「貴女は、僕を愛している。」
「どうして決め付けるの?」
「深く考えないで。僕は、僕と一緒に遠くへ行くよう貴女に頼みたい。」
「でも、モーリス、私は、電話でも上手に答えられるわ。答えは、いいえ。」」
「僕は、電話で貴女に触れることは出来ない、サラー。」
「モ-リス、私の愛しい人、どうか。貴方は来ないと約束して。」
「僕は出掛けるよ。」
「聞いて、モーリス。私は、酷く具合が悪いと思うの。」
「それに今夜は痛みが酷いの。私は起きたくない。」
「貴女が、そうする必要はない。」
「私が起きて、服を着て、家を出ることにします、もし貴方が約束しないのなら・・・」
「このことは、サラー、僕たち二人には風邪より大切だ。」
「どうか、モーリス、どうか。ヘンリが間もなく家に戻るの。」
「彼をいさせるといい。」僕は、電話を切った。
それは、僕が一か月前ヘンリに会った時より、悪天候の夜だった。この時、それは雨の代わりに霙(みぞれ)だった。それは、雪への途中で、縁取られた滴りが、誰かのレインコウトゥのバトゥンホウルを抜けて、中へとその道を切り取るかのようだった。それは、共有地のラムプを覆い隠した。だから、それだけで、走るのは難しく、僕の足では、とうてい速く走れる筈がない。
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