https://naritaetuko.jp成田悦子の翻訳テキストとちょっとしたこと

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2012年3月21日水曜日

Greensleeves/Marianne Faithfull翻訳

Greensleeves/Marianne Faithfull


Song : Greensleeves
Artist : Marianne Faithfull

Alas my love you do me wrong
To cast me off discourteously
For I have loved you so long
Delighting in your company.
私の恋の痛み
突然私を見棄てるなんて、貴方は私を誤解している
貴方と同時に悦び、疾(と)うから貴方を愛したのに

Greensleeves was all my joy,
Greensleeves was my delight.
Greensleeves was my heart of gold
And who but my lady greensleeves ?
憧れの袂(たもと)、歓びに満ちた
憧れの袂(たもと)、私の誇り
憧れの袂(たもと)、我が美(うるわ)しき愛
全く、我が女王こそ憧れの袂(たもと)

Alas my love that you should own
A heart of wanton vanity
So I must laddie think alone
Upon your insincerity.
私の恋の痛み
浮かれた虚飾から成る愛を事実と認めるなんて
貴方の不誠実に接して、青年(貴方)は孤立していると思ってしまった

Greensleeves ...
憧れの袂(たもと)

23:59 2012/03/21水曜日

green・・・緑という意味ではなく、スコットランドの古語で、「憧れる」という意味です。
sleeve・・・袂(たもと)。袂は袖のことです。「側」という意味です。
Greensleeves・・・「憧れの側」というのは、「女王の側」、「聖母マリア(Our Lady)の側」で、複数形ですから、お二人の「身側(みそば)近く」と解釈しました。
ここではladyは小文字です。
アメリカ的解釈であると言えます。
delight・・・悦ぶ、喜ぶ、嬉しい、楽しい
キリスト教の下では、愛の喜びと言う場合、肉体的悦びだけでなく、神の御心に叶ったという事の喜びがあると思います。

Marianne Faithfullの歌ではこの長さですが、実際はもっと長い詩です。
この長さで誰にでも理解出来るように翻訳しています。
詩全体があれば、もう少し違った解釈になることもあります。

Greensleevesという詩は、
「エリザベス朝(エリザベス一世)の頃、イングランドとスコットランドの国境付近で生まれたと言われています。
記録では、1580年に、ロンドンの書籍出版業組合の記録に、この名の通俗的物語歌(EN)が、「レイディ・グリーン・スリーヴスの新北方小曲(A New Northern Dittye of the Lady Greene Sleeves)」として登録されました。」
スコットランドの国境付近であることから、Greenはスコットランドの古語であることが考えられます。
the Lady Greene SleevesのLadyが大文字であることから、女領主=女王エリザベス一世、聖母マリアの事を言っているのではないかと考えます。
Ladyは肩書きの時も大文字を使用します。

ダンテ・G・ロセッティ画
「My Lady Greensleeves」
「歌のなかのレイディ・グリーン・スリーヴスは、非常に高い蓋然性で、性的に乱れた若い女性であり、恐らく娼婦であったろうことが広く認められている。」・・・Wikipediaより
このことから言えるのは、「My Lady Greensleeves」は、マグダラのマリア(新約聖書中福音書に登場するイエスに従った女性)である可能性があります。

しかし元は、Greene Sleevesです。
大文字であることから、人の名前であることが考えられますが、淫らな売春婦、グリーン・スリーヴス夫人ということにすると、歌詞は何だかおかしな具合になります。
マルティン・ルター(Martin Luther、1483年11月10日アイスレーベン - 1546年2月18日)は宗教改革の創始者です。
生存期間は、エリザベス一世と一致します。
おそらく、Greene Sleevesは、時代を考えますと、イギリスは未だカソリックですから、マグダラのマリアではなく、聖母マリアであったのではないでしょうか?

確かに、ダンテ・G・ロセッティは、「My Lady Greensleeves」に、緑色の袖の付いた服を着ているだらしのない女を描いています。
彼は、19世紀のイギリスの画家であり、詩人です。
「Green」には、スコットランド語で「憧れる」という意味があることを知らなかったか、故意に「聖母マリア」に代表されるカソリックの偶像崇拝を批判した絵を描いたとも考えられます。

詩人や画家は、現在でも権力者の所有する人々です。
「イギリス国教会は、元々カトリック教会の一部だったが、16世紀のイングランド王ヘンリー8世からエリザベス1世の時代にかけ、ローマ教皇庁から離れ、独立した教会となった。
通常プロテスタントに分類されるが、他のプロテスタント諸派と異なり、教義上の問題でなく、政治的問題(ヘンリー8世の離婚問題)が原因となってローマ・カトリックから分裂したため、典礼的にはカトリックとの共通点が多い。」Wikipediaより

イギリスは、カソリックの色彩が強いプロテスタントの国ですから、「聖母マリア」を「マグダラのマリア」とすることはないでしょう。
ダンテ・G・ロセッティという画家が、実際どういう人に仕えていたのか分かりません。
しかし、この絵「My Lady Greensleeves」を以って、「Greensleevesは淫らな女」であるとすることは非常に危険です。

「Greene Sleeves」、元は「Greene」で「e」が付いています。
グレアム・グリーン(Graham (Henry) Greene, 1904年10月2日 - 1991年4月3日)はイギリスの小説家です。
「Graham (Henry) Greene」という風に、Greenにeが付いています。
「sleeves」にも、複数を表す「s」が付いています。
私は二つの「袖・袂」であると解釈し、袂(たもと)は大切な物を隠す場所ですから、大切な人、大切な物という意味が含まれていると考えます。
「Greene Sleeves」が名前なのか、誰かを暗に表すものか分かりません。

通俗的物語歌とはいえ、登録された詩というものは、宗教的、政治的配慮に基づいています。
日本の詩歌も、現在に至るまで同じ事が行われています。
しかし、あまりにも政権批判の格好を付けようとしているために、退廃に傾き、日本語の美しさは損なわれ、詩が創り出すイメージが完全に空疎なものになってしまいました。