Sinnò me moro

Amore, amore, amore, amore mio, In braccio a te, me scordo ogni dolore! Vojo resta co'te, sinnò me moro, Vojo resta co'te, sinnò me moro, Vojo resta co'te, sinnò me moro…  Nun piagne amore

Sinno me moro(Un maledetto imbroglio 刑事)

自己紹介 成田悦子毎日少しずつ主に英文学の過去の小説を紹介しています。私の遣り方は原文をそのまま生かし、イギリス人、イギリスという国そのものの文字を通した姿を過去に遡って見せ、貴方同様私が学ぶ

自分の写真
暑いし, リチウム電池入りロボ県内, Japan
GooNTTレゾナントは私のブログを4つ非表示にし、「詩を全部削除しろ」と詩人である私に言っています。

Gooは猥褻サイトの記事は問題がないと言います。私の住所・氏名・電話番号まで書き込んで「きちがい、前科三犯」と書くサイトの規約違反を指摘しても、「貴方は一体どうしたいのですか?」と言います。削除して欲しいに決まっています。そんなことも分からないのに、「鳥居正宏」という偽名の社民党員の要請で四つのブログを非表示にしています。私は「鳥居正宏」の中傷記事を書いたことは一度も無く、中傷されたコメントを載せたことが一度あっただけです。しかしそのコメントは、社民党と自公政権が不正に侵入して直ぐに削除して非表示の要請があった時にはありませんでした。あれから20数年Gooも消えます。私が消えていないことはいい兆し。正義は私の下にある。当面翻訳中心の生活です。

成田悦子翻訳小説.orgで翻訳中 「Youth 」Joseph Conrad, The Grapes of Wrath Jhon Steinbeck

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ブログ 成田悦子翻訳小説.org Youth Joseph Conrad, The Grapes of Wrath Jhon Steinbeck

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2022年1月31日月曜日

The end of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「勿論。」

 「私、最後のはあまり好きじゃなかったわ。」

 「ちょうどあの頃、何かにつけ書くことは死闘だった―平和が来そうで・・・」

それに僕はまさに都合よく、平和が去ってしまうと言ったかも知れない。

 「私は時々貴方が保守的な考えに戻ろうとするんじゃないかと心配だった。―私が嫌った人へ。何人もの人がそうなってしまった。」

 「一つの本は、僕を一年は書くことに向かわせる。」

 「仮に貴方が知ってしまったら、どんなに些細でも貴方は復讐しなければならない・・・」

 「勿論、冗談で言っているんだ。僕たちは一緒にいい時間を持てた。僕たちは大人だったし、僕たちは知っていた。こういうことは、或る時終わってしまうと。今は,貴女も分かっているように、僕たちは友達のように会えるし、ヘンリについて話もする。」

 僕は勘定書きを支払い、僕たちは外に出て二十ヤードゥ通りを下ると、出入口と格子(排水口)があった。

45

2022年1月30日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 食物は僕たちのつまらないお喋りを遮り、彼女は、僕たちが食事を終えた時だけ、何故彼女がそこにいるかの僅かな気配を、見せただけだった。「私は、私と一緒に昼食を摂るよう貴方にお願いしたわね。」と彼女は言った。「私、ヘンリについて貴方に聞きたかったの。」

 「ヘンリ?」僕は繰り返し、僕の声が落胆と無縁であるように務めた。

 「私は、彼が心配なの。先日の夜、貴方は彼をどうやって見つけたの?彼は何だか変じゃなかった?」

 「僕は可笑しなところにはまるで気付かなかった。」と僕は言った。

 「私は貴方に尋ねたくて―オウ、私、知ってるのよ、貴方はとても忙しいって―貴方は時折彼を調べているかどうかを。私は彼は寂しいんだって思っているの。」

 「貴女と一緒なのに?」

 「貴方も知っているでしょ、彼は本当に私のことに全く気付いていなかったの。何年もじゃないの。」

 「多分彼は、貴女がそこにいない時、貴女のことに気付き始めたんだよ。」

 「私たちはそれ程出かけてはいないわ。」彼女は言い、「最近、」と、彼女の咳は都合よくその話の輪郭を壊した。その時で、発作は終わり、彼女は彼女の策略を考え出した。しかしそれは真実を避けようとする彼女に相応しくなかった。「貴方は新しい本に取り掛かっているの?」彼女は尋ねた。それは他人が話しているようで、コクテイル・パーティで会う見知らぬ人のようで。南アフリカのシェリーを巡る初めての機会にさえ、彼女はその見解に傾倒しなかった。

44

2022年1月29日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 貴女が左手側のメイドゥン・レインを上ると、そこに出入口と、互いに一言もなく僕たちが通り過ぎた格子(排水口)がある。初めての食事の後、僕がヘンリの性質について尋ね、彼女が僕の関心に好意を寄せた時、僕は地下鉄に向かう途中、そこでかなり不器用に彼女にキスをした。何故僕がそんなことをしたか、僕には分からない。多分鏡の中のその画像が、僕の心の中に入り込まなければ、と言うのも僕は彼女に好意を寄せるつもりはなかったから。僕はもう一度、彼女を捜すつもりさえ特になかった。彼女は余りにも美しく、近寄ろうとする思いで僕をわくわくさせた。

 僕たちが座った時、昔馴染みのウエイタの一人が僕に言った。「貴方がこちらにいらっしゃってから、ほんとに久し振りです、サー。」それにしても僕はサラーに僕の事実に反する主張をしなければよかった。

 「オウ。」僕は言った。「僕は最近二階で昼食を摂っています。」

 「それに貴女、奥様、またまたお久しゅうございます・・・。」

 「二年近く。」彼女は僕が時々嫌がる正確さで言った。

 「ところが私は、覚えています。貴女が何時も好んだのは大きなラーガーだった。」

 「貴方がたは、素晴らしい記憶力で感動させるわね、アルフレッドゥ。」すると彼はその記憶振りに満足してニコニコ微笑んだ。彼女は何時もウエイタたちと仲良くやる芸当を持っていた。

43

2022年1月28日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

僕は彼を睨み倒そうとしたが、そんなことは簡単だった。彼は、長い髭と小鹿‐に似た目を持ち、慌てて視線を外した。彼の肘が彼のビアグラスを捕え、それを床に転がした。そして彼は混乱に打ちのめされた。彼は僕の写真で僕を知っていたのかも知れず、それは僕のせいで起こったことだから、同時に僕は気の毒に思った。彼は、まさに僕の数少ない読者の一人かも知れなかった。彼には彼と席を共にしている幼い少年がいた。彼の息子の面前で、父親に恥をかかせるとは、何と酷なことを。その少年はウエイタが急いでやって来た時、頬を赤らめ、彼の父親は不必要な猛烈さで謝り始めた。

 僕はサラーに言った。「勿論、貴女が好むなら何処ででも、貴女は昼食を摂らなくちゃね。」

 「貴方も知っているわ、私ははそこへ、前に行ったことがなかった。」

 「そうだね、そこは貴女のレスタラントゥではなかったよね?」

 「貴方はそこへしょっちゅう行くの?」

 「そりゃあ僕には便利だもの。週に二、三回。」

彼女は不意に立ち上がり、言った。 「行きましょ。」そして突然咳の発作に襲われた。 それは彼女の小さな体にしては、大き過ぎる咳のように思った。 彼女の額はその排除に連れ汗ばんだ。 

 「 それ性質が悪いね。 」

 「何でもないわ。ごめんなさい。」

 「タクシ?」

 「私は歩く方がいいわ。」

42

2022年1月27日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 僕は彼女を信じようとはしなかったが、彼女の舌に乗った言葉を聞きたがった。おそらく単にそれを自ら拒絶する満足を僕に与える為に。ところがその信用‐させるというゲイムを、彼女はすることがなく、それから突然、意外にも、彼女はこんな甘美さと大きさの声明を伴った僕の予約を打ち砕こうとする。・・・或る日、私たちの関係は終わるでしょうという彼女の憶測を、僕が惨めに思った嘗てを、僕は覚えている。「僕は貴方を愛するように人を愛したことは、決して決してなかったし、僕には二度とない。」さて、彼女はそれを知らなかった、と僕は思ったが、彼女も又、信じ‐させるという同じゲイムをした。

 彼女は僕の側に座って、ラーガー一杯を頼んだ。「僕はルールズにテイブルを予約した。」僕は言った。

 「私たち、ここにいることは出来ない?」

 「そこは僕たちが何時も行っていた所だよ。」

 「そうね。」

 おそらく、僕たちはその挙動からして、不審そうに見えていた。余り離れていないソウファに座った小男の関心を引いて来たことに、僕はやっと気付いた。

41

2022年1月26日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 Ⅴ

僕はテイブルに新聞を広げて置き、何度も繰り返して同じ頁を読んだ。僕は出入口をを見たくなかったから。人々はひっきりなしに入って来て、彼らの頭を上下に動かすことによって、馬鹿げた期待を曝け出すそうとする者の一人に、僕はなりたくはない。僕たちは皆、自ら失望に整列してしまうということを、幾ら覚悟すればいいのだろう?夕刊には、何時もの殺人や巧妙な砂糖菓子-配給制限に関する議会の小競り合いがあり、彼女は、今五分遅れていた。彼女が僕の時計を見ている姿を目撃するとしたら、僕の不運だった。僕は、「ごめんなさい。私、バスで来たの、交通の便が悪くて。」と言う彼女の声を聞いた。

 僕は言った。「地下鉄の方が速いよ。」

 「分かってるけど、私、速く着きたくなかったの。」

 彼女はよく真実によって僕を狼狽させた。僕は真実より更に多くを、彼女に言わせようとした―僕たちが恋愛中だった日々、私たちの事が決して終わらないようにと、一日でも、私たち結婚しましょうよなどと。

40

2022年1月25日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「いいえ、いいえ未だです。私たちは変えたところよ。それはマコーレイ6204。私は貴方にお願いしたことがあったの。」

 「そう?」

 「そんなに心配することはない。僕は貴女と昼食を食べたかった、それだけ。」

 「勿論、私、嬉しいわ何時?」

 「貴方は明日はなんとか出来ない?」

 「いや、明日はだめ。貴女も分かっているように、僕は只、この契約に繋げようとしただけ・・・」

 「水曜日は?」

 「木曜日にしようか?」

 「いいわ。」彼女は言い、そうして僕は単音節語に殆ど失望したに決まっている―僕たちのプライドゥは、僕たちを欺く。

 「その時カフェ・ロイアルで、僕は一人で貴女に会おう。」

 「貴方の都合が良ければ。」彼女は言った。僕は彼女の声から、彼女はそのつもりだったと言えるかも知れない。「木曜まで。」

 「木曜まで。」

 僕の手に電話の受話器を持ったまま、僕は座り、誰も知りたくもなかった卑劣で愚かな男のようで、嫌気が差した。僕は彼女の番号を回した。僕は彼女が電話口を離れる前に、彼女を捕まえなければならなかった。そして言った。「サラー。明日でいいよ。僕は何が何だか分からなくなってしまった。同じ場所。同じ時間。」それから、静かになった器械の上、そこに僕の指を、期待すべき何かと共に置いた。僕は自分自身に対して思った。僕は覚えている。これはどんな希望も、似通った感触を持っているということだ。

39

2022年1月24日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 非常に‐訓練されたメイドゥの声は、僕の鼓膜の中で、その番号を繰り返した。僕は言った。「マイルズ婦人はいらっしゃいますか?」

 「マイルズ婦人?」

 「そちらは、マコーレイ7753ではありませんか?」

 「はい。」

 「僕はマイルズ婦人に話したいのですが。」

 「貴方は間違った番号に掛けましたよ。」そして彼女は電話を切った。時に連れて、些細なことが変わり過ぎるということは、僕には今まで起こったことがなかった。

 その住所氏名録で、僕はマイルズを調べたが、その古い番号は、未だそこにあった。その住所氏名録は、日付から一年以上経っていた。電話が再び鳴った時、僕は丁度問い合わせに掛けようとしていた。するとそれはサラー、彼女自身だった。彼女は多少戸惑いながら、「そちらは貴方ですか?」と言った。彼女はどんな名前でも僕を呼んだことがなく、今や、年月を経た愛情のない彼女は、途方に暮れていた。僕は言った。「話しているのはベンドゥリクス。」

 「こちらはサラー。貴方は私の伝言を受取っていないの?」

 「オゥ、僕は貴女に電話を掛けようとしたが、僕は契約を切らなければならないところだった。で、今、貴女の番号を受信するなんて予想外だ。それは、その名簿にはあるのに、と僕は思うのだが?」

38

2022年1月23日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 Ⅳ

僕がサヴィッジ氏の所から帰宅し、僕の女主人が、マイルズ婦人が電話を掛けて来たところです、と僕に話した時、僕は正面のドアが閉まり、ホールに彼女の足音を聞くと、何時も感じた張り合いに気付いた。僕は数日前、僕の視覚は、愛にではなく、勿論、感傷にでもなく、僕が機能し続けられる記憶に目覚めてしまったという乱暴な望みを持った。もし僕がもう一度―どんなに素早く、荒々しく、それでいて満足の行かないままであれ、彼女を自分のものにすれば、僕は再び安らかになるだろう。僕は僕という装置から彼女を洗い流したら、その後、僕は彼女の下を去ろう、彼女無しの僕を。

 十八カ月の沈黙の後、その番号にダイアルを回すのは、奇妙だった。マコーレイ7753、それに僕は、その最後のアラビア数字がうる覚えだったので、僕のアドゥレス帳でそれを調べなければならなかったのは、更に奇妙だった。鳴り響く音に耳を傾けながら、僕は座った。そしてヘンリが役所からその内戻って来ないだろうか、もし彼が出たら何と言えばいいだろう、とあれこれ思い巡らした。その時僕は、真実と共にあれば、もうこれ以上の過ちは何一つないと悟った。嘘は、僕を見捨て、それがまるで僕の唯一の友ででもあるかのようで、僕は寂しく思った。

37

2022年1月22日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

  「僕は戻らなくちゃあ。」彼は言った。「僕は彼女にその全てを任せてはいけない、ベンドゥリクス。」そして彼は僕たちが一年で互いを知り尽くしたかのように、僕の腕に彼の手を置いた。彼は彼女からその手真似を習ったのか?結婚した人々は、互いに似て来る。僕たちは一緒に歩いて帰り、僕たちがホールのドアを開けた時、僕は、キスからか、離れようとする二つの人間が、小部屋から鏡の中に写ったのを見た。―一人はサラーだった。僕はヘンリを見た。

 彼は見なかったのか、それとも気にしなかったかのどちらか―それとも他に、僕は考えた。何とも不幸せな男であるに違いない。

 サヴィッジ氏はそのシーンを妥当と考えただろうか?僕は後で知ったのだが。彼女にキスをしていたのは、恋人ではなく、それは妻が一週間前、有能な水兵と駆け落ちした年金省のヘンリの同僚の一人だった。彼女は、その日初めて彼に会った。僕はそれほど断固として余地を与えられなかった。彼が未だにそのシーンの一部を占めてしまうのは、好ましくないように思える。

 僕はあの過ぎた時を、そのままにして置きたかった。僕が1939を書く時、僕は僕の像の全てが甦ろうとするのを感じる。憎悪は愛情と同じ腺を操作するように思う。それは同じ行動を生み出しもする。もし僕たちが、如何に受難の物語を演出すべきか教えられなかったら、クライストゥを愛したそれが、嫉妬深いデュウダス(ユダ)か、或いは小心なピーター(ペテロ)だったかどうか、単に彼らの行動から言えただろうか?

36

2022年1月21日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 陽は共有地を横切って、丁度沈むところで、草地がそれと共に薄暗くなっていた。遠くの家並みは、ヴィクトーリア風に焼き付けられて、小さい、正確に線で描かれた、ひっそりとした家々があり、只、子供が一人、ずうっと遠くで泣いていた。十八-世紀の教会は、草の島の玩具のように立ちーその玩具は、暗闇でも、乾いた崩れ難い天気でも、外に置き去りにされても良かった。それは、貴方が見知らぬ人に信頼を寄せる時間だった。

 ヘンリは言った。「僕たちは皆、何て幸せでいられるのか。」

 「そう。」

 僕は、彼の目に涙を溜めて、彼自身のパーティから離れた共有地のそこに立つ彼を、非常に好ましく思えた。

僕は言った。「貴方は愛すべき家を手に入れた。」

 「僕の妻がそれを探した。」

 「僕は彼にたった一週間前に会ったばかりだった―他のパーティで、その当時彼は、年金省にいて、僕は僕の題材の為に彼を引き留めて長話をした。二日後、案内状が届いた。僕はサラーがそれを彼に送らせた、と後で教えられた。「結婚して長いの?」僕は彼に尋ねた。

 「十年。」

 「貴方の細君は、魅力的だと僕は思う。」

 「彼女は僕には大いに助けになる人だ。」と彼は言った。

 気の毒なヘンリ。それにしても一体何故、僕は気の毒なヘンリと言ってしまうのだろう?彼は最後に勝ち札―優しさ、謙虚、そして信頼のカードゥ、を持っていなかったのか?

35

2022年1月20日木曜日

The End of the Summer/Graham Greene 成田悦子訳

僕はサラーに気付き、彼女は上手くやっていたからか、ああした年々、幸せの感覚は近付きつつある嵐の下、長い間瀕死の状態にあった、と僕は思う。誰もが酔い潰れた人々に、子供達に、滅多に他の場所にはないそれに気付いた。僕は、彼女が僕の本を読んだことがあり、その物をそのままそこに置いてあると言ったから、一辺に彼女を好きになった。―作家としてより、寧ろ人間として直ぐに遇された僕自身がいた。何であれ、僕は彼女との恋に落ちようなど見当もつかなかった。彼女は美しかった、美しい女たち、殊(こと)に彼女たちがその上聡明であれば、一つのことに向かって、僕の中の或る深いねじけた感情をかき混ぜる。心理学者が コフェテュア・コムプレクスと名付けたかどうか僕には分からないが、僕は何時も、或る心的又は肉体的優越の感覚無しに、性的欲情を自覚し難いと察していた。彼女について僕が注目したのは、彼女の美と彼女の幸福、それに彼女は彼等を愛しているかのように彼女の手で、人々に触れるという彼女の癖だった。僕は彼女が僕に言った唯一つのことだけ、想い出せる。

「貴方は大勢の人を毛嫌いしているようにしか見えないわ。」おそらく僕が、僕の作家仲間について、手厳しく話して来たからだ。僕は覚えていない。

 それは、何というひと夏だったのか。やってみようとも正確に呼び名を示すつもりもない。ー僕は、凄まじい程の痛みに、どうしてもそこへ引き返さなければならなかったが、その暑苦しく、混み入った部屋を抜けたこと、不味いシェリーを随分飲んだ後、ヘンリと一緒に共有地をどんどん歩いたことを、僕は覚えている。

34

2022年1月19日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 Ⅲ

「それで、何かもっとあれば、貴方は関連していることを僕に話せますか?」サヴィッジ氏が言ったのを僕は覚えているー探偵は、当を得た糸口を選び出す前に、自らのちょっとした題材を集めようとする小説家と同じくらい、それが重要であると分かっていなければなりません。しかしその見分けることが、如何に困難かー現実の主題の公開が。外側の世界の凄まじい重圧は、ように僕たちを圧倒する。今やっと僕は、僕自身の物語を書くに至り、その問題は、尚も同じではあるが、もっと悪いことにー随分多くの更なる実状がそこにあり、今直ぐ僕はそれらのことを、別に創り上げなくていい。耐え難いシーンから、人間の特性を如何に掘り出せるか―日刊新聞、毎日の食事、バターシーに向かう車の軋り、パンを探してテムズ川を上ろうとするカモメ、やがて1939の初夏、子供たちがそれぞれのボウトゥを走らせる公園の上空にきらきら光っているーそうした輝きの一つが、戦前の夏を咎めていた?僕は、喩え僕が十分長く考え尽くしたとしても、僕は、ヘンリが催したパーティで、彼女の後(のち)の恋人を見つけられたかどうか疑わしい。僕たちは初めて互いを見た。スペイン戦争の所為で、不味い南アフリカ産シェリーを飲みながら。

33

2022年1月18日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

それは、貴方がそのことを考えあぐねて訪れる時、実に立派な商売、潔白の看破では通らない。何故なら、愛人は殆ど決まって、潔白ではないでしょ?彼らはどんな罪も犯したことがなく、彼ら自身の心の中で、彼らは、「自身以外のどんな人も傷付かなければ」、悪いことは全くしなかったということだと、彼ら自身の心の中で確信している。古くなった下げ札が、彼らの唇の上に、予め用意されている。だから彼らは信じ、そしてだからこそ、僕が愛した日々、僕は当たり前のように信じた。

 そして僕たちが料金の段に至った時、サヴィッジ氏は驚くほど節度があり、一日に三ギニー、それに経費、「勿論、どちらも満足されるに違いない。」彼はそうしたことを「変なカフィー」と僕に説明した。貴方は御存知ですか、時々僕たちの部下は、立ち飲みせざるを得ません。」僕は承認しないフイスキについて、間の抜けた冗句を作ったが、サヴィッジ氏は、しゃれに気付かなかった。「僕は或るケイスを知りました。」彼は僕に話した。「一か月の調査が、適切な時に、ダブル一杯で節約された時、―僕の依頼人が今までに支払ったのは、最も安いフイスキ。」何人かの彼の依頼人は、日毎の報告を受取りたがった、と彼は説明したが、僕は彼に、僕は週毎のもので満足します、と話した。

 情事そのものは、ひどく急ぎ足で跡形も失せ、彼は僕がヴィゴウ・ストゥリートゥに出かけるその時までに、僕をほぼ納得させてしまった。これは遅かれ早かれ男という男に降りかかる面談という縛りだったと。

32

2022年1月17日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 僕には透明な一本-線のフールスカプに書くことにへの愛着があり、頁の上の滲み、紅茶の痕は、それを使用不能にするし、僕は嫌な訪問者の場合、僕の文書を仕舞い込んで置かなければならないという根拠のない思いが、僕を捕える。僕は言った。「喩え彼が僕に警告を発したとしても、それはもっと安心していてもいいんでしょう・・・」

 「確かに、しかし必ずしもそれは通用しません。貴方の住所、ベンドゥリクスさん、それに電話番号は?」

 「それは個人回線ではありません。僕の女家主が内線を持っています。」

 「僕の部下全員、卓越した思慮分別を使いこなします。貴方は毎週報告書が欲しいですか、それとも、単に最終調査を受け入れる方がいいですか?」

 「週毎に。それは完成しないかも知れません。多分何も探り出すことはありませんから。」

 「貴方は貴方の医者に行って、何も悪いところは見つからなかった?貴方もご存知でしょう、ベンドゥリクスさん、男は僕たちのサーヴィスの必要性を感じるという実情が、殆ど例外なく、報告すべき何かがそこにはあるということを意味します。」

 取引するためにサヴィッジ氏がいたのは、僕は幸運だったと思う。彼は、普通にいる彼の職業の男達より不愉快ではないということで勧められたが、僕は彼の自信は嫌がられると察する。

31

2022年1月16日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「はい。」

 「彼女の年は?」

 「僕は知らないなあ。3-8?」

 「貴方は彼女がどのような味方を持っていても分からないんですね?」

 「はい、それに僕は彼女の祖母の名も知りません。」

 サヴィッジ氏は僕に忍耐強い笑顔を向けた。僕は一瞬、彼は彼の机を離れようとして、又僕を宥めていると思った。「僕にはよく分かります、ベンドゥリクスさん、貴方は調査の経験がなかったんですね。メイドゥというものは、非常に適切なのです。彼女は彼女の雇い主の癖まで、僕たちに実に多くのことを話してしまいます。―もし彼女が快く引き受ければ。最も簡単な調査でさえ、どれだけ多くのことが的を射ているか、貴方は驚くでしょう。彼は確かにあの朝、彼の核心を立証した。彼は彼の小さい走り書きの手書きで、頁を覆った。一度彼は僕に尋ねるために、彼の質問を打ち切り、「貴方の家に近付こうとする僕の部下に、もしそのことが緊急に必要でも、貴方は異議を唱えますか?」僕は気にしない、と彼に話したが、直ぐに僕自身の部屋に、何等かの悪影響を認めようとしているような気がした。「それが避けられるなら・・・」

 「勿論。勿論。僕は理解しています。」そして僕は心から信じ、彼は理解に努めた。彼の部下の存在は、家具を覆った埃のようでもあり、煤のように僕の書籍にシミを付けるだろうが、彼は驚異も怒りもまるで感じなかっただろう。

30

2022年1月15日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 サヴィッジ氏は、僕を苛々した子供扱いして、僕の袖に彼の手を置いた。「嫉妬を恥ずかしがることはない、ベンドゥリクスさん。僕は何時も本当の愛情の印として、それを迎え入れます。さて、僕たちが話し合おうとしているこの女性、彼女が今も―他の人と親密であると考えるに足りる理由を持っていますか?」

 「彼女の夫は彼女が彼を欺いている、と考えています。彼女は私的逢瀬を重ねています。彼女は何処に彼女がいたのか、嘘を吐きます。彼女は持っていますー秘密を。」

 「ああ、秘密、そうですか。」

 「その中身は何でもないことかも知れません、勿論。」

 「僕の長い経験では、ベンドゥリクスさん、そこには殆ど変わることなくあります。」彼は論述をどんどん前に進めるために、目下のところ、僕を十分安心させたかのように、サヴィッジ氏は彼の机に戻り、書く準備をした。名前。住所。夫の職業。彼の鉛筆を持ち、ノウトゥに向かって構え、サヴィッジ氏は尋ねた。「マイルズ氏はこの面談を知っていますか?」

 「いいえ。」

 「僕達の部下が、マイルズ氏の配下にあってはいけませんか?」

 「確かに不味い。」

 「それでは複雑になってしまいます。」

 「貴方の報告書を、後で彼に見せても構いません。僕には分からない。」

 「貴方は家族について何らかの実情を、僕に提供出来ますか?メイドゥはいますか?」

29

2022年1月14日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

「貴方の時間を役立てて下さい。」

 僕は彼の他の患者連中のように、混乱を来していた。

 「続けるべきことは、実際何一つありません。」僕は説明した。

 「ああ、そこが僕の仕事ですね。」サヴィッジ氏は言い、「貴方は心的状態、周囲の状況を、只、僕に伝えて下さい。僕たちは、ベンドゥリクス婦人を審議しているように、僕は思いましたが?」

 「正確じゃない。」

 「しかし彼女はその名前で通している?」

 「これでは全く食い違って行く一方です。いいえ、彼女は僕の友人の妻です。」

 「じゃあ、その人が貴方を寄こしたんですか?」

 「いいえ。」

 「もしかして貴方とその女性は―親密なんですね?」

 「いえ。僕は1944年からたった一度、彼女に会っただけです。」

 「心配なのですが、僕は全く分かっていないんじゃあないでしょうか?これは要監視のケイスです、と貴方は仰った。」

 その時まで、彼がひどく怒りを覚えているということを、僕は察知していなかった。「誰でも、愛すことも憎むことも出来ない。」僕は彼に急にばらした。「それほど長く?少しでも、勘違いをしないで下さい。僕はまさに貴方の嫉妬深い依頼人と同様で、僕は安心にちょっとでも背くことは主張しないのですが、僕のケイスの中に、時の‐ズレがありました。」

28

2022年1月13日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 僕は始めた。「僕には分からないのですが、貴方の手数料は、どんな監視代ですか?」サヴィッジ氏は縞模様のネクタイをゆっくり撫でた。彼は言った。「今はそのことは心配しないで、ベンドゥリクス。この下準備の相談に、三ギニー請求します。しかしもし貴方がこれ以上続行することを望まなければ、僕は、経費を全く戴(いただ)きません。全く要りません。最高の宣伝を、貴方はご存知でしょうが。」ー彼は温度計のように、中に決まり文句を滑り込ませー「満足した依頼人です。」

 普通の状況では、 僕たちは皆、殆ど似たような行動をとり、同じ言葉を遣うと僕は思う。僕は言った。「これは非常に単純な事例です。」すると僕は、サヴィッジ氏は僕が話し始める前に、実はその事を全部承知しているのではないかと、八つ当たりで警戒した。僕が言わなければならないことは、サヴィッジ氏を不可解であるとする材料は何一つなく、彼が暴けたこともなく、その年、既に何十回も明るみに出されたことは何もなかった。医師でさえ、時に患者にかき乱されるが、サヴィッジ氏はあらゆる症状を熟知しながら、唯一つの病気に従事する専門医だった。

 彼は身の毛がよだつほど優しく言った。

27

2022年1月12日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 そこにはハーパーズ・バザーやライフや一揃いのフランス・ファッション雑誌があり、中を僕に見せた男は、ちょっと気を使い過ぎだったものの、身なりは良かった。彼は火に面した椅子に僕を誘引し、かなり注意深くドアを閉めた。僕は患者のような気がして、僕は嫉妬向けの名だたるショック療法を試すに足りる病人、すっかり患者を決め込んだ。

 サヴィッジ氏について、僕が気付いた最初の事は、彼のネクタイで、それは或るOB会を表し、次に、粉末の微(かす)かな赤らみの下、彼の顔の何と奇麗に剃られていたことか、そしてその次は彼の額、鼠色がかった髪は後退し、ぴかぴかと光った。職務について回る理解、同情、気遣いの合図の-輝き。彼が手を握る時、彼は微妙な捻(ひね)りを僕の指に加えたな、と僕は気付いた。彼はフリーメイスンに違いなく、もし僕が抑圧を跳ね返せたら、僕は多分、異例の請求額を是認しただろう。

 「ベンドゥリクスさん?」彼は言った。「座って下さい。それは、最高に心地良い椅子だと僕は思います。」彼は僕のためにクシャンを叩き、僕がその中に我が身を上手く沈めるまで、僕の側に気遣って立っていた。それから彼は、まるで僕の脈拍に耳を傾けようとするかのように、僕の側に真っ直ぐな椅子を引き寄せた。「さあ貴方自身の言葉で、何もかも僕に話して下さい。」と彼は言った。僕は僕自身の所有するもの以外に、僕が使えていた何か他の言葉を想像出来ない。僕は当惑し、苦々しく思い、僕は同情を求めてにここに来たのではなく、何らかの実質的助力の代償を支払うためその余裕があったら。

26

2022年1月11日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 僕は簡単に出そうもない、一冊の本を書こうとしていた。僕は僕の日常的五百語を駆使しても、その役儀は、どうしても生気が漲(みなぎ)らない。書くことの多くは、人の日々の皮相に依存する。人は買い物、所得税申告、思いがけない会話に心を奪われるかも知れないが、無意識の流れは、先行きを計算に入れながら、静かに澱みなく続く。人は不毛の下に蹲(うずくま)り、机上にて意気込みは消え失せる。が突然、言葉は空気からのように出て来て、絶望的行き詰まりに閉塞されたかに見えた情況が、前方へ揺るぐ。仕事は自分が眠り、買い物をし、友人と話していても、完成した。何れにせよこの憎悪と疑念、破壊に向かうこの激情は、その本より深く埋もれて行った。ー代わりに無意識が、それに作用した。或る朝、僕が目覚めて気付くまで、まるでそれを夜通し企みでもしたかのように、この日、僕はサヴィッジ氏を訪ねることにした。

 何という風変りな所蔵品が、信頼された職業にあるのか。人は自分の弁護士を、自分の医師を、自分の聖職者を信用する、僕は提案する、もし、自分がカソリックなら、そのリストゥに自分の私設刑事を加えた。ヘンリの他の依頼人にじろじろ見られるという思いは、全く間違っていた。その事務所は、二つの待合室を持っていて、その片方に、一人で通された。それは、ヴィゴウ・ストゥリートゥで貴方が期待するものと、微妙にかけ離れていたーそこには一弁護士の所有する出張所の何となくだらけた雰囲気があった。むしろ歯医者に似ている待合室には、流行りの読み物の選りすぐりも備えてあった。

25

2022年1月10日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 Ⅱ

何日経ったのか、僕には言いようもない。以前の不安が甦り、あの陰鬱な精神状態で、自分では、その日々を目が見えない人が明るさの変化に気付けない以上に、もう語れない。僕の行動の針路を僕が決めたのは、七日目か二十一日目だったか?僕には今も、三年経った後、共有地の縁(へり)伝いに、池の辺(ほとり)か、十八‐世紀の教会のポウチカウの下の離れた所から、ドアが開き、サラーがその爆破されず、よく‐磨かれた階段を降りて来るという万が一の可能性に賭けて、彼らの家を観察している不審者の曖昧な記憶がある。正しい時刻は、一切打たなかった。雨の日々が終わると、夜は霜が降りて晴れはしたが、壊れた‎フエザー‐ハウスには、男も女もどちらも現れることはなく、僕は二度と、暗くなってから、共有地を横切るヘンリを見たことはない。おそらく彼は、僕に話してしまったことを気に病んだ。彼は非常に在り来りの男だったから。僕は冷笑しつつ、付属物を書き、それに未だ、もし僕が自らを試すとすれば、僕は只、誰もがそれらの藁葺きや石の中、随分平和そうに見えて、休憩を思い起こさせる車が通る大通りから見る村々のような、在り来り向け賞賛と信任だけを探す。

 僕はあの曖昧な日々か週ごとだったか、サラーの夢を随分見たのを覚えている。時々僕は痛みの感覚で、時には満足して起きようとする。もし一人の女が、一日中誰かの思いの中にいるにしても、夜、彼女の夢をどうしても見てしまうとは限らない。

24

2022年1月9日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 彼女は何時も、僕を「貴方」と呼んでいた。「そちらは貴方?」と電話で、「貴方に出来る?」「貴方はそのつもり?」「貴方はするの?」僕が想像しさえすれば、馬鹿みたいに、一時(いっとき)に、ほんの僅かの間、世界に唯一の人「貴方」がいて、それは僕だった。

 「君に会えて嬉しい。」僕は言ったーこれは皮肉からなる一場面だった。「歩いて出かけたの?」

 「はい。」

 「酷い夜だね。」僕は咎めるように言った。

するとヘンリが、明らかに心配して付け足した。「お前はずぶ濡れだ、サラー。お前は、その内、冷えてお前の疫病神を掴むよ。」その通俗的知識による決まり文句は、時々、凶運の通告書のように、会話を通して降りかかる。しかし、喩え僕たちが、彼は真実を口にすると分かっていても、僕は、僕たちのどちらかが、彼女のために多少なりとも心からの不安を感じたところで、僕たちの神経、疑念、憎悪に穴を開けるかどうか疑わしい。

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2022年1月8日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 僕は何時も、彼女の出現に対するその機械的反応によって、いらいらさせられて来た。それは全く無意味だからー誰しも判で押したように、婦人の出現を歓迎出来ない。喩え人が恋愛中でも。それで僕はというと、彼女らが一度も恋の渦中にあったことはない、と彼女が僕に打ち明けた時も、サラーを信じた。そこには、更なる心からの歓待があり、憎悪や不信という僕の僅かな間隙を縫うように、僕は信じた。少なくとも僕に対しては、彼女は彼女持ち前の正義の範疇にある人でー注意深く操られるべき一片の磁器にも似た家族の片割れではない。

 「サルーアー。」彼は呼んだ。「サル―アー。」音節に間(ま)を開けながら、耐え難い不実を伴って。

 彼女がホールの階段の最下部で立ち止まり、僕たちの方を振り向いた時、どうして彼女を見る他人を装えよう?僕は嘗て、彼らの行動による以外、僕の偽りの役儀さえ詳細を記述出来た例(ためし)がない。それは何時も、小説の中で、読者は、どんな惰性で彼が選ぶ役儀であろうと、想像することを許されるべきである、と僕には思えた。僕は彼に出来合いの図解を与えたくない。もう僕は、僕自らの技巧によって暴かれる。僕はサラーに代わる他のどんな女も求めてはいないし、僕は読者に、一体となった開けた額(ひたい)、そしてくっきりとした口、頭蓋骨の形態を見て欲しいが、僕が表せることは、「はい、ヘンリ?」次に「貴方?」と言いながら、濡れたレインコウトゥのまま振り向く漠然とした姿である。

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2022年1月7日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene  成田悦子訳

  彼はそれを見た。まるでそれが他の誰かのものであるかのように。

 「それにしてもこれは突拍子もない。」彼は言った。「僕は何をあれこれ考えていたのか、解せない。貴方に話したのが最初で、それから貴方に聞いたのがーこの事。人は友だちを介して、人の妻を探ってはいけない。そこでその友だちは、彼女の愛人だと偽る。」]

 「オゥ、済んでないよ。」僕は言った。「しかしどれを取っても、姦通でも、窃盗でも、敵の火刑からの逃走でもない。未完の事は、何れ為される、ヘンリ。それが今風(いまふう)ってもんだよ。僕は自分でそれらの殆どをやってのけた。」

 彼は言った。「お前はいいやつだよ、ベンドゥリクス。僕が必要としたのは、それ相応の話だったー僕の頭をすっきりさせるために。」そして今度は、彼は本当に、ガスの炎に向けてその手紙を持ったままでいた。最後の小片を灰皿に置いた時、私は言った。「名前はサヴィッジ、住所は1ヴィゴ・ストゥリートゥ159か169のどちらか。」

 「それを忘れるんだよ。」ヘンリは言った。「僕が貴方に何を話したか、忘れて。思慮が足りないんだもの。最近、頭痛が酷くなる一方だった。僕は医者に診てもらうつもりだ。」

 「あれはドアだった。」と僕は言った。「サラーが入って来た。」

 「オウ。」彼は言い、「あれはメイドゥだよ。彼女は映画に出かけた。」

 「いや、あれはサラーの歩調そのものだ。」

 彼はドアに向かい、それを開けると、無意識に彼の顔は、上品さと愛情の不合理な塹壕に落ちた。

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2022年1月6日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

おかしい、僕は思った、お前はヘンリを凡そ想像力に富んだ男、と決めて掛かってたんじゃないのと。僕の優越はぐらつかされ、焦らそうとするお馴染みの欲求が、僕の中で目を覚ましたのを感じた。僕は言った。「何故僕を行かせないの、ヘンリ?」

 「貴方を?」僕は、もし僕があまり遠くへ行ったら、喩えヘンリだって、疑い始めるかも知れない、と一瞬疑わしく思った。

 「そう。」僕は危険を冒して言った。もしヘンリが過去を少しでも学んだら、今、それが、何故重要なのか?それは彼にとって、よりいいだろうし、おそらく、彼の妻をもっと上手にカントゥロウルするよう彼に教える。「僕には嫉妬深い愛人を装うことなど、何でもない。」僕は続けた。「嫉妬深い愛人たちは、嫉妬深い夫たちより、敬意に値し、嘲笑に値しない。彼らは文学の重しということで、支持されている。愛人を裏切れば、悲劇になり、喜劇になることはない。トゥロイラスを考えてみるといい。僕がサヴィッジ氏と面談した時、僕は、僕の自尊心は失くさないだろう。へンリの袖が渇き切ったのに、彼は未だ火の方へ、それを向けたままだったので、今や、布が焦げ始めていた。彼は言った。「貴方は本当に、僕のためにそんなことをしてくれるの、ベンドゥリクス?」すると彼の目に涙が滲んだ。彼はこの友情の絶大な印に、期待することも、値することも全くなかったかのように。

  「勿論、ぼくはするよ。貴方の袖が焦げている、ヘンリ。」

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2022年1月5日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene  成田悦子訳

 彼は憤慨して言った。「それに僕は何時も、貴方は彼女の友人だと思っていた。」まるで手紙を書いたのは、僕だったかのように。

 「勿論。」僕は言った。「貴方は、僕がこれまで要したよりずっとたくさん、彼女を知っている。」

 「いろんな手段で。」彼は憂鬱そうに言い、それで僕は、僕が彼女を最高に知った、その真の手段を考えていたのだと分かった。

 「貴方は僕に尋ねた、ヘンリ、もし貴方が愚か者だと僕が思っていたらと。僕はただ、その思いの中に、馬鹿にしたものは何一つない。僕はサラーにも、何も言ったことはない。」

 「僕には分かっている、ベンドゥリクス。ごめん、僕は近頃、十分眠っていない。僕は夜中に目覚めた。この不快な手紙をどうすべきか、全く見当がつかなくて。」

 「それを燃やせばいいじゃないか。」

 「僕に出来たらなあ。」彼は未だ彼の手に、それを持っていたので、一瞬、僕は彼がそれを燃やすつもりだ、と真底思った。

 「それとも、行ってサヴィッジに会えば。」僕は言った。

 「だけど、僕は彼に、彼女の夫ではないような振りが出来ない。全く考えてもみてくれ、ベンドゥリクス、他愛もない嫉妬に駆られたどの夫も、同じ戯言を口にしながら座った一つの椅子に収まって、机の前のそこに座っているしかないことを・・・そこには待合室があって、だから僕たちが通る度に、僕たちには互いの顔が見えるって、貴方に想像出来る?

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2022年1月4日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene  成田悦子訳

  僕は言った。「それは人が笑っていいようなことではない。喩え思うことは、取り留がなくても・・・」

 彼は待ち望んでいたかのように、僕に尋ねた。  「そりゃあ、取り留めはない。貴方は僕が馬鹿だと思いもするでしょ・・・?」

 ちょっと前なら、僕は進んで笑いもしただろう。そう今でさえ、僕が只々嘘を吐くしかない時、以前の様々な妬みが甦った。夫と妻は、人が妻を憎めば、人は夫も憎まずにはいられない、それ程までに切っても切れない骨肉なのか?彼の質問は、彼が騙すには、どんなに気楽だったかを、僕に気付かせた。余りにも安易だから、窃盗罪を共謀するホテルのベッドゥルームに、ばらの覚書を置き忘れる男を好む、彼の妻の不貞に、彼は僕を、凡そ密通者のように思い、僕は嘗て、僕の恋人に良くして来たその資格故に、彼を憎んだ。

 彼のジャキットゥの袖が、ガスの前で蒸気を上げているのに、彼は繰り返した。尚も僕から目を反らしながら、「勿論、貴方が僕を愚か者だと思たって、僕は気にせずに話す。」

 その時、悪魔が話した。「ああいや、僕は貴方が愚か者だとは思わない、ヘンリ。」

 「貴方は、そんなことは・・・出来る、と本当に思っているということ?」

 「勿論、そりゃあ出来ます、サラーは人間だ。」

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