家に、熱心に戻ったー家、そこには、ドアの外で待つ一通の手紙があるかも知れなかったから。一つずつ僕のニュー・ヨークの大いなる夢又夢が、腐って行った。バニのアパートゥメントゥの懐かしい魅力が、グリーンウイチ・ヴィリジのだらしない女主人を訪問した時、休息と共に姿を消した。彼女は、部屋に女たちを連れて行けますよ、と僕に話し、その入れ知恵は、僕を呆れ返らせたーどうして僕が、僕の部屋に女を連れて行きたい?ー僕には女がいる。

I wandered through the town of 127th Street, resenting its vibrant life; or else I bought cheap theatre seats at Gray's drugstore and tried to lose myself for a few hours in my old passion for Broadway. I was a failure—mediocre at advertising work and unable to get started as a writer. Hating the city, I got roaring, weeping drunk on my last penny and went home…

僕は、127ストゥリートゥ(東西の通り)の街中(まちじゅう)をぶらついた。そのぞっとする人生を憤慨しながら、又他にも、僕は、グレイのドゥラグストーで安劇場の席を買い、僕のブロウドゥウエイへの昔の熱情に浸って、二、三時間我を忘れようとした。僕は、広告業では、落第ー二流だったし、一人前のライターとしてスタートの位置にも着けなかった。街に嫌気が差し、僕は、僕の最後のペニーをはたいて喚(わめ)くことを、酔い潰れては涙を流すことを覚え、そして家に向かった・・・

…Incalculable city. What ensued was only one of a thousand success stories of those gaudy days, but it plays a part in my own movie of New York. When I returned six months later the offices of editors and publishers were open to me, impresarios begged plays, the movies panted for screen material. To my bewilderment, I was adopted, not as a Middle Westerner, not even as a detached observer, but as the archetype of what New York wanted. This statement requires some account of the metropolis in 1920.

・・・移ろいやすい街。続いた何かは、あの俗悪な日々の千の成功物語の内のほんの一つとはいえ、それは、僕自らのニュー・ヨークに於ける映画の中で、一つの役割を果たす。僕は、六か月後、編集者の事務所に戻り、出版社が、僕に寛大だった時、監督は、演技を求め、映画は、スクリーンの人材を待ち望んでいた。僕の戸惑いに対して、僕は、選任された。中西部出身者としてではなく、冷静な監視者としてでさえない、しかしニュー・ヨークが何を求めるかの典型として。この話には、1920年の大都市についての何らかの説明が要る。

There was already the tall white city of today, already the feverish activity of the boom, but there was a general inarticulateness. As much as anyone the columnist F.P.A. guessed the pulse of the individual crowd, but shyly, as one watching from a window. Society and the native arts had not mingled—Ellen Mackay was not yet married to Irving Berlin. Many of Peter Arno's people would have been meaningless to the citizen of 1920, and save for F.P.A.'s column there was no forum for metropolitan urbanity.

そこは、既に今日の背の高い白人の都市、既に新興の熱っぽい活気が漲ってはいたが、そこには、漠然とした不確実性があった。誰もと同様、コラムニストゥF.P.Aは、個別的大衆の鼓動を強く感じ取ったが、しかし、窓から見物する者のように遠慮して。社会と生え抜きの芸術は、混じり合ってはいなかったーエレン・マッケイは、未だアーヴィン・バーリンの許へ嫁いではいなかった。ピータ・アルノの人々の多くは、1920年の市民には無意味だったのだろうが、大都市の洗練された住人向けの公開討論を、そこで催さなかったF.P.A.のコラムを保存している。

Then, for just a moment, the “younger generation” idea became a fusion of many elements in New York life. People of fifty might pretend there was still a four hundred, or Maxwell Bodenheim might pretend there was a Bohemia worth its paint and pencils—but the blending of the bright gay, vigorous elements began then, and for the first time there appeared a society a little livelier than the solid mahogany dinner parties of Emily Price Post. If this society produced the cocktail party, it also evolved Park Avenue wit, and for the first time an educated European could envisage a trip to New York as something more amusing than a gold-trek into a formalized Australian Bush.

それから、瞬(またた)く間に、「ヤンガ・ジェナレイシャン」という認識が、ニュー・ヨーク生活の幾つもの要素の融合を成し遂げた。50の人々が、そこにはまだ400いると言い張ってもかまわなかったし、又、マクスウエル・ボウデン・ハイムが、そこには、ボヘミア価値、その絵具と筆ー何れにせよ輝かしい同性愛(ゲイ)の一体化があると言い張ってもよく、精力的本領は、、その時発起し、初めてそこにエミリー・プライス・ポウストゥの堅固なマハガニー晩餐会より少し活気のある社会を垣間(かいま)見せた。仮にこの社会が、力クテイル・パーティを演出したら、それも又、パーク・アヴェニュー・ウイトゥを進化させ、そして初めて、教育されたイゥァロプ人は、形式的オーストゥレイリアの藪に分け入る金―小旅行より何かもっと面白いものとして、ニュー・ヨークへの旅を思い描けたろう。

For just a moment, before it was demonstrated that I was unable to play the role, I, who knew less of New York than any reporter of six months' standing and less of its society than any hall-room boy in a Ritz stag line, was pushed into the position not only of spokesman for the time but of the typical product of that same moment. I, or rather it was “we” now, did not know exactly what New York expected of us and found it rather confusing. Within a few months after our embarkation on the Metropolitan venture we scarcely knew any more who we were and we hadn't a notion what we were. 

瞬く間に、僕が、任務を果たせなかったと論証される前、リッツ雄鹿戦闘部隊のホール―ルーム・ボウイより、その社会について殆ど、六カ月立ったままのどんなリポータよりニュー・ヨークについて殆ど無知だった僕は、時流向けスポウクスマンについてだけでなく、その同じ瞬間の典型的な創作品についても、局面へと突き動かされた。僕は、と言うより寧ろ、それは今や、「僕たち」は、だったが、ニュー・ヨークが、僕たちに何を期待したか、を必ずしも分かってはいなかったし、寧ろそれに混乱を覚えた。僕たちの大都市冒険的事業への乗船後、数カ月以内では、僕たちが何者かを、それ以上殆ど僕たちは知らなかったし、僕たちがどれ程の者か、僕たちは、見解を持たなかった。

A dive into a civic fountain, a casual brush with the law, was enough to get us into the gossip columns, and we were quoted on a variety of subjects we knew nothing about. Actually our “contacts” included half a dozen unmarried college friends and a few new literary acquaintances—I remember a lonesome Christmas when we had not one friend in the city, nor one house we could go to. Finding no nucleus to which we could cling, we became a small nucleus ourselves and gradually we fitted our disruptive personalities into the contemporary scene of New York. Or rather New York forgot us and let us stay.

都市の源泉への飛び込み、法律相手の思いがけない小競り合いは、僕たちをゴシップ欄に陥れるのに十分で、僕たちが何も知らなかった様々な話題に、僕たちは、引き合いに出された。現に、僕たちの「付き合い」は半ダースの未婚の学友や二、三の新しい文学仲間ー僕たちが街に友達の一人も、又、僕たちが尋ねられる家一軒も持たなかった時、一人っきりのクリスマスを、僕は覚えている。僕たちが執着できる中心が見当たらないまま、僕たちは、つまらない自己執着の状態に陥り、徐々に僕たちは、ニュー・ヨークの同時代の光景の中に、僕たちの分裂した人格をはめ込んだ。というより寧ろ、ニュー・ヨークは、僕たちを忘れて置きながら、僕たちを留まらせた。

Thi s is not an account of the city's changes but of the changes in this writer's feeling for the city. From the confusion of the year 1920 I remember riding on top of a taxicab along deserted Fifth Avenue on a hot Sunday night, and a luncheon in the cool Japanese gardens at the Ritz with the wistful Kay Laurel and George Jean Nathan, and writing all night again and again, and paying too much for minute apartments, and buying magnificent but broken-down cars. The first speak-easies had arrived, the toddle was passe, the Montmartre was the smart place to dance and Lillian Tashman's fair hair weaved around the floor among the enliquored college boys. 

これは、都市の変化ではなく、都市に対するこの執筆者の感覚の変化の報告である。1920年の混迷から、僕は、熱狂的日曜の夜に人影のない五番アヴェニューをタクシの先端に乗ったこと、それに物思いに沈んだケイ・ローレルやジョージ・ジーン・ネイサンとのリッツの落ち着いた日本庭園での昼食会、それに何度も何度も徹夜して書いたこと、それに取るに足りないアパートゥマントゥのために随分たくさん支払ったこと、それに素晴らしいとはいえ、ポンコツの車を買ったことを覚えている。初対面の話の気楽さには到達し、よちよち歩きは時代遅れで、モンマルトルは、ダンスをするには気の利いた場所で、リリアン・タシュマンの金髪は、フロアを囲む大学生たちの間を縫うように進んだ。

The plays were “Declassee” and “Sacred and Profane Love”, and at the Midnight Frolic you danced elbow to elbow with Marion Davies and perhaps picked out the vivacious Mary Hay in the pony chorus. We thought we were apart from all that; perhaps everyone thinks they are apart from their milieu. We felt like small children in a great bright unexplored barn. Summoned out to Griffith's studio on Long Island, we trembled in the presence of the familiar face of the “Birth of a Nation”; later I realized that behind much of the entertainment that the city poured forth into the nation there were only a lot of rather lost and lonely people. 

芝居は、「デクラスィ―(退役)」「神聖にして世俗的愛」又、真夜中の遊戯では、あなたは、マリアン・デイヴィ―ズと肘を絡ませて踊ったり、多分、ポウニ・コーラスで溌剌としたメアリ・ヘイをピックアップしたりする。僕たちは、僕たちがその全てから離れていると思った。多分、彼らは、彼らの境遇からかけ離れていると誰もが思う。僕たちは、やけに明るい未探検の納屋の中の幼い子供のように感じた。ロング・アイランドゥの上のグリッフィスの放送室に招集され、僕たちは、「国家の生誕」という打ち解けた表情に直面して身震いした。後日、僕は、多くのエンターテインマントゥの背後で、都市は、国家の中に前方を注ぎ込むということ、そこには、只、たくさんの、寧ろ、道に迷い、孤立した人々がいるだけだと悟った。

The world of the picture actors was like our own in that it was in New York and not of it. It had little sense of itself and no centre: when I first met Dorothy Gish I had the feeling that we were both standing on the North Pole and it was snowing. Since then they have found a home but it was not destined to be New York.

映画俳優の世界、それはニュー・ヨークにいながら、それ(ニュー・ヨーク)製ではない僕たち自身に似ていた。それは、それ自身の意識はほとんど持たず、中核がない。僕が、最初にドロスィ・ギシュに会った時、僕たちは揃って北極に立っていて、そこに雪が降っているという感触を抱いた。それ以来、彼らは、一軒の家を探し出したところで、それがニュー・ヨークだと運命づけられなくなった。

When bored we took our city with a Huysmans-like perversity. An afternoon alone in our “apartment” eating olive sandwiches and drinking a quart of Bushmill's whisky presented by Zoe Atkins, then out into the freshly bewitched city, through strange doors into strange apartments with intermittent swings along in taxis through the soft nights.

うんざりすると、僕たちは、ユイスマンスーつむじ曲がりのような、を僕たちの街に連れて来た。オリーヴ・サンドゥウイッティを食べながら、ゾウ・アトゥキンスに贈られたブシュミルのウィスキ、一クオートゥを飲みながら、僕たちの「アパートゥマントゥ」で1人きりの午後、その時、新たに魔法をかけられた街の中を通り抜け、見知らぬアパートゥマントゥの中の見知らぬドアを通して、静かな夜じゅう、タクシの中を伝って断続的にスイングする。

At last we were one with New York, pulling it after us through every portal. Even now I go into many flats with the sense that I have been there before or in the one above or below—was it the night I tried to disrobe in the Scandals, or the night when (as I read with astonishment in the paper next morning) “Fitzgerald Knocks Officer This Side of Paradise”? Successful scrapping not being among my accomplishments, I tried in vain to reconstruct the sequence of events which led up to this denouement in Webster Hall. 

ついに、僕たちは、あらゆる橋門を通って、僕たちの後ろにそれを引き寄せながら、ニュー・ヨークと一体化した。今でも、僕は、前にそこへ行ったことがあるという感覚と共に、多くのフラトゥに入るか、或いは上だったか下だったかその一つの中でーそれは、僕がスカンドゥルの中で脱がせようとした夜だったか、或いは、(僕は、翌朝、驚いて新聞に読み入るように)、「フィッツジェラルドゥ、『パラダイスのこちら側』の幹事をこきおろす」夜だったか?、僕は、僕の功績の中にない成功の断片、ウエブスタ・ホールで、この大団円に導いた出来事の連続を虚しく再現しようとした。

And lastly from that period I remember riding in a taxi one afternoon between very tall buildings under a mauve and rosy sky; I began to bawl because I had everything I wanted and knew I would never be so happy again.It was typical of our precarious position in New York that when our child was to be born we played safe and went home to St. Paul—it seemed inappropriate to bring a baby into all that glamour and loneliness. But in a year we were back and we began doing the same things over again and not liking them so much.

そして僕は、藤色とバラ色の空の下、非常に高いビルディングの真ん中で、或る午後、タクシに乗り込んだのを覚えているその時期からやっと、欲しかったもの全てを僕は持ち、僕は二度とこれ程幸せにはならないだろうと得心したので、大声で僕は叫び出した。それは、僕たちのニュー・ヨークでのあやふやな身分の典型だった。僕たちの子供が、生まれる筈だった頃、僕たちは、無難に振舞い、セイントゥ・ポール目指して家路に着いたーあの魅惑と孤独の真っ只中へ赤ちゃんを連れて行くこと、それははいいことではないように思えた。しかし、一年の内に、僕たちは、後戻りし、僕たちは、それがそんなに気に入ってもいないのに、又、同じことを繰り返し始めた。

 We had run through a lot, though we had retained an almost theatrical innocence by preferring the role of the observed to that of the observer. But innocence is no end in itself and as our minds unwillingly matured we began to see New York whole and try to save some of it for the selves we would inevitably become.

僕たちは、一つの定めを走り抜けて来た、監視者の内、それに監視される者の役割を好むことで、ほとんど芝居じみた無邪気さを僕たちは、持ち続けはしたが。しかし、無知は、そのものに終わりがなく、僕たちの考えが、しぶしぶ成熟するに連れ、僕たちは、ニュー・ヨーク全体を見始め、僕たちが必ず相応しくなろうとした自分自身のために、その一部を取って置こうとする。

It was too late—or too soon. For us the city was inevitably linked up with Bacchic diversions, mild or fantastic. We could organize ourselves only on our return to Long Island and not always there. We had no incentive to meet the city half way. My first symbol was now a memory, for I knew that triumph is in oneself; my second one had grown commonplace—two of the actresses whom I had worshipped from afar in 1913 had dined in our house.

それは、遅過ぎたのかー或いは早過ぎたのか。僕たちの所為で、都市は、当然のようにバッカスの娯楽、大人しいか、空想的、と連結された。僕たちは、ロング・アイランドゥ、必ずしもそこではなかったが、への僕たちの帰還に関してだけは、自ずと団結できた。僕たちは、都市と交わる動機をほとんど持たなかった。僕の最初の象徴は、今は単なる思い出、何故なら、勝利は、自らの中にあると分かったから。僕の二番目のそれは、陳腐なものになりー僕が、1913年以来ずっと熱愛した女優二人は、僕たちの家で食事をした。

 But it filled me with a certain fear that even the third symbol had grown dim—the tranquillity of Bunny's apartment was not to be found in the ever-quickening city. Bunny himself was married, and about to become a father, other friends had gone to Europe, and the bachelors had become cadets of houses larger and more social than ours. By this time we “knew everybody”—which is to say most of those whom Ralph Barton would draw as in the orchestra on an opening night.

それにしても、三番目の象徴まで、曖昧(あいまい)になってしまった、それは、確実な不安をもって僕を追い詰めた。-バニのアパートゥマントゥの平穏は、常態的急進都市に見受けられることはなかった。バニその人は、結婚して、一人の父親になろうとしていたし、他の友人たちは、イウァラプに行ってしまい、独り者は、僕たちの属するものより、大規模でもっと社会的な劇場の幹部候補生になっていた。この頃までに、僕たちは、「全ての人を知った」ーそれは、開演の夜、オ―ケストゥラでのように、ラルフ・バートンが描こうとするそれらの大半を言うのだ。

But we were no longer important. The flapper, upon whose activities the popularity of my first books was based, had become passe by 1923—anyhow in the East. I decided to crash Broadway with a play, but Broadway sent its scouts to Atlantic City and quashed the idea in advance, so I felt that, for the moment, the city and I had little to offer each other. I would take the Long Island atmosphere that I had familiarly breathed and materialize it beneath unfamiliar skies.

しかし、僕たちは、もはや重要ではなかった。僕の初めての本の人気がその活躍の基底となったフラッパは、1923年までにー何れにせよ東部では、時代遅れになってしまった。僕は、戯曲を持って、ブロゥドゥウエイに押し掛けることにしたが、ブロゥドゥウエイは、そのスカウトゥをアトゥランティク・スィティに送り、前もって着想を破棄した。そこで僕は、さしあたり、その街と僕は、互いに提供し合うことは殆どないのだと、察した。不慣れな空の下、僕は無遠慮に呼吸をし、それを実現するというロング・アイランドゥの環境を、僕は必要とするのだ。

It was three years before we saw New York again. As the ship glided up the river, the city burst thunderously upon us in the early dusk—the white glacier by the Battery swooping down like a strand of a bridge to rise into “uptown”a miracle of foamy light suspended by the stars. A band started to play on deck, but the majesty of the city made the march trivial and tinkling. From that moment I knew that New York, however often I might leave it, was home.

それは、僕たちが再びニュー・ヨークを見る三年前だった。船が川を滑るように上るに連れ、黄昏れ始めた都市は、僕たちの上で雷鳴のように炸裂したー「アップタウン(住宅地区)」泡のような光の奇跡の中に乗り上げるため、まるで橋の座礁のように襲い掛かる一連の白い氷河は、星によって吊るされている。デックでバンドゥが演奏し始めたが、都市の威厳は、つまらない、音を立てるだけのマーチを作った。その瞬間から、僕は、あのニュー・ヨークは、どんなに繰り返し僕がそれを置き去りにしたところで、故郷なのだと認識した。

The tempo of the city had changed sharply. The uncertainties of 1920 were drowned in a steady golden roar and many of our friends had grown wealthy. But the restlessness of New York in 1927 approached hysteria. The parties were bigger—those of Conde Nast, for example, rivalled in their way the fabled balls of the nineties; the pace was faster—the catering to dissipation set an example to Paris; the shows were broader, the buildings were higher, the morals were looser and the liquor was cheaper; but all these benefits did not really minister to much delight. 

都市のテムポゥは、急に変わった。1920年の無常は、確固とした繁栄のどよめきにかき消され、僕たちの友人の多くが、裕福になった。それにしても、1927年のニュー・ヨークの動揺は、ヒスティアリアの域に近付いた。パーティは、より大規模になった。ーコンデ・ナストゥのそれは、例えば、彼らの流儀で張り合った90の作り物の玉、そのペイスは、より速くー濫費がちのケイタリングは、パリスにお手本を示した。そのショウは、より広範囲に亘り、ビルディングは、尚高くなり、モラルは更に弛み、酒はますます安くなった。しかし、これらの利益全て、実際、多くの楽しみに奉仕しなかった。

Young people wore out early—they were hard and languid at twenty-one, and save for Peter Arno none of them contributed anything new; perhaps Peter Arno and his collaborators said everything there was to say about the boom days in New York that couldn't be said by a jazz band. Many people who were not natural alcoholics were lit up four days out of seven, and frayed nerves were strewn everywhere; groups were held together by a generic nervousness and the hangover became a part of the day as well allowed-for as the Spanish siesta. Most of my friends drank too much—the more they were in tune to the times the more they drank. And so effort per se had no dignity against the mere bounty of those days in New York, a depreciatory word was found for it: a successful programme became a “racket”—I was in the “literary racket”.

若い人々は、早くに外に出た。ー彼らは、21にして勤勉だが熱意がなく、ピーター・アルノを除いて、彼らの内、誰一人、新たに何らかの寄与をした者はいない。多分、ピーター・アルノと彼の共著者たちは、ジャズ・バンドゥによって語られようもないニュー・ヨークの急発展期について、そこで語るべきである全てを語った。なるべくしてなったアルカホリックではなかった多くの人々が、7から解き放たれ4日を光の下に置かれ、すり減らされた神経は、至る所に撒き散らされた。群れは、一般的な興奮によって、互いに制御され合い、二日酔いが、スペイン風の午睡同様ー斟酌(しんしゃく)され、昼間の務めになった。僕の友達の大部分が、あまりにも飲み過ぎた。ー彼らは、一致して時代に便乗すればするほど、彼らはますます飲んだ。だから、努力そのものが、ニュー・ヨークのあの当時の単なる気前の良さの前では、なんの価値もなかった。それに対する軽蔑的な言葉が、見受けられた。成功したプロゥグラムは、「ラキットゥ(大混乱)」になった。ー僕は、「文学のラキットゥ(大混乱)」の只中にいた。

We settled a few hours from New York and I found that every time I came to town I was caught into a complication of events that deposited me a few days later in a somewhat exhausted state on the train for Delaware. Whole sections of the city had grown rather poisonous, but invariably I found a moment of utter peace in riding south through Central Park at dark towards where the facade of 59th Street thrusts its lights through the trees. There again was my lost city, wrapped cool in its mystery and promise. But that detachment never lasted long—as the toiler must live in the city's belly, so I was compelled to live in its disordered mind.

僕たちは、ニュー・ヨークから2、3時間に住み、僕が町に出かける度毎に、僕は、いざこざの縺(もつ)れに巻き込まれるんだと僕は気付いた。それは、数日後、デラウェアに向かう車上、僕を幾分へとへとの状態に置いた。都市の全区域が、かなり有害になっていた。しかし、変わることなく、 59番ストゥリートゥの正面が、木々を通り抜けたその明かりを押し分ける方向に暗闇のセントゥラル・パークを通って、南を走破する時に、全くの平穏の瞬間を僕は見い出した。そこに、再び、その神秘性と約束に冷静さを包んだ僕の夢中になった街はあった。しかし、その超俗は、長くは続かなかったー使役人が、都市の腹部に住まなければならないように、そう、僕は、その乱れた心に、住まざるを得なかった。

Instead there were the speakeasies—the moving from luxurious bars, which advertised in the campus publications of Yale and Princeton, to the beer gardens where the snarling face of the underworld peered through the German good nature of the entertainment, then on to strange and even more sinister localities where one was eyed by granite-faced boys and there was nothing left of joviality but only a brutishness that corrupted the new day into which one presently went out. Back in 1920 I shocked a rising young business man by suggesting a cocktail before lunch. In 1929 there was liquor in half the downtown offices, and a speakeasy in half the large buildings.

その代わり、そこには、潜(もぐ)り酒場があった。ー豪奢なバーから、それは、イエイルやプリンストンの構内出版物に広告を出していたが、暗黒街の歯を剥いて唸(うな)る顔が、余興の、人の良いドイツ人を通してじっと見つめるビアガードゥンへ、それに、人が意固地な表情の少年たちによってじろじろ見られる、奇妙で、更に邪悪でさえある場所の方への引っ越しで、そこには陽気どころか粗野なところも全く残されていなかった。人が、今留守となると、新規巻き直しの日を駄目にした。1920年に遡(さかのぼる)と、僕は、昼食の前にカクテイルを勧めて、上り坂の若いビズニス・マンをぎょっとさせた。1929年には、繁華街の会社の半分に酒が、大きなビルディングの半分に一軒のもぐり酒場があった。

One was increasingly conscious of the speakeasy and of Park Avenue. In the past decade Greenwich Village, Washington Square, Murray Hill, the chateaux of Fifth Avenue had somehow disappeared, or become unexpressive of anything. The city was bloated, gutted, stupid with cake and circuses, and a new expression “Oh yeah?” summed up all the enthusiasm evoked by the announcement of the last super-skyscrapers. My barber retired on a half million bet in the market and I was conscious that the head-waiters who bowed me, or failed to bow me, to my table were far, far wealthier than I. This was no fun—once again I had enough of New York and it was good to be safe on shipboard where the ceaseless revelry remained in the bar in transport to the fleecing rooms of France.

人は、徐々にもぐり酒場とパーク・アヴェニューに気付いた。過去十年で、グリーンウイッチ・ヴィリジ、ワシントン・スクエア、マレイ・ヒル、五番アヴェニューのシャトウクスは、何故か姿を消したり、或いは、何かしら筆舌に尽くしがたいものになってしまった。都市は、膨れ上がり、腸(はらわた)を抜かれ、女たらしとストリップショウで知覚を失い、新しい言い回し「オゥ イエア?」は、究極的超摩天楼の広告によって引き起こされたあらゆる熱狂を要約した。僕の床屋は、市場(しじょう)で50万賭けて辞め、僕は、僕にお辞儀をしたり、又、僕にお辞儀をし損ったりするウエイタ長は、僕の卓に比べれば、遥かに遥かに僕より裕福だということを自覚した。これじゃあ、何の面白みもない。ー今度も、僕は、ニュー・ヨークについて十分知ったし、フランスの無一文にするだけの部屋に向かう、我を忘れてきりのないお祭り騒ぎがバーに残った船上で、安全でさえあればそれで良かった。

“What news from New York?”

「ニュー・ヨークからどんなニュース?」

“Stocks go up. A baby murdered a gangster.”

「株が上がってる。女の娘(こ)がガングを殺した。」

“Nothing more?”

「もっと何かない?」

“Nothing. Radios blare in the street.”

「何もない、レィディオゥが、通りでがなり立てている。」

I once thought that there were no second acts in American lives, but there was certainly to be a second act to New York's boom days. We were somewhere in North Africa when we heard a dull distant crash which echoed to the further-est wastes of the desert.

僕は、アメリカ暮らし、そこにはどんな二幕目もないと、嘗て思いはしたが、ニュー・ヨークの急発展期、そこには、確かに二幕目もなければならなかった。砂漠の荒れ地の更に遠くへ最も遠くへとこだました、僕たちが無感覚になる程遠方の暴落を耳にした時、僕たちは、北アフリカのどこかにいた。

“What was that?”

「あれは何?」

“Did you hear it?”

「あなたはそれを聞きました?」

“It was nothing.”

「そんなの何でもなかったよ。」

“Do you think we ought to go home and see?”

「僕たちは、家に帰って確かめるべきだとは思わない?」

“No—it was nothing.”

「いやーそんなの何でもなかった。」

In the dark autumn of two years later we saw New York again. We passed through curiously polite customs agents, and then with bowed head and hat in hand I walked reverently through the echoing tomb. Among the ruins a few childish wraiths still played to keep up the pretence that they were alive, betraying by their feverish voices and hectic cheeks the thinness of the masquerade.Cocktail parties, a last hollow survival from the days of carnival, echoed to the plaints of the wounded: “Shoot me, for the love of God, someone shoot me!”, and the groans and wails of the dying: “Did you see that United States Steel is down three more points?” My barber was back at work in his shop; again the head-waiters bowed people to their tables, if there were people to be bowed.From the ruins rose the Empire State Building, lonely and inexplicable as the Sphinx and, just as it had been a tradition of mine to climb to the Plaza Roof to take leave of the beautiful city, extending as far as eyes could reach, so now I went to the roof of the last and most magnificent of towers. 

二年後の陰鬱な秋に、僕たちは又、ニュー・ヨークを目の当たりにした。僕たちは、妙に丁寧な得意先代理店を通過し、それから、下げられた頭と手の中の帽子と共に、僕は、反響するばかりの墓を恭(うやうや)しく歩いた。廃墟の間を2、3子供じみた幽霊が、彼らの熱っぽい声と紅潮した頬によって、その虚構の薄っぺらさを曝け出しながら、彼らは生きているんだという見栄を張り続ける外(ほか)ないかのように、今尚遊んだ。カクテイル・パーティ、謝肉祭の日々からの究極の上辺だけの生存が、負傷者の告訴状に、「僕を射ち殺してくれ。神の愛の代わりに、誰か僕を射ち殺してくれ!」臨終の呻き声と咽(むせ)び声に共鳴した。「ユナイティドゥ ステイツ スティールが、三ポイントゥ以上下がっているのを、貴方気付きましたか?」僕の床屋は、彼の店の仕事に戻った。再び、ウエイタ長は、彼らの卓の人々にお辞儀をした。もし、そこにお辞儀をされる人々がいれば。廃墟から、スフィンクスのように人気(ひとけ)のない、不可解な、まるで美しい都市に分かれを告げるために、プラザ・ルーフに登ることが、僕の一家の伝統だったかのように、目が捉(とら)えられる限り延長しているエムパイア・ステイトゥ・ビルディングを浮かび上がらせた。だから今、僕は最上の最も豪勢なタウアのてっぺんに向かった。

Then I understood—everything was explained: I had discovered the crowning error of the city, its Pandora's box. Full of vaunting pride the New Yorker had climbed here and seen with dismay what he had never suspected, that the city was not the endless succession of canyons that he had supposed but that it had limits—from the tallest structure he saw for the first time that it faded out into the country on all sides, into an expanse of green and blue that alone was limitless. And with the awful realization that New York was a city after all and not a universe, the whole shining edifice that he had reared in his imagination came crashing to the ground. That was the rash gift of Alfred W. Smith to the citizens of New York.

そこで僕は、理解した―何もかも説き明かされたと。僕は、都市のこの上ない瑕疵(かし)、そのパンドーラの箱を発見した。見せつけんばかりの強い自尊心を持って、ニュー・ヨーカーは、ここに登り、都市は、果てしない峡谷の連続ではないと、彼が、嘗て想像した事もない何かを驚愕と共に見たにしても、それは限定的である、と彼は推測するー最も背の高い建築物から、彼は、初めて、それが、あらゆる方角へと国の中に、緑や青の一面の広がりの中に消えてゆくのを、人から離れると限りないのを目に焼き付けた。そして空恐ろしい実感を抱いてニュー・ヨークは、結局、単なる街で、全世界ではなく、彼が、彼の想像の内に建てた輝ける全建造物が、地面に音を立てて砕けるに至った。それは、アルフレドゥ・ダヴリュ.・スミスのニューヨーク市民への性急な贈り物だった。

Thus I take leave of my lost city. Seen from the ferry boat in the early morning, it no longer whispers of fantastic success and eternal youth. The whoopee mamas who prance before its empty parquets do not suggest to me the ineffable beauty of my dream girls of 1914. And Bunny, swinging along confidently with his cane towards his cloister in a carnival, has gone over to Communism and frets about the wrongs of southern mill workers and western farmers whose voices, fifteen years ago, would not have penetrated his study walls.

このように、僕は、僕の夢中になった街の離別を受け入れる。早朝、フェリー・ボウトゥから見えた、それは、もはやとりとめのない成功や永遠の若さについて囁きはしない。陽気に動き回るどんちゃん騒ぎをするママたち、その空っぽの寄せ木細工の床は、1914年の僕の夢見た娘たちの言葉に出来ない美しさを僕に思わせない。そしてバニーは、謝肉祭で彼の回廊の方へ彼の杖と共に自信を持って威勢よく前に進みながら、コミュニズムに惚れ込み、南部の製粉所の労働者や西部の農民たちの悪事について気をもむ。彼等の声は、15年前、彼の書斎の壁を貫通しそうもなかったのに。

All is lost save memory, yet sometimes I imagine myself reading, with curious interest, a “Daily News” issue of 1945:

思い出は別として、全て忘れている。まだ時に、僕は、1945年の発行「デイリー・ニュース」を妙に面白がって読んでいる自分自身を想像する。

MAN OF FIFTY RUNS AMUCK IN NEW YORK

50男ニュー・ヨークで暴れ狂う

Fitzgerald Feathered Many Love Nests Avers Cutie

フィッツジェラルド羽飾りを付けた数多(あまた)の愛の巣は、キューティーと主張する

Bumped Off By Two-timed Gunman

鉢合わせしたガンマンによって殺される

So perhaps I am destined to return some day and find in the city new experiences that so far I have merely read about. For the moment I can only cry out that I have lost my splendid mirage. Come back, come back, O glittering and white!

そう、多分、僕は、何時の日か戻って来て、それまで、僕が、単に読んだだけの目新しい見分(けんぶん)を、この街に探し求めることを運命付けられている。ちょっとの間、僕は、僕の輝かしい幻影を失くしてしまったと、只、悲嘆に暮れるだけでいい。甦れ、甦れ、オゥ、煌びやかさと純白よ!


終わり