Sinnò me moro

Amore, amore, amore, amore mio, In braccio a te, me scordo ogni dolore! Vojo resta co'te, sinnò me moro, Vojo resta co'te, sinnò me moro, Vojo resta co'te, sinnò me moro…  Nun piagne amore

Sinno me moro(Un maledetto imbroglio 刑事)

自己紹介 成田悦子毎日少しずつ主に英文学の過去の小説を紹介しています。私の遣り方は原文をそのまま生かし、イギリス人、イギリスという国そのものの文字を通した姿を過去に遡って見せ、貴方同様私が学ぶ

自分の写真
暑いし, リチウム電池入りロボ県内, Japan
GooNTTレゾナントは私のブログを4つ非表示にし、「詩を全部削除しろ」と詩人である私に言っています。

Gooは猥褻サイトの記事は問題がないと言います。私の住所・氏名・電話番号まで書き込んで「きちがい、前科三犯」と書くサイトの規約違反を指摘しても、「貴方は一体どうしたいのですか?」と言います。削除して欲しいに決まっています。そんなことも分からないのに、「鳥居正宏」という偽名の社民党員の要請で四つのブログを非表示にしています。私は「鳥居正宏」の中傷記事を書いたことは一度も無く、中傷されたコメントを載せたことが一度あっただけです。しかしそのコメントは、社民党と自公政権が不正に侵入して直ぐに削除して非表示の要請があった時にはありませんでした。あれから20数年Gooも消えます。私が消えていないことはいい兆し。正義は私の下にある。当面翻訳中心の生活です。

成田悦子翻訳小説.orgで翻訳中 「Youth 」Joseph Conrad, The Grapes of Wrath Jhon Steinbeck

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ブログ 成田悦子翻訳小説.org Youth Joseph Conrad, The Grapes of Wrath Jhon Steinbeck

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2022年8月31日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「じゃあ、私であると証明してみなさい。ヘンリ。僕が神を論ぱく出来る以上に、僕の物語を、貴方は論ぱく出来ない。が、僕の物語は嘘だと貴方は知っている、まさにそのように、僕は彼がぺてんだとよく知っている。」

 「もちろん、そこには論拠がある。」

 「僕の物語の為に、哲学的論拠を僕はでっち上げてもよく、僕は敢えて言う、アリスタトゥルに基づいた。」

 ヘンリは、不意に話題を元に変えた。もし貴方が来て居てくれたら、それは貴方を少しは救うだろう。サラーは何時も言った、貴方の本は、それらは、あるべき程の成果を上げていないと。」

 「オウ、成功の影は、その上に投げ掛けられようとしている。」僕は、ウォタベリの記事を思った。僕は言った、「賞賛の為に大衆的批評家が、彼らのペンをちょっと浸しているのが聞かれる時、ある瞬間は訪れる―次の本が書かれる前でさえ。それは、皆時機に問題がある。」僕は、僕の心を決めていないから、と話した。

 ヘンリは言った、「そこには残った悪い‐感情は全くない。そこにあるの、ベンドゥリクス?僕は、貴方のクラブで貴方に怒られた―あの男の事で。しかし、今、それはどうでもいいじゃないか?」

256

2022年8月30日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

彼は、急いで続け、彼自らの提案が実際興味深いものではないかのように、マガジンの頁を捲った。「よくそれを考えてみて欲しい。貴方は、今、決める必要はない。」

 「それだから、貴方はとても善良だ。」

 「貴方は僕に好意を示そうとする、ベンドゥリクス。」

 僕は思った、何故そうしないのか?作家は、型に嵌らないと見做(みな)す。僕は、上級官吏よりずっと典型的なのか?

 「僕は、昨夜、夢に見た、」ヘンリが言った、「僕たちの何もかもを。」

 「そう?」

 「僕は、大抵、覚えていない。僕たちは、一緒に飲んでいた。僕たちは、幸せだった。僕は目覚めた時、彼女は死んでいないと思った。」

 「僕は、今は、彼女の夢は見ない。」

 「僕たちが、あの牧師に彼の道を貫かせていたらなあと思う。」

 「そんな馬鹿げた、ヘンリ。彼女は、もう貴方より僕よりずっと、カサリクとは言えない。」

 「貴方は、残存を信じるの、ベンドゥリクス?」

 「もし貴方が個人的残存を言おうとしているのなら、いいえだ。」

 「人は、それに論ぱく出来ない、ベンドゥリクス。」

 「何か論ぱくする、それはほとんど不可能だ。僕は、物語を書く。その中で、何事も起こらなかったと、その登場人物は現実にはいないと、貴方はどう証明出来る?聞いてくれ。僕は、今日、共有地で三本足の男に会った。」

 「何とおぞましい。」ヘンリは真剣に言った。「出来損い?」

 「それに、魚のうろこでそれは覆われていた。」

 「貴方は冗談を言っている。」

255

2022年8月29日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 あんなに僕を怒らせたタトゥラの悦に入った写真から、どんな長い道程を旅して来たのか。僕は、机の上に倒した、スナプ写真から引き伸ばしたサラーの写真を持っていた。彼は、それを上に向けた。「僕はそれを撮ったのを覚えている、」彼は言った。サラーは、写真は女友だちに撮られた、と僕に話した。彼女は、僕の気持ちを救う為に嘘を吐いたんだと僕は思う。写真では、彼女はより若く、より幸せそうだったが、僕が彼女を知った数年の内よりずっと愛らしく見えなかった。僕は、そのあたりを彼女に見せられたらなあと願いはしたものの、彼の情婦の周囲の配役に似て、強固になるばかりの不幸を見詰める事、それは愛人の宿命だ。ヘンリが言った、「僕は、彼女を笑顔にしようとして、自分自身、愚かなことばかりしていた。「将軍ゴードンは、興味深い性質?」

 「なかなかのくせもので。」

 ヘンリは言った、家が、この頃、非常に奇妙に感じる。僕は、出来るだけ力を尽くしてそれから守ろうとしている。貴方は、クラブでの夕食で、侭ならないと僕は思うが?」

 「僕は、終えなければならないたくさんの仕事を貰った。」

 彼は、僕の部屋を見回した。彼は言った、「貴方は、ここでは貴方の本のスペイスを十分とれない。」

 「いや。ベドゥの下にその内の幾らかは、置くことにしている。」

 彼は、ウォタベリが、彼の仕事の一例を見せる為に、インタヴュウ前、僕に送ったマガジンを抜き取り、言った、「僕の家には、部屋がそこいらにある。貴方は、実際、貴方自身向けにフラトゥを持てたりする。」僕は、答えようにもあまりにもびっくりし過ぎていた。

254

2022年8月28日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 

ヘンリが彼の家を共有することを、僕に頼んでもいいと思った時、それは、僕の気味の悪い冗談だった。僕は、提供を実際は期待しなかったし、その時が遣って来た時、僕は、驚きに心奪われた。葬式一週後、彼の訪問も、驚きだった。彼は、以前、僕の家に来たことは一度もなかった。僕は、彼が今までに、雨の中、共有地で彼に会ったその夜より南側に、ずっと近くまで来たことがあるのではないかと疑った。僕は訪問者と顔を合わせたくなくて、僕のベルが鳴るのを聞くと、窓の外を見た―それは、シルヴィと一緒のウオタベリかも知れないちう考えが浮かんだ。鈴懸の‐木の側のラムプは、歩道の上にヘンリの黒い帽子を浮かび上がらせた。僕は階下へ向かい、ドアを開けた。「僕は、ちょうど側を通り掛かったんだ。」ヘンリは嘘を吐いた。

 「入ってくれ。」

 僕が食器戸棚から僕の飲み物を取り出している間、彼は、突っ立って決まり悪そうにオロオロしていた。彼は言った、「貴方は、将軍ゴードンに興味があるように思います。」

 「彼らは、Lifeを遣って行く為に僕を欲しがっている。」

 「貴方は、そうするつもりなの?」

 「僕は、そう考えている。この頃、僕は大抵、仕事のように思わない。」

 「それは、僕と同じだ。」

 「王室委員会に未だ席があるの?」

 「そう。」

 「それは何か考えるべきことを貴方に許すの?」

 「それがですか?そう、僕はそう思っている。僕たちが昼食を止めるまで。」

 「とにかく、それは大事な仕事だ。ここに貴方のシェリがある。」

 「それは、独身気分に僅かなりとも見当違いをさせまいとする。」

253

2022年8月27日土曜日

THe End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 僕は、僕の背中の上に横たわり、僕の天井で動く共有地の高木の影を見守った。それは、まさに符合だ、僕は思った、恐ろしい程の符合、それは、殆ど最後には貴方に彼女を返したことになる。貴方は、一生に備え、僅かな水と一人の祈り手と一緒になって、二歳の子供に印を付けてはいけない。もし僕がそれを信じ始めたら、僕は、肉体や血を信じられただろうに。貴方は、この数年来、彼女を所有しなかった。僕は、彼女を所有した。貴方は、終わりの時に勝った。貴方は、それを僕に念を押す必要はない。彼女が僕と一緒に、このベドゥの上に、彼女の背中の下のこの枕と共に、ここに横たわった時、彼女は、貴方共々僕を騙していた。彼女が眠ると、僕は彼女と一緒になった、貴方とではなく。それは、彼女を貫いた僕だった、貴方ではなく。

 灯は皆消え、闇がベドゥの上にあった、直ぐに僕は夢を見た、僕の手の中に銃を持ち、僕はフェアにいた。僕は、それがグラスで作られたかのように見える瓶を撃っていた。しかしそれはスティールで覆われているかのようで、僕の弾丸は、それを外して跳んで行った。僕は発砲し又発砲して、ひびを入れられたのは瓶ではなかった、そうこうして僕の頭の中に同じ思いを抱えたまま、朝の五時に、僕は目覚めた。この数年の間、貴女は僕のものだった、彼のものではなく。

252

 


2022年8月26日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

  しかしその賢明さは、ビーチ近くの狡猾な儀式で、出来る事が何もなかった。それは「受け容れた」貴方ではなく、僕は、僕が信じなかった神を、語った。サラーが考えた想像上の神は、僕の命を救い(想像可能な何らかの目的の為に)、僕が、嘗て経験した唯一の深い安らぎを、彼の非実在にあってさえ、破滅させた。オウ、いや、受け容れたのは、それは貴方ではなかった。それは呪文だったし、僕は、貴方を信じるくらいなら呪文でも信じる方がましだ。呪文は、貴女の十字架であり、貴女の肉体の復活であり、貴女の神聖なカサリク教会、貴女の聖人の親交だ。

251

2022年8月25日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

  「それは、貴女と同様、多くを『受け容れられた』ようには思えません。」僕は、言うことには抵抗出来なかったが、彼女は、立腹しなかった。「オウ、」彼女は言った、「私の人生には、限(きり)のないほどの誘惑がありました。事態は、終わりまでに好転するだろうと期待しています。サラーは、私と一緒に随分我慢をしました。彼女は、いい娘(こ)でした。誰も私がしたように、彼女に感謝する者はいなかった。彼女は、更に何杯かポートゥを飲み、話した、「貴方だけでも、彼女をよくよく知って下さっていれば。何故(なにゆえ)に、もし彼女がちゃんとした様子の中で育てられていたら、もし私があんな卑しい男たちと決まって結婚しなかったら、彼女は聖人になれたのに、と私は真剣に決め込んでいます。

 「しかしそれは、まるで受け容れなかった。」僕は、荒々しく言い放ち、それから僕は、勘定書きを持って来させる為にウェイタを呼んだ。僕たちの未来の墓所の上を飛ぶあれらの灰色の雁の片翼は、僕の背中の下に隙間風を送ったのか、それとも他に、もしかして、僕は、凍った地面の中の死ぬほどの寒気を捕えてしまった。もしそれが、只、サラーのような死ぬほどの寒気で有り得たら。

 「それは受け容れなかった。僕は、マライルボウンでバトゥラム婦人を下ろした後、家への道すがら、地下鉄の中で僕自身に繰り返した。彼女にもう三パウンズ貸すと「明日は水曜日で、私は、雑役の為に、中に居なきゃいけませんから。」可哀そうなサラー、「受け容れられた」何かは、夫や継父というその一続きだった。彼女の母親は、彼女に効果的に十分教えた、一生の内に、一人の男では足りないと、しかし彼女は、彼女自身、彼女の母親の結婚の虚構を通して見て来た。彼女がヘンリに嫁いだ時、彼女は暮らしの為に嫁いだ、僕が絶望的に分かったように。

250

2022年8月24日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「もちろん、それ程のことは、ビーチで起こらなかった。私たちはその道のりを歩いた、と只言おうとしているだけです。」私はドアの側にサラーを置いて、牧師を探しに行きました。私は、二、三、彼に嘘を吐こうと思いました―成り行き次第の罪のないそれを―事情を説明する為に。私は、その全てを私の夫に押し付けました、当然。彼は結婚する前、約束したのに、その後、彼は彼の約束を破った、と私は言いました。フランス語をたくさん話せない事、それが命運を分けました。貴方が正直な理(ことわり)を知らなければ、貴方には恐ろしく真実に聞こえる。何はともあれ、彼はそこでその時、それを行い、私たちは、昼食に間に合うように帰りのバスを拾いました。

 「何をしました?」

 「彼女にカサリクの洗礼を施しました。」

 「それで終わりですか?」僕はほっとして尋ねた。

 「まあ、それは、サクラメントゥです―そうとも彼らは言います。」

 「サラーは、カサリクそのものだ、と貴女は言いたいのではないか、と直ぐに思いました。」

 「まあ、貴方は見ていますね、彼女はそういう人でした。只彼女はそれを知りません。私は、ヘンリが適切に埋葬してくれていたらと願います。」バトゥラム婦人は言い、再び異様な涙の滴下を始めた。

 「喩えサラーが知らなかったにしても、貴女は彼を責めることは出来ない。」

 「私は、何時も、それは『受け容れる』だろうという願いを持っていました。ワクチン接種のように。」

 「それは、貴女と同様、多くを『受け容れられた』ようには思えません。」僕は、言うことには抵抗出来なかったが、彼女は、立腹しなかった。

248

2022年8月23日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「復讐?僕はあまりよく貴女が分からない、バトゥラムさん。」

 「私の夫への、もちろん。それは単に、彼の最初の妻の所為だけではありません。私は貴方に話したでしょ、彼は、私をカサリクにならせないということを?オウ、そこにはこんなシーンがありました、もし私がマス(ミサ)に行こうとさえしなければ。

そこで私は思いました、サラーはカサリクになろうとしている、そうして彼は知りもせず、私が実際に怒りを買わなければ、私は彼に話そうともしない。」

 「それで、貴女はそうしなかったんですか?」

 「彼は去り、その後一年、私を置き去りにしました。」

 「だから貴女は、もう一度、カサリクになれた?」

 「オウ、まあ、私は多くを信じなかった、貴方が見ての通り。その後、私はユダヤ人と結婚しました。そして彼も又、難しかった。ユダヤ人は、恐ろしく寛大だ、と彼らは貴方に言います。貴方は、それを信じてはいけない。オウ、彼は、卑しい人でした。」

 「それにしてもビーチで何かあったのですか?」

2022年8月22日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「僕は、貴女が仰っていることが分かりません。」

 「サラーは、私がカサリクだと貴方に話しませんでした―一度も?

 「いいえ。」

 「私はそれにあまり立ち入っていません。 貴女にも見当が付くでしょうが、私の夫は、全てのビズニスを嫌いました。私は、彼の三番目の妻で、最初の年、私は彼の持つ十字架を貰った時、私たちはきちんと結婚していない、と事あるごとに申しました。彼は、卑しい人でした、」彼女は機械的に付け加えた。

 「貴女がカサリクである事は、サラーをそれにしない。」

彼女は、もう一口、彼女のポートゥを飲んだ。彼女は言った、「私は、他の指導者を口にしたことはなかった。私は少し酔ったと私は思います。私は酔っていると貴方は思いますか、ベンドゥリクスさん?」

 「もちろん、思いません。もう一杯ポートを飲んで下さい。」

 僕たちがそれを待つ間、彼女は、話を切り替えようとしたのに、僕は、彼女を情け容赦なく連れ戻した。「貴女は何を言い出すんです―サラーがカサリク?」

 「貴方はヘンリに話さない、と約束して下さい。」

 「僕は約束します。」

 「私たちは、一度、ノーマンディの海外にいたことがあります。サラーは、ちょうど二つを越えていました。私の夫は、ドービルに何時も出掛けました。そう彼は言っていましたが、彼が、彼の最初の妻を見舞うことを、私は知っていました。私は大層な十字架を頂きました。サラーと私は、砂浜に沿って歩いて向かいました。サラーは、座りたいと頼み続けたのに、私は、彼女に一休みさせ、その後も、私たちは少しでも歩こうとしました。『これは、貴女と私の秘密よ、サラー。』その時でさえ、彼女は内緒ごとが上手でした。―彼女はそうしたかったかどうか。私は、貴方に話せるなんて、びっくりします。でも、それは立派な復讐ですものね?」

247 

2022年8月21日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 彼女の会話は、地下鉄システムのようだった。それは、円や輪の中で動いた。僕は、カフィによって、繰り返されている駅に気付き始めた。ヘンリの卑しさ、彼女自身の清算の高潔、サラーへの彼女の愛情、葬式に伴う彼女の不満、偉く大きな全て―そこは、ヘンリに向かう不可避な列車が進み続ける所だった。

 「それは、随分おかしかったわ。」彼女が言った。「私は笑いたくなかった。誰も私が愛した以上にサラーを愛した者はいません。」僕たちは皆、僕たちが他の舌の上で、そういうことを聞くと、何時も、それに主張したり、怒られたりする。「しかしヘンリは、それを理解しようとしません。彼は冷たい人です。」

 僕は、目盛りを切り替える為に、測り知れない努力をした。「他にどんな種類の式を、僕たちが催せたのか、僕には見当が付きません。」

 「サラーは、カサリクでした。」彼女が言った。彼女は、彼女の、ポートゥのグラスを手に取り、一気にその半分を飲んだ。

 「ばかな、」僕は言った。

 「オウ、」バトゥラム婦人が言い、「彼女は、そのことを彼女自身知りませんでした。」

 突然、説明しがたく、僕は、殆ど完全な罪を犯してしまった男のように、恐れをなし、彼のペテンの壁に、初めての予期せぬ亀裂を見付ける。亀裂は、どれ程深く入るのか?それは、何とか塞がれるといいが?

246

2022年8月20日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「それは、適当だったと思います。結局、そこには祈り手がいました。」

 「あの牧師―彼は牧師でしたか?」

 「僕は、彼を見なかった。」

 「彼は、偉く大きな全体について話しました。私は、ずうっと分からずじまいでした。彼は偉く大きな海雀を言っているんだと思いました。」彼女は、彼女のスープの中に、又、垂らし始めた。彼女は言った、「私は、吹き出しそうでした、するとヘンリが私を見ました。私は、私の勘定書きにそれを見積もると、見て取れました。」

 「貴女は離れて、それに打撃を与えない?」

 「彼は、とても卑しい人です。」彼女は言った。彼女は、彼女のナプキンで目を拭い、それからスープの中で、猛烈に彼女のスプーンで、彼女はヌードゥルを掻き雑ぜながら、カチカチ音を立てた。「私は、一度、彼から十パウンズ借りなければならなくなりました。と申しますのも、私は滞在する為にロンドンへ来ようとして、私のバグを忘れました。それは、誰にでも起こり得ることです。」

 「もちろん、それは有り得ます。」

 「私は、何時も世間で借金しないことを、自分自身誇っています。」

245

2022年8月19日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「私はそれでいいわ。」彼女は、彼女の手を出し、言った、「グドゥ‐バイ。」時を逸してしまったということ、それは様々な事情の一つだ、と彼女には分かっている、と僕は言えはする。神に感謝、そんな事は、どうでも良かった―地下鉄駅と同じ程度に遠い微かな後悔と好奇心、バートクを覆うウォタベリへの意地悪な言葉。バトゥラム婦人の方へ後戻りしながら、僕は、又、サラーに話し掛けている僕自身に気付いた。貴女は見ている、僕は貴女を愛している。しかし、憎悪が持つのと同程度の、聞かれているという確信を、愛情は持たない。僕たちが火葬場入口に近付くに連れ、パ―キスが消え去ったということに僕は気付いた。僕は、彼が行くのを見なかった。今頃はもう、僕が彼を必要としない、と悟っていなければならなかった。

 バトゥラム婦人と僕は、イゾラ・ベラで夕食を食べた。僕は、僕がサラーと一緒に前に行ったことのある何処にも、行きたくなかった。それにもちろん直ぐに。一緒に訪れた他の全てと、このレスタラントゥを僕は比べ始めた。サラーと僕は、キアンティを飲んだことがなく、そして今は、それを飲んでいるという行為が、あの頃の実情を僕に思い起こさせた。僕は、僕たちの好みのクラレトゥを飲んだ方がずっとましだった、僕は、もう彼女について考えられなかった。空虚でさえ、彼女で混み合った。

 「私は、官公庁業務が好きではなかった、」バトゥラム婦人は言った。

 「僕は気の毒に思います。」

 「それは、非常に非人間的です。ベルトゥ・カンヴェイアのよう。」

 244

2022年8月18日木曜日

The End of the affair/Graham Greene 成田悦子

 「そうです、バトゥラム婦人、」僕は言った。

 「それで私は、私の黒いバグの中にお金を入れ替えるのを忘れました。」

 「僕に出来ることなら、何なりと。」

 「もしよろしければ、貴方が一パウンドゥ私に貸して下さればいいのですが、ベンドゥリクスさん。私は、私は出る前に、町で何か夕食を摂ろうと思います。グレイトゥ・ミセンデンでは、それは早く閉まります、」それから彼女は、話しながら、もう一度彼女の目を拭った。何か彼女に纏わることは、僕にサラーを思い起させた。彼女の悲しみ、多分曖昧さ、の中の現実ーのー物事。彼女は、一度でもヘンリに頻繁過ぎる程「触れた」ことがあったのか?「僕と一緒に、早い夕食を摂りましょう。」

 「貴女は、くよくよしようとしてはいけない。」

 「僕はサラーを愛していました、」僕は言った。

 「そう、私も。」

 僕は、シルヴィアの所に戻り、説明した。「あれは、彼女の母親だ。僕は、彼女の夕食を御馳走したい。僕は申し訳なく思う。僕は貴女に電話して、他の日を設けてもいい?」

 「もちろん。」

 「貴女は、電話帳にある?」

 「ウォタベリがあります。」彼女は悲観的に言った。

 「次の週。」

243

2022年8月17日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「貴方は、ベンドゥリクスさん?」彼女は尋ねた。

 「はい。」

 「サラーが私に話していました、」彼女は始めた、彼女が躊躇している間に、彼女は、伝えたいことがあるという、死者は語り掛けるという乱暴な期待が僕に湧いて来た。

 「貴方は、彼女の最高の友人だ―彼女は、よく私に話していました。」

 「僕は、彼らの中の一人でした。」

 「私は、彼女の母親です。」僕は、彼女の母が生きていると気に掛けもしなかった。あの数年の内、そこには、僕たちの間について話すことは何時も随分たくさんあったのに、僕たち二人の暮らしの全空間は、大昔の地図のように白紙だった、後(のち)に埋められるべく。

 彼女は言った、「貴方は、私についてご存じなかったんでしょ?」

 「現実の事柄としては・・・」

 「ヘンリは、私をよく思わなかった。それがそれをかなり気まづくしました。ですから私は、距離を保ちました。」彼女は穏やかな理性的様子で話した、そして尚も、独立の効果で、彼女の目から涙が溢れ出た。男たちと彼らの妻は、皆、一掃された。見知らぬ人々が、僕たち三人の間を、礼拝堂の中に入る彼らの道を選んだ。パ―キスだけは、考え事をしながら、居残っていた。僕は思う、彼は、より疎遠な情報を提供することで、未だ僕の役に立つのかも知れないが、彼は、彼の距離を保っていた、承知の上で、彼は、彼の立場を話してしまおうとするように。

 「私は貴方のことを聞いて、大変好意を持っています、」サラーの母親は言った。僕は、彼女の名前を思い出そうとした―カメロン、チャンドゥラ、それは、C.で始まった。「私は、今日、グレイトゥ・ミセンデンからこんなに大急ぎでやって来ました・・・」彼女は、浴用タウアルを使っているかのように無頓着に、彼女の目から涙を拭った。バトゥラム、僕は、それが名前、バトゥラムだったと思った。

242

2022年8月16日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

夕べの終わりに、僕は無様に愛を育もうとする、僕の酷い無様さ、僕の性的不能でさえ、もし僕が性的不能と判明すれば、ごまかせばいい、又、僕は専門的に恋愛をしようとしたり、僕の経験も手伝って、彼女を夢中にさせても構わなかった。僕は、サラーに懇願した、これの外へ僕を逃して、それの外へ僕を逃して、僕のではなく、彼女の為に。

 シルヴィアは言った、「私の母が具合が悪いと言う事も出来るわ。」彼女は、嘘を吐く用意をした。それは、ウォタベリの終わりだった。気の毒なウォタベリ。その初めての嘘と共に、僕たちは共犯者になる外ない。彼女は、彼女の黒いズボンを履いたままそこに立っていた。凍った水溜まりの間、そして僕は思った、これが、全ての長い前途が始まる場所だ。僕は、サラーに懇願した。その外へ僕を逃して。僕は、再びその全てを始めて、彼女を傷付けたくない。僕は、愛せない。貴女以外、貴女以外、すると青褪めた老婦人が、薄い氷をバリバリ音を立てながら僕の方へ逸れた。

241

2022年8月15日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

  「シルヴィア、」僕は呼んだ、サラーが僕に耳を傾けるといいのにと

、「貴女は、今晩何処かで食事をするの?」

 「私は、ピータと約束しています。」

 「ピータ?」

 「ウォ―タベリ。」

 「彼を忘れて。」

 貴女は、そこにいるの?僕はサラーに言った。貴女は、僕を見守っている?見て、貴女がいなくても、僕は直ぐに手に入れられる。それは、そんなに難しくはない。僕は彼女に言った。僕の憎悪は、彼女の生存を当てにすれば良かった。彼女が死んだ鳥以上に、影も形も消え失せたと分かった、それは、単に僕の執着に過ぎなかったのだ。

 新たな葬式が、人を集めようとしていたが、鉄道の側のその女は、入って来る見知らぬ人々の様子に、混雑の中、立ち上がった。彼女は、すんででのところで間違った火葬に捕えられそうだった。

 「僕は。電話を掛けるといい、と思う。」

 嫌悪が、倦怠のように、夕闇を覆い、行く手に横たわっていた。僕は、僕自身を追い詰めた。執着もなく、僕は恋の真似事を押し通してしまう。僕が、罪を、僕の迷宮の中に純潔を引きずり込むという罪を犯す前に、罪悪感が疼いた。性の行為は、どうということはないにしても、貴女が僕の年齢に達する頃、どんな時も、全てであることを、それが証明してしまう、と貴女は学ぶ。僕は安心していたが、僕は求めてもいいのに、この子供の中のどんな神経症に、誰が話し掛けられよう?

240

2022年8月14日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳 

 「私は、知りもしません、サー、しかし彼女がそうした遣り方―オウ、そこに、彼女のような人は、多くはいなかった。僕の若い者も・・・彼は何時も彼女のことを話しています。

 「貴方の所の若者はどうしてる、パ―キス?」

 「よくありません、サー。全くよくありません。かなり激しい胃痛が。」

 「貴方は医者に診せたの?」

 「未だ診せていません。私は、自然に物事を委(ゆだ)ねることを良しとしています。或る程度まで。」

 僕は、皆が皆サラーを知っている見知らぬ人々のグループを、見回した。僕は言った、「ここにいる人々は、誰、パーキス?」

 「僕の知らない若い女性、サー。」

 「彼女は僕と一緒だ。」

 「僕は貴方の許しを乞います。サー・ウイリアム・マロックは、地平線上に只一人です、サー。」

 「僕は、彼を知っている。」

 「水溜まりを今避けた紳士は、サー、マイルズ氏の局の主席です。」

 「ダンスタン?」

 「それが、名前です、サー。」

 「貴方は、何とも大勢知っているね、パ―キス。」僕は、嫉妬は全くもって息絶えたと思った。僕は、自ら進んで世界中の男と彼女を分かち合おうと思った、但(ただ)し、彼女が再び息を吹き返せれば。それなのに、ダンスタンの趣(おもむ)きが、古い憎しみを、瞬間、目覚めさせた。 

239

2022年8月13日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 一人の女が、「カータ家は、十日の週末に備えて、私たちに頼んだの。」と言うのを聞いた。

 「貴方は、私について行って欲しい?」シルヴィアが尋ねた。

 「いや、いや、」僕は言い、「僕は、貴女がそこら辺をぶらぶらしていて欲しい。」

 「僕は、礼拝堂のドアに向かい、中を見た。炉に向かう通路は、目下誰もいなかったが、古い花輪が運び出され、新しいものが運び入れられた。初老の夫人が、カートゥンの予期せぬ巻き上げによって捕らえられた他のシーンからの俳優のように場違いに膝まづきながら、祈っていた。聞き慣れた声が、僕の背後でした、「ここで貴方に会えた、そのことは、悲しい中での喜びです、サー、ここでは、過去のことは、あくまで過去のことです。

 「貴方は来たんだね、パ―キス、」僕は避難がましく言った。

 「ザ・タイムズの広告を見ました、サー、それで私は、午後暇を取る為に、サヴィジの許可を求めました。」

 「貴方は、貴方の関わった人々を、これ程遠くまで追跡するの?」

 「彼女は、実に素敵な女性でした、サー、」彼は言った、咎めるように。「彼女は、一度、通りで僕に道を尋ねました、その辺りにいる僕の理由を、勿論、知りもしないで。それにカクテイル・パーティで、彼女はシェリのグラスを僕に手渡しました。」

 「南アフリカのシェリ?」僕はこれみよがしに言った。

238

2022年8月12日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 僕たちが礼拝堂に着くと、皆、出て来るところだった。ウォタベリの意識の流れに関する質問は、実際余りにも長く、僕を手間取らせた。僕は、月並みな悲しみの刺し傷を持った―僕は、結局サラーの最期に見(まみ)えなかった。そこで僕はぼんやりと思った、郊外の庭園の上になびいていたそれは、彼女の煙だったんだ。ヘンリが、無目的に一人で外に出て来た。彼は泣いていた。そして彼は、僕を見なかった。サー・ウィリアム・マロック以外、他に誰も知らなかった。彼は、シルクハトゥを被っていた。彼は、僕に反感の一瞥を与え、先を急いだ。そこには半ダースの公務員の雰囲気を持つ男たちがいた。そこにダンスタンはいたか?それは、あまり重要ではなかった。何人かの妻たちは、彼女たちの夫に同伴した。彼女たちは、少なくとも儀式に満足していた―貴方は彼女たちの帽子で、殆どそれを物語ることが出来た。サラーの消失は、どの妻もより安全なままにした。

 「私は、申し訳なく思います。」

 「それは、貴女の落ち度ではない。」

 僕は思った、もし僕たちが彼女を記憶に留められたら、安全ではなかったでしょう。彼女の死体でさえ、彼らを裁く基準を与えただろう。

 スマイズは、外に出て、いない者に話しかけながら、水溜まりの中をどんどん急いで、水を飛び散らした。

237

2022年8月11日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 僕は、シルヴィアに与えるものはなかった。僕は、彼女の教師の一人になろうとはしない、しかしだから僕は次の半時間を、僕の孤独を詮索している、僕のサラーとの関係がどうだったか、誰が誰を捨てたか、僕の態度から探ろうとしているその表情を懼れた。僕は、僕を支える彼女の美しさを必要とした。

 「でも。こんな服では入れないわ、」僕が彼女に同行を求めた時、彼女は不満を表した。僕は、彼女に僕と一緒にと望んだ、そのことを、どれ程彼女が嬉しがったか、僕は話してもいい。あそこであの時、ウォタベリから彼女を奪える、と僕には分かった。彼の砂は、既に流れ出た。もし僕が選んだら、彼は一人でバータクに耳を傾けるだろう。

 「僕たちは後ろに立とう。」僕は言った。「貴女は、歩き回っている単に見知らぬ人になるといい。」

 「少なくとも彼らは黒い服よ。」彼女のズボンに言及して、彼女は言った。タクシの中で、僕は僕の手を約束のように彼女の足の上に置いたままでいたが、僕は、僕の約束を守るつもりはなかった。火葬場の塔は、煙を上げ、砂利の歩道に半ば凍った水溜まりに水が横たわっていた。大勢の見知らぬ人々が、側を通った―前の火葬からの、僕は思った、飽き飽きするパーティを後にして、今やっと「前に進む」ことが出来る人々の元気な清々しさが彼らにはあった。

 「それは、この道です。」シルヴィアが言った。

 「貴方は、その場所を随分よく知っているね。」

 「ダディは、二年前、ここで済ませました。」

236

2022年8月10日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳


 Ⅳ

「ハムプステドゥは、次の停留所よ、」シルヴィアは言った。
 「貴女は、貴女のお母さんを見に行くんだったね?」
 「私は、ゴウルダズ・グリーン迄付き合って、貴方を案内しましょう。私は、普段、今日は彼女を見に行きません。」
 「開始の列に遅れても、そんなことは、問題ない、と僕は思うよ。」
 彼女は、駅の中庭まで僕を見送り、その後彼女は戻ろうとした。彼女が随分たくさん悩みを抱えているということ、それが僕には不思議に思えた。女の人に対して好きになるような僕の中のどんな性質も見せびらかしたことはなく、今までより以上に今は少ない。悲しみや落胆は、嫌悪に似ている。それは、自己憐憫や難儀と共に男達を穢れさせる。そしてそれも又、如何に僕たちを利己的にすることか。
235

2022年8月9日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「当然、私は受け入れない。私は、私の理由を既に貴方に話しました。もしそれらがマイルズ氏に対して十分説得力がないようであれば、そこには、もはや話の一つもない。」彼が彼の椅子から身を起こすと、何とも不格好な男だった、彼は座ってさえいれば、少なくとも権力的外見は持っていた。しかし彼の足は、彼の体にしては短過ぎ、彼が立ち上がると、意外に小さかった。それは、まるで突然、彼が長い道のりの向こうに行ってしまったかのようだった。

 ヘンリは言った、「貴方がもう少し早くいらっしゃればなあ、神父。どうか考え込まないで下さい・・・」

 「私は、貴方のことを何も悪く思っていません、マイルズさん。」

 「僕のことは、多分、神父?」僕はわざと無礼を承知で尋ねた。

 「オウ、気にしないで下さい、ベンドゥリクスさん。貴方が出来ることは何一つなく、直ぐに彼女に影響を及ぼします。」懺悔は、憎悪を認めることを人に教える、と僕は思う。彼は、ヘンリに彼の手を差し出し、彼の背を、僕に向けた。僕は、彼に言いたかった、貴方は、僕のことを勘違いしている。僕が遠ざける、それはサラーではない。それに貴方はヘンリについても勘違いしている。僕ではなく、彼が不純な奴だ。僕は、僕自身を、守りたかった、「僕は彼女を愛した、」確かに懺悔の中で、彼らは、そうした感情を認めることを学ぶのだから。

234

2022年8月8日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

  「貴方に言うのは、それは異常で失礼な事のように思いますが、マイルズさん、貴方の奥様が、何とも善良な女性だったということを貴方は分かっているとは思いません。」

 「彼女は、僕に対して何もかもあるがままでした。」

 「実に多くの方々が、彼女を愛しました。」僕は言った。

 「クロムプトン神父は、鼻を垂らした子供から、教室の後ろで、妨害音を耳に挟む校長のように、僕の上に彼の目を向けた。

 「多分、十分ではありません。」彼は言った。

 「十分、」僕は言った、「僕たちが話し合っていたことに戻るべき。僕たちは、今となっては物事を変えられるとは思いません、神父。それも又、話しの大げさな取り扱いのもとになります。貴方は、世評を好まないでしょ、ヘンリ?」

 「いいえ、オウいいえ。」

 「そこには、ザ・タイムズの掲載があります。僕たちは、訂正を加えざるを得ない。人々は、その類のことに敏感です。それでは、あれこれ評判されるだけです。何はさておき、貴方は、無名ではない、ヘンリ。それから、電報は、送られてしまうでしょう。」大勢の方々が、既に、火葬場へ花輪を配達してしまったでしょう。貴方は、僕の意味するところに目が行きます、神父。」

 「私がすることを、僕は口に出来ない。」

 「貴方が尋ねるどんな事も、合理性に欠けます。」

 「貴方は、一連の非常に奇妙な価値観を持っているように思えます。、ベンドゥリクスさん。」

 「それにしても確かに貴方は、肉体の復活に影響する火葬を受け入れない。」

233

2022年8月7日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 クロムプトン神父は言った、「私は、貴方がたに割り込むなど夢にも見ません、マイルズさん、ちゃんとした理由もないのに。」

 「私は、彼女が死ぬ前、一週間以内に書いたマイルズ婦人からの手紙を持っています、」僕は、彼に打ち明けた。「貴方が彼女を見てから、それでどの位経ちますか?」

 「おおよそ同じ頃です。5、6日前。」

 「それは、僕には極めて妙な気がしますが、彼女は、彼女の手紙の中で、その話題に触れてもいません。」

 「おそらく、ミスタ:::ベンドゥリクスさん、貴方は彼女の信頼を得ていなかった。」

 「おそらく、神父、貴方は結論へと少し性急に飛躍し過ぎます。必然的にカサリク信者になろうとするのでもないのに、人々が、貴方がたの教義に興味を持っても、それについて質問してもいい。」僕は、素早くヘンリに続き、「今更、何もかも変えるなんて、それは馬鹿げている。案内は、出してしまった。友人たちは招待してしまった。サラーは、一度も狂信的であったことはない。彼女は、出来心があって引き起こす何らかの面倒を、最後に必要としたのでしょう。後の祭り、」ヘンリの上に、僕の目を釘付けにしたまま、僕は更に追い詰め、「それは、クライストゥ教徒の儀式になります。あのサラーは、クライストゥ教徒でさえなかった。僕たちはともかく、それについて何の兆しも見なかった。しかし貴方は、何時でもクロムプトン神父にマス(ミサ)の代金を差し上げられる。」

 「それは、必要ではありません。私は今朝そのことを申しました。」彼は、彼の膝の中の彼の両手で身振りをした。真っ先に彼の硬直に分け入る。それは、爆弾が落ちた後、替えて寄り掛かる頑丈な壁を眺めているかのようだった。

 「僕のマス(ミサ)の中で、毎日、彼女を追悼します。」

 ヘンリは、それで物事の決着がついたかのようにほっとして言った。         「貴方については、非常に好ましい、神父、」そして煙草の‐箱を動かした。

232

2022年8月6日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「そんな、どうして?」

 「教会は、特権を、マイルズさん、責務同様十分に奉(たてまつ)ります。 そこには、我々の死に備えて特別なマスィズ(ミサ))が用意されています。祈りが本式に唱えられます。私たちは、私たちの死を追悼します、」彼は付け加え、僕は腹立たしく思い、貴方はどういう風に彼らを追悼するのか?貴方の論理は、全く正しい。貴方がたは、個人の重要性を説く。僕たちの毛は、皆、番号が付けられている、と貴方がたは言う、が僕は、僕の手の甲で、彼女の頭髪を感じられる。彼女が僕のベドゥに顔を伏せると、彼女の背骨の付け根に、ヘアの上質の亡骸を思い出すことが出来る。僕たちは、僕たちの死をも思い出す、僕たちなりに。

 ヘンリが気弱になるのを見守りながら、僕は、断固として嘘を吐いた、「彼女がカサリクになろうとしたと信じる理由を、僕たちは全く持っていません。」

 ヘンリは始めた、「勿論、看護婦が言ってはいました、」僕は彼を遮った、「彼女は、最後にうわ言を言ったんだ。」

231

2022年8月5日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「もし私が知っていれば、貴方がたの手を煩わさずに、悉(ことごと)く何でも引き受ける用意がありましたのに。」

 僕がヘンリを嫌った時、そこには時機があった。僕の嫌悪は、今思うとつまらない。僕が犠牲者だったと同様、酷な程、ヘンリも犠牲者で、勝者は、大層な襟を着けたこのぞっとするような男だった。僕は言った、「貴方は、確かにそれを殆ど出来なかった。貴方は、火葬に不賛成だった。」

 「私は、カサリク式土葬を準備出来ました。」

 「彼女は、カサリクではなかった。」

 「彼女は、それになる意志を表明していました。」

 「彼女をそれにするのに、それだけで十分ですか?」

 クロムプトン神父は、決まった遣り方を演出した。彼は、それを銀行通帳のように、下に広げた。「私たちは、要請があればバプティズムを認めます。」

 「それは、僕たちの間のそこに、摘まみ上げられるのを待ちながら、置いてあった。誰も動かさなかった。クロムプトン神父は言った。「貴方がたの準備を撤回する時間は、未だそこそこあります。」彼は繰り返した、「私は、貴方がたの手を煩わさず全て引き受けます、」彼はマクベス婦人に話しかけ、彼女にアラビアのパーヒューム以上に彼女の手を甘くする、或る非常にいい方法を、彼女に期待させるかのように、それを訓戒調で繰り返した。

 ヘンリは、突然言った、「それは、本当に大きな差を作るんですか?勿論、僕はカサリクではありません、神父、しかし僕は見当が付かない・・・」

 「彼女は、もっと居心地が良かっただろう・・・」

230

2022年8月4日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 Ⅲ

午後を前にして、ヘンリは、迷っていた。彼は、来て欲しいと僕に頼む為に電話をして来た。サラーが去ると共に、僕たちが如何に近付いたか、それは、妙だった。彼は、前にサラーに頼っていたように、今、僕をかなり頼る―僕は、およそ幾らか家に精通している者ではあった。葬式が終わった時、彼が家を共有するよう僕に頼みたいのか、どんな答えを僕は彼に与えたいのか分からない振りもした。サラーを忘れるという見地から、二つの家の間で選ぶ事、そこには何一つなく、彼女はどちらにも属して来た。

 僕が着いた時、彼は彼の薬で未だぼんやりしていて、或いは、僕は、彼にもっと面倒を掛けるのかも知れなかった。一人の牧師が、書斎の肘掛け椅子の縁にこわばって座っていた。僕がサラーを最後に見た暗い教会で、日曜日に地獄から出て来て仕える、多分レデムプトリストゥの一人、気難しい瘦せこけた顔を持つ男。彼は明らかに鼻っからヘンリに反感を持たせ、それは、役に立った。

 「こちらは、ベンドゥリクス氏、作家の、」ヘンリが言った。「クロムプトン神父。ベンドゥリクス氏は、僕の妻の大切な友人です。」クロムプトン神父は、それを既に知っているという印象を僕は持った。彼の鼻は、控え壁のように、彼の顔を走って下り、僕は思う、おそらくこれが、サラーの上の希望のドアを、バタンと閉めたその男だ。

 「申し分のない午後ですね、」クロムプトン神父は、ベルやカンドゥルが、遠く離れていないと感じた、そんな悪‐意を持って言った。

 「ベンドゥリクス氏は、準備全てに大いに対処して僕を助けてくれました、」とヘンリは説明した。

229

2022年8月3日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「僕が今まで生きて来て、これが初めての葬式です、」僕は、話を仕切り直す為に言った。

 「貴女のお父さんとお母さんは、生きているの、唐突だけど?」

 「私の父は。私の母は、私が学校で離れていた時、死にました。私は、2、3日の休暇を貰おう、と思いしましたが、私の父は、それでは私の心を乱すと考え、ですから私は、その外にいて全く何事にも関らなかった。外され、私は準備を放免されました。その夜そのニュースは、届きました。」

 「私は火葬されたくありません。」

 「貴女は、虫の方がいいの?

 「はい、私はその方が。」

 僕たちの頭は、どちらからともなく随分接近して、僕たちは、僕たちの声を高く上げずに話せたが。人混みの所為で互いを見ることは出来なかった。僕は言った、「或る方式でも他でも、それは、僕には関心はないよ、」そして直ぐに、何故僕は嘘を吐く為に悩んで来たのか、と不思議に思った。そのことに関心があった、そのことに関心がなければならなかった。埋葬に反対してヘンリを説得して来たのは、それは、最終的に僕だったから。

228

2022年8月2日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

僕たちは、一緒にトッテナム・コートゥ・ロウドゥの瓦礫の中に入って行った。僕は言った、「パーティを散々にしてくれてありがとう。」

 「オウ、私は貴方は逃げ出したがっていると分かりました、」彼女は言った。

 「貴女のもう一つの名前は何?」

 「ブラック。」

 「シルヴィア・ブラック、」僕は言った、「それは、いい組み合わせだ。殆ど言う所が無さ過ぎ。」

 「それでは、大の親友ですか?」

 「そう。」

 「女の人?」

 「そう。」

 「私は気の毒に思います。」彼女は言い、そして僕は、彼女がそういうつもりだという印象を持った。彼女は多くを学ばなければならなかった、本や音楽の道で、又、如何に装い話すかを。しかし彼女は人間らしさを学ぶ必要はない。彼女は僕と一緒に混み合った地下鉄へと下り、僕たちは、並んで吊革に掴まった。僕に寄り掛かる彼女を感じながら、僕は、欲望を思い起こした。それは、今、是が非でも事実になろうとするのだろうか?

欲望ではなく、しかし単にそれを思わせるだけのもの。彼女は、グジ・ストゥリートゥで、新しい人に道を作ろうして向きを変えた。それで、誰でもずっと前に起こった何かに気付くように、僕は、僕の足に触れた彼女の大腿骨に気付いた。

227

2022年8月1日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「しかし貴方は5分ここにいただけです。この記事をまともなものにすること、それが大切です。」

 「僕にとっては、ゴウルダズ・グリーンに遅れないこと、それが本当に大切です。」

 「僕は、その理屈は眼中にありません。」

 シルヴィアは言った、「私は、ハムプステドゥと同じくらい遠くへ、私自身行くつもりです。私は、貴方の目的地に貴方を置いてきぼりにしますが。」

 「君は僕に話してないじゃないか。」ウォタベリは、疑って言った。

 「私が、何時も水曜日に私の母を見に行くのを、貴方は知っています。」

 「今日は、火曜日だよ。」

 「どうしても明日行く必要はありません。」    「それは、貴女にも非常に好都合です、」と僕は言い、「僕は、貴方の連れが気に入りそうだ。」

 「貴方は、貴方の作品の一つにある意識の趨勢(すうせい)を利用しましたね、」ウォタベリは、必死な慌て振りで言った。「何故貴方は、あの方式を捨てたのですか?」

 「オウ、僕には分かりません。誰もが、何故フラトゥを変わるのか?」

 「それには欠陥がある、と貴方は思ったんですか?」

 「僕の作品全てについて、僕はそれを感じています。さて、グドゥ‐バイ、ウォタベリ。」

 「僕は、記事のコピを貴方に送ります。」彼は、まるで脅しを表明するかのように言った。

 「ありがとう。」

 「遅れるなよ、シルヴィア。それでは、6時30分に三番のバートク プログラムですよ。」

226

2022年7月31日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

  「貴方は、40分は覚悟して置いた方がいいでしょう。」シルヴィアが言った。「貴方は、エヂウエア列車を待つことになります。」

 「フォースタ、」ウォタベリは、苛々して繰り返した。

 「その駅から貴方はバスに乗るしかありません。」シルヴィアは言った。

 「実際、シルヴィア、ベンドゥリクスはゴウルダズ・グリーンへの着き方について話す為にここに来て貰ったんじゃないんだよ。」

 「私は、済まなく思います、ピータ、私は本当に思います・・・」

 「思う前に6数えなさい、シルヴィア、」ウォタベリは言った。「それではさて、僕たちはE.M.フォースタに戻せますか?」

 「僕たちに必要ですか?」僕は尋ねた。

 「貴女はこんな色々な学校に属しているので、そりゃあ面白いだろうね・・・」

 「彼は、学校に属しているの?僕がしたことを、僕は分かってもいなかった。貴女は、教科書を書いて

いるの?」

 シルヴィアは微笑み、彼はその笑みを見た。僕は、その瞬間から、彼は、彼の取引の武器を鋭く研いではいるが、そのことは、僕には重要ではなかった。無関心と誇りは、大変よく似て見える上に、彼は多分僕のことを自慢げだと思った。僕は言った、「僕は、本当に行くことになっているんです。」

225

2022年7月30日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

  「ゴウルダズ・グリーンで葬式、」ウォタベリは叫んだ。何と貴方自身の品位の一端らしい。それならゴウルダズ・グリーンにいなければならないでしょ?

 「僕は、場所を選ばなかった。」

 「芸術を模写している暮らし。」

 「それは友人ですか?」シルヴィアが、同情して尋ねると、ウォタベリは、睨みつけて彼女の見当違いを表した。

 「はい。」

 彼女は、あれこれ思い巡らしていたと、僕には見受けられた―男?女?どんな種類の友人?そしてそれは、僕を満足させた。僕は、彼女に対して人間で、小説家ではなかったから。友人が死んで、彼らの葬式に出席する、満足と痛みを感じる、慰安さえ必要としてもいい、多分仕事は、モーム氏のものよりずっと卓越した共感を得、熟練工そのものではなく、勿論、同じくらい高くそれを位置付けられないが、一人の男だった。

 「貴方は、フォースタをどう思いますか?」

 「フォースタ?オウ、申し訳ないが、ゴウルダズ・グリーンまで、それがどれだけかかるか、僕にはまるで分からない。」 

224

2022年7月29日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

ウォタベリは、トッテナム・コートゥ・ロウドゥ外れのシェリ‐バーで待っていた。彼は、黒いコーデュロイのズボンを履き、安い煙草を吸い、彼より桁違いに背が高く、見栄えのいい、同じ感じのズボンを履き、同じ煙草を吸う女を、彼の側に連れていた。彼女は随分若く、彼女はシルヴィアと呼ばれた。専(もっぱ)らウォタベリ付きで始まった勉強の長いコース上にあって―彼女は、彼女の教師を見習う段階だった。そうした見せかけ、そうした用心深い天性の有能な眼差しと髪、イルーミネイシャンの金を持つ、僕はどことなく不思議に思った。彼女は、けりをつけるだろう。彼女は、十年の内にウォタベリを、トッテナム・コートゥ・ロウドゥ外れのバーを思い出したりするのだろうか? 僕は彼を気の毒に思った。彼は、今は大層自信ありげで、僕たち二人に大層なパトロン気取りだが、衰退して行く側にいた。何故、僕は思った、意識の流れに関する彼の特に独りよがりなコメントゥで、僕のグラス越しに彼女の眼差しを捕えながら、今直ぐにでも彼女を彼から手に入れることが出来ると。彼の記事は、新聞に閉じられたが、僕の本は、布地で製本された。彼女は、僕からはもっと学べると知っていた。そして未だに、哀れな悪魔、時に、彼女が素朴な人間の知的ではないコメントゥをすると、彼は、彼女をわざと無視するような神経を持っていた。僕は、彼に虚しい未来と戒めたかったのに、僕は、もう一杯飲み、言った、「僕は長くはいられません。ゴウルダズ・グリーンの葬式に行くことになっています。」

223 

2022年7月28日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 僕は、彼の記事の仰々しい表現を、余りにもよく知り過ぎていた。彼は、僕が気付かなかったことを発見し、欠陥は、正視すると嫌気が差す。挙句の果てに贔屓にしても、彼は、僕を位置づけようとする―おそらくモームの少し上に、モームは、世間に広く行き渡っているから、それに僕は、未だその罪は犯していなかった―未だしてない、しかし不成功というささやかな排他性を維持し、そのちょっとした書評は、賢い刑事のように、その道すがら、嗅ぎ付けてしまう。

 何故僕は、コインを投げる程、今まで悩んだのか?僕は、ウォタベリに会いたくなかったし、僕は確かに色々書かれたくなかった。僕は、今や、僕の興味の限界に達していたから。誰も賛辞で僕をひどく喜ばせたり、或いは、非難して僕を傷付けたり出来ないから。僕が、今尚興味を持つ官吏に関するその小説を始めた時、しかしサラーが僕を残して逝った時、僕の仕事、それは何の為だったか―何週、何年中、何かを得ようとして、煙草同様、何の役にも立たない薬物のような。僕たちが死によって消滅するのなら、僕は尚も信じようとしても、瓶や衣服や、安い宝石以上に、何冊かの本を後世に残すことに、そこに何の利点があるのか?そしてもしサラーが正しいのなら、重要な芸術の全ては、如何に重要ではないのか。僕はコインを放り投げて決めたのは、僕は、単に、孤独からだけだと思う。葬式の前、僕は何もすることがなかった。僕は一、二杯の酒で元気付けたかった。(誰でも自分の仕事を心配しなくなるのはいいが、誰でも集会を気にしなくなり、一人前の男が、人前で取り乱してはいけない。)

222                              

2022年7月27日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

  そこには、もう何もなかった。彼女は、それらが話される前でさえ、彼女の祈りに答えて貰うコツを持っていたように思うのは、彼女が雨の所為で入って来て、ヘンリと一緒の僕を見つけたあの夜、彼女は、死ぬことにとりかかったのではなかったか?もしも僕が小説を書いていたら、僕は、それをここで終わろうとしただろう、僕は何時も思う、何処かで終わることにしなければ、と、しかし僕は、僕の実在主義は、この何年もずっと、欠陥のままだった、と信じ始めている。今や、人生に於ける何事も、何れ終わるように思えるものはないのに。化学者は、決して物質は完全に破壊されない、と貴方に話し、数学者は、もし貴方が部屋を横切ろうとして各歩調を二等分すると、貴方は何時までも反対側の壁に達さないだろうと貴方に話す。この物語がここで終わると考えたとしたら、僕は何と楽観主義者なのだろう。只々、サラーのように、僕が馬並みに強くない方がいいのだが。



僕は、葬式に遅れた。或るちょっとした書評に、僕の作品に関する記事を書こうとしていたウォタベリという男に会いに、街中に出掛けてしまった。僕は彼に会おうか、どうしようか、コインを投げて決めた。

221

2022年7月26日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

私が貴方を愛すように、以前、私は愛したことはなかった。私が今信仰するように、以前、私は何かを信じたことはなかった。私は確信しています。私は、何かにつけ、以前、確信がなかった。貴方が、貴方の顔を血まみれにして、ドアの所に入って来た時、私は確信するに至りました。一時(いちどき)に何から何まで。喩え、その時、私がそれを知らなかったにせよ。私は、愛と格闘するよりずっと長く、信じることと格闘しましたが、私には、どんな闘争心も残っていません。

 モーリス、親愛なる人、怒らないで。私を可哀そうだと思って、でも怒らないで。私はいんちきでぺてんだとしても、これは、いんちきでもぺてんでもありません。私は、私自身のことを、確かだと当たり前のように思っていたので、何が正しくて間違っているのか、貴方は私に確信しないように教えました。貴方は、私の嘘の全てと自己‐欺瞞を、それらが、道伝いにやって来る誰か、大切な誰かの為に、瓦礫の道を奇麗にするが如く、取り去り、そして今、その人がやって来ましたが、貴方は、その道、貴方自身を身綺麗にしました。貴方が書く時、貴方は正確であろうとし、貴方が真実を追い求めるように、と私に教え、そうして貴方は、私が真実を語ろうとしなかった時、貴方は、私に話しました。貴方は、本当にそう思うのか、貴方は言おうとして、或いは、貴方がそう思うと思っているだけなのか。そう、それは、皆貴方の欠陥、モーリス、皆貴方の欠陥だ、と貴方には見て欲しい。こんな風に、私を生き続けさせようとしない、彼の人、神に、私は祈ります。

220

2022年7月25日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

あらゆる機会に、私がこんな希望を持つ不可思議を、彼に問いました。それは、新しい家の鎧戸を開けることに、その見晴らしに目を向けることのようで、すると全ての窓は、まさに白地の壁に面していました。いいえ、いいえ、いいえ、彼は言いました、私は貴方と結婚出来ない、私は貴方の顔を見続けることは出来ない、もし私がカサリクになるつもりがなければ。私は、思いました、彼らの全運命もろとも地獄へ、そして私が彼と面会していたその部屋から、私は歩いて外に向かい、私が牧師連中について思う何かしらを知らしめる為に、ドアをバタンと閉めました。彼らは、私たちと神の隔たりになると私は思いました。神はもっと慈悲心を持ちます。それから私は教会の外に出て、彼らがそこに持つクライストゥ磔刑像(たっけいぞう)を見て、私は思いました、勿論、彼は慈悲心を手に入れました、只それはこんなにも或る種可笑しな慈悲心です。それは、時に罰の様相を帯びます。モーリス、私の愛する人、私は、嫌な頭痛がします。私は、死ぬような気がします。私は、馬ほど丈夫ではなくて良かった。私は、貴方なしで生きたくない、それに私は知っている、私が貴方に共有地で会い、その後、私は、ヘンリも、神も、どんなことについての罵りの言葉も気にしない一日を。それにしても、何が善でしょう、モーリス?そこいらに神はいると信じます。―欺瞞の鞄丸ごと、私は信じます、そこいらに、私が信じないものは何一つありません。彼らは、一ダズンの断片に、三位一体を細分出来ます。すると私は信じます。クライストゥは、彼自身を宣伝して売り込ませる為に、ピラトゥによって創案されたことを証明する記録を、彼らは掘り起こせます、すると私は信じます、全く同様に。私は、病気のように信仰に感染しました。私は、私が恋に溺れたように、信仰の中で溺れました。

219

2022年7月24日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「最愛の人モーリス、」彼女は書いた、貴方が去った後、あの夜、私は貴方に書こうとしたけれど、私が家に着いた時、私は、かなり具合が悪いと感じ、又ヘンリは私のことで気を揉みました。私は、電話する代わりに書きます。私は、貴方と一緒に遠くへ行くつもりはない、と私が口にすると同時に、気が変になりそうで、私は電話を掛けて貴方の声を聞けない。だから私は貴方と一緒に遠くへ行くつもりはないの、モーリス、最愛の人モーリス。私は、貴方を愛しているのに、私は、もう一度、貴方に会うことは出来ない。この痛みの最中を、私はどう生きようとすればいいのか、私には分からず、思い焦がれるだけで、私は、時間の許す限り、彼が私に厳しくしないようにと、彼が私を生き続けさせないようにと、神に祈っています。親愛なるモーリス、私は私のケイクを手に入れたい、それを食べたい、他の皆のように。貴方が私に電話を掛ける以前、二日前に、私は牧師のところに赴き、私は、カサリクになりたい、と彼に話しました。私は、私の誓いや貴方について、彼に打ち明けました。私は言いました、私は、実際、もうヘンリに添い遂げられないと。私たちは一緒に眠らない―貴方との最初の一年からではなく。それは、本当に結婚ではなかった、私は言いました、貴方が、出生登録事務所を結婚式場と呼べなかったと。私は彼に、私はカサリクになって、貴方と結婚出来ないか、と尋ねました。貴方が、官公庁事業をすり抜けても気にしない、と私は知っていました。

218

2022年7月23日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

僕たちは恋の向こう側を見るようになったが、僕たちが御されていた方角に気付いたのは、それは、僕だけだった。爆弾が一年早く落ちていたら、彼女は、あの誓いを立てなくて済んだ。彼女は僕を開放しようとして、彼女の爪を引き剝がそうとした。僕たちが人間の終わりに手を掛ける時、僕たちは神の信仰へと、僕たち自身を欺こうとする、彼の食物に添える、より複雑なソースを追い求める美食家のように。僕はホールを見た、独房のようにすっきりとした、グリーンのペイントゥにぞっとする、そこで僕は思った、彼女は、僕に二度目のチャンスを与えたがったが、それは、ここにある、虚しい暮らし、無臭、防腐、刑務所の暮らし、そうして僕は、彼女の祈りが、実際、変化をもたらしてしまったかのように、彼女を責めた。暮らしに向けて、貴女が僕に有罪判決を下したくなるような何を、僕は貴女にした?階段と手すりは、階上のあちこち新しさに軋んだ。彼女は、一度もそれらを歩いて上ることはなかった。家屋の修復でさえ、忘却の課程の役目を担った。全てが変わる時、覚えていること、それには、時とは別に神を要する。僕は未だ愛していたのか、或いは、僕は、只愛したことを悔いていただけなのか?

 僕は、僕の部屋の中に入り、机上に、サラーからの一通の手紙を置いた。

 彼女は、24時間死んだ状態で、それよりずっと長い間、意識を失っていた。細長い共有地を横切るのに、どうしたらそんなに長くかかってしまうのか?その時、僕は、彼女が僕の番号を間違って置いたということを見て知った。すると少々懐かしい苦々しさが、滲み出した。彼女は、二年前、僕の番号を忘れる筈がなかった。

 彼女が書いたものを見る思い、そこには、随分多くの痛みがあったから、僕は、ガス‐火へと向かうその手紙を、それでもどうにかこうにか持ち堪えた。何れにせよ、好奇心は、痛みより強くなり得る。それは、鉛筆で書いてあった。彼女がベドゥで書いたからだ、と僕は思う。

217

2022年7月22日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「貴方は、少しは祈りの言葉を知っていますか?」

 「いいえ。」

 「貴方が信仰しない神に祈ること、それは好ましいとは思えない。」

 僕は、家から出て、彼に付いて行った。ヘンリが起きるまで残っても、そこには、何の利点もなかった。多少早くとも遅くとも、彼は、彼自身に基づいて存在することに直面するしかなかった、まさに僕がそうして来たように。僕は、僕の前を、スマイズが共有地を横切って、彼の道を急にせかせか動くのを見守った。そこで僕は思った、ヒステリカルなタイプだと。不信仰は、まさに信仰同様、多くは興奮の所産である筈。大勢の人々の通行が、それを溶かしてしまった所の雪の泥濘(ぬかるみ)が、僕の靴底からじわじわ滲みて、僕の夢の雫を僕に思い起こさせはしたが、「気を遣わないで、」と言っている彼女の声を思い出そうとした時、僕が音の響きを求めても、空虚な記憶を抱き締めるだけと気付いた。僕は、彼女の声を真似られなかった。僕は、それを風刺さえ出来ず、僕はそれを思い出そうとした時、それは、匿名だった―まるで何処かの婦人の声。彼女を忘れることの手順は、整った。僕たちは、写真を保存するように、蓄音機レコードゥも保存すべきだ。僕は、ホールの中へと、壊れた階段を上った。何一つなくとも、ステインドゥ・グラスは、1944のあの夜と同じだった。誰ということではないが、何らかの兆しに感付く。サラーは、彼女が僕の死体を見た時、終わりが来た、とまともに信じた。終わりは、随分前に始まっていた、と認めようとはせず、この、或いはあの不十分な理由の為に、益々減った電話の呼び出し音、恋の終わりという危険を、僕が察知したために僕が彼女に仕掛けた口論。

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2022年7月21日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

「それで全部です。」彼は言った。

 「貴方は、どんな権利も持っていない。」

 「オウ、彼女は、今はもう誰にも属さない、」彼は言い、すると突然、僕は彼女を見たような気がした、何の為に、彼女は―片付けられるのを待っているだけの廃物の小片になったのか、もし貴方が僅かな頭髪を必要としたら、貴方は、それを手に入れ、彼女の爪を切り取ることも出来た、もしも爪を切り取ったものが、貴方に価値があれば。聖者のもののように、彼女の骨は、ばらばらに分けられても仕方なかった―もしも誰彼となくそれらを求めたら。彼女は、間もなく焼却されようとしていた、そう彼が真っ先に欲しがったものを、何故誰もが自分のものにしようとしてはいけないのか?何としてでも、僕が彼女を所有したその姿を描くのに、三年もの間、何と愚か者だったことか。僕たちは、僕たちそのものでさえない、誰でもないものによって所有される。

 「僕は済まなく思う、」僕は言った。

 「彼女が僕に何を書いたか知っていますか?」スマイズは尋ねた。「あれは、ほんの四日前でした、」そこで僕は悲しくなった、僕に電話することもなく、彼女は、彼に書く時間を持つしかなかったんだ。「彼女は書きました―私の為に祈って下さい。それは変だと思いませんか、彼女の為に祈るよう、僕に頼むのは?」

 「貴方は、何をしたの?」

 「オウ、」彼は言った、「彼女が死んだと僕が聞いた時、僕は祈りました。」


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2022年7月20日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「それで、そのことで僕は何をすればいいの?」

 「彼女は、彼女の夫は貴方に大いなる敬意を払っている、と何時も言っていた。

 彼は、不条理のスクルーを、余りにも遠くまで回していた。僕は、笑い声で、この埋もれた部屋の死の状態を粉砕しようと思った。僕は、ソウファに座り、僕は、そうして揺さぶり始めた。僕は、二階のサラーの死体と、彼の顔に愚かな笑みを浮かべたヘンリと、彼のドア‐ベルに粉を振り掛ける為に、パ―キス氏を雇って来た恋人と葬式を論じている痣を持った恋人を思った。僕が笑っている内に、僕の頬に涙が走り落ちた。一度だけ、急襲の最中、僕は、彼の妻子が生き埋めにされた彼の家の外で、一人の男が笑っているのを見た。

 「僕には分からない、」スマイズは言った。彼の右の握り拳は、彼が彼自身を守る準備が整ったかのように閉じた。そこには、僕たちが理解しない多くのことがあった。痛みは、僕たちを揃って投げ飛ばす説明しがたい爆発に似ていた。「僕はそろそろ行きます、」彼はそう言って、彼の左手でドア‐ノブに手を掛けた。唐突な考えが、僕に浮かんだ、彼は、左利きだと信じる理由は、まるでなかったから。

 「貴方は、僕を許すしかない、」僕は言った。「僕はガタピシしている、僕たちは、何もかもガタピシしている。」僕は、僕の手を彼の方へ伸ばした。彼は、躊躇いながらも、それに左手で触れた。「スマイズ、」僕は言った、「貴方は、そこで何を手に入れたの?彼女の部屋から何か持って来たの?」彼は、彼の手を開き、切り取った髪の毛を見せた。」

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2022年7月19日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「僕は道理を弁えなかった。」彼は言った、「僕は彼女を見られる、と思いませんか?」そして僕は、葬儀屋の重いブーツが下りて来るのを聞いた、僕は、同じ段が軋むのを、耳にしたことがある。

 「彼女は、二階で横になっている。左の最初のドア。」

 「もしマイルズ氏が・・・」

 「貴方は、彼を起こさないで。」

 僕は、彼が又、下りて来る時までに、僕の服を身に付けて置いた。彼は言った、「貴方に感謝します。」

 「僕に感謝しないで。僕は、貴方がそうするよりずっと彼女を自分のものにしてはいない。」

 「僕には、尋ねる権利さえ得ていなかった、」彼は言った、「しかし、僕は、貴方がそうするのを望みます―貴女は、彼女を愛した、僕には分かります。」彼は、彼が苦い薬を呑んでいるかのように付け加えた、「彼女は、貴方を愛した。」

 「貴方は、何を言おうとしているの?」

 「僕は、貴方が彼女の為に、何かしたらいいのに、と思っています。」

 「彼女の為に?」

 「彼女に、彼女のカサリク葬式を催させて上げて下さい。彼女は、それを好んだでしょう。」

 「いったい、それは、何が違っているんですか?」

 「彼女の為に少しでも、と僕は思わない。何れにせよ、それで、何時も、彼女が鷹揚であるが故に、僕たちに代償を支払う。」

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2022年7月18日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「途方もない。」

 「彼女は僕に書きました。彼女は彼女の心を決めました。僕が、口を挟めなかったことで、少しはましになったでしょう。彼女は始めていました―Instruction(指導)を。それは、彼らが使う言葉ではありませんか?」つまり、彼女は未だ秘密を持っていた、と僕は思った。彼女は、彼女の日記にそれを載せていなかった、彼女が、彼女の病気について載せなかった以上に。どれだけもっと多くの発見すべきことが、そこにあったのやら?その思いは、絶望に近かった。

 「それは、貴方にとって衝撃だったんじゃないの?」僕は、僕の負傷を転嫁しようとして、彼をあざけた。

 「オウ、僕は勿論、怒りました。しかし、僕たちは誰しも、同じ物事を信じられはしない。」

 「それは、貴方が何時も主張することではない。」

 彼は、僕を見た、まるで僕の敵意で困惑したかのように。彼は言った、「どんな場合でも,貴方の名前は、モーリスですか?」

 「そうです。」

 「彼女は、僕に貴方のことを話しました。」

 「そして僕は、貴方のことを読んだ。彼女は、僕たち二人をこけにした。」

2Ⅰ2

2022年7月17日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 彼は言った、「僕は、帰ります、」そして侘びし気にあちらに向きを変えた、つまり、彼の醜い頬は、僕の方に向けられたということ。僕は思った、それは、彼女の唇が静止した側だった。彼女は、何時も哀れみから、罠に掛けられがちだ。

 彼は、呆けたように繰り返し、「僕が、マイルズ氏

を一目見たくて遣って来ましたのは、何と気の毒なと言いたくて・・・」

 「書くこと、それが、このような機会には、より一般的です。」

 「僕も何か役に立てればいいのに、と僕は思いまして、」彼は、弱々しく言った。

 「貴方は、マイルズ氏を改宗させる必要はありません。」

 「改宗?」彼は気楽に不幸を尋ね、狼狽した。

 「そこには、彼女に関して残されているものは何もないという事実。終わり。全滅。」

 彼は、突然打ち明けた、「僕は、彼女を見たかった。それが全てです。」

 「マイルズ氏は、貴方が存在するのを、知りもしない。そりゃあ、あまり貴方に思い遣りがあるとは言えない、スマイズ、ここに来るなど。」

 「葬式は、何時ですか?」

 「ゴウルダズ・グリーンで明日。」

 「彼女は、それを望んでいなかった、」彼は言い、驚きによって僕に取り入った。

 「彼女は、何ものも信じなかった。貴方がすることに貴方が主張するよりずっと。

 彼は言った、「貴方は、少しも知らないのですか?彼女は、カサリクになろうとしていました。」

211

2022年7月16日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「彼は、マイルズ婦人の友人とのことです。」彼女は言ったが、唯一の機会故、僕たちの卑劣な協力への彼女の貢献を容認した。

 「貴女は、彼を通した方がいい。」僕は言った。僕は、スマイズに対して、今や優越を感じていた、サラーの客間に座りながら、ヘンリのパジャーマズを着て、彼が僕について何も知らない間に、随分たくさん調べ上げて。彼は、途惑いながら僕を見て、寄せ木細工の床の上に雪を滴らせた。僕は言った、「僕たちは一度会っています。僕は、マイルズ婦人の友人です。」

 「貴方は、貴方と一緒に若い方を連れていました。」

 「その通りです。」

 「僕は、マイルズ氏を一目見たくて遣って来ました。」

 「貴方は、ニュースを聞きましたか?」

 「それが、僕が来た理由です。」

 「彼は、眠っています。医者が、彼に丸薬を服用させました。それは、僕たちの誰にも酷い衝撃でした。」僕は、馬鹿みたいに付け加えた。彼は部屋をぐるりと見詰めていた。シーダ・ロウドゥで、何処にも出かけることなく、彼女には、広がりがないようだった、と僕は思った、夢のように。しかしこの部屋は、彼女に厚みを与えた、それも又サラーだった。雪は、ゆっくりとスペイドゥから鋳型のように窓敷居に乗った。部屋は、サラーのように埋もれていた。

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2022年7月15日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

朝食時間に、ヘンリは未だ眠っていた。パ―キスがそそのかしたメイドゥが、トゥレイに載せて、僕の為にコーフィとトウストゥを持って入って来た。彼女がカートゥンを引くと、霙は、突然雪に変わった。僕は未だ眠気と、僕の夢の中身でぼんやりしていたが、僕は、彼女の目が時を経た涙で、赤く見えて驚いた。「何か心配があるの、モードゥ?」僕は尋ね、空っぽの家と空っぽの世界に、僕が当たり前のように目覚めて現れたので、トゥレイを下に置き、猛烈な勢いで歩いて出た。僕は、上に行って、ヘンリを覗いた。彼は未だ、犬のように笑みを浮かべながら、薬を服用した深い眠りの最中にあり、僕は彼が羨ましかった。それから下に行って、僕のトウストゥを食べることにした。

 ベルが鳴り、メイドゥが誰かを二階に案内しているのを、僕は聞いた―葬儀屋、僕は思った、客—室のドアが開くのが聞こえたから。彼は、彼女の死体を見ていた。僕は未だだったが、他の男の腕の中の彼女を見ることを望むよりもっと、僕にはまるで意向はなかった。男には、その方がかえって元気付けられる者もいるのかも知れない。誰も、死人の為に僕に売春の仲介をさせない。僕は僕の心を取り出し、僕は考えた、今に、何もかも本当に終わるのだと、僕は又遣り直すことになってしまった。僕は嘗て恋に溺れたが、それは再び為され得る。それでも僕は納得しなかった、それは、僕が遠ざかって抱いた性の全てを、捧げつくしたような気がしたから。

 又ベルが。何と多くのビズニスが、ヘンリが睡眠中に、家の中で繰り広げられるのだろう。今度は、モードが僕の所に遣って来た。彼女は言った、「実は。マイルズ氏に尋ねたいことがあるという紳士が階下にいますが、私は彼を起こしたくありません。」

 「それは、誰なの?」

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2022年7月14日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

僕はオクスフォードゥ・ストゥリートゥを上りながら、僕はプレズントゥを買おうとして、僕は、悩んでいた。どの店にも、安い宝石は沢山あった。隠された照明の下(もと)、 きらきら輝いている安い宝石なら沢山あった。今もあの頃も何か美しい物を見ると、僕はガラスに近付きたくなるが、僕が近くで宝石を見ると、それは、他の全て同様、人工的だ。―おそらくぞっとする緋色の目を持った緑色の鳥は、ルービの感じを与えるつもりだ。時間がなかったので、僕は店から店へと急いだ。その時、或る店の外に、サラーが遣って来た。彼女は、僕の役に立とうとするのは僕は分かっていた。「貴女は、何か買ったの、サラー?」「ここではないけど、」彼女は言い、「でも、もっと行ったら、そこに幾つも可愛い小瓶があるわ。」

 「僕は、時間がない、」僕は彼女に頼んだ、「僕を助けて。明日の誕生日の為に、僕は何か見付けようと

していたところ。」

 「気を遣わなくていいのよ、」彼女は言った。「どんな物でもきっと気に入るわ。気を遣わないで。」すると僕は、突然、心配がなくなった。オクスフォードゥ・ストゥリートゥは、その境界線を広大な鉛色の霧の原野に伸ばしていた、僕の足は裸足で、僕は露の中を歩いていた。一人で、浅い轍(わだち)によろけながら、僕は目を覚ました、未だ聞こえていた「気を遣わないで。」耳に閉じ込められた囁きのように、子供の頃にあった夏の音。

 朝食時間に、ヘンリは未だ眠っていた。パ―キスがそそのかしたメイドゥが、トゥレイに載せて、僕の為にコーフィとトウストゥを持って入って来た。彼女がカートゥンを引くと、霙は、突然雪に変わった。

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2022年7月13日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

ヘンリは、それから何を成そうとするのか、つまり僕たちの誰も気にも留めないリカーの小瓶や、海水で磨かれたグラスの欠片、そして僕がノッチンガムで見付けた小さな木の兎。僕は、僕共々、これらの物を皆、持ち去った方がいいのか?そうでもしなければ、ヘンリが片付ける為に、そこいら中、手を付ける時、それらは、紙―屑籠の中に入ってしまうだろうが、僕は、それらの同行に耐えられるだろうか?

 僕は、それらを見ていたら、ブランキトゥを背負って、ヘンリが入って来た。「僕は、言い忘れた、ベンドゥリクス、もしそこに貴方が持って行きたい物があれば・・・彼女は遺書を残した、と僕は思わない。」

 「それは貴方らしい。」

 「僕は今、彼女を愛した誰も彼も、感謝している。」

 「良ければ、僕はこの石を持って行きたい。」

 「彼女は変な物を持っていた。僕は、貴方に僕のパジャーマ一揃いを持って来た、ベンドゥリクス。」

 ヘンリが枕を持って来るのを忘れたので、クションに僕の頭を預けながら、彼女の香りを嗅ぐことが出来たら、と僕は空想した。僕が二度と持つ筈のない物を、僕は望んだ―そこには代わりの物はなかった。僕は眠れなかった。僕は僕の爪を僕の掌に押し付けた、彼女が彼女のものでそうしたように、だから、その痛みが、僕の脳が作動するのを妨げるといいと、僕の願望の振り子は、嫌になる程、向かっては逆戻りして振れた、忘却への願望、記憶への願望、死ぬことへの、そして生き続けることへの、差し当たって。そしてその後、やっと僕は眠った。

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2022年7月12日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

彼女は、今彼女が死んでいるように、あの頃も、彼女は死んだも同然だった。今年一、二カ月間、亡霊は、僕を希望を餌に苦しめたが、亡霊は横たえられ、苦しみは、間もなく終わろうとしている。僕は、日に日に少しずつ、より死にたくなるにしても、僕はそれをどれだけこらえようと切に願うか。人が、人が生きるのを煩わせる限り。

 「ベドゥに行きなさい、ヘンリ。」

 「僕は、サラーの夢を見るのが心配だ。」

 「医者の丸薬を飲めば、見ないよ。」

 「貴方もそれが欲しいか、ベンドゥリクス。」

 「いや。」

 「貴方は、要らないんだね。貴方は、一晩いてくれるの?そりゃあ外は、汚い。」

 「僕は天気を気にしない。」

 「貴方は、大変な好意を僕に示してくれている。」

 「当たり前だよ、僕はいるよ。」

 「僕は、シートゥとブランキトゥを、持って下りるよ。」

 「気にしなくていいよ、ヘンリ、」しかし彼はいなくなった。僕は、寄せ木細工の床に目をやると、彼女の泣き声そのままの音色を思い出した。彼女が、彼女の手紙を書いた机の上には、散らかった物があり、どれも符号のようで、僕は解釈可能だった。僕は思った、あの小石でさえ、捨てていなかった。僕たちはその形を笑い、そこにそれは未だある、文鎮として。

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2022年7月11日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

  「僕は、この祈りと墓‐掘りの騒動の全てが嫌だが、サラーがそれを良しとしたら、僕は、それを手配させよう。」

 「彼女は、彼女の結婚式を出生登録書ですることにした、」僕は言った、「彼女は。彼女の葬儀が、教会になればいい、と思いもしない。」

 「いや、僕は、それが本音だと思わないよね。」

 「登録と焼却は、」僕は言い、「それらは、共にℍ運び、」すると暗がりで、ヘンリは彼の頭を持ち上げ、まるで彼は僕の皮肉を疑うかのように、僕の方をじっと見詰めた。

 「貴方の手を煩わせないで、その全てを僕に任せてくれ。僕は仄めかした、まさに同じ部屋の中、同じ炉火の側、僕は仄めかして来た、彼の所為でサヴィジ氏を訪ねていると。

 「そうすることが、貴方もいいんだね、ベンドゥリクス。」彼は、極めて慎重に、公平に、僕たちのグラスに最後のフイスキを流し込んだ。

 「真夜中だ、」僕は言い、貴方は少し睡眠を取らなきゃいけない。出来るなら。」

 「医者が、僕に少し丸薬を残してくれた。」しかし彼は、未だ一人切りになることを望まなかった。僕は、彼がどんな気持ちでいるか、正確に知っている。何故なら、僕も又、サラーと一緒だった一日後、出来るだけ長く、僕の部屋の寂しさを先に延ばそうとする。

 「僕は、彼女が死んでいるのを思い出さないようにしている、」とヘンリが言った。そして僕は、それをも経験してしまった。1945中ずうっと―悪い年―忘れながら、僕たちの恋愛‐事件は終わったと、電話が彼女以外のどんな声でも運べばいいのにと、僕が目覚めた時。

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2022年7月10日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「オウいや、ヘンリ。彼女は、貴方や僕以上に、何かを拠り所としてはいなかった。」僕は、彼女が妬き尽く去れたらと願い、僕は言えたらと望んだ、貴方に出来るものなら、その体を復活させてみなさいと。僕の嫉妬は、尽きなかった。ヘンリのそれに似て、彼女の死を以てしても。それは、彼女が未だに生きているかのように、彼女が僕に対して望む恋人という関係のにあった。僕は、彼らの永遠性を中断する為に、パ―キスを彼女の後に送れたらと、どれだけ願っただろう。

 「貴方は、本気か?」

 「本気だよ、ヘンリ。」僕は思った、僕は慎重になってしまった。僕は、リチャドゥ・スマイズのようになってはいけない、僕は嫌がってはいけない、何故なら、もし僕が心底嫌ってしまったら、僕は信じようとし、もし僕が信じようとしたら、貴方と彼女の為にどんな勝利が。ここは、演技をすることだ、復讐や嫉妬について語り合いながら。それは、まさに何か脳を満たすものだ。だからこそ、絶対的な彼女の死を忘れられる。一週間前、僕は、何の気なしに彼女に言った、「貴女は、あの初めて二人揃った時を、それにミータの代金一シリングを、どうにもこうにも僕が手にしていなかったのを覚えている?、だからそのシーンは、僕達二人の為に、そこになくてはならない。今は、只僕だけの為に、それはそこにある。彼女は、僕たちの思い出の全てを見失った、永遠に、そしてそれは、死ぬことに託(かこつ)けて、彼女は、僕自身の一部を僕に失わせたのだ。僕は、僕一個の体裁を失いつつあった。それは、腕木のように、剥がれて落ちる思い出、僕自身の死の初舞台だった。

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2022年7月9日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

彼女がうわ言を言った時(勿論、彼女に責任はなかった)、看護婦は、彼女は牧師にずっと聞いていた、と僕に教えた。少なくとも彼女は、ファーザ(父である神)、ファーザ、と言い続けた、そしてそれは、彼女自身である筈がなかった。彼女は、彼を理解したことがなかった。勿論看護婦は、僕たちがカサリクではないと知っていた。彼女は、実に賢明だった。彼女は、彼女を宥めた。しかし僕は、悩んでいる、ベンドゥリクス。」

 僕は、怒りと苦々しさと共に考えた、貴女は、不憫なヘンリを一人残して去ってもいいんだろう。僕たちは、貴女を手放して何年も遣って来た。何故貴女は突然、あらゆる立場の中に割り込み始めるはめになってしまったのか、対蹠地から見知らぬ親族が戻って来たように。

 ヘンリは言った、「誰でも、ロンドンに住んでいれば、火葬が、最も拘りのない方法なんだが。看護婦が、それを僕に言うまで、僕は、それをゴウルダズ・グリーンで執り行おうと計画していた。葬儀屋は、火葬場に電話を掛けた。彼らは、明後日サラーを納める。」

 「彼女は、うわ言を言っていた」と僕は言い、「貴方は、話しの中で、彼女が何と言おうと受け止める必要はない。」

 「僕は、そのことについて牧師に聞くべきかどうか迷った。つまり、彼女は、カサリクになってもよかったと僕は理解しているから。彼女は、最近、何だか妙だった。」

203

2022年7月8日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「僕は、医者が助けたと思う。」

 「彼は、この冬、忙しくしていた。彼が、葬儀屋に電話を掛けた。僕は、何処に行くべきか、調べようともしなかった。僕たちは、職業電話帳を持った例がなかった。しかし、医者は、彼女の衣服をどう処理すべきか、僕に話す筈がない―カバドゥ(食器戸棚)は、そうしたもので溢れている。カムパクトゥ、香水―誰でも、むやみやたらに捨てられない・・・只、もし彼女が、姉妹でも持っていれば・・・」正面のドアが開き、閉じた為に、彼は、突然止めた。まさにそれは、彼が「メイドゥ、」と言い、僕が、「あれはサラーだよ。」と言った、あの何時かの夜にも起こったように。僕たちは、二階に上がって来るメイドゥの足音に耳を澄ました。一つの家がどんなに空疎でも、その中に三人も一緒にいられるのは、それは、奇妙ではあった。僕たちは僕たちのフイスキを飲み、僕は、もう一杯注いだ。「僕は、家の中を大勢にした、」ヘンリが言った。「サラーは、新しい拠り所を見付けた・・・」そして、又止めた。彼女は、何処の細道の外れにも立っていた。そこには、一瞬の間さえ、彼女を避けようとする目当ては、まず見受けられなかった。僕は思った、何故貴方は、僕たちにこうしたことをしなければならなかったのか?彼女が貴方を信仰しなかったら、彼女は、今尚生きているに決まっていて、僕たちは当然、未だに恋人だった。この境遇を不満に思って来たと覚えているのは、それは悲しくもあり、可笑しくもあった。僕は、彼女を、今やっと幸せそうに、分かち合おうとしていた。

 「僕は言った、「それで葬儀は?」

 「ベンドゥリクス、僕は、どうしていいか分からない。何かかなり手こずらせる事態になった。

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2022年7月7日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 


 僕たちお互いの為に、為すべきことは、そこには何もなかったが、もっとフイスキを注いでくれ。僕は何処までも追及する為に、パ―キスに支払った新参者のことを思った。新参者が、確かに最後に勝った。否、私は思った、僕はヘンリを嫌ってはいない。僕は、喩え貴方が存在しようと、貴方を憎む。僕は、彼女が何をリチャドゥ・スマイズに言ったか、僕が、信じることを教えたと、僕は忘れはしなかった。僕の命運に賭けても、僕は如何ようにも口を開くわけにはいかなかっただけでなく、僕が何を投げ出したたかについて考えることも又、僕を自己嫌悪に向かわせた。ヘンリは言った。「今朝、四時に彼女は死んだ。僕はその場にいなかった。看護婦は、間に合うように僕を呼ばなかった。」

 「看護婦は、何処にいるの?」

 「彼女は、彼女の仕事を、非常にきちんとこなし切った。」彼女は、他の緊急事態を受け持ち、昼食前にいなくなった。

 「僕は、貴方に対して、役に立てたら思う。」

 「貴方が、ここに只座っているだけでいい。そりゃあ、大変な日だった、ベンドゥリクス。貴方も知っている、僕は、捌(さば)かなければならない死人を抱えたことはなかった。僕が先に死ぬものと、僕はてっきり思い込んでいた―又、サラーなら何をすべきか知っていただろうにと。もしサラーが、あの長時間、僕の側にいてくれたらなあ。考えようでは、あれは女の仕事だものー赤子を抱いているような。」

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2022年7月6日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

「僕は、分からない、ヘンリ。僕はそうだったと思うが、僕は分からない。」僕たちは、灯りも点けずに、彼の書斎に座っていた。ガス‐火は、互いの顔が十分見える程、強くしてなかった。だから僕が唯一話すことが出来たのは、ヘンリが、彼の声の調子でしくしく泣いた時だけだった。円盤投げ選手が、暗闇から僕たち両者を狙った。「こんなことがどうして起こったのか、僕に話してくれ、ヘンリ。」

 「貴方は、僕が共有地で貴方に会ったあの夜を覚えている?あれは、三週間前、或いは四、だったか?彼女は、酷い風邪をあの夜貰って来た。彼女は、それをどうにかしようともしなかった。僕は、彼女の胸に達したそれを知りもしなかった。彼女はその種のことを、誰彼となく、打ち明けることはない」―そして彼女の日記にさえ、と僕は思った。そこには病気関連の言葉は、全くなかった。彼女は、病気になる機会を持たなかった。

 「彼女は,仕舞に彼女のベドゥに向かった、」とヘンリは言って、「だけど誰も彼女をそこにじっとさせて置くことは出来なかったし、彼女は、医者に掛かろううとしない―彼女は、彼らを信じたことがない。彼女は、一週間前、起きて、外出した。神は、何処へ、又、何故かを知っている。彼女は、彼女には運動が必要だと言っていた。僕の方が先に家に帰り、彼女がいなくなっているのに気付いた。彼女は、九時まで、家に入らなかった。初めての時より酷くずぶ濡れになっていた。彼女は、雨の中を何時間も歩き回っていたに違いなかった。彼女は、一晩中熱に浮かされ、誰かに話し掛けていた、僕が知らない誰か、それは、貴方でも僕でもなかった、ベンドゥリクス。その後、僕は、彼女を医者に診せた。彼は、一週間早く、彼女がペニシリンを受っていたら、彼は、彼女を救えただろうに、と言った。」

200

2022年7月5日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 BOOK FIVE 



僕はヘンリとその夜いた。そういうことは、初めてだった。僕は、ヘンリの家で眠った。彼らは、一部屋ゲストゥ‐ルームを持ち、サラーは、そこに(彼女の咳でヘンリに迷惑を掛けないように、彼女は、一週間前にそこに移った)いた。それで僕は、僕が愛を育んで出来た客⊶間のソウファアで眠った。僕は、その夜、いたくはなかったが、彼は、僕に請うた。

 僕たちは、僕たちの隔たりに、一本半ものフイスキを飲まなければならなかった。僕は、ヘンリが言っていたのを覚えている、「そりゃあ、不思議だ、ベンドゥリクス、人は、死んでしまうと、どれ程も妬んではいられない。彼女が、只、二時間前に死んでるだけなのに、僕は僕の側に貴方を必要とした。」

 「貴方は、嫉妬だと大げさなことを言う程のこともない。そんなことは、随分前に何もかも終わった。」

 「僕は、今、どんな気休めも要らない、ベンドゥリクス。それは、貴方もどちらも終わらない。僕は幸運な男だった。僕は、ずうっとあの年月、彼女を自分のものにした。貴方は、僕を憎みますか?」

199


2022年7月4日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳 

 電話が鳴る前に、八日が過ぎた。それは、僕が期待した日時ではなかった。それは朝の九時前だったから。そして、僕が「ハロウ、」と言った時、答えたそれは、ヘンリだった。

 「そちらはベンドゥリクス?」彼は尋ねた。そこには、何か極めて妙な彼の声があり、彼女が彼に話したのか、と僕は動揺した。

 「はい、話しています。」

 「大変なことが起こってしまった。貴方は、知って置いた方がいい。サラーが死んだ。」

 僕たちはこんな瞬間にどう世間並みに振舞ったらいいのか?僕は言った、「実に残念だ、ヘンリ。」

 「貴方は、何か今夜しているの?」

 「いや。」

 「貴方が何とかして飲みにでも来てくれたらなあと思って。一人でいるなんて、想像もつかない。」

198

2022年7月3日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

  「人は、知っていますよ、サー。それが、がっかりさせていることです。僕がずっと掴もうとすると、遠のきました。公表されている離婚ケイスの証拠を禁止する法律は、僕の訪問者の男たちには打撃でした。裁判官は、サー、名前で僕たちに触れることはなく、彼は実に頻繁に専門家たちにえこ贔屓します。

 「それは、僕には打撃じゃあなかった、」僕は同情して言った。

 パ―キスでさえ、思慕の念を目覚めさせられた。僕は、サラーの思いなしに、彼を見ることは出来なかった。僕は、仲間への希望を抱いて、地下鉄で帰宅した。鳴り続ける電話の‐ベルの消え入りそうな期待に、寛いで腰を下ろしながら、僕は、僕の連れが、又離れてゆくのを感じた。それは今日ではないだろう。五時に、僕はその番号に電話を掛けたが、僕がベルが鳴る‐音を聞く間もなく、僕は受話器を元に戻した。おそらくヘンリが早く帰って、僕は勝者で、サラーは僕を愛し、サラーは彼と別れたがっている以上、僕は今、ヘンリに話せなかった。

197

2022年7月2日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「それは、感傷的な値打ちがあるだけ。」彼は囁き返した。

 「貴方の若者は、どうしてる?」

 「少し気難しくて、サー。」

 「僕は、貴方をここで見て驚いている。仕事?本当に、貴方は僕たちの内の一人を、監視してはいないの?」僕は、閲覧‐室の埃を被った収容者―暖を求めて、屋内で少しでも帽子やスカーフを身に付けた男たち、ジョージ・エリオトゥの完備した著作を骨を折って勉強していたインド人、又、同じ山積みの本の側で、横たえた彼の頭を抱えて毎日眠っていた男――性的妬みの戯曲に関心を持つことが出来る男など考えられなかった。

 「オウいえ、サー。これは、仕事ではありません。それは、今日は僕の休みで、若い者は、今日は学校に戻っています。」

 「貴方は、何を読んでいるの?」

 「The Times Law Reportsを、サー。今日、僕はラセル事件に関っています。それは、人の任務に背景のようなものを提供します、サー。展望を開けよ。それらは、日常の取るに足りない詳細から、一つの道を選び取ります。僕は、この事件の目撃者の一人を知っていました。僕たちは前に同じ事務所にいました。ところが、彼は、今や僕が背負い切れない程、歴史に飲み込まれてしまいました。」

196

 「オウ、貴方は全く分かっていない。パ―キス。」

2022年7月1日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

僕には彼を喜ばせる意図など微塵もなく、この神も又、サラーの神で、僕は、彼女が愛すものを彼女が信じた、どのような幻であろうと、石を投げる用意はなかった。僕はあの期間、彼女の神を多少なりとも毛嫌いしたことはなかった。だから、僕の方がより強固であると、最後まで証明しなかったのか?

 或る日、何故か決まって譲渡された僕の消えない鉛筆を手にして、僕が僕のサンドゥウイチを食べていると、懐かしい声が、向こう側で、フェロウ研究者への敬意から宥めるような語調で、デスクから僕に挨拶をした。「思いの外、今は、何もかも上手く行っているんですね、サー。もし貴方が個人的侵入を許して下さるなら。」

 忘れもしない口髭を、僕のデスクの背の向こうに見た。「とても上手くいってるよ、パ―キス、ありがとう。認められていないサンドゥウイチを食べる?」

 「オウいえ、サー、私は、とても戴けません・・・」

 「さあ、おいでよ。それは、実費の上乗せだと思ってくれ。」しぶしぶ彼は一つ取り、それを広げながら、まるで彼はコインで、しかもそれが金貨だと分かったかのように、或る種の恐怖と共に目を丸くした。「それは、本場のハムだよ。」

 「僕の出版社が、アメリカから缶詰の缶を僕に送ってくれたんだ。」

 「それは、貴方、とても良かったですね。」

 「僕は、今も灰‐皿を持っているよ、パ―キス。」

僕が囁いたのは、僕の隣人が、腹立たし気に僕を見上げていたから。

195

2022年6月30日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 


 翌数日、僕は賢明になるには、大きな努力を要した。僕は目下、僕たち二人の為に励んでいた。朝、僕は、最低七百五十語を自分自身で組み立てたが、大抵、11時近くには、一千を処理し終えた。希望の効果、それには驚いている。昨年中、すっかり引きずってしまった小説は、その結末に向かって走った。ヘンリは、9時30分辺りに仕事に出かけるということを、僕は知っていたから、電話して彼女と向き合うおおよその時間は、その時と12時30分の間だった。ヘンリは、昼食の為に帰宅し出した(そういうふうにパ―キスは、僕に話した)3時以前に、もう一度彼女に電話する機会は、総じて皆無だった。僕は、一日の仕事を校正し、12時30分までつづりを確認し、そうしてその後、どんなにうんざりしようとも、期待から僕は解放された。2時30分まで、大英博物館の閲覧室で、the life of General Gordonの為の覚書を作りながら、時間内に置くことが出来た。僕は、僕自身読むことにも、覚書を引用することにも夢中になれなかった。

そこで、サラーの思いが、僕とチャイナでの宣教師暮らしの合間合間にちらついた。何故僕は、この伝記を書く為に招聘されたのか?僕はおおよそ不可解だった。彼らは、ゴードンの神を信仰する筆者を選んだ方が、より上手く事が運ぶのだろう。ハートゥームでの執拗な態度―国内での無難な行政官の憎悪を、僕は察するに容易だった―何れにせよ、机上のバイブルは、僕のものと距離があり、他の思考の世界に属した。多分、ゴードンのクライストゥ教信仰の皮肉な扱いは、スキャンダルの成功を呼び覚ますだろうということを、出版社は、半ば望んだのである。

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2022年6月29日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

  人は、困らせること、企むことの限界に向かって獲得する。僕は僕の耳のその訴えで、続けられなかった。僕は、彼女の堅く、結び目の多い髪の彼女にキスして、遠ざかりながら、僕は、僕の口の隅で、彼女の唇が滲んで塩辛いのに気付いた。「神は貴方を祝福する。」彼女は言い、僕は、それは、ヘンリ宛の彼女の手紙で、彼女が横線を引いたことだと思った。その人がスマイズでさえなければ、人は、他の人のグドゥ‐バイにグドゥ‐バイと言い、彼女に彼女の祝福をお返しに繰り返した時、それは無意識の行いだった。しかし教会を後にして振り返りながら、蝋燭の‐灯の縁のそこに、乞食が暖を求めて入っているような体を丸めた彼女を見ながら、僕は、神が彼女を祝福すること、又、神が彼女を愛することを想像出来た。僕は、僕たちの物語を末尾に向かって書き始めた時、嫌悪の記録を書いていると思ったが、何故か、嫌悪は置き忘れられ、ぼくが知っている全ては、彼女の過ちであり、彼女の不確実性であるにも関わらず、そうなる。彼女は、大多数より好ましかった。僕たちの内の誰かは、彼女を信じる。彼女は、彼女自身をそうしたことはなかった。

193

2022年6月28日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「貴女は、疲れているんだね?」僕は聞いた。

 「とても疲れた。」

 「貴女は、あのように僕から急いで離れるべきではなかった。」

 「私が急いで距離を置いたのは、それは貴方からではなかった。」彼女は、彼女の肩を動かした。「どうか、モーリス、もう行って。」

 「貴女は、ベドゥに入っていなきゃいけない。」

 「私は、直ぐにそうするわ。私は、貴方と一緒に帰りたくない。私は今ここで、グドゥ‐バイを言う方がいいの。」

 「貴女はずっとここにいない、と約束するね。」

 「私は約束する。」

 「じゃあ、貴女から僕に電話を掛ける?」

 彼女は頷いたが、彼女の手を見下ろすと、それは、何か何処かへ投げられた物のように、彼女の膝の中、そこにあった。

彼女が彼女の指を交差させたのを、僕は見た。僕は怪しんで彼女に聞いた。「貴女は、僕に真実を話している?」僕は、僕のもので彼女の指を解いて言った。「貴女は、又、僕から逃げようと思っていない?」

 「モーリス、親愛なるモーリス、」彼女は言い、「私は、その強さを貰わなかった。」

彼女は、子供がするように、彼女の目の中に握り拳を押し付けながら泣き始めた。

 「私は、すまないと思っているの、」彼女は言い、「今直ぐ何処かへ行って、どうか、モーリス、ほんの少しだけ慈悲をちょうだい。」

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2022年6月27日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 子供たちは睡眠中、彼らに何を囁くかに左右されると思われるが、僕もサラーに囁き始めた。言葉が催眠状態で彼女の無意識の心に落ちるよう願いながら、彼女を起こさないよう十分声を落として。「僕は、貴女を愛している。サラー。」僕は囁いた。「誰も、前にこれ程貴女を愛した者はいなかった。僕たちは、幸せになろうね。ヘンリは、彼のプライドゥに関らない限り気にもせず、プライドゥは、直ぐに甦る。彼は、貴女の居場所を掴む為に、新しい習性を探すだろう―多分彼はギリシャのコインを集めるだろう。僕たちは他所へ行こう、サラー、僕たちは他所へ行こう。もう誰もそれを止められない。貴女は、僕を愛している、サラー。」僕は新しいスートゥケイスを買うべきかどうか迷い始めたように、僕は冷静そのものだった。その時、彼女は咳き込みながら目覚めた。

 「私は、眠ってしまった。」と彼女が言った。

 「貴女は直ぐに家に帰らなきゃあ。貴女は、風邪をひいている。」

 「それは、家じゃないの、モーリス。」彼女は言った。「私は、ここから他所へ行きたくない。」

 「それは風邪だよ。」

 「私は、風邪のことはどうでもいいの。それに暗いわ。私は暗闇の中でなら、何でも信じられるの。」

 「只、僕たちのことを信じればいい。」

 「それは私が言おうとしたことよ。」彼女は、又目を閉じ、塑像を見上げながら僕は勝利と共に考えた。殆ど彼が生きているライヴァルかのように、お前は見ている―これが勝つという口論だ、そしてそっと彼女の胸を十文字に僕の指を動かした。

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2022年6月26日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「私も。」僕がそれに不慣れな者であれば、僕はそれを聞き取りようもない程、彼女は酷く低く話したが、それは、パディントン・ホテルでの最初の愛の‐確認から、僕たちの結び付きの全てを貫いて響き渡ったサイン入りの調べのようだった。「私も」孤立、悲しみ、落胆、喜びと絶望、全てを分かち合おうとする要求故の。

 「お金は、乏しくなるだろう。」と僕は言った。「しかし、そんなに乏しいという程でもない。『a Life of Gneral Gordon』をやることを依頼され、その前金は、三か月間、不自由なく、僕たちの暮らしを維持するのに十分だ。その時までに、小説に手を付け、それに関する前金が入る。本は両方共、今年出るだろうから、それで、次の現金まで、僕たちはやって行ける。僕は、貴女と一緒にそこで仕事が出来る。貴女なら分かるでしょ、こうなればどんな時も、僕は乗り越えてみせるよ。僕は、延々と大衆的成功のままだろうし、貴女は、それを嫌がり、僕はそれを避けようとするだろうが、どうせ物を買い、浪費し、それも又、僕たちが一緒であれば、楽しからずやだろう。

 ふと、僕は彼女が眠っていると気付いた。彼女の高揚によって疲れ、彼女は、タクシで、バスで、公園の‐座席で、あれ程数ある機会のように、僕の肩で熟睡した。僕はじっと座り、彼女の為すがままにした。暗い教会のそこには、彼女を妨げるものは何もなかった。聖母マリアの周りに、蠟燭が揺れ、そこには他の誰もいなかった。彼女の重みがかかる僕の上腕の痛みが、ゆっくりと増してゆくことは、僕が今までに知った最高の喜びだった。

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2022年6月25日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「何が貴方にあったの、モーリス?貴方は、この前の昼食の時のようじゃないわ。」

 「僕は、心を痛めた。貴女が僕を愛していると気付かなかった。」

 「どうして私がそうなんだと思うの?」彼女は尋ねたのに、彼女は、僕の手を彼女の膝の上で弄んだ。僕は次に、パ―キスさんが、どうやって彼女の日記を盗んだか、彼女に打ち明けた―僕は、もはや、僕たちの間にどんな嘘も、望まなかった。

 「それは、していいことじゃなかったわ。」彼女は言った。

 「良くないわ。」彼女は再び咳き込み、それから疲れて、彼女は彼女の肩を僕に傾けた。

 「僕の愛しい人、」僕は言い、「もう、何もかも終わりだよ。待つこと、を言っているんだよ。僕たちは一緒に遠くへ行くんだ。」

 「いいえ、」彼女は言った。僕は、僕の腕を彼女に回し、彼女の胸に触れた。「これが、僕たちがもう一度始める場所だよ、」僕は言った。僕は酷い恋人だった、サラー。そうしたのは、それは不安だった。僕は貴女を信用していなかった。僕には、貴方が十分わかっていなかった。しかし今は、僕は安心している。」

 彼女は何も言わなかったが、彼女は尚も、僕に凭れていた。それは、承諾に似ていた。僕は言った。「どんなにそれがある方がいいか、僕は貴女に言いたい。家に戻って、二、三日ベドゥに横になるといい―そんな風邪をひいていたのでは、貴女は旅行もしたくない。僕は毎日電話をして、貴女がどんな具合か見よう。貴女が十分よくなれば、僕は真っ先に駆け付け、貴女が荷造りをするのを手伝おう。僕たちは、ここに居てはいけない。僕にはドーセトゥにいとこがいて、彼は僕たちが使える空いたカティジを持っている。僕たちは、そこに二、三週滞在し、休息しよう。僕は、僕の本を聞き終えられるだろう。僕たちは、その後弁護士に面会出来る。僕たちは休息を必要としている、僕たち二人共。僕は疲れ、貴方なしでいることの断罪に僕は病んでいる、サラー。」

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2022年6月24日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 物語の結末を知った今、僕は何年でも待つことが出来た。僕は、寒くて、濡れてはいても実に幸せだった。そこにちらついている供物台や塑像に向かって、慈愛の眼差しで見ることさえ出来た。彼女は、僕たちを二人共愛している、と僕は思ったが、そこに、想像と一人の男の間の不一致があるべくしてあるにしても、誰が勝とうとしているか、僕には分かる。彼女の腿に僕の手を、或いは、彼女の胸に僕の口を置けたらいい。彼は、供物台の後ろに閉じ込められ、彼の弁明を訴えようにも、身動き出来なかった。

 突然、彼女は咳き込み始め、彼女の手で彼女の方に押さえた。彼女は、苦しんでいると納得し、、そして僕は、苦しむ彼女を一人のままにして置くことが出来なかった。僕は近付き、彼女の側に座って彼女が咳をしている間、彼女の膝に僕の手を置いた。僕は思った。単に誰かが触れるだけで、それは治せることもあった。発作は治まった時、彼女が言った。「どうか、貴方は、私を放って置いてくれない?」

 「僕は、貴女を放って置けない。」と僕は言った。

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2022年6月23日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

僕は既にゲイムに勝っていると思い、僕の生贄に対して、確かな哀れみを感じる余裕が出来た。僕は彼女に言いたかった、心配しないで、心配しなくていい、何処にも恐れるものは何一つなく、僕たちは二人で直ぐに幸せになろう。悪夢は、殆ど乗り越えた。

 そして次に彼女を失った。僕は、確信し過ぎ、その上、僕は彼女に余りにも寛大なスタートゥを許した。彼女は、僕の二十ヤードゥ先で、道路を渡り(階段を上っている内に、又、僕は遅れをとった)、路面電車が間に割り込んで走り、彼女は行ってしまった。ハイ・ストゥリートゥを下って左折したのか、或いはパーク・ロウドゥを下った先を直進したのかも知れなかったが、僕は彼女を見ることは出来なかった。僕は余り心配しなかった―僕が彼女を今日探せなかったら、僕は次にする。今、僕は全く馬鹿げた誓いの物語を理解し、今、僕は彼女の愛を確信した。僕は彼女を安心させられる。二人が愛し合えば、彼らは一緒に眠る。それは数学の公式で、人の経験によって、試され、証明された。

 ハイ・ストゥリートゥのその場所には、A.B.Cがあり、僕は、それを試みた。彼女はそこにはいなかった。次に、僕は、パークロウドゥの隅の教会を思い出し、僕はそこに来たことは、直ぐに分かった。 僕は辿った、彼女が聖母マリアの柱状の、酷く醜い塑像に近い通路側の一つ、そこに座っていたことは、十分間違いなかった。彼女は祈ってはいなかった。彼女は、彼女の目を閉じて、そこに座っていただけだった。僕は只、塑像の前のキャンドゥルの灯で彼女を見た。その場所辺りは酷く暗かったから。僕は、パーキスさんのように彼女の後ろに座り、待った。

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2022年6月22日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

僕の戦時の懐中電灯を、僕の手に持って来ていればなあ。北側の家に着くのに、僕なら八分も時間がかかってしまうから。ドアが開き、サラーが外に出た時、僕は渡ろうとして、ちょうど舗道から離れ、歩を進めようとしていた。僕は幸せと共に思った。僕は今彼女を自分のものにしている。夜が尽きる前に、僕たちは、又一緒に眠るのは当然だということが、絶対の確信と共に、僕は分かった。そして、それは一旦、新たに始められたからには、何事があろうと構わなかった。僕は、以前、彼女を全く知らず、今まで僕は、彼女をそこまで深く愛したことはなかった。僕たちは、知れば知る程更に、僕たちは愛し合う、と僕は思った。僕は、信頼の領域に戻った。

 彼女は、霙を突いて広い道路を横切り、僕を見る為に、随分急いでいる様子だった。彼女は、左に曲がり、急いで歩き去った。僕は思った、彼女は、何処か座る場所を必要とするだろう。それに僕は彼女を罠にかけた。僕は、二十ヤードゥ後ろを付いて行ったが、彼女は、決して後ろを振り返らなかった。彼女は、共有地の端を通った。彼女は地下鉄に向かっているかのように、池や爆弾投下の本屋を過ぎた。さて、もしそれが必要だったら、混み合った列車の中で、彼女に話すことも良しとした。彼女は、地下鉄⊶階段を降り、出札口に向かったものの、彼女は、彼女の手にバッグを抱えていなかったので、彼女は、ポキトゥの中のどちらにもざら銭がないと思った―三半ペンスさえなく、それでは、深夜まで、あちこち旅に出ることも出来なくなりそうだった。階段を再び上り、路面電車が走る道を横断した。或る俗事は、止められてしまったが、もう一つは、明らかに、心の中に現れた。僕の勝ちだった。彼女は、恐れたが、彼女は、僕を恐れたのではなかった。彼女は、彼女自身を恐れ、僕たちが会った時、何かが起ころうとしていた。

186

2022年6月21日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「貴女は、僕を愛している。」

 「どうして決め付けるの?」 

 「深く考えないで。僕は、僕と一緒に遠くへ行くよう貴女に頼みたい。」

 「でも、モーリス、私は、電話でも上手に答えられるわ。答えは、いいえ。」」

 「僕は、電話で貴女に触れることは出来ない、サラー。」

 「モ-リス、私の愛しい人、どうか。貴方は来ないと約束して。」

 「僕は出掛けるよ。」

 「聞いて、モーリス。私は、酷く具合が悪いと思うの。」

 「それに今夜は痛みが酷いの。私は起きたくない。」

 「貴女が、そうする必要はない。」

 「私が起きて、服を着て、家を出ることにします、もし貴方が約束しないのなら・・・」

 「このことは、サラー、僕たち二人には風邪より大切だ。」

 「どうか、モーリス、どうか。ヘンリが間もなく家に戻るの。」

 「彼をいさせるといい。」僕は、電話を切った。

 それは、僕が一か月前ヘンリに会った時より、悪天候の夜だった。この時、それは雨の代わりに霙(みぞれ)だった。それは、雪への途中で、縁取られた滴りが、誰かのレインコウトゥのバトゥンホウルを抜けて、中へとその道を切り取るかのようだった。それは、共有地のラムプを覆い隠した。だから、それだけで、走るのは難しく、僕の足では、とうてい速く走れる筈がない。

185

2022年6月20日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「かえっていいじゃないか。」

 「馬鹿なことを、モーリス。私は具合が悪いと言う意味よ。」

 「それなら、貴女は僕を一目でも見る方がいい。何が気懸かりなの、サラー?」

 「オウ、何も。性質の悪い風邪なの。聞いて、モーリス。」彼女は女性家庭教師のようにゆっくりと、彼女の言葉の間隔を開け、それは僕を怒っていた。「どうか来ないで。私は貴方を見ることは出来ない。」

 「僕は、貴女を愛している、サラー。だから行くよ。」 

 「私は、ここにいられなくなるわ。私が起きます。」僕は思った、共有地を走って横切れば、そりゃあたった四分もあればいいだろう。彼女は、その時間内に服を着ることは出来ない。「僕はメイドゥに誰も中に入れないように話すつもりだ。」

 「彼女は、解雇の体を成さない。それで僕が解雇されざるを得ないようにする、サラー。」

 「どうか、モーリス…お願いだから。私は、長い間貴方に何もお願いしたことはないわ。」

 「一度だけの昼食を除いて。」

 「モーリス、私はあまり体の調子が良くないの。私は、只今日だけは、貴方を見られないの。来週・・・」

 「そこには、恐ろしい程何週間もあるようだよ。僕は貴女を今夜見たい。」

 「どうして、モーリス?」

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2022年6月19日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

僕は今が行動の時だ。ダンスタンなんか、関係なかった。空襲長官も関係なかった。僕は電話に向かい、彼女の番号を回した。

 メイドゥが出た。僕は言った。「こちらは、ベンドゥリクスです。僕は、マイルズ婦人に話しがありまして。」彼女は、そのままでいるよう僕に話した。僕がサラーの声を待っている時、僕は長距離レイスの終盤であるかの如く、僕は息切れを覚える程だったのに、

届いた声は、マイルズ婦人は、お出かけです。と僕に話すメイドゥのものだった。何故僕は彼女を信じなかったのか、分からない。僕は、五分待まって、それから僕のハンカチフで送話口を覆うように、きっちり広げ、僕は、もう一度掛け直した。

 「マイルズ氏は、いらっしゃいますか?」

 「いいえ、サー。」

 「それなら、マイルズ夫人に話せますか?こちらは、サー・ウイリアム・マロックです。」

 「サラーが返事をするまでに、そこに、単なるほんのちょっとした間があった。「今晩わ、こちらは、マイルズの妻です。」

 「僕だよ、」僕は言い、「僕は貴女の声が分かる、サラー。」

 「貴方・・・と私は思いはしたわ。」

 「サラー、」僕は言い、「僕は、貴女を見る為に出掛けるつもりだ。」

 「いえ、どうしてもだめ。聞いて、モーリス。私はベドゥにいるの。今そこから私は話しているの。」

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2022年6月18日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 BOOK FOUR



僕は、もう少しも先を読めなかった。繰り返し繰り返し何度も、一説が、僕を酷く傷付ける時は、僕は飛ばして読んだ。僕はダンスタンのことを見付けようとしながら、極力それを見付けたくなかった。しかし今やっと、先を読み進めていた、それは、歴史の未確定の日付に似て、時を追ってかなり後迄、滑るように引き返した。それが、目下の重大事という訳でもなかった。僕が共に残された記載は、たった一週間古いだけの記載だった。「私にはモーリスが欠けている。私には、普通の堕落した人間の愛情が欠けている。」

 それなら、僕は貴方に上げられる。と僕は思った。僕は、何か他の類の愛情のことは分からないが、もし貴女が思うのなら、貴方は間違っているということの全てを、僕は不意にした。そこには、僕たち二人の暮らしの為に十分残されている。そして僕は、彼女が彼女のスーツケイスを一杯にしたあの日のことを考えた。幸福が、間近に迫っていることも知らず、僕はここで仕事をしながら座っていた。僕は知らなくて良かったし、僕が知ったとしても、僕は嬉しかった。

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2022年6月17日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

私は疲れ、私はもう何の苦しみも欲しくない。私は、モーリスが欲しい。私は、普通の堕落した人間の愛情が欲しい。親愛なる神よ、私は貴方の苦しみを貰いたいのですが、今は、それが欲しくはありません。暫くそれを持ち去って、他の時にそれを与えて下さい。

2022年6月16日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 1946・2月12日

 二日前、私はあれ程の平穏と静けさと慈しみの感覚を持った。暮らしは、又幸せの方向に向かっている。しかし昨夜、最上階でモーリスに会うために、長い階段を上っている夢を見た。私が階段の最上階に着いた時、私たちは愛を育むことにしていたので、私はまだ幸せだった。私が来た、と彼に呼び掛けたが、答えたそれは、モーリスの声ではなかった。道に迷った船に警告する霧笛のように、大声で伝え、私を怯えさせたそれは、見知らぬ人のものだった。私は考えた、彼は、彼のフラトゥを貸し、いなくなってしまった。彼が何処にいるのか、私は知らない。そして再び階段を降りようとすると、私の腰より水位が上がり、ホールは、霧でどんよりしていた。その時、私は目覚めた。私は、もう内心穏やかではなかった。私は只、過ぎた日に何時もそうであったように、彼が欲しい。私は、彼と一緒にサンドゥウイチを食べていたい。私は、バーで彼と一緒に飲んでいたい。

180

2022年6月15日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

私が貴方を愛する前と同じくらい有り余る程、モーリスを愛しましたか?それとも、私が何時も愛したのは、それは、実は貴方でしたか?私が彼に触れた時、私は貴方に触れましたか?私が先に彼に触れなかったら、私は貴方に触れることが出来ましたか?私は、ヘンリにも、誰にも触れもしなかったので、彼に触れました。そして彼は私を愛し、彼は、他のどんな女にもしなかったように、

私に触れました。彼が愛した、それは、私だったのか、それとも貴方?貴方が、好き嫌いをする物事を、私の中で、彼が嫌がりました。彼はそうとは知らず、何時も貴方の側にいました。貴方は、私たちの別離を望みましたが、彼も又それを望みました。彼は、彼の怒りと彼の嫉妬を抱えたまま、それに向かって動きました。彼は、私に有り余る程の愛情を注ぎ、ですから、私も、彼に有り余る程の愛情で答え、間もなく、貴方なしで、私たちが終わろうとする時、そこには何一つ残されていなかったのです。私たち二人の為に。私は一時(いっとき)有りもしない愛情を費やしながら、ここからあちらへ、この男からあれへとそれを遣り繰りしながら、命ある時を握り潰しました。それなのに、その最初の時でさえ、パディントン近くのホテルで、私たちは、私たちが持つ全てを、使い果たしました。お金持ちに貴方が諭すように、私たちに浪費することを勧めながら、貴方はそこにおられた。ですから、それは、或る日、この貴方の愛以外、私たちは、何一つ残っていなくても構わなかった。けれど、貴方は、私に大変よくして下さる。私が、痛みをと請う時、貴方は安らぎを授け、彼にもそれを上げて下さい。彼に私の安らぎを上げて下さい―彼は、それをもっと必要としています。

179

2022年6月14日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

私は、一瞬奇形ではないかと危ぶみ、私は、血の気が引く思いがした。そして彼は、静かに座り、彼にキスを私にさせた。そこで私は、痛みにキスをしています、幸せが決して貴方のものにならない限り、痛みは貴方そのものだと思いました。私は、貴方の痛みに入り込んで、貴方を愛します。私は、その肌に殆ど金気と塩気を味わえ、私は感心して、何ていい味わいでしょう貴方は。貴方は、幸せと共に私たちを殺しても良かったのに、貴方は、痛みの中にある貴方と共に、私たちを生き永らえさせます。

 私は不意に動いて離れる彼を感じ、私は、私の目を開けた。彼は言った。「グドゥ‐バイ。」

 「グドゥ‐バイ、リチャドゥ。」

 「戻って来ないで、」彼は言い、「僕は、貴方の哀れみに耐えられない。」

 「それは、哀れみじゃないわ。」

 「僕は、自信の愚かさに輪を掛けてしまった。」

 私は、去った。あれでは、そのままいても何もいいことはない。私は、彼があんな風に痛みの印を身に付けて、あちこち持ち歩きいているのを、私たちが美と呼ぶものを、この鈍感な人間の代わりに、毎日鏡の中に貴方を見ているのを羨んだ、と彼に言い出せなかった。


1946・2月10

 私は貴方に書く、或いは話す必要性を感じない。それは、少し時を遡って、貴方宛てにどのように手紙を始めるかであり、私は自らを恥じて、私はそれをすっかり引き千切った。それが私の心の中に届く前に、何もかも知っている貴方に手紙を書くこと、それが酷く馬鹿げたことのように思えたから。

178

2022年6月13日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「御免なさい。」私は言った。

 「僕がその全てを遠ざけるくらいなら、僕はもっと貴方を愛します。僕が貴女による子供を設けたら、僕は、彼らを貴女に悪の道に導かせます。」

 「貴方は、そんなことを言ってはいけないわ。」

 「僕は、お金持ちの男ではない。僕の教義を捨てることを申し出られもしますが、それは単なる餌に過ぎません。」

 「私は、他の誰かと恋愛中です、リチャドゥ。」

 「もし貴女があの馬鹿げた誓いによって、制約を感じているのなら、貴女は、手放しで彼を愛せない筈だ。」

 私は、心侘びしく言った。「私はそれを破る為に、私のべストゥを尽くしたけれど、それは上手くは行かなかった。

 「貴女は僕を馬鹿だと思いますか?」

 「何故、私が?」

 「こんな物を持った男を貴女に愛して欲しいと願っているから。」彼は、彼の傷んだ頬を私の方に向けた。「貴女は。神を信じる、」彼は言い、「その方が楽だから。貴女は奇麗だし。貴女は、どんな欠点も持たない。それなのに、こんな物をたかが子供に付けた神を、何故、僕は愛さなければならない?」

 「親愛なるリチャドゥ、」私は言って「そこには、何もそんなに酷く傷んだ所はないわ・・・」私は、私の目を閉じ、その頬に私の口を置いた。

177

2022年6月12日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「はい、リチャドゥ、勿論、」私は言い、「そうでなければここにはいません。」

 「貴女は僕と結婚しますか?」彼は尋ね、私がもう一杯お茶を飲みたいかどうか、聞いているかのように、彼のプライドゥは、彼にそう尋ねさせた。

 「ヘンリは、反対するかも知れない。」私は言った、それを一笑に付そうとして。

 「何ごとも、貴女にヘンリの下を去らせはしないでしょ?」そして私は腹立たしく思った。喩え、私がモーリスの為に彼の下を去らなかったにしても、何故貴方の為に彼の下を去るよう期待されなければならないの?

 「私は結婚しています。」

 「そんなことは、僕にも貴女にも大した意味のあることではない。」

 「オウそうなの、それもそうね。」私は言った。私は何れ彼に話そうと思っていた。「私は、神を信じるわ、」私は言い、「そして安息そのものを。貴方は私に教えて来た。貴方とモーリスが。」

 「僕には分からない。」

 「貴女は何時も、牧師が貴女に信じないように教える、と言った。ところで、それじゃあ、どっちみち上手く行かない。」

 彼は彼の美しい手を見た―彼はその左側を自分の物とした。彼は、随分ゆっくりと「僕は、何を貴方が信じても気にしません。貴女は、僕が気にするその馬鹿げた手品の鞄を、丸ごと信じても構わないんだよ。僕は貴女を愛している、サラー。」

176

2022年6月11日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 私は、貴方の釘の痛みの心構えは整っていても、地図とミシュラン・ガイドゥの24時間を、私は耐えられない。親愛なる神よ、私はまるで機能しない。私は今尚、意気地なしの格好つけ。私をこの状態の外に追い遣って下さい。


1946・2月6

 今日、私はリチャドゥと空恐ろしいシーンを演じた。彼は、クライストゥ教会の矛盾について、私に話していた。そして私は、一生懸命聞こうとしていたのに、物の見事に成功していなかった。その内、彼はそれに気付いた。彼は突然私に言った。「貴女は、何をしにここに通っているの?」そして、私は自分自身を確認出来る前に、私は言った。「貴方を見る為に。」

 「僕は、貴方は学ぶ為に来ていると思っていました。」と彼は言い、私は彼に、それが私が言いたいことだと話した。彼は私を信じていない、と私には分かった。それに、彼のプライドゥは、傷付くだろうし、彼は怒るだろう、と私は思ったのに、彼は全く怒らなかった。彼は、彼の木綿更紗の椅子から立ち上がって近付き、彼の頬を見せない側の木綿更紗の椅子に、私と一緒に座った。彼は言った。「毎週貴女を見ること、それは、僕には多くを意味する。」その時、彼は私に恋をし始めている、と私は知った。彼は、私の手首に彼の手を置き、尋ねた。「貴女は、僕が好きですか?」

175

2022年6月10日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

私が耐えられない、それは彼らの痛みだ。私の痛みは、上へ上へと募らせて下さい。が、彼らのは止めて下さい。親愛なる神よ、暫く貴方が貴方の十字架から降りられるのであれば、代わりに私の身を起こして下さい。もし私が貴方のように苦しめば、私は貴方のように癒せるでしょう。


1946・2月4

 ヘンリは、仕事を離れ一日を手に入れた。私は、何故か知らない。彼は私に昼食を御馳走し、私たちは、ナショナル・ギャラリへ行って、速い夕食を摂り、劇場に向かった。彼は学校を休行かせず、子供を外に連れ出している片親のようだった。それにしても、彼の方が子供だった。


1946・2月5

 ヘンリは、私たちのために春に海外での休日を計画している。ルワーのお城と、爆撃下のドイツの士気に関する報告書を作成出来るドイツとの間で、彼は彼の心を決め兼ねている。私は、春になって欲しくない。そこへ私はもう一度行く。私は望む。私は望まない。もし私が貴方を愛せたら、私はヘンリを愛せたでしょう。神は、男を造られた。彼は、彼の乱視眼を持つヘンリ、彼の痣を持ったリチャドゥ、モーリスだけはなかった。私がハンセン病患者の痛みを愛せたら、私はヘンリの退屈さを愛せないのか?何れにせよ、私は、彼がここにいたら、ハンセン病患者に背を向けようとする、私がヘンリと隔たり、我が身を閉ざすに連れ、と私は思う。私は、何としてでも劇的であってほしい。

174

2022年6月9日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「私は、貴方を置いて行きはしないわ。私は約束します。」守ろうとするもう一つの誓い、そして私がそれを形にした時、私は、これ以上彼と一緒にいることに、耐えられなくなった。彼は勝ち、モーリスは敗れた。そして私は、彼の勝利故に、彼を憎んだ。私は、彼ゆえに、モーリスを憎むだろうか?私は二階へ上がり、手紙を極小さく千切り、誰にも二度とそれを繋ぎ合わせられないようにして、私は、荷物を解き始めるには、疲れ過ぎていた為に、スートゥケイスをベドゥの下に蹴った。そして私はこれを埋めて行った。モーリスの痛みは、彼の書いたものの中に詰まっている。彼の文を通して疼くその神経が、貴方には聞こえる筈です。さて、もし痛みが一人の小説家を作られるのなら、私も又、モーリスに教えられています。私は、一度だけでも貴方に話せたらと思います。私はヘンリに話せない。私は誰にも話せない。親愛なる神よ、私に打ち明けさせて下さい。


 昨日、十字架像、安物の不格好なものを買った。私は速くそれをしたくなったから。それを頼む時、私は頬を赤らめた。誰かが、店の中で私を見たかも知れない。彼らは、ゴム製品店のように、ドアの中に曇りガラスを嵌めるべきである。私は私の部屋のドアに鍵を掛けると、私は、宝石箱の底からそれを取り出せる。祈り手、それは私、私、私ではない、と私に分かっていたらと思う。私を救って下さい。私をもっと幸せにして下さい。私を、私を、私を直ぐにでも死なせて下さい。 リチャドの頬のあの悍(おぞ)ましい痣について私に考えさせて下さい。涙が流れるヘンリの顔を、私に見せて下さい。私に我を忘れさせて下さい。親愛なる神よ、私は愛そうとして、それをこんなに支離滅裂にしました。もし私が貴方を愛せたら、彼らをどんな風に愛したらいいのか、私にも分かったでしょう。私は、伝説を信じます。私は、貴方が生まれたことを信じます。私は、貴方が私たちの為に死んだ事を信じます。私は、貴方が私達の神であることを信じます、私に愛すことを教えて下さい。私は、私の痛みを気にしません

173

2022年6月8日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

  「そりゃあ、時には立ち止まってもいいのよ。」私は言った。「どんな結婚でも。私たちはいい友達同士だわ。」そのくらいが、私の逃げ口上の限界であるべきだった。「彼が同意した時には、私は彼に手紙を出そう。私が何をしようとしていたのか、彼に打ち明けよう。私は家から出て行こう。何れにせよ、彼は、彼のきっかけを見失い、私は未だここにいて、ドアは、再びモーリスを遮断した。只、私は、今回は神に責任を負わせることは出来ない。私は自らドアを閉ざした。ヘンリは言った。「僕は、お前のことを、友達のようには思えない。お前は、友達なしでもやって行ける。」そして彼は、鏡から振り返り、私を見て、彼は言った。「僕を一人にしないで、サラー。もう二、三年我慢して。僕も努力する・・・」それにしても彼が何を努力しようとしても、 オウ、そりゃあ、私が彼の下を何年も前に去っていれば、私達どちらにも、もっと良かっただろうに。しかし、私は彼がそこにいる時には、私は彼に打撃を与えられない。彼の惨憺が、どのようであるかを、私は見てしまったから、今や、彼は何としてでもそこにいるだろう。

 「私は、貴方を置いて行きはしないわ。私は約束します。」守ろうとするもう一つの誓い、そして私がそれを形にした時、私は、これ以上彼と一緒にいることに、耐えられなくなった。彼は勝ち、モーリスは敗れた。そして私は、彼の勝利故に、彼を憎んだ。私は、彼ゆえに、モーリスを憎むだろうか?

172

2022年6月7日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「お前がいなければやって行けない。」彼は言った。オウそう。貴方には出来る。私は異議を唱えたかった。それは不便になるでしょうが、貴方には出来る。貴方は貴方の新聞を、一度変えたけれど、貴方は直ぐにそれに慣れてしまったわ。これは言葉、型通りの夫の型通りの言葉で、それは全く何事も意味しない。それから私は、鏡の中の彼の顔をまじまじと見て、

 「ヘンリ、」私は言った。「何が気に入らないの?」

 「何も。僕はお前に話した。」

 「私は貴方を信じない。何か役所であったの?」

彼は馴染みのない辛さと共に言った。「何がそこで起こってしまったの?」

 「ベンドゥリクスが、何らかの方法で貴方の心を弄んだの?」

 「勿論、違う。どうして彼に出来るの?」

 私は彼の手を避(よ)けたかった。彼はそれをそこに置いたままにした。私は、彼が次に何を言い出そうとしているのか、不安に思った。私の分別の上に耐え難い重荷を広げている。モーリスは、今は家にいるだろう。もしヘンリが入って来なかったら、五分で彼の下に行ったのに。惨憺の代わりに、私は幸せを目の当たりにしただろうに。貴方は惨憺を目の当たりにしなければ、貴方はそれを信じない。貴方は離れた所から、誰にでも苦痛を与えられる。ヘンリが言った。「僕の愛しい人よ、僕は、多くの夫のようではなかった。」

 「私は貴方が何が言いたいのか分からない。」私は言った。

 「僕はお前には退屈だ。僕の友人たちは、退屈している―僕たちはもう―お前も分かっている―どんな事も一緒にはやっていけない。」

171

2022年6月6日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 私は彼の為に暖炉に火を点けた。私は言った。「私は、少々ヴェンガニンを手に入れて来ます。」

 「心配しなくていい。」彼は言った。「もうそれは良くなっている。」

 「どのような一日を、貴方は過ごしたの?」

 「オウ、殆どいつもと同じ。ちょっと疲れた。」

 「貴方の昼食の約束は誰だったの?」

 「ベンドゥリクス。」

 「ベンドゥリクス?」私は言った。

 「何故、ベンドゥリクスじゃいけない?彼は、彼のクラブで昼食を僕に御馳走した。」

 私は彼の背後に回って彼の額に私の手を当てた。永遠に彼の下を去ろうとする寸前にしていることにしては、それは妙な具合だった。私たちが結婚したての頃、彼は何時も私にそういう風にしてくれていた。それは何も思うように行かなくて、私は、恐ろしく神経過敏な頭痛持ちだった。私は只、一瞬その症状が改善される振りをしようとするのを忘れた。彼は、彼自身の手を上げて、彼の額に強く押し付けて、私のを押さえた。「僕はお前を愛している。」彼は言った。「お前はそれが分かっているの?」

 「そうね。」私は言った。私は、そんなことを言うなんて、彼が厭になりもするわ。それじゃあ要求のようだわ。私は思うのだけれど、もし貴方が本当に私を愛していたら、他の傷付けられた夫のように、貴方は振舞うに決まっているわ。貴方は怒りを覚え、そうして貴方の怒りは、私を自由にするのに。

170

2022年6月5日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

その時私は、Loveと記入したかったが、その言葉は、それは本当だと分かっていても、不適当な響きがあった。私は私の使い古した方法でヘンリを愛した。

 私は封筒に手紙を入れ、非常に個人的とそれに記した。誰かの面前でそれを開かないようヘンリに警告するだろう、と私は思った―彼が友人を家に連れて来ても、私は彼の自尊心を傷付けたくなかったから。私がスートゥケイスを引っ張り出して詰め始めるやいなや、私は不意に思った。私は、手紙をどこに置いたかしら?私はそれをすぐに見付けたものの、その時私は考えた。私はホールにそれを置くのを忘れていて、ヘンリは待つ、家に帰ろうとして私を待つ、と私の慌て振りを思う。そこで私は、ホールにそれを置く為に階下に下りた、私の荷造りは殆ど終わった―片付けるのは、イヴニングドゥレスだけ、それにヘンリは、後三十分は帰って来ない。

 私が、まさにホール・テイブルの午後の郵便物の一番上にそれを置いたその時。私はドアに入るキーの音を聞いた。私はもう一度それをさっと取り上げた。私は訳が分からない、するとその時、ヘンリが入って来た。彼は具合が悪く、疲れ切っているようだった。彼は、「オウ、お前は何でこんな所にいるの?」といっれ、私の横をさっと擦り抜け、彼の書斎に入った。私は一瞬たじろぎながらも、直ぐに従った。私は、今彼に私の手で手紙を渡そうと思い付いた。その内もっと思い切りが必要になって来る。私がドアを開くと、暖炉の側の彼の椅子に座っている彼を私は見た。彼は明かりも付けず、それに泣いていた。

 「一体どうしたのヘンリ?」私は彼に尋ねた。彼は言った。「何も、僕は酷い頭痛がして、それだけ。」

169

2022年6月4日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

私は、共有地を歩きながら神に言った。貴方が実在するのかどうか、或いは貴方は実在しないのかどうか、貴方が二度目のチャンスをモーリスに与えるのかどうか、或いは私は全てのことを予測したのかどうか。多分これは二度目のチャンスになる、と私は。彼に縋(すが)った。私は彼を幸せにするつもりだ。それは、私の二つ目の誓いです。神よ、そして貴方に出来るのなら私を止めてみなさい、貴方に出来るのなら、私を止めてみなさい。

 私は、私の部屋へと階段を上り、私はヘンリ宛に書き始めた。ダーリンヘンリ、私は書いたものの、それには偽善的響きがあった。最も親愛なる方では、嘘になった。つまり、それでは知人のようになりかねなかった「親愛なるヘンリ」そこで「親愛なるヘンリ」、と私は書き、「これは貴方にはかなり衝撃になるのではないか、と心穏やかではありませんが。この五年、私はモーリス・ベンドゥりクスと恋愛関係にありました。二年近くに亘り、私たちはお互いに目を合わせたこともなく、又文面に依(よ)ったこともなく、それにしても、そんなことでは上手く行きません。私は彼なしで幸福に暮らせません。ですから私は、離れて行きます。私は長い間、一妻に属する多くを経ずに来ましたし、その上私は、1944年六月から、全てにおいて夫人とは言い難かった。そう、周りから反れると、誰でも、最悪に陥る、と私は分かっています。私は嘗て思いました、私は、この恋愛沙汰を、まさにものに出来るわと。それは、徐々に満足して疲れ切ってしまうだろうに、それは、その道を閉ざしてしまった。私は1939年にそうだった以上に、モーリスを愛しています。私は子供じみていた、と私は思いますが、今は遅かれ早かれ、人は選ぶしかなく、又人は、あらゆる方向に窮地を作る、と私は悟っています。グドゥ‐バイ。神が貴方を祝福しますよう。」「神が貴方を祝福しますよう。」私は深く深く横線を引いた。だからそこは、読まれる筈はなかった。それは、自己満足の感がありはするが、何にしても、ヘンリは神を信じない。

168

2022年6月3日金曜日

The End of theAffair/Graham Greene 成田悦子訳

私は入口に立ってバーに上がる彼を見守った。もし彼が振り返って私を見れば、私は神に打ち明けた、私は中に入りますと。しかし彼は振り向かなかった。私は家へと歩き出したが、私は私の心の外に彼を置いたままには出来なかった。二年近くに亘って、私たちは知らない者同士だった。一日の僅かな特別の時間に、彼が何をしていたか、私には分からなかったが、今は彼はもう見知らぬ人ではなかった。何処に彼がいても、昔のように私は知っていたから。彼はもう一杯ビアを飲み、それから書く為に慣れ親しんだ部屋へ戻る。彼の一日の習慣は、今尚同様で、誰かが古いコウトゥを愛するように、私はそれをを愛した。私は彼の習慣によって守られていると感じた。私は知らないことを求めたことはない。

 そして私は思った、私は彼をどれ程幸せに出来るか、どれ程楽々と。私は、幸せと共に笑う彼を、もう一度見たかった。ヘンリは外に出ていた。彼は官職の後、昼食の約束を持っていた。彼は、七時までには間に合いそうにないと言う為に電話した。私は六時半まで待つことにして、その後モーリスに電話する。私は言おう、私は今夜と他の全ての夜の為に来ていると。私は、貴方なしでいることに参っています。私は、大きな青いスートゥケイスと小さな茶色のものに荷造りしよう。私は一か月の休日に十分な衣服を持って行こう。ヘンリは啓蒙されているから、月の終わりまでに、法的側面は、決着をつけられるだろう。辛い事は終わり、家から、私が必要とした何か他の物は、都合の良い時に取りに来られる。そこには、そんなに直面する辛い事がある筈がない。そりゃあ私たちは、未だに恋人同士のよう、ではなかった。結婚は、友情になり、少ししも仲が良ければ、前と同様にやって行けるだろう。

 唐突に私は解放感と居心地の良さを感じた。私は、もうこれ以上、貴方のことをあれこれ気に病まなくていい。

167

2022年6月2日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 私は、彼を視界に留めながら、彼の後をずっとつけた。私たちは、ポンテフラクトゥ・アームズへ、何度も繰り返し二人で出かけたものだ。彼がどのバーへ向かい、彼が何を注文したか、私は知っていた。私は彼を追って入ろうかしら、そして私のものを注文し、彼の方を振り向くと、何もかもが、飛び越えてもう一度始まるのに?ヘンリが出かけたら直ぐ、彼に電話出来たから、朝は、希望に満ち溢れていたし、そこには、彼が帰宅が遅くなると告げると、期待する夜があった。そして今なら多分、ヘンリの下を去るだろう。私は私の最善を尽くして来た。私はモーリスに上げるお金を持っていないし、彼の本は、彼自身を維持するのに十分で、それ以上殆ど稼がなかったが、一人でタイプを打つのを、手伝って私と一緒にしたところで、私たちは、一年に55パウンドゥ  私は貧乏を恐れない。時には、貴方が作ったベドゥの上の嘘より、貴方のコウトゥを布を間に合わせる為に切ることの方が、それは気楽だわ。

 私は入口に立ってバーに上がる彼を見守った。もし彼が振り返って私を見れば、私は神に打ち明けた、私は中に入りますと。しかし彼は振り向かなかった。

166

2022年6月1日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 私は気付かれずに泣きたかった。それから私はナショナル・ポートゥレイトゥ・ギャラリに行ったが、その日は学生たちの日だったーそこには大勢の人々いた。それで私はメイドゥン・レインに引き返し、教会の中に、そこは何時も酷く暗く、貴方の近所の人を見なくていい。私はそこに座った。そこには、私と、入って来て静かに後ろの席で祈る小さい男以外全くいなかった。私は、そうした教会の一つに初めて入った時を覚えていたが、私はそこがどれだけ厭だったか。私は祈らなかった。私は嘗てはかなり頻繁に祈って来た。私は神に言った。私が私の父に言っても差し障りのないように、もし私が今まで誰かを自分のものにしたことを思い出せたら、親愛なる神よ、私は飽き飽きする。


1946・2月3

 今日、私はモーリスを見たが、彼は私を見なかった。彼は、ポンテフラクトゥ・アームズへの途上にあり、私は彼の後をつけた。私は、シェダ・ロウドゥで一時間を費やした―可愛そうなリチャドゥの論拠に追随しようとして、時間を長びかせながら、ひっくり返された信仰という意味を、ひたすらそれから汲み取りながら。誰がそこまで生真面目で、一つの伝説についてそこまで論争的であることが出来るだろう?私が全体で何かしら理解した時、彼のケイスを殆ど救えないように私には見える、と私が気付かなかった何か不思議な実体が、そこにはあった。そこにクライストゥと呼ばれた一人の男がいたという証拠のように。私は疲れ、つまらないという感情を表に出した。私は、迷信から私を抜け出させるために、彼の所に出かけたが、その都度、私は迷信を更に深く作り直した彼の狂信をなぞった。私は彼を救っていたが、彼は私を救っていなかった。一時間、私は殆どモーリスのことを考えなかった。しかしその後、そこに突然彼がいた。通りの端を横切りながら。

165

2022年5月31日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

しかし私は私の怒りと共に今、先に乗り込もうという願望は、微塵もなかった。他の多くの物事のように、怒りに向かう能力は、私の中で死に絶えた。私は、彼に会って、彼にヘンリのことを尋ねようとした。ヘンリは、最近おかしかった。外出して、モーリスとパブで飲む、そんなことは彼にはなかった。ヘンリは、家でとか、彼のクラブでしか飲まなかった。私は、彼がモーリスに打ち明けるといいと思った。もし彼が私のことを気に病んでいたら不思議。私たちが結婚した当初から、気に病む原因は、何処にも殆ど見当たらなかった。しかし私がモーリスと一緒だった時、彼と一緒だということを除いて、彼と一緒に居ようとする理由らしきものは、何処にも心当たりがなかったなかった。私は、ヘンリについて何事も探り出さなかった。今もその時も何時だって、彼は私を傷付けようとしながら、彼は、彼自身を実際傷付けていたから、彼は、成功し、私は、自らを傷付ける彼を見ることに耐えられない。

 私はあの昔の誓いを、モーリスと昼食を摂っている内に破ったのか?一年前、私はそう思おうとしたが、今私はそうは思わない。私は不安だったから、どんなこともそれが全てだったと私は知らなかったから、私は愛に信頼を持てなかったから、あの頃とても文学的だった。私たちはルールズで昼食を摂ったが、私はただ、彼と一緒にいるだけで、幸せだった。格子の上で、さよならを告げながらも私は、少しの間、不幸せだった。彼はもう一度、私にキスをする筈だと私は思い、私はそれを願った、ところがその時、咳の発作が私を襲い、手間取った。私には分かった、彼は遠ざかるにつれ、本当ではないようなことを皆、彼は背負い込んでしまい、それによって彼は傷付けられ、彼が傷付けられると私は傷付けられた。

164

2022年5月30日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

私は、雨の中貴方の窓の下を歩き、一晩中その下で待とうとした。何もかも終わり、私は愛することを学んでも良かったのに、又、貴方がそこにいたから幾分長く私は不毛を恐れずに済んだ。私が家に戻ると、ヘンリと一緒にそこにはモーリスがいた。それは二度目だった、貴方は彼を返してくれた。一度目、私はその所為で貴方が嫌になり、貴方が私の不信心を貴方の愛の中に誘って来たように、貴方は私の嫌悪を受け止めて来た、だから私たちは共に笑い合えた―私は時にモーリスを笑った、「私たちがどんなに馬鹿げていたか貴方は覚えているの・・・?」と言っては。



1946・1月18

 二年経ち、初めて私はモーリスと昼食を摂っていた。私が電話をして、私と会って、と彼に頼んだ―それなのに私のバスは、ストックウエルで通行に手間取り、私は十分遅れた。私はちょっとびくびくしていた。あの遠い日々、私は何時も感じた、何かが一日を台無しにするためにきっと起こるぞ、それは、彼が私に対する腹立たしさを抑え切れなくなるに決まってるぞ。

163

2022年5月29日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

山高帽を持ったあの男の孤立した実在を、十字架の金属を、私が祈られないこの手を信じるから、私は実在主義者か?神は実在したと想像する、彼は、あの世な肉体を持っていたと想像する、彼の体が私のものとまるで同じように実在したと信じることは、何が間違っているのか?もし彼が肉体を得なかったら一体誰が彼を愛し、或いは彼を遠ざけられたか?私はそれがモーリスであっても、蒸気を愛せない。それは粗雑で、それは野蛮で、それは実在主義者だ、と私は知っているが、何故私は、粗雑で、野蛮で、実在主義者であってはいけないのか?赤く燃える憤怒に、ヘンリの公然たる反抗、合理的なものの全て、私は、スペインの教会で人々が行う何を私は見て来たにしても、私が誘(いざな)った孤立に、教会の外へと歩いた。聖水、そう‐呼ばれた中に私は私の指を浸し、私の額に十字架のようなものを作った。



1946・1月10


私は今夜家庭に耐えられなかった。だから雨の中、外を歩いた。私が掌の中に私の爪を突き刺した時を、私は思い出した。私はそれを知らなかった、が、貴方は痛みに動いた。私は言った。「彼を生き返らせて下さい。」貴方を信仰することもなく、それに私の不信心は貴方にどんな差別もしなかった。貴方は貴方の愛の中にそれを受け入れ、供物のようにそれを食した。そして今夜、雨は私のコウトゥや私の衣服や私の肌の中をびしょ濡れにして、私は寒さで震え、そんなことは初めてで、まるで私は殆ど貴方を愛したかのようです。

162

2022年5月28日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

何時か私たちに何故かが分かるといい。それは腺の欠乏かも知れない。

 そこで今日、あの実在する十字架の上のあの実在する肉体を見て、私は不思議に思った。この世は、そこでどのように蒸気に釘を打てたのか?上記は、勿論痛みもなく、喜びも感じなかった。それは単に、それが私の祈りに答える筈と想像する私の迷信に過ぎなかった。親愛なる神よ、と私は言って来た、私は言うべきだった、親愛なる蒸気よと。私は貴方を遠ざけると私は言ったが、人は蒸気を遠ざけられるか?十字架の上のあの像を私の感謝の気持ちへのその主張と共に避けることは出来た―「私は貴方の所為でこんなことで苦しんだ。」しかし蒸気は・・・それにしてもリチャドゥは、蒸気以下でも信仰した。彼は寓話を嫌い、彼は寓話と戦い、彼はまともに寓話を受取った。私はハンスル・アンドゥ・グレトゥルを嫌えなくて、彼らの砂糖の家を、彼が神の伝説を嫌ったようには嫌えなかった。私が子供だった時、私はスノウ・フワイトゥの中の意地悪な女王を嫌いになれたが、リチャドゥは、彼のお伽⊶話のデヴルを嫌いではなかった。デヴルは存在せず、神は存在せず、それでも悉(ことごと)く彼の嫌悪は、いいお伽話の為にあり、意地悪なものの為ではなかった。どうして?私は、あの―過度に‐くだけた肉体を見上げた。想像上の苦痛で張り詰めた、眠る人のように項垂れている頭。私は、時にモーリスが嫌になった。が、もし私も、彼を愛さなくなったら、私は彼を避けようとするだろうか?オウ神よ、もしも私が心底彼を嫌ったとしたら、それは何を意味するのでしょう?

 すると結局、私は実在主義かしら?私は何か腺の欠乏があって、実際に重要な迷信ではない物事や目標に少しも興味がない―慈善委員、生活の指標、労働者階級の為のより良いカラリのように?

161

2022年5月27日金曜日

The End of the Affair/GrahamGreene 成田悦子訳

そこでは、目や手から緋色の絵具で、血が下方へ走っていた。それは、私の具合を悪くした。ヘンリは、私に12世紀の記念碑を称賛して欲しかったのに、私は具合が悪くて開けた所へ出て行きたかった。私は思った、こういう人々は、残忍さを好むのねと。蒸気は、血や叫びで貴方にショックを与えられない。

 私は広場へ出ると、私はヘンリに言った。「全くこんな風に塗った傷には耐えられないわ。」ヘンリはとても理性的だった―彼はいつも冷静だった。彼は言った。「勿論、あれは非常に物質主義的信仰ではある。魔力の代物(しろもの)・・・」

 「魔力って、物質主義的なの?」

 「そう。イモリの目や、カエルの足の指、出産で‐締め付けられた赤ん坊。お前はそれ以上に何か物質主義的なものを所有出来ない。聖体拝領ミサに於いては、彼らは、未だに全質変化を信仰する。」

 私はその全てを知りはしたが、勿論貧乏人の為を除いて、それは多かれ少なかれ宗教改革で絶滅したという一つの考えに至った。ヘンリは私をきちんとさせた(どんなにしょっちゅうヘンリは、私の混乱した考えを整理し直して来たことか)。「物質主義は、単に貧乏人向けの姿勢だけではない。」彼は言った。「どこまでも洗練された頭脳の者たちは、物質主義者で、パスクル、ニューマン。傾向という点で非常に微妙、他の点では非常に粗雑な迷信。

160


2022年5月26日木曜日

The End of the Affair Graham Greene 成田悦子訳

そこで私は思った。私は蒸気になる為に、あの体を求めるのか(私のものをはい、いや彼のものを?)又、永遠そのものを貫いて存在することを、あの傷跡に私は求めた、と私は分かっている。しかし私の蒸気はあの傷跡を愛せるか? その時私は、私が憎んだ私の体が欲しくなって来た。しかしそれは、単にあの傷跡を愛せたからに過ぎない。私たちは、只私達の心だけで愛せるか?愛情は、何時もその身を広げる。そうそれで私たちは私達の感覚のない爪でさえ愛せる。私たちは、私達の衣服でさえ愛する。そうそれで袖は袖を感じられる。

 リチャドゥは正しい。私は思った、私たちが肉体の復活を考案したのは、私たちが私達自身のの体を必要とするから、直ぐに私は彼が正しかったと、又、これは、私たちが慰めに互いに話すお伽話だったと認めた。私はもはやその塑像を、少しも嫌だとは思わなかった。それは、ハンス・アンダスンの中の汚い色の絵に似ていた。それは、下手な詩に似ていた。しかし誰かが、それを書くことを必要として来た。非常に誇り高く、彼の愚かさを曝け出すよりむしろ彼はそれを隠した誰か。私は教会に歩いて上った。それらを次から次へ眺めながら。全ての内、最も酷いもの―私は彼女が誰か知らない―中年の男が祈っていた。彼は山高帽を彼の脇に置き、山高帽の中に、新聞に包んだセラリの茎があった。

 そして勿論、供物台の上のそこにも、一体あったーそんなによく知られた肉体、モーリスのものよりもっとくだけた、肉体のあらゆる部分を持った肉体として、前に私を感動させたことはなかった。私はヘンリと訪れたスペインの教会の一例を覚えていた。

159

2022年5月25日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

何時か私も蒸気の役になろう―私は永遠に私自身を避けよう。そうしてその時、私はパーク・ロウドゥの暗い教会に入って全ての供物台の上の私の周りに立つ体を見た。その悦に入った顔を持った恐ろしい石膏の塑像、それで私は彼らが肉体の復活を信じていることを思い出した。私が永遠に葬られたい肉体の。私はこの体と共に、随分たくさん傷を負って来た。私は永久にその僅かでも保存することをどうして望めるのか?そこで突然私は、リチャドゥの名言を思い出した―その欲求を満たすために教義を考案する人間についての、そして私は、彼がどれだけ悪辣であるかを思った。私が教義を考案することになったら、肉体は二度と蘇らなかったということ、それは去年の害虫を道連れに腐ったということになるだろう。人間の心は後ろに前に揺れ動く。一つの極端からもう一つの極端へと。真実は、振り子の振幅の或る目盛で欺き、決して静止しない一つの目盛りで、弛んだ垂線の中ではなく、風のない旗のように、それが仕舞に何処でだらりと垂れるかが大切だ。しかし角度においては、他より一つの極端により近いのか?只、奇跡が60度の角度で振り子を止められたら、人は真実はそこにあったと信じるだろう。さて、振り子は今日も揺れ動き、私自身の体の代わりに、モーリスのを思った。私は、彼の著作の一行と同じくらい個性的な命が、彼の顔の上に置いた確かな輪郭を思った。私は、嘗て彼が、落下する壁から他の人の体を庇おうとしなかったら、そこにある由もない肩の新しい傷跡を思った。何故あの三日を病院で過ごさなかったのか、彼は私に打ち明けなかった。ヘンリが私に話した。あの傷跡は、彼の嫉妬と同程度の度を越した彼の性格の顕われだよ。

158

2022年5月24日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

彼が神経質に「週に一時間。それは大いに貴女を救います。」と言った時、頼むのは些細なことのように思った。それに、今、私は時間の全てを持っていないか?私は本を読んでもいい、又映画に行っても良く、私は言葉を解さず、又映像を思い出せない。私自身と私の持つ惨めさが、私の耳の中で太鼓を打ち、私の目に溢れる。この午後のちょっとの間に、私はそれを忘れた。「はい、」私は言った。「私は来ます。時間を割くのは、それは貴方にも望ましい。」私は言った。私は、彼の保護の中で私に可能な全ての望みをシャヴルで掬いながら、神に祈りながら、彼は、私を救済すると誓っていた、「私を彼に用いて下さい。」

 

1945・10月2

 今日、それはとても暑く、その上雨が滴り落ちていた。そこで私は、暫く腰を下ろす為に、パーク・ロウドゥの角の暗い教会の中に入って行った。ヘンリは家に居たが、私は彼を見たくなかった。私は、朝食時、優しいということを思い出そうとする、彼が家にいる昼食時の優しさ、夕食時の優しさ、そして時々私が忘れると、彼は逆に優しい。命ある限り互いに優しくあろうとする二人。私が入り、座って、辺りを見た時、そこは、石膏の塑像と悪趣味な美術品、写実主義的美術品で溢れ返ったロウマン教会だと悟った。私は、塑像やクライストゥ受難の像、あらゆる人体の強調を嫌った。私は人間の体から逃げ出そうとしていたし、全くそれが急務だった。私は私達自身とは無縁に生み出された或る種、神のようなもの、何か曖昧で無定形で、宇宙的なものを信じられると思った。それに対して、私は何かを誓い、そしてそれは、お返しとして私に何かを授けた―有形の人間の生命へと曖昧さの外へ伸びる椅子と壁の間を精力的に動く蒸気のように。 

157

2022年5月23日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

それは彼を毎週、共有地へ彼を行き着かせる。いなくなり、質問もせず、芝生の上に彼のカードゥを投げ捨てる人々に語り掛ける為に。私が今日来たように、どれだけの頻度で、誰かが実際に来るのか?私は彼に、「貴方はたくさん訪問者を持っていますか?」と尋ねた。

 「いいえ。」彼は言った。彼の真実への愛着は、彼の誇りより偉大だった。「貴女が最初です―随分長い時間で。」

 「貴方に打ち明けるのは、それは申し分ありません。」私は言った。「貴方は私の心を本当に随分整理して下さった。」それは誰彼となく彼に与えられる唯一の慰めだった―彼の幻に餌をやる為に。

 彼は内気そうに言った。「もし貴女が時間を割ければ、私たちは、現実的に開始し、物事の根源に向かえます。私が意味するのは、、哲学的論争や歴史学的証拠です。

 私は彼が続けて行く為に、何らかの回避的な返事をでっち上げなければならなかったと思う。

「それは実に重要です。私たちは、私達の敵を侮ってはならない。彼らは、一つの箱を持っています。

 「彼らが持っている?」

 「それは、しっかりしたものです。上辺を除けば。それはもっともらしい。」

 彼は心配そうに私を見つめた、私は、いなくなってしまうそうした者の一人ではないか、と彼は不安に思っていたと私は考える。 

156

2022年5月22日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

歪めたり美しく見せたりする鏡について彼が話す時、私は何について私たちが話していたかを思い出せなかった。思春期以来その年代全ての思い故に、彼は鏡を覗き、それらを美しく見せよう、歪めることなくと心がけて来た。地道にその方法で、彼は彼の頭を持ち上げた。何故彼は、顎髭を痣を隠す程、十分長く伸ばさないのかしら?体毛はそこでは伸びなかったのか、それとも彼がごまかしたくないからだったのか?私は、彼が心底真実を追い求める男だという考えに至りはしたが、そこにはもう一度やり直すというあの言葉があり、それは只、余りにも明らかで、いかに多くの欲求に埋もれて、彼の真実への愛着は、易々(やすやす)と引き裂かれたことか。彼の誕生の損傷の為の埋め合わせ、権力への欲求、もっともっと全てを賞賛されたいという願い、つまり、みすぼらしく祟られた顔は、肉体の欲望の根拠を必ず奪おうとする。私は、この手でそれを確かめ、その傷のように永続的に、慰めたいという非常に強い意志を持った。それは、ドアの下のモーリスを見た時に似ていた。私は祈ろうした。只、彼が癒され得るなら、何か法外の犠牲を捧げるにしても、今そこには、私の為に捧げるどんな犠牲も残されていなかった。

 「私の親愛なる人よ、」彼は言った。「神という概念をこれから外しましょう。それは、まさに貴女の愛する人と貴女の夫の問題です。物事を幻想と混同しないで。」

 「でも私はどんな方法で決めますか―もしそこに愛のようなそんなものがなければ?」

 「長い走程にあって、貴女は何が最も幸福であるか、決めたくなります。」

 「貴方は幸福を信条としますか?」

 「私はどんな完全も、信じません。」

 私は、彼が何時までも手にする唯一の幸福は、これだと思った。彼は慰め、助言し、救うことが出来るという着想、彼は有用たり得るという思い。

155

2022年5月21日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「彼らの情緒が揺り動かされると、人々は、物事が合理的であること、それを必要としない。恋人同士は、合理的ではないでしょ?」

 「貴方は又、愛情抜きで説明できますか?」

 「オウ、はい、」彼は言った。「或る者に入り込んで独占したいという欲求、強欲と言われるまでに。他の者に入り込んで入れ込みたい、責任感をかなぐり捨てたいという欲求、褒められたいという願い。時には、話が出来ればと、耐えられない誰かに貴方自身荷を下ろしたいう願い切実。父か母を再び探し出したいという欲求。そして勿論、その根底にあらゆる生物学的動機が。

 私は思った。それは皆、真実だ。でもそこに何か覆っているものはないのか?私は、私自身の中で、モーリスの中でも、その全てを掘り返した。しかし未だに鋤(すき)は岩に触れなかった。「それでは、神の愛は?」私は彼に尋ねた。

 「それは皆同じことです。人は彼自らの想像の内に神を作りました。ですから彼が彼を愛してしまうのは、そりゃあ当たり前です。貴女は定期市でそこにある歪める鏡ご存知ですね。人は美しく見える鏡も作り、その中で、彼は、彼自身が魅力的で、逞しく、公正で、賢明に見えます。彼を笑わせるだけの歪める鏡の中よりいとも簡単に、彼自らを識別しますが、彼は他者の中で彼自身をどれ程大切に思うことでしょう。」

154

2022年5月20日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

  何故って、本当に?私は、ドアの下のモーリスと私の誓いについて彼に打ち明けられなかった。駄目だ、未だ私には出来ない。その上、それは全体の核心ではなかった。生まれながらにして、私はどれだけの数の誓いをしては破ったっていうの。何故、友人がくれた不格好な花瓶のように、この誓いは留まるのか、それを壊しそうなメイドゥを誰かさんは待ち詫び、来る年も来る年も、彼女は誰かが評価する物を壊し、ついにその不格好な花瓶は残る。私は、実際今まで彼の言う疑問に立ち向かったことはなく、追って彼はそれを繰り返そうとした。

 私は言った。「私には、信仰心がないのですが、いいとは思えません。かと言って、私はそうしたいわけではありません。」

 「私に話して下さい。」彼は言いながら彼自身の手の美しさを忘れ、彼の醜い頬を私に向けた。救おうとする一心で我を忘れ、私は打ち明けている自分自身に気付いた―あの夜と爆弾落下と馬鹿げた誓いについて。

 「それで、貴女は実は信仰している。」彼は言った。「それは多分・・・」

 「はい。」

 「今祈っている世界中の何千人もの人々について考えて下さい。彼らの祈りは相手にされない。」

 「パラスタインで、そこに死にかけた何千もの人々がいた。その時ラザラスは・・・」

 「私たちは、そんな作り話を信じないでしょ。貴女も僕も?」彼は一種連座を押し付けて言った。

 「勿論そう。何れにせよ、何万もの人々が持っています。彼らは、それを道理に適っていると思うしかなかった。」 

153

2022年5月19日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 私は木綿更紗のソウファに座り、彼はかなり固い椅子に、彼の膝の上の猫と一緒に座った。彼は猫を撫で、彼は奇麗な手を持ち、私はそれを好まなかった。私は、押し並(な)べて痣をかなり好んだが、彼は、彼の見栄えの良い頬だけを私に見せながら座ることを選んだ。

 私は言った。「そこには神はいないと、何故あなたはそんなに決め付けるのか、貴方は私に話せますか?

 彼は猫を撫でながら、彼自身の手を見詰め、彼は彼の手で自尊心を維持しているのか、と私は彼を不憫に思った。彼の顔が、印を付けられていなければ、彼はどんな自尊心も持ち合わせなかっただろう。

 「貴女は共有地で話す私に耳を傾けて下さった?」

 「はい、」私は言った。

 「私はあそこではごく簡素に物事を留め置くよう、心掛けています。自分自身の為に考えるよう、人々に風穴を開ける為に。貴女は、自分自身の為に考えることを始めましたか?」

 「私はそう思っています。」

 「どんな教会に、貴女は取り込まれましたか?」

 「何処にも。」

 「ならば、貴女はクリスチャンではないのですか?」

 「私は洗礼は施されています―それは、社会的通念でしょ?」

 「貴女がどんな宗教も持たないのなら、どうして貴方は私の助けが欲しいのですか?」

152

2022年5月18日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 1945・9月10


 私は賢明さを取り戻した。私は二日前、私の古いバグを片付けていた。―ヘンリは突然、「平和のプレズントゥ」として、新しいものを私に与えた―それは、彼にたくさんのお金を遣わせてしまった。私は、「リチャドゥ・スマイズ16スィダ・ロウドゥ4-6毎日個人的相談を、どなたでも歓迎。」と伝えているカドゥを見つけた。考えると、私は十分長く引きずって来た。私は、別の薬を飲もう。もし彼が私に買えれば、何事も起こらなかったし、私の約束は、勘定に入れなかった、とモーリスに書いて、もし彼がもう一度やり直したければ、と彼に尋ねよう。おそらく私は、ヘンリの下を去りもしよう。私は分からない。それでも第一、私は賢明さを取り戻した。私はもうこれ以上ヒステリクになるまい。私は聞き分けが良くなるわ。そこで、私は出かけて、スィダ・ロウドゥのベルを鳴らした。

 今、私は何が起こったか、思い出そうとしている。ミス・スマイズは、お茶を作り、お茶の後、彼女は出かけて、私を彼女の兄弟と一緒に、一人残した。彼は、私に何が私の困難か尋ねた。

151

2022年5月17日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 Ⅴ

1945・5月8

 夕方のセイントゥ・ジェイムズ・パークへ、イウアラプ戦勝記念日を祝う彼らを見に下った。それは、近衛騎兵隊と宮殿に挟まれた投光照明の水域の側で、とても静かだった。誰も大声を出さず、歌わず、酔っぱらうこともなかった。人々は、二人ずつ、手を取り合い、草の上に座った。私は、これが平和であり、何処にももう爆弾はなかったから、彼らは幸せだと思った。私は、ヘンリに言った。「私は、平和と寄り添えない。

 「僕は、情報省から、何処へ選抜されるか、あれこれ考えている。」

 「情報省?」私は、興味深そうに尋ねた。

 「いや、いや、僕は、それを引き受けたくない。」

 「それは、俄か作りの国民の奉仕者だらけだよ。お前は、内務省はどれ程いいと思っているの?」

 「何かが、ヘンリ、それは、貴方を満足させたわ。」と私は言った。その後、ロイアル・ファミリが、バルカニに登場し、群衆は、非常に礼儀正しく歌った。

彼らは、ヒトゥラ、スターリン、チャーチル、ルーズベルトゥのようなリーダではなかった。彼らは、誰にも,どんな危害も加えない只の家族だった。私は、私の側にモーリスが欲しかった。私は、もう一度やり直したかった。私も、家族という者の一員になりたかった。

 「とても感動的だね。」ヘンリが言った。「そうね、私たちは皆、これで夜ぐっすり眠られるわ。」私たちは、夜に、今まで何か他にしたのにぐっすり眠ったかのように。

150


2022年5月16日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

  昨夜、彼が寝ていた時、私は、ヘンリを見た。私が、法律が有罪の当事者だと考える何かである限り、私は彼を愛情を持って見守ることが出来た。彼が私の保護を必要とする子供だったかのように。今や、私は、彼らが無知と呼ぶ者だった。私は、彼によって延々と気持ちを正常に動かなくされた。彼は、家まで彼に電話をして来る秘書を持っていた。彼女は、言ってのける。「オウ、ミスィズ・マイルズ、H.M.は中に?」秘書は皆、そんな耐え難いイニシアルを使った。親しいだけではなく、馴れ馴れしい。H.M.、眠る彼を見ながら、私は思った。H.M.彼(か)の陛下と彼の陛下の配偶者。時々、彼の睡眠中、彼は微笑んだ。普通の、簡潔な、国民の奉仕者の笑顔、口にすれば限りなく、そう、実に滑稽。とはいうものの、今や、私たちは仕事と寝た方が良かったんじゃない?

 私は彼に一度言った。「貴方は、今まで秘書に対して関心を持ったことはなかった?」

 「関心?」

 「恋愛感情」

 「いや、勿論ない。何が、お前にそんなことを思わせるの?」

 「僕は、分からない。僕は全く考えられない。」

 「僕は誰か他の女を愛したことはない。」彼は言って夕刊を読み始めた。私は 余りにも魅力がなくて、どんな女も嘗て彼を欲しがったことがないのが私の夫だ、と不可解に思わざるを得なかった。私以外、勿論。私は求めずにはいられなかった、一筋に、一度は、それなのに私は何故かを忘れ、私が、選ぼうとしたものを知るには若過ぎた。それでは、余りにも不当だ。私がモーリスを愛した間、私はヘンリを愛した。そして今私は、彼らがいいと称するものだ。私は、誰かを全く愛さない、そして貴方を全ての中で、最も愛さない。

149

2022年5月15日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 Ⅳ

1944・9月12

 ピータ・ジョウンズで昼食を摂り、ヘンリの勉学の為に新しいラムプを買った。他の婦人たちに囲まれた取り済ました昼食。何処にも男はいない。それは、大勢の内の一部分になることに似ていた。殆ど平和といった感じ。その後、ピカディリの新しい映画に行って、ノーマンディの喪失とアメリカの政治家の到着を見た。ヘンリが帰る筈の七時まで何もすることがない。一人で二杯のお酒を飲んだ。それが間違っていた。私はお酒を飲むことも止めなきゃ。私が何もかも払い除ければ、私はどうなる?私はモーリスを多少愛し、男達に同行し、私なりのお酒を満喫した身だった。貴方が私を作る物事全てを振るい落とせば、何が起こる?ヘンリが入って来た。彼は何だかとても嬉しそうだった。彼は、それが何なのか、明らかに彼に尋ねることを私に望んだが、私はしなかった。それで終に、彼は私に話すことにした。「彼らはO.B.E.大英帝国勲章 に僕を推薦している。」

 「それは何?」私は尋ねた。

 私が知らなかったということで、彼はかなり落胆させられた。彼が彼の課の長になった時、一、二年以内に次の段階は、C.B.E.になるだろう。そしてその後、彼は言った。「僕が退職する時、彼らは、おそらく僕にK.B.E.を与えようとしている。」

 「それでは面食らってしまうわ。」私は言った。「

貴方は同じ文字に、突き刺されなかったの?」

 「お前は、レイディ・マイルズになりたくないの?」ヘンリは言い、私は怒って、この世で私が欲しいものは皆、ミスィズ・ベンドゥリクスであるが故で、これまでの間、その頼みとするところを、手放さなかった。レイディ・マイルズ―愛人を持たず、お酒を飲まないけれど、サー・ウイリアム・マロックに年金について話す。その時ずっと、私は何処に居ればいいの?

148

2022年5月14日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

  国王は、彼の約束をどのように守ったか?私は思い出せたらと願う。私は、べキットゥの墓の上で修道士に彼を鞭打たせるよりもっと、彼について何も思い出せない。それは、答えのような響きがない。それは、前に起こらなければならなかった。

 ヘンリは今夜又、家を離れている。私がバーに馴染んで男を摘まみ取り、浜辺に彼を連れて行き、砂丘の間で彼と横になれば、私は、貴方が最も愛するものを貴方に失わせはしないのか?それでもそれは進展しない。それはもはや進展しない。私がそれから僅かでも楽しみを得なければ、私は貴方を傷付けられない。不毛の地のそうした人々のように、私は、おまけに私自身にピンを突き刺しても良かった。不毛。私は満喫し、それが多少でも貴方を傷付けようとすることをしたい。私を信じて下さい、神よ、私は貴方を信仰しない未だに、私は貴方を信仰しない未だに。

147


2022年5月13日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

彼がそれを愛せれば、それには、心惹かれるに違いない。私の心の中、そこに少しでも心惹かれるものがあるということ、それは、余りにも多くを私に信じるよう求めている。私は、私を称賛する男が欲しいが、それは、貴方が学校で学ぶ癖です―目の動き、声音、肩とか頭の上の手の感触。もし彼らが思えば、貴方は彼らを褒めるでしょう。貴方の立派な好み故に、彼らは貴方を称賛しようとする。そして彼らが貴方を褒める時、貴方は、束の間、そこに褒めるべき何かがあるという幻想を抱く。今までずっと、その幻想―私が意地悪でペテン師だということを忘れさせる鎮痛剤に浸ってで生きようとして来た。意地悪でペテン師の中に、そんな時、愛すべき何を貴方は思い浮かべられます?そうしたことが物語る不道徳な魂を、貴方は何処に見い出しますか?人皆の内、この心惹かれるものを、私の心の中の―私の心の中の何処に貴方は見ますか?ヘンリの中に貴方はそれを見いだせる、とすると私は納得出来ます―つまり私のヘンリ。彼は紳士で、善良で、忍耐強い。貴方は、それを彼が嫌い、愛す常に愛すと思うモーリスの中に見出せます。彼の敵でさえ。それなのにこの意地悪でペテン師の中の何処に、貴方は何か愛すべきものを見出せますか?

 それを私に話して下さい、神よ、そして私は、永遠に貴方にそれを失わせるようにします。

146

2022年5月12日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

貴方は、私にD.と一緒に逃げ出そうとさせながら、それを楽しむことを、私には許さない。貴方は、私に愛を外へ追い払わせ、その後で貴方は言う。そこにも又、貴女が求める渇望はない。貴方はいま、私にどうして欲しいのか、神よ?私は、ここから何処へ向かうのか?

 私が学校にいた頃、私は国王について学んだ―ヘンリの一人、べキトゥを殺した人物―彼の敵によって焼かれた彼の生誕の地を彼が見た時、彼は誓った。何故なら神は彼にそういうことをしてしまったから、「何故なら貴方は、私に私が最も愛した町を、私が生まれ育てられた地を、私に失わせたから。私は貴方に貴方が私の中で最も愛するものを失わせます。」奇妙でどういう訳か、私は十六年後のその祈り手を思い出した。国王は、彼の馬に乗って、それを七百年前誓い、そして私は、海上のビグウエル―ビグウエル・レジスのホウテルの部屋の中で、それを今祈る。私は、貴方に失わせようとしています、神よ、貴方が私の中で最も愛するものを。私は、今まで心からの主の祈り手を知らなかったが、私は、人が―それ、祈り手であるということを思い起こす。貴方が私の中で最も愛すことの。

 貴方は何を最も愛しますか?私が貴方を信じていれば、不道徳な魂を信じようと思いますが、それは、貴方の愛ですか?貴方は、皮膚の下のそこに、それを実際に見ることが出来ますか?神は、何か存在しないものを愛せず、彼は、何か彼に見えないものを愛せない。彼が私を見る時、彼は、何か私に見えないものを、見るのですか?

145

2022年5月11日水曜日

The End of the Affair/ Graham Greene 成田悦子訳

  私が、私の肩に挟み込んだ受話器を取ると、交換手は言った。「私共は、只今貴方の番号にかけています。」私は神に言った。もし彼が応答すれば、私は、明日戻ります。電話は、彼のベドゥの傍の何処に置いてあるかを、私は正確に知っていた。一度私はそれを私の睡眠中にぶつかって落とし、げんこつですっかり打撃を与えたことがある。女の声は、「もしもし」、するとすんでのところで電話を切ろうとした。私は、幸せになるには、モーリスを欠いていたが、私は、本当にそんなに素早く、彼に幸せを見つけて欲しかったの?論理が私の手助けをしてくれるまで、胃に少しばかり違和感を覚え、私は私の頭に私と言い争わせた―何故彼はしないのか?お前は彼を置き去りにした。お前は、彼に幸せになって欲しい。私は言った。「ベンドゥリクスに話せますか?」しかし何もかもフラトゥを出てしまっていた。おそらく彼は、今や私の約束を破ることを私に望もうとさえしない。おそらく彼は、誰か彼と一緒に居て、彼と食事して、彼と何処にでも一緒に行って、彼とそれが心地良く習慣的になるまで、来る夜も来る夜も共に眠り、彼に代わって彼の電話に答えようとする人を見つけてしまった。その時その声は、言った。「ベンドゥリクスさんは、ここにはいません。彼は二、三週間遠くへ出かけました。私は、フラトゥを借りました。」

 私は電話を切った。ともかく私は幸せだったのにその後、又惨めになった。私は、彼が何処にいるか、知らなかった。私たちは触れもしなかった。同じ不毛の地で、同じ水源を探しながらも、おそらく景色の外、何時も一人。私たちは一緒に居れば、そこは不毛の地になりようもないから。私は神に言った。私は貴方を信じ始めています。私が貴方を信じれば、私は貴方を遠ざけます。私は私の約束を破ろうとする自由意志を持っているでしょ。でも私はそれを破ることによって何かを得る能力がありません。貴方は私に電話をさせながら、その後、貴方は私の面前でドアを閉ざす。貴方は、私を罪に走らせながら、貴方は私の罪の果実を持ち去る。

144

2022年5月10日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

ヘンリは、市長やエンジニアと一緒に二等私室の中に先頭に立って入って行ったが、私はその長官を引き止めた。彼の腕に触れ、スチールの寝棚に関し、そこに既婚者用のダブルの寝棚がなかったのは何故かについて、何か馬鹿げたことを彼に質問しながら。私は、私にキスをして欲しい、と言おうとした。彼は、寝棚に凭れて私をぐるっと捩じった。それで金属が私の背中を横切る痛みの線を作り、そして私にキスをした。その時、彼は随分驚いたようだったので、私は笑い、彼にキスを返した。それなのに、何事も進展しなかった。それは、二度と進展しないのだろうか?市長がヘンリと一緒に帰って来た。彼は言っていた。「切羽詰まっても、僕たちは、二百年間は、部屋を見付けられます。」その夜、ヘンリが公式の夕食にいた時、モーリスの電話番号を手に入れようとして、長距離電話を頼んだ。私は、ベドゥでそれが繋がるのを待ちながら横になった。私は六週間、私の約束を守りました、と私は神に言った。私は貴方を信じられず、愛せもしませんが、私は私の約束を守りました。もし私が再び生き生きと蘇らなければ、私はだらしない女に、只のだらしない女になるつもりです。私は全く故意に、自らを壊そうと思います。年毎に、私はますます使い古されます。もし私が私の約束を破れば、貴方は、より以上に少しでもそれを好みますか?私は、余りにも笑い過ぎて、彼女たち相手の、肉体関係がなくても彼女たちに触れている三人の男を持つバーのあの婦人たちのようになるでしょう。私は、既に粉々に砕け落ちています。

143 

2022年5月9日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 只、私が動こうとするという意識を持てば、彼はそれに応える。私は、何故しようとしないのかしら?私は見知らぬ人と約束したことはなく、モーリス一筋だった。ヘンリと一緒にわたしの残りの人生を、一人寂しく過ごせない、誰も私を認めず、誰も私に刺激されず、ヘンリが他の人と話す事に耳を傾け、チェダ洞窟のあの山高帽のように、会話の滴りの下で化石化する。


1944.7月15

 ダンスタンとJardin des Gourmetsで昼食をとった。彼は言った・・・


1944.7月21

 家でダンスタンと一緒に飲む。その間、ヘンリを待った。全て・・・へ向かう


1944.7月22

 Dと夕食をとった。彼は、もっと飲もうとして、その後、家に来た。何れにせよ、それは、進展しなかった、それは、進展しなかった。


1944.7月23-1944.7月30

 D.が電話した。私は出かけると言った。ヘンリと旅立った。南英に於ける民間防衛。チーフ行政区長官たちと行政区エンジニアとの会議。爆風問題。深刻なシェルタ問題。生きている振りをするという問題。墓の上の人形のように、来る夜も来る夜も並んで眠っているヘンリと私。海上の‐ビグウエルの新たに補強されたシェルタの中で、そのチーフ・長官は、私にキスをした。

142

2022年5月8日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

ヘンリは、寡婦年金が、それが十年前と同じ重さに達する、もう一シリング上げられるかどうかについて統計だらけのマロックとの長い議論を始めた。彼らは、生活費について争い、それは、非常に学究的論争だった。彼らは揃って、国は、ともかく、それを値上げする余裕がない、と言った。国家安全省のヘンリのチーフに話し掛けようとしたが、Vis以外のことを話すにしても、何も思い付く筈がなかった。すると私は突然、誰彼となく階下に降りたことや埋もれたモーリスを見付けたことについて、無性に話したくなった。勿論、私は全裸だった、と私は口にしたかった。何故なら私は、服を着る余裕がなかった。サー・ウイリアム・マロックは、振り返るぐらいはしただろうか、或いはヘンリは聞こうとしただろうか?彼は、手持ちの対象以外、何事にも耳を傾けようとしない素晴らしい得意技を持っていて、あの時期の手持ちの対象は、1943年の間の生活費の目録だった。私は、全裸だった、と私は口にしたかったのは、モーリスと私は、夜通し愛を育んでいたから。私はヘンリのチーフを見た。彼はダンスタンと呼ばれた男だった。彼は、崩れた鼻を持ち、彼の殴られた顔は、陶工の間違い―輸出を拒絶された面構えのように見えた。彼は、しようとする何事も、思うに、笑顔で通した。彼は、不機嫌でも無関心でもあるまいとする―彼は人間という者が何かしでかしたことのように、それを受取ろうとする。

141

2022年5月7日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 彼は、福音書の書かれた年代に関して話し、如何に早いものであろうと、クライストゥが生まれて百年以内に書かれてはいない。私はそうしたものが、それ程早いと認めたことはなかった。それにしても、私は、伝説が始まった時、それは、実に重要だということを見ようがなかった。次に彼は私達に、福音書の中で、ガドゥであることを主張したことはない、と話したが、一体、そこにクライストゥのような、そんな男がいたのか、ともかく福音書は、モーリスがやって来るのを待ち、見ることもないこの閉塞感に比べたら、何が重要なのか?銀髪の婦人は、彼の名、リチャードゥ・スマイズとシェダー・ロウドゥの彼の住所が印刷された小さなカードゥを配った。そこには、訪問し、個人的に彼に話す者への招待書きがあった。大半の人がカードゥを受取ろうとせず、婦人が会費を請求したかのように、立ち去り、草の上にそれを捨てる者もいた(私は、幾つか拾う彼女を見た、節約のためだと私は思った)。それは、とても悲しそうだった―悍ましい痣、誰も興味を示さないことについて語ること、そして捨てられたカードゥは、折り返された親睦の申し込みのようだった。私は、私のポキトゥにカードゥを押し込み、そうする私を彼が見るのを望んだ。

 サー・ウイリアム・マロックが、夕食に来た。彼は、ロイドゥ・ジョージの国民保険のアドゥヴァイザの一人で、極めて老練で有力だった。ヘンリは、勿論年金ともはや関わりはなかったが、彼は、その種に関心を持ち続け、当時を思い出したがった。モーリスと私が初めて夕食を共にし、全てが始まった時、彼が働いていたのが、寡婦年金ではなかったか?

140

2022年5月6日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 1944.7月9


 ヘンリと一緒に8.30に間に合った。空席の目立つ一等客室。ヘンリは、イギリス委員会の議事録を声を出して読んだ。パディントンでタクシを捕まえ、ヘンリを省で降ろした。今夜家にいるよう、彼に約束させた。タクシ乗務員は、間違って、私を14番を過ぎた南側に運んだ。ドアは修繕し、正面の窓が板張りしてあった。死を連想するのは怖い。誰でも、とにかく、もう一度生きているという実感が欲しい。私が北側に着くと、そこには、「何も転送しないで。」と、彼らに話した為に、転送されなかった古い手紙があった。古書のカタログ、古い請求書、「緊急、転送請う」と記された手紙があった。私は、それを開けたくなり、だからこそ、仮にも、未だ私は生きているのに、私はそれをカタログと一緒に引き千切った。



1944.7月10


 もしたまたま、共有地で私がモーリスの所へ駆け込んでも、私は私の約束を破ることにはならないと思った。そこで私は、朝食後と、昼食後に又、そしてもう一度夕方にうろうろ歩き回ったが、彼を見ることはなかった。私は、六時以降、ヘンリが夕食に客を招いたから、外にいられなかった。演説家が、六月にいたように、又そこにいた。そして痣のある男は、今尚、クライストゥ教を攻撃していたが、誰も気にしていなかった。喩え単に、誰かの為に約束を守ろうとしなくて良い、と彼が私を納得させられても、奇跡は起こらないということを、貴方は信じない。そして私は行って、しばらくの間、彼に耳を傾けたが、ずうっと折に触れ、モーリスが、目に入るかも知れない、と辺りを見回していた。

139

2022年5月5日木曜日

The End of the Affair/GrahamGreene 成田悦子訳

 私は、膝まづき、ベドゥに頭を乗せ、私が帰依出来たらと願った。親愛なる神よ、と私は言った―何故親愛なる、何故親愛なるか?―私に信仰させる。私は信仰する筈がない。私を作り替えて下さい。私は言った。私は意地悪でペテン師で、私は自らを退けます。私は私自身のことは何も成し得ません。私に信仰させて下さい。私はきつく私の目を閉じ、私の爪を私の手の掌の中に、痛み以外、何も感じられなくなるまで、押し付けた。そして私は言った。。私は信じます。彼を生き返らせて下さい。その時、私は信じます。彼に機会を上げて下さい。彼に彼ならではの幸福を感じさせて下さい。 これをして下されば、私は信じます。が、それだけでは十分ではなかった。信じれば傷付かない。だから私は言った。私は彼を愛していますから、もし貴方が彼を生き返らせて下されば、私は何か致します。私はとてもゆっくりと言った。私は、永遠に彼を諦めます。只、見込みがあれば、彼を生き返らせて下さい。そして私は押し当て、押し当て、やっと皮膚を突き破れた。そして私は言った。人々は、互いを見もしないで愛せるでしょ。彼らは、全生涯を通じて、貴方を見もせずに、貴方を愛します。するとその時、彼が、ドアから入って来た。その上、彼は生きていた。そして私は、今、彼なしで始まることの苦しみを思いながらも、私は、彼が、再びドアの下で無事に死んでくれたらと思った。

138

2022年5月4日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

二人が互いに愛し合った時、彼らは、キスに於ける愛情の欠如を偽装出来ず、彼の手に触れて、そこに残されたその僅かな息遣いがあるかどうか、見極めようとしなかったのか?もしも私が彼の手を取り、それを私の方に引けば、それは、ドアの下から、全て自ずと隔たろうとすると分かっていた。今やっと私は、これが、ヒスティアリアだったと分かる。私は、騙された。彼は、死んでいなかった。ヒスティアリア発症時に、人が取り決めることに、人は責任があるのか?又、どんな取り決めを、人は打ちのめすのか?私は、今、ヒスティアリア気味で、全てをここに洗いざらい書いている。しかしそこには、僕は不幸だ、と誰にでも何処ででも、言ってのけられる一人の人物がいるわけではなく、彼らは私に何故と質問し、その質問が決まって始まり、そして私は必ず行き詰まる。私は行き詰まっている場合じゃない、ヘンリを守らなければならない。オウ、地獄へ、ヘンリと一緒に地獄へ。私は、私という者の真実を受け入れようとする誰かを求め、保護は要らない。もし私が、意地悪で、ペテン師なら、意地悪でペテン師を愛する人は、そこには一人もいない?

 私は、床に膝まづいた。私がそんなことをするなんて、分別を失くしていた。私は、今まで、子供のようにそんなことをしようとしたことさえなかった―私の両親は、私以上に祈りを盲信しなかった。私にはまるで口にすべき思いが、胸になかった。モーリスは死んだ。死滅した。魂のようなそんなものは、そこにはなかった。私が彼に上げた半分の幸福さえ、血のように彼の外に流れ出た。彼は二度と幸せになる機会を得ようとはしない。誰かと一緒に、と私は考えた。誰か他に彼を愛し、彼を私が出来る以上に幸せに出来たら。それなのに、今、彼は、その機会を持とうともしない。私は、膝まづき、ベドゥに頭を乗せ、私が帰依出来たらと願った。

137

2022年5月3日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 私は、何故「親愛なる神」と書くのか?彼とは親しくない―私にとってではなく、彼はそうではない。もし彼が実在するなら、その時には、彼は、私の心の中にこの誓いという考えを入れ込み、だから私は、その所為で彼を遠ざける。数分毎に、灰色の石造りの教会や酒場がその輪郭を崩して後方に駆け抜ける。不毛の地は、教会と酒場が溢れている。それに複合的な店、それに自転車に乗った男達、それに草と牛、そして工場の煙突。貴方は、タンクの水を通して魚のように砂じゅうに、それらを見る。そしてヘンリも、タンクの中で待つ、私のキスの為に彼の鼻を持ち上げながら。

 私たちは、あのサイレンに注意を払いもしなかった。それに関心がなかった。私たちは、そんな風に死ぬことを、恐れなかった。しかしその時は、急襲が次から次へと続いた。それは、普通の急襲ではなかった。新聞は、未だに発言を許されていないのに、誰も彼も知っている。これは、私たちが警告されていなかった新たな事態だった。モーリスは、もしも地階のそこに誰かがいたら、と階下へ見に行った―彼は私を気遣い、私は彼を気遣った。私には、何かが起ころうとしているのが分かった。

 彼は、通りのそこで爆発があった時、二分も経ってはいなかった。彼の部屋は、裏にあり、ドアが巻き込まれて開く以外、何も起こらなかったが、幾らか石膏が落ち、私は、爆弾が落ちた時、彼は建物の前にいた事を知った。私は、階段を下った。そこいら中、がらくたと壊れた手すり子で散らかり、玄関ホールは、凄まじい散乱の最中にあった。初め、モーリスは目に入らなかったが、その後私は、彼の腕がドアの下から外に出ているのを見た。私は彼の腕に触れた。私は、それは死んだ手だったと誓ってもいい。

136

2022年5月2日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

私は自分のをしょっちゅう忘れる。フロイトは言うだろう、それも、ヘンリの番号だから、それを忘れようとするのだ。しかし私はヘンリを愛す。私は、ヘンリに幸せになって欲しい。私は、只今日、彼を避けるだけ、彼は幸せで、私は背を向け、モーリスは背を向ける、つまり彼は物事を知ろうとしない。彼は、私が疲れているようだねとか、それは祟りだと思うよとか言う―彼はもはや、あの頃の伴侶を維持しようとして悩もうともしない。

 今夕はサイレンが鳴った―私は、勿論昨夕のことを言っているが、それは何と関係があるのか?不毛の中、そこにはどんな機会もない。不毛の外に、私が望めば出て行ける。私は明日、帰途の列車を捕まえ、彼に電話でベルを鳴らせる。ヘンリは、おそらく未だ田舎にいるだろうから、私たちは一緒に夜を過ごせる。誓いが全てではない。あの大切な―誓い、私が今まで全く知らなかった誰かへの、私が心底信じてはいない誰かへの。私が誓いを破ったのを、私と彼以外、誰も知らない。―それに彼はいないでしょ?彼はいられない。貴方は、慈悲深い神も、この絶望も持てない。

 もし私が帰ったら、私たちは何処にいるのでしょう?サイレンが鳴る前に、その前の年、私たちが、昨日いた場所。終わりを恐れる互いに対して苛立つといい、そこに何も残っていなかった時、命と共に何をすべきか思い巡らしながら。私はもうこれ以上あれこれ考えなくていい。―そこには恐れるものは何もない。これが終わり。それでも親愛なる神よ、愛に向かうこの欲求を抱え、私はどうしましょう。

135

2022年5月1日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene  成田悦子訳

 昨日、私が彼を待っている間に、共有地のとある場所に演説者が現れた。I.L.P.(独立労働党)と共産党、それに冗談ばかり言う男、又、そこには、クライストゥ教を攻撃している一人の男がいた。南ランダン合理主義者協会、或いはそれに似た何らかの名称。彼は、片頬を覆った痣さえなかったら、美貌だったろうに。彼の聴衆は、ほんの少人数で、ヤジを飛ばす人はいなかった。彼は既に死んだ何ものかを攻撃していたが、何故、彼が面倒を引き受けるのか、私は不可解だった。私は、数分立ち止まり、耳を傾けた。彼は神の論争に対して主張していた。私は実際は分からなかったが、そこには―私が一人きりではないと思う、この臆病な窮乏を除く何かがあった。

 私は、心変わりして、彼は家に戻るよと言う電報を送ったかも知れない、と唐突な不安を抱いた。私が何を最も恐れるのか私には分からない―私の落胆か、或いはモーリスの落胆か。それは、私たち二人同時に、同じ様に動かす。私たちは、口論で荒捜しをする。私は私自身に腹が立つし、彼は私に腹が立つ。私は家に戻ってみたが、そこに電報はなく、その上、モーリスに会うのに、十分遅れ、彼の怒りに触れそうで、イライラが募って行った、ところがその時、予期せぬことに、彼は私に優しかった。

 私たちは、以前、こんなにも長い一日を過ごしたことはなく、一緒にいる為に、そこには丸一晩があった。私たちは、レティスにロウルパンにバタ‐割当量を買った―私たちは、たくさん食べられなかった、それは、もう暑かった。それは今も暑い。誰も彼も口々に言う、何て心惹かれる夏かしら、それに私は、ヘンリと落ち合うために田舎へ向かう汽車の中。やがて全て通り過ぎる、未来永劫。私は怯える。これが不毛だ。そこには、辺り一面、誰もいない、何もない。もし私がランダンに居たら、直ぐに潰されるかも知れない。何れにせよ、もし私がランダンに居たら、電話に向かい、私が愛情で分かる唯一の番号のベルを鳴らそうとする。

134


2022年4月30日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

仮に、時々彼が女を買えば、私は文句を言うの?もし私たちがそこで互いを所有出来なくても、不毛の地にあって、どんなつましい付き合いからも、彼を奪い取りはしない。時に、もし時が来たら、彼は一杯の水さえ拒もうとするに決まっている、と私は思う。彼は、私を、何一つ誰一人傍に寄せず、一人になってしまう、こんな完全な孤立へと追い遣ろうとする。―世捨て人のような、ところが、彼らは一人ではなかったし、又そう彼らは言う。私はそこまで混乱させられる。私たちは、互いに対して何をしようって言うのでしょう?彼が私にしていることを、私は彼に、そっくりそのまま、承知の上でしているから。時には、私たちはとても幸せで、生きている内に、もっと不幸せを思い知るなんてことは、私たちにはなかったわ。それは、まるで私たちが同じ像に関わって、共に働いているかのようだった。互いの居心地の悪さの外側を切り取るばかりで。それにしても私は、そのデザインを知りもしない。


1944・6月17 

 昨日、私は彼と一緒に家に戻り、私たちは何時ものことをした。私は、その荷を下ろす為に神経を用いず、それどころか好んで向かう。何故なら、今書いている間に、時は、既に明日になり、昨日の終わりになることを、私は恐れている。私が書くことを続ける限り、昨日は、今日であり、私たちは未だ一緒にいる。

133

2022年4月29日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

もし私が、彼を安心させられさえしたら、それで私たちは、穏やかで、幸福で、無作法でも不摂生でもなく愛せる。そうして不毛の地は、視野から後退する。命ある内は、多分。

 もし人が神を信じられるとしたら、彼は不毛の地を満たそうとするか?

 私は、何時も良く思われ、褒められたがった。例えば一人の男が、私の方を振り向けば、例えば一人の友だちを失えば、私は酷い危険を感じる。私は夫を手放せもしない。私は全てが、全ての時が、何処も彼処(かしこ)も欲しい。私は、不毛が怖い。神は貴方を愛し、彼らは教会で、神が全てです、と言う。賞賛を必要としないということを信じる人々、彼女たちは男と一緒に眠ることを必要とせず、彼女たちは安心感を得る。しかし、私は信用をでっち上げられない。

 丸一日、モーリスは、私に思いやりを見せた。彼は、私にしょっちゅう他の女をこんなにも愛したことはない、と私に話す。彼は、そう頻繁に口にすることで、彼は、私にそれを信じ込ませようとする。何れにせよ、私が単純にそう信じるのは、丁度同じように、私は彼を愛すから。もし私が彼を愛すのを止めたら、私は、彼の愛情を信じるのを止めようとする。もし私が神を愛したら、私への彼の人の愛を信じようとする。それを必要としても、それでは十分ではない。私たちは、先ず愛さなければならないのに、どうしていいか分からない。それでも、私はそれを必要とする、どれ程、それなしでいられない。

 終日、彼は優しかった。只一度だけ、一人の男の名前が気になり、私は、彼の眼差しがあらぬ方向に動いたのを見た。私が他の男と未だに眠る、と彼は思い、そしてもしそうしたら、それは、それ程重大なことだろうか?

132

2022年4月28日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 それから、僕は初めから帳面に取り掛かった。彼女は、毎日、日記に記入していなかったし、僕は、全ての記載を読もうとは思わなかった。彼女がヘンリと一緒に行く芝居、レスタラントゥ、パーティ―僕が何も知らないその暮らしの全ては、未だに傷付ける力を持っていた。



1944・6月12


 時に、私は彼を愛しているし、永遠に彼を愛す、と彼を納得させようとすると、本当に疲れ果ててしまう。彼は、法廷弁護士のように私の言葉を攻撃し、それを曲解する。もし私たちの恋が終われば、彼の周りを囲むに違いないその不毛を、彼は恐れている、と私には分かる。それなのに、私が丁度同じように感じていても、彼は理解しようとしない。彼が声を出して何を言っても、私は黙って私自身に言い聞かせ、そのことをここに書く。一人では、不毛の地に何も築くことは出来ないのか?時に、私たちが何度も愛を育んだ一日の後、私は、性の終わりに至る、それが可能かどうか危ぶむ。彼も又、訝しく思い、不毛が生じるその地点を恐れている。もしも私たちが互いを見失えば、その不毛の地に居て、何をするのか?一人で、その後どうして生き続けるのか?

 彼は、過去や現在や未来を嫉妬する。彼の愛は、中世の純潔ベルトゥに似ている。彼は、私と一緒にそこにいて、私に包まれている時だけ、彼は何とか安心する。

131

2022年4月27日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 1946・2月12日

 二日前、私はあれ程の平穏と静けさと慈しみの感覚を持った。暮らしは、又幸せの方向に向かっている。しかし昨夜、最上階でモーリスに会うために、階段を上っている夢を見た。私が階段の最上階に着いた時、私たちは愛を育むことにしていたので、私はまだ幸せだった。私が来たと彼に呼び掛けたが、答えたそれは、モーリスの声ではなかった。道に迷った船に警告する霧笛のように、大声で伝え、私を怯えさせたのは、見知らぬ人のそれだった。私は考えた、彼は、彼のフラトゥを貸していなくなってしまった。彼が何処にいるのか、私は知らない。そして又階段を降りようとすると、私の腰より水位が上がり、ホールは、霧でどんよりしていた。その時、私は目覚めた。。私は、もう内心穏やかではなかった。私は只、過ぎた日に何時もそうであったように、彼が欲しい。私は、彼と一緒にサンドゥウイチを食べていたい。私は、バーで彼と一緒に飲んでいたい。私は疲れ、私はもう何の苦しみも欲しくない。私は、モーリスが欲しい。私は、普通の堕落した人間の愛情が欲しい。親愛なる神よ、私は貴方の苦しみを貰いたいのですが、今は、それが欲しくはありません。暫くそれを持ち去って、他の時にそれを与えて下さい。

130

2022年4月26日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 BOOK THREE

・・・何もかも通り過ぎる、そうして私たちは終わってしまった。貴方(神)以外は。私たちのどちらかの所為ね。私は、ひと時、ささやかな恋心を、費やしながら、それを、こちらへ又あちらへと外へ向かって、この男そしてあの上へと手を伸ばしながら、命ある時を夢中で過ごしたのかも知れない。けれども初めての時でさえ、パディントンに程近いホテルで、私たちは、私たちに備わる全てを出し尽くした。貴方(神)が裕福な人に教えるように、私たちに浪費することを教えようとして、貴方(神)は、そこにいた。その結果、或る日、私たちには、この貴方(神)という愛以外、何も残っていなくてもよかったのに。何れにせよ、私には貴方(神)は立派過ぎた。私が苦痛の為に、貴方(神)を頼みにすると、貴方(神)は、私に安らぎを下さった。それを彼にも上げて下さい。彼に私の安らぎを上げて下さい―彼はそれをもっと必要としています。

129

2022年4月25日月曜日

The End of the Affair/ Graham Greene 成田悦子訳

僕はこれを、或る事件の記録として取り扱いたかった―パ―キスの事件の一つ―取り扱われるべきだったが、僕はそれ程の冷静さを持ち合わせていなかった。何故なら、僕が日記を開いた時、僕が気付いたことは、僕が期待していたものではなかったから。嫌悪と疑いと嫉妬は、僕を遥か彼方へ駆り立てて来た。僕は、見知らぬ人からの愛の告白のように、彼女の言葉を読んだ。僕は、彼女に対して、多くの根拠を求めて来た―随分頻繁に、彼女を嘘の中に追い詰めたのではなかったか?―そして今ここに、僕が彼女の声を信じられなかった時、信じることが出来た記述の中に、その完全な答えがあった。それは、最後の二頁にあったから、僕は、先ず読んだ、そして確かめるために、終わりにもう一度読んだ。愛すべき親や神以外、誰かに対して貴方の中に、何もないと分かっている時、貴方が愛されるということを発見することも、信じることも、それは、不思議なことです。

128

2022年4月24日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「それは、全て人間の本質で、サー、人間の愛情ですよね。それに広くも、高級でもないその部屋。パ―キス婦人は、あの頃存命中でしたが、私は、彼女に詳細を話すのは、気乗りしなかったんです。彼女は、事によったら邪魔になりました。」

 「僕は必ず記念品を大事にしますよ。」 

 「もしも灰‐皿が話せたら、サー。」

 「本当に、そうだね。」

 何れにせよ感銘深い思いを持ったパーキスでさえ、すっかり言葉尽きた。その手の最期の圧迫、少々べとべとした(おそらくそれは、ランスの手に触れて来たから)、そして彼は行ってしまった。彼は、誰かが又会いたくなる、そういう人の一人ではなかった。やっと僕は、サラーの日記を開いた。僕は、全てが終わった1944六月のその日を探そう、と先ず思った。そして僕はその理由を見付けた後で、そこには、他の日付がたくさんあるから、僕は僕の日記とそれらを見比べながら、正確にそこから学べたらいい、どのように、彼女の愛は尽きたのか。 

127

2022年4月23日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「それにしても、貴方が本当に記念品を憤慨しないのであれば、サー・・・」

 「勿論僕はそうしない、パ―キス。」

 「私は、ここに或る物を持っています、サー、それには、関心と有用性があるのかも知れません。」薄用紙に包まれた物を、彼はポキトゥから取り出し、それを僕の方へと、気遣いながら机を横切って滑らせた。僕は、それを開いた。それは、ホテル・メトゥロポウル、ブライトゥリングスィー、と記された安価な灰‐皿だった。「そこには実際、それに纏(まつ)わる或る由来があります、サー。貴方はボルトン事件を覚えていますね。」

 「僕は覚えていると迄は、言えない。」

 「それは大騒ぎになりました、サー、その当時。レイディ・ボルトン、彼女のメイドゥとその愛人、サー。皆、同時に見つかりました。その灰皿は、ベドゥの傍らに位置していました。レイディの脇腹の上に。」

 「貴方は、実に小さな博物館を集めなければならなかった。」

 「私はそれをサヴィジ氏に上げようとしました―彼は殊更に、関心を持ちました―しかし私は今、晴れ晴れとしています、サー、私はそうしなかった。私は、貴方が署名を見つけるだろうと思います。貴方の友人が、彼らの煙草を消す時、噂話を思い出すでしょうが、そこに貴方の解答の一塊があります―ボルトン・ケイス。彼らは皆それについてもっと聞きたいでしょう。

 「それは、人騒がせな感じだ。」

126


2022年4月22日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 僕は、パ―キスの結末を見たいということは、かなり自覚していたし、彼の言葉は、僕の罪悪感を目覚めさせた。僕はその男を急いで立ち去らせることが出来なかった。彼は言った。「私は考えていました、サー、私は貴方にささやかな記念品を差し上げるつもりです―しかし、それは正(まさ)しく、貴方が受け取りたくないものです。」欲しがられるとしたら、どんなに不思議だろう。それは自動的に確かな忠誠を喚起する。そこで僕はパ―キスに嘘を吐いた。「僕は何時も僕たちの会話を満喫しました。」

 「何れにしても、サー、大変不運な中での始まりでした。あの馬鹿げた間違いもあり。」

 「貴方は、もう貴方の若者に話しましたか?」

 「はい、サー、が只、何日かして、紙屑籠での成功の後に。それが、棘を取り去りました。」

 僕は帳面を見下ろして、読んだ。「とても幸せ。Mが明日戻る。」僕は、一瞬。Mが誰か思い巡らした。誰かが愛された、と思うと、どんなにか妙でもあり、不慣れでもあった。誰かの存在は、一度は、他の誰かの一日に、幸福と単調の間の相違を作ろうとする力を持ってはいた。

125

2022年4月21日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「私は、貴方が満足されたらと願っています、サー。」

 「実に満足。」

 「それでそのことを、貴方はサヴィジ氏にその通りに書くでしょう、サー。彼は依頼者から酷い報告書を受取りますが、良いものは、なかなか書いて頂けません。依頼者は、満足すればするほど、彼は忘れ、私たちを直ぐにでも心の外に追い遣ろうとします。貴方は、彼らを先ず咎めようがない。」

 「僕は、書くつもりです。」

 「ええ、ありがとうございます、サー、若い者に優しくして頂きました。彼は、少しばかり取り乱しましたが、私にはそれがどうしてか分かります―ランスのような若造に対して、アイスに限度を設けるのは難しい。彼は、苦労して貴方からそういうものを頂いている、と一言、言いました。」僕は無性に読みたかったが、パ―キスは手間取った。おそらく彼は、彼を覚えていようとする僕を、実際は信用していなかったし、僕の記憶に、そのしょげた眼差しや、あのけちな口髭を印象付けたかった。「私は、私たちの付き合いを満喫致しました、サー―もし、嘆かわしい次第にも拘らず、楽しみにしていたことを話させて頂けるなら。私たちは必ずしも、彼らが称号を持つ場合でさえ、真の紳士の為に働くとは限りません。

124

2022年4月20日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

「そこに人間の本質が潜んでいます、サー、貴方が日記を取って置くのは、貴方が、物事を思い出したいから。そうでなければ、何故それを取って置きます?」

 「貴方はこれを見たの?」僕は尋ねた。

 「私はその本質を確かめました、サー、それで、一つの記載から、彼女は慎重なタイプではない、と判断しました。」

 「それは今年のものではないね。」僕は言った。「それは、二年も前のものです。」一瞬、彼は落胆させられた。

 「それは僕の目的に適いますよ。」僕は言った。

 「それは都合良く妙技をするに決まっています、サ―,もし何一つ償われなかったら。」

 その日誌は、大判の会計簿に記載され、くだけた肉太の筆跡が、赤と青の線で横線を引いてあった。そこに日記の記載はなかったので、僕はパ―キスを安心させられた―「それは、何年もに亘っています。」

 「何かが読むために、彼女にそれを外に持ち出させなければならなかった、と私は推測します。」それは可能か、僕はあれこれ思い巡らした。僕に関する、僕の出来事に関する或る記憶が、この当日、彼女の心を横切り、その何事かが、彼女の平和を乱したのかも知れない。僕はパ―キスに言った。「僕はこれを手に出来て嬉しい、実に嬉しい。貴方には分かるでしょう、僕たちは、今やっと、僕たちの勘定を締められる、と僕は心底思う。」

123

2022年4月19日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 Ⅷ

パ―キスは言った。「それはもう実に簡単でした、サー。そこにはこんな混乱がありました。マイルズ婦人は、私が省出身の彼の友人の一人だと思い、マイルズ氏は、私が彼女の友人の一人だと思いました。」

 「それは素晴らしいカクテイル・パーティでしたか?」あの最初の出会いと、知らない人と一緒のサラーの観察を再び思い出しながら、僕は尋ねた。

 「高い成果と、私は言うべきでしょう、サー、それにしてもマイルズ婦人は、少し場違いなように思われました。酷くしつこい咳を、彼女はしていました。」僕は、満足して彼の話を聞いた。多分、このパーティでは、小部屋のキスも又触れることもなかった。彼は茶色い紙包みを僕の机にのせ、自信を持って言った。「私はメイドゥ経由で、彼女の部屋への道を知りました。もし誰かが私に気付いたら、私はトイリトゥを探していたことにしようとしたのですが、誰一人気付かなかった。そこにそれが、彼女の机の上に出してありました。彼女はその日、その上で作業をしなければならなかったのです。勿論、彼女は非常に慎重であるかも知れません。しかし私の日記の経験では、そうした物は、決まって物事をばらすのです。人々はそのささやかな符号を考案しますが、貴方は直ぐにそれらを見破ります、サー。又それは物事を省きますが、貴方は何を省いたかを直ぐに学びます。」彼が話している間に、僕は帳面を出して、それを広げた。

122

2022年4月18日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 再び彼は拒絶された愛人のように、欲求不満の柔軟さの素振りを見せた。如何に数知れぬ臨終の‐床から彼は締め出されて来たか、僕は突然ぞっとした。僕も又、彼に何らかの希望のメシジを捧げたい、と思うに至った、が、その時だ、頬の向きが変わり、僕は単に尊大な演技者の表情を見たに過ぎない。彼が不憫で、不適格で、時代遅れに成り果てた時、僕は好ましく思った。アイア、ラスル―彼らは今日流行(はやり)ではあるが、僕は彼の書庫そこに多くの論理的実証主義者がいたかどうかどうか疑った。彼は単に十字軍戦士に肖っただけで独立したものではない。

 玄関先で、―僕は彼が危うい専門用語グドゥ‐バイを遣わなかったということに気付いた―僕は迷わず彼の美しい頬を一突きした。「貴方は僕の友人、マイルズ婦人に会うべきだ。彼女は興味深い・・・」そこで僕は止めた。その一突きは、まともにあたった。痣がより濃い赤に染まったようで、僕は、彼が不意に顔を背けると同時に、ミス・スマイズが「オウ、私の愛しい人が。」と言ったのを聞いた。そこには、僕が彼に痛みを与えたことに疑いの余地はなく、とはいうものの痛みは彼同様僕にもあった。僕の一突きが、外れていたらとどれだけ思ったことか。

 外の排水路で、パ―キスの若者は気分が悪くなった。僕は彼を吐かせた。訳も分からずそこに立ったまま、彼も又、彼女に夢中だったのか?これに対する結末は、そこにはないのか?僕は今、Yを発見することに苛立ったのか?

121

2022年4月17日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

将来の埋め合わせ、報奨、処罰も何にもない。」片方の頬が隠れると、彼の顔には狂った気品が加わった。

「それから僕たちは天国のようなこの世を作り始めます。」

 「そこには最初に説明されるべき恐ろしい運命があります。」と僕は言った。

 「僕は貴方に僕の蔵書を見せてもいいのですが?」

 「それは、南ランダンで最高の合理主義者の蔵書です。」ミス・スマイズは説明した。

 「僕は改宗する必要はありません、スマイズさん。僕はそれがあるからといって、何一つ信じません。今も今後も例外なく。」

 「それは、今も今後もずっと、僕たちは対処しなければならない。」

 「奇妙なことは、それらが希望の時になるということです。」

 「誇りは、希望のふりをすることができる。又、自己本位も。」

 「それには、何かに付け、それを用いて何か果たすべきことがある、と僕は思わない。それは突然降りかかる、分けもなく、或る匂いが・・・」

 「アー。」スマイズは言った。「花の構造、ディザインからの論拠、時計屋を必要とする時計に関するあらゆるその仕事。それは、古風だ。シュヴアイゲンは、二十五年前全てを答えた。僕に貴方を案内させてください・・・」

 「今日は駄目。僕は、本当に、あの子を家に連れて帰らなければいけない。」

120

2022年4月16日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「貴方には孫がいるんですか?」

 彼は憂鬱そうに言った。「僕には子供はいません。僕は、子供のいる貴方が羨ましい。それは。重い義務と重い責任がある。」

 「貴方は彼に何を聞きたかったんですか?」

 「僕は彼にここでくつろいで欲しかった。その後戻ってもかまわないから。そこにある非常に多くのことを、子供に話したい人がいます。世界は、どのように存在に至ったのか。僕は、彼に死について話したかった。僕は、学校で彼らが入れ込む嘘の全てから、彼を救い出したかった。」

 「三十分でしてしまうには、かなり多い。」

 「誰でも一粒の種を撒けます。」

 僕は、悪意を持って言った。「それは福音書の引用ですね。」

 「オウ、僕も又堕落してしまった。貴方はそんなことを僕にどうしても言わなければならないことではない。」

 「人々は、実際、貴方の所に来るんですか―閑静に便乗して?」

 「貴方は驚くでしょ。」ミス・スマイズは言った。 「人々は希望のメシジを待ち焦がれています。」

 「希望?」スマイズは言った。「喩え、この世の誰もが、僕たちがここにあるもの以外、他に何一つないと気付いても、そこにあるに違いないどんな希望も、貴方には見えないのですか?」

119

2022年4月15日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

一瞬、僕は彼女から解放された。若者が言った。「僕は吐き気がする。僕はもう一杯オリンジエイドゥを飲んでもいい。」

 ミス・スマイズは言った。「いい子だから、飲まない方がいいと思うわ。」

 「本当に、僕は彼を連れて行かなければなりません。その方がきっと貴方がたのためになるでしょう。」

僕は痣が十分に視界に留まるようにした。僕は言った。「僕は、大変申し訳なく思います。もし僕が何かに付け、貴方がたに嫌な思いをさせたのなら。それは全く不測の事態で。僕は、たまたま貴方がたの信仰を共有しません。」

 彼は驚いて僕を見た。「ですが、僕は何も持ちません。僕は何ものも信じません。」

 「僕は、貴方が不服なのではと思い・・・」

 「僕は、居残って計略に嵌るのは嫌です。僕を放免して下さい。僕は余りにも懸け離れてしまっている、ブリジスさん、僕は分かります、しかし僕は、時々心配になります。というのは、人々は典型的な言葉によってでさえ思い出すのではないかと―例えばグドゥ‐バイ。例えば僕の孫は、神のような言葉が、スワヒリの言葉よりもっと僕たちには、重要であると、知ろうとさえしなということを信じられたら。」

 「貴方には孫がいるんですか?」

118

2022年4月14日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「もし貴方が望むのでしたら、帰っていいんです、当然。しかし若者をここに残して頂けませんか?―30分だけなら?僕は彼に話したい。」彼はパ―キスの助手に見覚えがあり、彼に詰問するつもりだということが僕の身に振りかかった。

僕は言った。「何か貴方が彼に尋ねたいことがあれば、貴方は僕に尋ねていいんですよ。」どんな時も、彼は僕の方へ、彼の痣のない頬を向けた。僕の怒りは、込み上げた。どんな時も、僕はそれが消えた醜い黄色い頬を見た。僕は信じられなかった。―紅茶を入れるミス・スマイズと一緒の、花柄のクレトン更紗の間のここで、性欲が存在するということが信じられない以上に。しかし落胆は、何時も答えを生み出し、落胆は今僕に尋ねた。それは愛で欲望ではない、と貴方はそんなにも評価したいか?

 「貴方と僕は、年を取り過ぎた。」彼は言った。「それでも、校長や聖職者―彼らは、丁度、自らの嘘で彼らを堕落させ始めたばかりだった。」

「貴方が意味する地獄とは何か、僕には分からない。」僕は言って、急いで付け加えた。「すみません。」スマイズに向かって。

 「そこに貴方はいるし、貴方は見ている。」彼は言った。「地獄、そしてもし僕が貴方を怒ったら,同じように、貴方はマイ・ガドゥと言おうともしない。」

 僕は彼に衝撃を与えたような気がした。彼は非国教徒牧師かも知れなかった。彼は日曜日の度に働く、とミス・スマイズは言った。それにしても、サラーの恋人であるような、そんな一人の男を如何にこっ酷く傷付けよう。突如としてそれは、彼女の重要性を削いだ。彼女の愛の出来事は、悪ふざけになった、彼女は彼女自身、僕の次のディナ・パーティで、コミクの逸話として使われるかも知れない。

117

2022年4月13日水曜日

The End of the Affair/ Graham Greene 成田悦子訳

そして僕は彼の頬の剝き出しの痣をまじまじと見ながら考えた、そこには何処にも、無傷なところはなかった。一つの盛り上がり、一つの不具で、それらは皆、恋を始めさせる引き金を持っている。

 「貴方の来訪の本当の目的は何ですか?」彼は突然僕の思いの中に押し入った。

 「僕は、ミス・スマイズに話しました―ウィルスンという方を・・・」

 「僕は貴方の顔を覚えていませんが、貴方の息子さんのは覚えています。」まるで彼が若者の手に触れたかったかのように、彼はつっけんどんな欲求不満の素振りを見せた。彼の眼差しは、或る種、型に嵌らない優しさを湛えていた。彼は言った。「貴方は、僕を恐れることなどない。僕はここに人々が訪れることには慣れています。僕は貴方に保証します、僕は只、役に立ちたいだけ。」

 ミス・スマイズは、説明した。「何方でもよく後退(あとじさ)りなさいます。」僕の人生では、それは、何事に関しても、全てだったと思えなかった。

 「僕は丁度ウィルスンという人を捜していました。」

 「そんな男は其処にはいないと僕が知っているのを、貴方はご存知です。」

 「もし貴方が電話帳を貸して下されば、僕は彼の住所を調べられるのですが・・・」

 「もう一度、腰掛けて。」彼は言い、陰気げに若者のことをじっと考え込んだ。

 「僕は、お暇(いとま)しなければなりません。アーサの具合も良くなり、それにウィルスン・・・」彼の曖昧さは、僕を容易く意地悪にした。

116

2022年4月12日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

それからラムプの灯かりの中に歩み寄った。彼の左頬を覆った重症の青黒い痣(あざ)は、凡そ非凡の焼き印と見紛(みまが)うばかりだった。―僕は彼に敵意を持って来たものの、彼は、どんな鏡で自分を見たところで、露ほども慢心する筈がない。

 ミス・スマイズは言った。「私の兄弟は、リチャドゥ。ブリジス氏。ブリジスさんのお子さんの具合が良くないの。私がこの人たちに、入るようお願いしたの。」

 若者を見やりながら、彼は握手した。僕は彼の手の渇きと熱に気が行った。彼は言った。「僕は、以前貴方のとこの若者を見掛けました。」

 「共有地で?」

 「おそらく。」

 彼は部屋のわりに、余りにも力強かった。クレトン更紗とは、釣り合いがとれない。彼の妹が、ここに座るのか、それにしても彼らは、他の部屋で…或いは、彼らが愛を育む間、彼女を使いに出すのか? 

 ところで、僕はその男を見ていた。そこには留まりたいものは微塵もなかった。何故なら―今、彼の出現によって放免された様々な疑問の全てを除いたから―何処で彼らは出会ったのか?彼女が初め主導したのか?彼女は彼の中に何を見たのか?如何に長く、如何に頻繁に、あの二人は愛人関係にあったのか?そこには、僕が魂によって身に付けた彼女が書いた言葉があった。「貴方に書く或いは貴方に話す必要が何もなくなった。・・・私は恋し始めているだけ、と知っています。それにもかかわらずもう、私は、貴方を除いた全ての物と人を捨てたい。」

115

2022年4月11日月曜日

the End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「いえ。」彼女は言った。「リチャドゥ。お子さんの具合は、どうです?」

 「最悪。」パーキスの養子は言った。

 「私たちは彼の体温を測った方がいい、と貴方は思います?」

 「僕にもう一杯オリンジ‐スクワシュを頂けますか?」

 「それは何んともなきゃ、いいのよ。」ミス・スマイズは、途惑った。「可愛そうなお子さん、。多分、彼は、熱があるのね。」

 「僕たちは、十分貴女の邪魔をして来ました。」

 「私の兄弟は、もし貴方がたに居て頂けなければ、私を許しはしません。彼は、とても子供が好きなんです。」

 「貴女の兄弟は、中にいらっしゃいますか?」

 「私は彼が今来るか来るかと期待しています。」

 「仕事から帰宅を?」

 「そうですねえ、彼の働いている日は、正直申しまして日曜日です。」

 「牧師?」僕は敵意を隠し持って尋ねると、途惑っている答え「正確には違います。」を受取った。懸念の様相が、僕たちの間に、カートゥンのように降りて来て、彼女の個人的な悩みと共に、彼女はその背後に退いた。彼女が立ち上がると同時に、玄関ホール・ドアが開き、そこにXはいた。ホールの暗がりの中、ハンサムな俳優の顔を持つ男という印象を得た―しょっちゅう鏡の中でそれそのものを見ているという顔も又、低俗の趣、すると僕は、悲しく、満足とは無縁で、あの女はもっといい好みをしていたらなあ、と思った。

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2022年4月10日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「彼の名前は、アーサですか?」

 「アーサ・ジェイムス。」僕は言った。

 「それはかなり古典的な名前ですね。」

 「僕たちは古風な家族です。彼の母親は、テニスンが好きでした。」

 「その方が、ですか・・・?」

 「はい、僕が言うと、彼女は憐れみを持って、その子供を見た。

 「彼は、貴方には慰めでしょうね。」

 「それに心配の種。」僕は言った。僕は羞恥心を感じ始めた。彼女はそんなに疑わなかった。それで、僕はここでどんな良いことをしていたのか?僕はXに会うことに、少しも近付けなかった。ベドゥの上の男に、顔を提供することの代償として、少しでも幸せになるつもりか?僕は僕の戦術を修正した。僕は言った。「僕は、自分のことを紹介した方がいいようです。「僕の名前は、ブリジスです。」

 「そうしますと、私の方は、スマイズです。」

 「僕は、前に何処かで貴女に会ったような気がしてなりません。」

 「私は、そう思いません。私は、顔のことは大変よく覚えています。」 

 「多分僕は、貴女を共有地で見掛けたことがあります。」

 「私は私の兄弟と一緒に、時々そこへ行きます。」

 「見込み違いでなければ、ジョン・スマイズですか?」 

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2022年4月9日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「彼を中に来させて、座らせて上げなさい。」ミス・スマイズは言った。

 「それは大変ご親切なことで。」

 サラーは、どれだけ頻繁に、このドアを通って、狭く散らかったホールへと消えたのだろう、と嘆かわしく思った。ここ、Xの家の中に僕はいた。多分、フックの茶色いソフトゥ帽は、彼のものだ。僕の後釜の指―サラーに触れ―今開けたこのドアの取手を毎日回した指。雪で鉛色の午後を通して燃えているガスーストウヴの黄色い炎に、ピンクの傘の付いたラムプに、クレトン更紗の緩めのカヴァの屑綿に。「私は、貴方の可愛らしい少年に、水の一杯でも取って来てもいいのですが?」

 「それは大変ご親切なことで。」僕はさっきそう言ったのを思い出した。

 「それともオリンジ‐スクワシュなんかは。」

 「君は悩まなくていいから。」

 「オリンジ‐スクワシュ」若者は、断然言った。又間を置いて「どうか」、彼女がドアを通って行く時。とうとう僕たちだけになり、彼を見た。彼は、クレトン更紗の上で、背中を曲げながら実に具合が悪そうに装った。もし彼が僕にウインクをしなかったら、僕は、多分、かどうか不可解に思った・・・ミス・スマイズがオリンジ‐スクワシュを運んで、戻って来た。そこで僕は言った。「ありがとうと言いなさい、アーサ。」

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2022年4月8日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

それから僕たちは父と息子のように手に手を取って、共有地を横切り、シダ―・ロウドゥへ向かった。サラーと僕には、どちらにも子供がいない。強い欲望や嫉妬やパーキスの報告書といった、こそこそした職業の中より、結婚することや、子供を持つことや、甘ったるく退屈な平和の内に、共に静かに暮らすことの中、そこにはもっと生(せい)の感覚が在ったのではないだろうか?

 僕はシダ―・ロウドゥの最上階でベルを鳴らした。僕は若者に言った。「覚えて置くんだよ。君は具合が悪い。」

 「もしその人達が、僕にアイスをくれたら・・・」彼は始めた。パ―キスは、予め備えるよう訓練して来た。

 「その人たちは、くれないに決まってる。」

 僕は、ドアを開けたのは、ミス・スマイズだと思った。―チャラティ・バザーの灰色でくたびれた髪の中年婦人。僕は言った。「ウィルソン氏は、ここに住んでいらっしゃいますか?」

 「いえ、御免なさい。」

 「仮に、彼が下のフラトにいても、たまたま貴方がご存じないのでは?」

 「この家に、ウィルソンという名の者はいません。」

 「オゥ親切な方。」僕は言った。「私は、はるばる若者を連れて参りましたが、今しがた、彼は具合が悪くなりました・・・」

 僕は若者を見ないようにしたが、通路からミス・スマイズは、彼をじっと見ていた。彼は静かに、効果的に彼の役割を果たした。サヴィジ氏は彼のチームのメムバとして、彼を認めることを自慢しただろう。

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2022年4月7日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「それは、ガラハドだよ。ランスロトゥは、グイネヴェレとベドゥの中で見付けられた。」何故僕たちは、無知をからかいたがる悪癖を隠し持つのか?つまり妬(ねた)みなのか?パーキスさんは、悲し気に言った。彼を裏切ったかのように、彼の若い者を横目で見ながら、「僕は 聞いたことがなくて。」



翌日―彼の養父に意地悪をしたくなって―僕たちがシダー・ロウドゥに出かける前に、僕は、ハイ・ストゥリートゥで若者にアイスを御馳走した。ヘンリ・マイルズはカクテイル・パーティを開いている―そうパ―キスさんは、報告して来たので、リスクは避けられた。彼の衣服を真っ直ぐにグイっと引っ張ってから、彼は若者を僕に預けた。若者は、顧客と一緒の彼の初舞台のお目見えという光栄に則(のっと)った彼の一張羅でめかし込んでいた。それなのに僕は、僕の最もみすぼらしいのを身に着けていた。苺アイスが少々、彼のスプーンから零(こぼ)れ、彼のスーツにしみを作った。僕は、最後の一滴が飲み干されるまで、黙って座っていた。間を入れず僕は言った。「もう一杯?」彼は頷(うなず)いた。「又、苺?」

 彼は言った。「ヴァニラを。」かなり経ってから付け加えた。「どうか。」

 彼は二杯目のアイスを随分ゆっくりと、指紋を除去するかのように、念入りにスプーンを舐めながら食べた。

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2022年4月6日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「僕は貴方と同感です、サー。それは僕だって避けて通ることです。その時が迫れば、僕は若い者にも、それを避けるようにして貰います。」彼の悲しげな眼差しは、彼の若い者が見せるあらゆる動きを追った。「彼はアイスを欲しがったのです、サー、僕は駄目だと言いました、こんな天気でなければな。」すると彼は、アイスへの思いが彼を凍らせたかのように少し震えた。瞬間、彼が「専門家というものは、その尊厳を身に着けていらっしゃいます、サー。」と彼が言った時、彼の意味するところが,僕には何だか分からなかった。 

 僕は言った。「貴方の若者を、僕に貸してくれますか?」

 「もし貴方が、その場で、不愉快になることはない、と僕に保証して下さるのなら。」彼は不安そうに言った。 

 「僕はマイルズ婦人がそこにいる時は、立ち寄りたくないんです。この場面では、万人に通じる資格を手に入れるだろう。」

 「しかし、何故若い者を?」

 「僕は、彼が具合が悪いようで、と言うつもりです。僕たちは間違った住所に来てしまいました。彼らは暫く彼を休ませざるを得ないでしょう。」

 「そういうことなら、この若い者の能力の範疇です。」パ―キスさんは自信ありげに言った。「それに誰もランスに抵抗できません。」

 「彼はランスと呼ばれてるんだね?」

 「サー・ランスロットゥに肖(あやか)りまして、サー。Of the Round Table(円卓の)。」

 「驚いたね。確か、あれは、かなり不愉快なエピソウドゥだった。」

 「彼は、聖杯を見つけました。」パーキスさんは言った。

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2022年4月5日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「僕はベルを鳴らして、直接歩いて中に入り、傷付いた夫のように彼を慰めましょうか?」僕はパーキスさんに尋ねた(彼は、約束してA.B.C.で僕に会っていた―それは彼が彼と行動を共にする若者を使っているという彼独特の暗示で、彼をバーに連れて入ることは出来なかった。)

「僕はそれに反対です、サー。」パーキスさんは、彼のティーにスプーン三杯の砂糖を加えながら言った。彼の若者は、聞こえないテイブルに、オリンジエイドゥとロウルパンと一緒に座った。彼は、入って来た誰も彼も観察した。彼らは、彼らの帽子やコウトゥから、その薄い湿り気の多い雪を振り落した。まるで彼は後で報告書を作ることにしているかのように、その抜け目のない、茶色のビードゥのような目をして、凝視した―おそらく彼はパーキスの訓練の断片を、持ち合わせていた。「御存知でしょう、サー。」「パーキスさんは言った。「貴方が快く証拠を提供しなければ、法廷内で事を複雑にします。」

 「それが、法廷に届くことはない。」

 「平和的な決着を?」

 「興味の欠如。」僕は言った。「誰も、スマイズという名の男のことで、まともに騒ぎ立てたりする筈がない。僕は何とか彼に会いたいんだ。以上。」

 「最も安全な方法は、サー、計量器検査人ですよ。」

 「僕が、ひさし付きの帽子で仮装する筈がない。」

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2022年4月4日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

やっとそこに恋の最期があるように、憎しみの最期がある。六か月後、僕は一日一杯サラーのことを思わず、そしてそれで僕は幸せだと悟った。それでも、完全に憎悪の最期は、訪れようがなかった。何故なら、一度、出来れば絵葉書を買い、歓喜に満ちたメシジをその上に書きたくなって、文房具店に僕は入ったから―誰に分かる?―時々刻々の痛み、ところが、その時までに僕は彼女の住所を書いてしまっていた。僕は傷付けたいという渇望を見失い、道路に葉書を落とした。それは不思議だった、憎しみはヘンリとのその邂逅で、再び息を吹き返そうとしていた。僕はパーキスさんの次のリポートゥを開くに連れ、愛情も又それだけでそんな風に息を吹き返せるものかどうか、思いあぐねたのをおぼえている。

 パーキスさんは、彼の仕事を首尾よく終えたー粉は効き、フラトゥは突き止められた―シダ―・ロウドゥ16の最上フラトゥ。占有者、ミス・スマイズと兄弟リチャードゥ。ミス・スマイズは、ヘンリが夫であると同程度に、姉妹として便利だったかどうか、僕は不可解に思った。そして僕の隠れた俗物根性は、その名前によって呼び覚まされた―そのy、末尾のe。僕は シダー・ロウドゥの中で、彼女はスマイズと同じくらい卑しいものになったのか?彼は、この二年で、愛人の長い鎖の端っこになったのか、或いは、僕が彼を見た時(そしてパーキスさんの報告書の中でという程、曖昧にではなく、僕は、彼を見ることを決定付けられていた)、1944六月に、誰かの所為で、彼女は僕を捨てたのに、僕はその男を見ようとしているのか?

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2022年4月3日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 終に、万事に付け最悪の結末となった。想像することやイミジを心に描くことは僕の専門だ。一日中五十回、それに差し当たり僕は夜の間起きていた。カートゥンは上がったままで、その演目は始まるのだった。何時も同じ演目、恋するサラー、Xと一緒のサラー、僕たちが揃ってして来たのと同じことをしている、彼女自身の特別な遣り方でキスをするサラー、セクスの中で彼女自身を弓形に曲げ、苦痛に似たその呻き声を発しながら、自暴自棄のサラー。僕は直ぐに眠れるように、夜にピルを飲むことにしている。しかし、昼間迄僕を眠らせてくれるピルが、僕にはどうしても見つからない。自動装置だけが、日中の気晴らしだった。静寂と轟の間の数秒間、僕の心は、サラーから解放された。三週間が過ぎ、イミジは、初めと同様に、明瞭で常習的で、そこでは、彼らはずっと終わる気が全くないように見えた。そうして僕は、自殺について、実に真剣に考え始めた。そこで僕は、殆ど希望の感覚と言っても良いものと一緒に、僕の睡眠薬を取って置いた。僕は結局、このように無期限に続ける必要はない。僕は自分自身に語りかけた。それからその日付が迫り、その芝居はどんどん進行し、僕は自分自身を殺さなかった。臆病からではなかった。僕を止めたのは、一つの記憶だった―V₁が落下した後、部屋に入った時、サラーの顔に浮かび上がった落胆の様相の記憶。彼女は本当に、僕の死を期待していなかったのか、Xとの彼女の新しい出来事は、彼女は初歩的な良心の類を持ち合わせていなかったために、彼女の良心を少しも傷付けていない。もし今僕自身を殺したら、彼女は全く僕のことで気に病むこともありはすまい。そして確かに、共に過ごした僕たちの四年後、そこには、Xと一緒であっても、気苦労の瞬間はあるに違いない。

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2022年4月2日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

その後何日も、当然、僕に希望はなかった。それは単に偶然の一致に過ぎなかった、と僕は思った、電話は応じられなかったし、一週間後、僕がメイドゥに会って、マイルズ夫妻について尋ねると、彼女は田舎で不在だと分かり、僕は戦時中書簡は失われるもの、と自分に言い聞かせた。毎朝毎朝、僕はポウストゥ‐ボクスのがたがたいう音に耳を澄ましながら、意識的に女主人が僕の郵便物を取りに行くまで、僕は二階にじっとしていようとした。僕は手紙に目を通さず、落胆が後回しになるようにして、望みはできる限り息づかせて置いた。僕は順番にそれぞれの手紙を読むことにして、僕が積み重ねの底に達した時、やっとそこにサラーからのものはない、と僕は確信できた。それから四時の郵便まで、生活は色を失い、そしてその後は、再び夜通し電話で連絡することにした。

 およそ一週間、僕は彼女宛に書かなかった。プライドゥが僕を引き留めていた。僕はそれを完全に捨てた。不安の内に書きつつ、苦々しく、北側へ向けた宛先を書いた封筒に、「緊急」と「どうか転送を」と印を付けつつ、終に或る朝、僕はそれを完全に捨てた。僕は返事を貰わず、そこで同時に、僕は希望を放棄した。やがて彼女が何を言ったか、こと細かに思い出した。「人々は、生涯彼の人にまみえることもなく、神を慈しみ続けるでしょ?」僕は嫌気が差して思った。彼女は、常にその自らの鏡に申し分なく姿を映そうとする。彼女は彼女自身に、それを高潔に思わせるために、信仰を捨て去ることと混同する。彼女は、今、彼女がXと寝たいと認めようとしない。

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2022年4月1日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「爆弾は、二つも一か所に落ちない。」僕は言った。しかし機械的に、それはしばしば誤りを立証して来た迷信の一つだったから。

 「貴方は怪我をしているのね。」

 「僕は、歯を二本失くした、それだけ。」

 「こっちに来て。貴方の顔を私が洗ってあげるわ。」彼女は、僕がもう一つのの異議を行う間もなく、―手当てを終えた。僕が嘗て知り合った女は、同じように速く手当てができない、彼女は僕の顔をゆっくりと注意深く洗った。

 「貴女は床の上で何をしていたの?」僕は尋ねた。

 「祈っていたの。」

 「誰のことを?」

 「生きとし生けるもの全てのことを。」

 「階下に降りた方が、もっと気が利いていたよ。」

彼女の真剣さは、僕を驚かせた。僕は彼女をそのことから離れてからかいたくなった。

 「私はそうしたのよ。」彼女が言った。

 「僕は貴方に聞いていなかったよ。」

 「そこには誰もいなかった。ドアの下から伸びている貴方の腕を見るまで、私には貴方が見えなかった。私は貴方が死んだと思った。」

 「貴女は近付いて、試してみたってよかった。」

 「私はそうした。私はドアを持ち上げられなかった。」

 「あそこには僕を動かすくらいの隙間があった。そのドアは僕を押さえ付けていなかった。僕はどうにかこうにか起きようとした。」

 「私には分からない。私は貴方は死んだものと確信した。」 

 「だったら、そこで随分祈ったんだろうね?」僕は彼女をからかった。

 「奇跡をそっちのけにして。」

 「貴方にはもう望みがなければ」彼女は言った、「貴女は奇跡のために祈れる。そういうことは起きるでしょ?亡くなった人に。そして僕は亡くなった人だった。」

 「警報解除までいなさい。」彼女はその頭を振り、歩いてさっさと部屋から出た。僕は階段を彼女に付いて降り、僕の意志とは逆に困らせ始めた。「今日の午後、貴女にお目にかかれます?」

 「いいえ、だめです。」

 「明日の何時か・・・」

 「ヘンリが帰っているの。」

 「ヘンリ。ヘンリ。ヘンリ―その名は、僕たちの関係が続く限り、鐘を鳴らす。愛が死に絶え、愛着や習慣は日常の努力の末に得るというその無念さと共に、幸福とか楽しみとか、陽気とかのムードゥを悉(ことごと)く削ぎながら。「貴方はそんなに怯えなくていいわ。」彼女は言った。「愛情は尽きない・・・」そうして二年余りが、ホールでのあの出会いと「貴方?」以前に、過ぎ去った。

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