https://naritaetuko.jp成田悦子の翻訳テキストとちょっとしたこと

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2022年2月1日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 僕は歩道に立ち止まり言った。「貴女はストゥランドゥに行くつもりでしょ?」

 「いえ、レスター・スクェアへ。」

 「僕はストゥランドゥへ行くつもり。」彼女は出入口の中に立っていた。通りは閑散としていた。「僕は、ここでグッドゥ‐バイを言おう。貴女に会えて良かった。」

 「そう。」

  「貴女が都合がよければ、何時でも僕に電話して。」

 僕は彼女の方へ動いた。僕の足下に格子(排水口)の感触があった。「サラー」僕は言った。彼女は彼女の頭を、鋭敏にあちらへ向けた。例えば誰かが来れば見るために、例えばそこに時刻があれば見るために、彼女は確かめているかのようだった・・・しかし彼女がもう一度曲げた時、咳が彼女を襲った。彼女は出入口の中で、体を二つに折り曲げ、咳き込みそして咳き込んだ。彼女の目は、それに連れ赤くなった。彼女の毛皮のコウトゥに包まれ、彼女は窮地に追い詰められた小さな動物のように見えた。

 「気の毒だね。」

 僕は酷にも言った。まるで僕が何かを奪われて来たかのように。「それじゃあ、付き添わなきゃいけないね。」

 「そんな、只の咳よ。」彼女は彼女の手を差し伸べて言った。「グッドゥ‐バイ―モーリス。」その名前は辱めのようだった。僕は「グッドゥ‐バイ。」と言いはしたが、彼女の手を取らなかった。僕は脇目も振らず、急いでいる印象を与えようとして、大急ぎで歩いて離れた。そしていなくなるとほっとした。

それから僕がもう一度咳が始まるのを聞いた時、僕は節を、何かしら陽気で、冒険的で、幸せそうな、口笛で吹けたらと願った。それにもかかわらず、僕は音楽を求める耳さえ、持ち合わせなかった。

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