https://naritaetuko.jp成田悦子の翻訳テキストとちょっとしたこと

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2014年3月7日金曜日

THE LOVEBIRDS /The little bookroom1~28

五木寛之、柳田邦男、文芸春秋社は、「涸れた倦み」を非公開にしています。
不正アクセス、記事、詩、翻訳詩の盗み、自分の犯罪が表沙汰になるのを懼れての事です。

  At the end of the street stood the School.
On the right-hand street corner sat Old
Dinah th gypsy,who kept a pair of lovebirds in a cage.
And on the left-hand street corner sat Susan Brown,who sold bootlaces.
Susan thought she was about nine years old,but she never quite knew.
As Old Dinah’s age,it was too great to be remembered,and she had forgotten it long ago.

  通りの行き止まりに、その学校がありました。
右手の街路の露天に、如何(いか)にもジプシーと云わんばかりのディナーおばあさんが陣取り、
籠に、一番(ひとつが)いのラヴバードゥ(ボタンインコ)を、飼っていました。
又、左手の街路の露天には、スーザン・ブラウンが、座って靴紐を売っています。
その子は、九(ここの)つくらいのつもりでしたが、自分では全く見当もつきません。
ディナーおばあさんの年齢に至っては、余りにも年を取り過ぎていましたから、気にもされません。
実際、彼女は、そんな事など疾(と)うに忘れていました。

 At half past twelve every morning,when school was over,the little boys and girls
run out through the gates on the way home,and Susan Brown would remember it was dinner time; and she would begin to eat her bit of bread and dripping,and admire the little girls’hair-ribbons,
and the little boy’boots without holes in them.
Very often their bootlaces were broken and knotted together,for you know what bootlaces are,but
Susan Brown never really expected the little boys to come and give her their penny for a new pair.
Their mothers bought their bootlaces for them in a shop,and they wanted the penny for something else,
or a top ,or an ounce of bulls’-eyes,or a baloon.
And little girls with their pennies got beads,or peardrops,or a bunch of violets.
But almost every day at least one or two of the little girls and boys would stop in front of Old Dinah’s
lovebirds,and hold out their pennies and say,“I want a fortune,please.’

 毎朝、12時半に学校が終わると、男の子も、女の子も、校門を抜け、我が家に向かって脇目も振らずに走ります。すると、スーザン・ブラウンは、
お昼ご飯の時間だわ、と思ったものです。
そこで、彼女は、一切れのパンと肉汁を口にし始め、女の子のリボンや、男の子の穴の開いていないブーツを、何とか褒めようとします。
彼等のブーツの紐は、よく千切れ、一つになってこぶしが出来ていました。何故かと云うと、ブーツの紐が幾らくらいか貴方には分かると思いますが、
スーザン・ブラウンは、新前の一足の靴を買いにやって来て、お金を彼女に支払う事を、その男の子達に、全く期待した事はありません。
彼等の母親は、店でその子達の為に、ブーツの紐を買いました。
すると彼らは、何か他の物、独楽(コマ)やら、僅(わず)かばかりの金的やら、風船やらが欲しくてお金が入り用でした。
又、お金を手にした女の子達は、ビーズやら梨のドロップやら菫(すみれ)の花束を買いました。
それでも、殆ど毎日、女の子や男の子の内、少なくとも一人や二人は、ディナーおばあさんのラヴバードゥ(ぼたんいんこ)の前で足を留めたもので、
自分のお金を差し出し、「あのう、占ってほしいんです。」と言います。

 For the lovebirds were such wonderful birds!
-They were not only wonderful to look at,with their smooth grass-green bodies and long blue tail-feathers,they were wonderful because they could give you a fortune for a penny;and you can’t get a fortune much cheaper than that.

 だって、ラヴバードゥは、とても不思議な鳥でしたから!
―そのすべすべした草緑の胴体や、長くて青い尾羽を付けていて、只、見て不思議なだけでなく、お金を払うと、必ず貴方に幸運を授けてくれますから不思議。
それに貴方は、これより安く、幸運を手に入れられる筈がありません。

 Whenever a child came to buy a penny fortune,Old Dinah said,‘Put your finger in the cage,Duckey!’
And when the child did so,one of the two lovebirds hopped on to the finger and was brought out with a flutter of wings.
Then Old Dinah held out fortunes in a little packet of folded papers,pink,and green,and purple,and blue,and yellow,that always hung outside the cage-door.
And the wonderful lovebird picked out one of the fortunes with its curved beak,and the child took it.
But just how did the lovebird know just which was the right fortune for that child?
―The right one for Marion,for Cyril,for Helen,for Hugh?
All the chlden put their head together over the little coloured papers,and wondered.
‘What’s your fortune,Marion?’
‘I’m to marry a king.It’s a purple one.What’s yours,Cyril?’
‘A green one. I’m to go a long journey.What’s Helen’s?’
‘I got a yellow one,’said Helen,‘and I’m to love seven children.What’s your fortune,Hugh?’
‘I’m to succeed in all my undertakings.It’s blue,’said Hugh.Then they ran home to their dinners.

 子供が、一ペニーの幸運を買いに来ると何時でも、ディナーおばあさんは、「指を籠の中に入れてみて、いい子だね!」
そして、その子がそうすると、二羽のラヴバードゥの内の一羽が、その指にぴょんと飛び乗り、羽をばたばたさせて誘いだされました。
それから、ディナーおばあさんは、何時もは籠の扉の外に吊るしてあるピンクや緑や紫や青や黄の畳んだ紙切れの籤(くじ)を、小さな包みに隠しました。
そしてその不思議な鳥は、籤の一つをその曲がった嘴(くちばし)で摘(つま)み出すと、子供がそれを取りました。
それにしても、どれがその子にとって、それこそ打って付けの籤なのか、一体どうしてラヴバードゥに分かったのでしょう?
―マリオンにとっても、シリルにとっても、ヘレンにとっても、ハグにとっても的を得たものが?
どの子供も、小さな色紙(いろがみ)に、一斉に覆(おお)い被(かぶ)さって、驚きました。
「あなたの運勢はどうだった、マリオン?」
「わたし、王様と結婚するの。紫色のがそうよ。あなたのは何色、シリル?」
「緑色よ。私は、長い旅に出る運命なの。ヘレンのは何色?」
「わたしは、黄色いのを引いたの。」とヘレンは言いました。「それでね、私は七人の子供を産むらしいの。ハグ、あなたの籤は何色?」
「僕はどんな事業をしても、成功するんだって。それは、青い色。」と、ハグは言いました。それから皆(みんな)、お昼ご飯に合わせて家に帰りました。

 Susan Brown sat listening with all her ears.
How buautiful to have a fortune!
If only she had a penny to spare!
But Susan Brown never had a penny to spare,and not often any other sort of penny,either. 

 スーザン・ブラウンは、耳を欹(そばだ)てながら座っていました。
幸運を手に入れられたらどんなに嬉しいでしょう!
とにかく余分な一ペニーがあれば!
けれども、スーザン・ブラウンは、取って置けるようなお金はおろか、何時だって、何か他のお金に代わるものさえ持っていたためしがありませんでした。

 But one day,when children had gone,and Old Dinah was nodding in the sun,something lovely happened.
The door of lovebirds’cage had been left open a little by accident,and one of them got out.
Old Dinah, asleep on her corner,didn’t see.
But Susan,awake on hers,did see.
She saw the little green bird hop from it’s perch and flutter to the pavement.

 しかし或る日、子供達がいなくなって、ディナーおばあさんが、日光を浴びて居眠りをしていると、心惹かれる或る事がありました。
ラヴバードゥ(ぼたんいんこ)の籠の扉が、たまたまほんの少し開けっ放しになっていました。そして、その内の一羽が出て行きました。
ディナーおばあさんは、自分の露天で居眠りをしていて、気付きませんでした。
けれどもスーザンは、彼女の露天で起きていて、はっと気付きました。

She saw the little green bird hop from it’s perch and flutter to the pavement.
彼女は、緑色の小鳥が、その止まり木からひょいと飛んで、街路に向かってぱたぱた羽ばたくのを見ました。

14:56 2014/03/06木曜日