2022年5月31日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

しかし私は私の怒りと共に今、先に乗り込もうという願望は、微塵もなかった。他の多くの物事のように、怒りに向かう能力は、私の中で死に絶えた。私は、彼に会って、彼にヘンリのことを尋ねようとした。ヘンリは、最近おかしかった。外出して、モーリスとパブで飲む、そんなことは彼にはなかった。ヘンリは、家でとか、彼のクラブでしか飲まなかった。私は、彼がモーリスに打ち明けるといいと思った。もし彼が私のことを気に病んでいたら不思議。私たちが結婚した当初から、気に病む原因は、何処にも殆ど見当たらなかった。しかし私がモーリスと一緒だった時、彼と一緒だということを除いて、彼と一緒に居ようとする理由らしきものは、何処にも心当たりがなかったなかった。私は、ヘンリについて何事も探り出さなかった。今もその時も何時だって、彼は私を傷付けようとしながら、彼は、彼自身を実際傷付けていたから、彼は、成功し、私は、自らを傷付ける彼を見ることに耐えられない。

 私はあの昔の誓いを、モーリスと昼食を摂っている内に破ったのか?一年前、私はそう思おうとしたが、今私はそうは思わない。私は不安だったから、どんなこともそれが全てだったと私は知らなかったから、私は愛に信頼を持てなかったから、あの頃とても文学的だった。私たちはルールズで昼食を摂ったが、私はただ、彼と一緒にいるだけで、幸せだった。格子の上で、さよならを告げながらも私は、少しの間、不幸せだった。彼はもう一度、私にキスをする筈だと私は思い、私はそれを願った、ところがその時、咳の発作が私を襲い、手間取った。私には分かった、彼は遠ざかるにつれ、本当ではないようなことを皆、彼は背負い込んでしまい、それによって彼は傷付けられ、彼が傷付けられると私は傷付けられた。

164

2022年5月30日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

私は、雨の中貴方の窓の下を歩き、一晩中その下で待とうとした。何もかも終わり、私は愛することを学んでも良かったのに、又、貴方がそこにいたから幾分長く私は不毛を恐れずに済んだ。私が家に戻ると、ヘンリと一緒にそこにはモーリスがいた。それは二度目だった、貴方は彼を返してくれた。一度目、私はその所為で貴方が嫌になり、貴方が私の不信心を貴方の愛の中に誘って来たように、貴方は私の嫌悪を受け止めて来た、だから私たちは共に笑い合えた―私は時にモーリスを笑った、「私たちがどんなに馬鹿げていたか貴方は覚えているの・・・?」と言っては。



1946・1月18

 二年経ち、初めて私はモーリスと昼食を摂っていた。私が電話をして、私と会って、と彼に頼んだ―それなのに私のバスは、ストックウエルで通行に手間取り、私は十分遅れた。私はちょっとびくびくしていた。あの遠い日々、私は何時も感じた、何かが一日を台無しにするためにきっと起こるぞ、それは、彼が私に対する腹立たしさを抑え切れなくなるに決まってるぞ。

163

2022年5月29日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

山高帽を持ったあの男の孤立した実在を、十字架の金属を、私が祈られないこの手を信じるから、私は実在主義者か?神は実在したと想像する、彼は、あの世な肉体を持っていたと想像する、彼の体が私のものとまるで同じように実在したと信じることは、何が間違っているのか?もし彼が肉体を得なかったら一体誰が彼を愛し、或いは彼を遠ざけられたか?私はそれがモーリスであっても、蒸気を愛せない。それは粗雑で、それは野蛮で、それは実在主義者だ、と私は知っているが、何故私は、粗雑で、野蛮で、実在主義者であってはいけないのか?赤く燃える憤怒に、ヘンリの公然たる反抗、合理的なものの全て、私は、スペインの教会で人々が行う何を私は見て来たにしても、私が誘(いざな)った孤立に、教会の外へと歩いた。聖水、そう‐呼ばれた中に私は私の指を浸し、私の額に十字架のようなものを作った。



1946・1月10


私は今夜家庭に耐えられなかった。だから雨の中、外を歩いた。私が掌の中に私の爪を突き刺した時を、私は思い出した。私はそれを知らなかった、が、貴方は痛みに動いた。私は言った。「彼を生き返らせて下さい。」貴方を信仰することもなく、それに私の不信心は貴方にどんな差別もしなかった。貴方は貴方の愛の中にそれを受け入れ、供物のようにそれを食した。そして今夜、雨は私のコウトゥや私の衣服や私の肌の中をびしょ濡れにして、私は寒さで震え、そんなことは初めてで、まるで私は殆ど貴方を愛したかのようです。

162

2022年5月28日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

何時か私たちに何故かが分かるといい。それは腺の欠乏かも知れない。

 そこで今日、あの実在する十字架の上のあの実在する肉体を見て、私は不思議に思った。この世は、そこでどのように蒸気に釘を打てたのか?上記は、勿論痛みもなく、喜びも感じなかった。それは単に、それが私の祈りに答える筈と想像する私の迷信に過ぎなかった。親愛なる神よ、と私は言って来た、私は言うべきだった、親愛なる蒸気よと。私は貴方を遠ざけると私は言ったが、人は蒸気を遠ざけられるか?十字架の上のあの像を私の感謝の気持ちへのその主張と共に避けることは出来た―「私は貴方の所為でこんなことで苦しんだ。」しかし蒸気は・・・それにしてもリチャドゥは、蒸気以下でも信仰した。彼は寓話を嫌い、彼は寓話と戦い、彼はまともに寓話を受取った。私はハンスル・アンドゥ・グレトゥルを嫌えなくて、彼らの砂糖の家を、彼が神の伝説を嫌ったようには嫌えなかった。私が子供だった時、私はスノウ・フワイトゥの中の意地悪な女王を嫌いになれたが、リチャドゥは、彼のお伽⊶話のデヴルを嫌いではなかった。デヴルは存在せず、神は存在せず、それでも悉(ことごと)く彼の嫌悪は、いいお伽話の為にあり、意地悪なものの為ではなかった。どうして?私は、あの―過度に‐くだけた肉体を見上げた。想像上の苦痛で張り詰めた、眠る人のように項垂れている頭。私は、時にモーリスが嫌になった。が、もし私も、彼を愛さなくなったら、私は彼を避けようとするだろうか?オウ神よ、もしも私が心底彼を嫌ったとしたら、それは何を意味するのでしょう?

 すると結局、私は実在主義かしら?私は何か腺の欠乏があって、実際に重要な迷信ではない物事や目標に少しも興味がない―慈善委員、生活の指標、労働者階級の為のより良いカラリのように?

161

2022年5月27日金曜日

The End of the Affair/GrahamGreene 成田悦子訳

そこでは、目や手から緋色の絵具で、血が下方へ走っていた。それは、私の具合を悪くした。ヘンリは、私に12世紀の記念碑を称賛して欲しかったのに、私は具合が悪くて開けた所へ出て行きたかった。私は思った、こういう人々は、残忍さを好むのねと。蒸気は、血や叫びで貴方にショックを与えられない。

 私は広場へ出ると、私はヘンリに言った。「全くこんな風に塗った傷には耐えられないわ。」ヘンリはとても理性的だった―彼はいつも冷静だった。彼は言った。「勿論、あれは非常に物質主義的信仰ではある。魔力の代物(しろもの)・・・」

 「魔力って、物質主義的なの?」

 「そう。イモリの目や、カエルの足の指、出産で‐締め付けられた赤ん坊。お前はそれ以上に何か物質主義的なものを所有出来ない。聖体拝領ミサに於いては、彼らは、未だに全質変化を信仰する。」

 私はその全てを知りはしたが、勿論貧乏人の為を除いて、それは多かれ少なかれ宗教改革で絶滅したという一つの考えに至った。ヘンリは私をきちんとさせた(どんなにしょっちゅうヘンリは、私の混乱した考えを整理し直して来たことか)。「物質主義は、単に貧乏人向けの姿勢だけではない。」彼は言った。「どこまでも洗練された頭脳の者たちは、物質主義者で、パスクル、ニューマン。傾向という点で非常に微妙、他の点では非常に粗雑な迷信。

160


2022年5月26日木曜日

The End of the Affair Graham Greene 成田悦子訳

そこで私は思った。私は蒸気になる為に、あの体を求めるのか(私のものをはい、いや彼のものを?)又、永遠そのものを貫いて存在することを、あの傷跡に私は求めた、と私は分かっている。しかし私の蒸気はあの傷跡を愛せるか? その時私は、私が憎んだ私の体が欲しくなって来た。しかしそれは、単にあの傷跡を愛せたからに過ぎない。私たちは、只私達の心だけで愛せるか?愛情は、何時もその身を広げる。そうそれで私たちは私達の感覚のない爪でさえ愛せる。私たちは、私達の衣服でさえ愛する。そうそれで袖は袖を感じられる。

 リチャドゥは正しい。私は思った、私たちが肉体の復活を考案したのは、私たちが私達自身のの体を必要とするから、直ぐに私は彼が正しかったと、又、これは、私たちが慰めに互いに話すお伽話だったと認めた。私はもはやその塑像を、少しも嫌だとは思わなかった。それは、ハンス・アンダスンの中の汚い色の絵に似ていた。それは、下手な詩に似ていた。しかし誰かが、それを書くことを必要として来た。非常に誇り高く、彼の愚かさを曝け出すよりむしろ彼はそれを隠した誰か。私は教会に歩いて上った。それらを次から次へ眺めながら。全ての内、最も酷いもの―私は彼女が誰か知らない―中年の男が祈っていた。彼は山高帽を彼の脇に置き、山高帽の中に、新聞に包んだセラリの茎があった。

 そして勿論、供物台の上のそこにも、一体あったーそんなによく知られた肉体、モーリスのものよりもっとくだけた、肉体のあらゆる部分を持った肉体として、前に私を感動させたことはなかった。私はヘンリと訪れたスペインの教会の一例を覚えていた。

159

2022年5月25日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

何時か私も蒸気の役になろう―私は永遠に私自身を避けよう。そうしてその時、私はパーク・ロウドゥの暗い教会に入って全ての供物台の上の私の周りに立つ体を見た。その悦に入った顔を持った恐ろしい石膏の塑像、それで私は彼らが肉体の復活を信じていることを思い出した。私が永遠に葬られたい肉体の。私はこの体と共に、随分たくさん傷を負って来た。私は永久にその僅かでも保存することをどうして望めるのか?そこで突然私は、リチャドゥの名言を思い出した―その欲求を満たすために教義を考案する人間についての、そして私は、彼がどれだけ悪辣であるかを思った。私が教義を考案することになったら、肉体は二度と蘇らなかったということ、それは去年の害虫を道連れに腐ったということになるだろう。人間の心は後ろに前に揺れ動く。一つの極端からもう一つの極端へと。真実は、振り子の振幅の或る目盛で欺き、決して静止しない一つの目盛りで、弛んだ垂線の中ではなく、風のない旗のように、それが仕舞に何処でだらりと垂れるかが大切だ。しかし角度においては、他より一つの極端により近いのか?只、奇跡が60度の角度で振り子を止められたら、人は真実はそこにあったと信じるだろう。さて、振り子は今日も揺れ動き、私自身の体の代わりに、モーリスのを思った。私は、彼の著作の一行と同じくらい個性的な命が、彼の顔の上に置いた確かな輪郭を思った。私は、嘗て彼が、落下する壁から他の人の体を庇おうとしなかったら、そこにある由もない肩の新しい傷跡を思った。何故あの三日を病院で過ごさなかったのか、彼は私に打ち明けなかった。ヘンリが私に話した。あの傷跡は、彼の嫉妬と同程度の度を越した彼の性格の顕われだよ。

158

2022年5月24日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

彼が神経質に「週に一時間。それは大いに貴女を救います。」と言った時、頼むのは些細なことのように思った。それに、今、私は時間の全てを持っていないか?私は本を読んでもいい、又映画に行っても良く、私は言葉を解さず、又映像を思い出せない。私自身と私の持つ惨めさが、私の耳の中で太鼓を打ち、私の目に溢れる。この午後のちょっとの間に、私はそれを忘れた。「はい、」私は言った。「私は来ます。時間を割くのは、それは貴方にも望ましい。」私は言った。私は、彼の保護の中で私に可能な全ての望みをシャヴルで掬いながら、神に祈りながら、彼は、私を救済すると誓っていた、「私を彼に用いて下さい。」

 

1945・10月2

 今日、それはとても暑く、その上雨が滴り落ちていた。そこで私は、暫く腰を下ろす為に、パーク・ロウドゥの角の暗い教会の中に入って行った。ヘンリは家に居たが、私は彼を見たくなかった。私は、朝食時、優しいということを思い出そうとする、彼が家にいる昼食時の優しさ、夕食時の優しさ、そして時々私が忘れると、彼は逆に優しい。命ある限り互いに優しくあろうとする二人。私が入り、座って、辺りを見た時、そこは、石膏の塑像と悪趣味な美術品、写実主義的美術品で溢れ返ったロウマン教会だと悟った。私は、塑像やクライストゥ受難の像、あらゆる人体の強調を嫌った。私は人間の体から逃げ出そうとしていたし、全くそれが急務だった。私は私達自身とは無縁に生み出された或る種、神のようなもの、何か曖昧で無定形で、宇宙的なものを信じられると思った。それに対して、私は何かを誓い、そしてそれは、お返しとして私に何かを授けた―有形の人間の生命へと曖昧さの外へ伸びる椅子と壁の間を精力的に動く蒸気のように。 

157

2022年5月23日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

それは彼を毎週、共有地へ彼を行き着かせる。いなくなり、質問もせず、芝生の上に彼のカードゥを投げ捨てる人々に語り掛ける為に。私が今日来たように、どれだけの頻度で、誰かが実際に来るのか?私は彼に、「貴方はたくさん訪問者を持っていますか?」と尋ねた。

 「いいえ。」彼は言った。彼の真実への愛着は、彼の誇りより偉大だった。「貴女が最初です―随分長い時間で。」

 「貴方に打ち明けるのは、それは申し分ありません。」私は言った。「貴方は私の心を本当に随分整理して下さった。」それは誰彼となく彼に与えられる唯一の慰めだった―彼の幻に餌をやる為に。

 彼は内気そうに言った。「もし貴女が時間を割ければ、私たちは、現実的に開始し、物事の根源に向かえます。私が意味するのは、、哲学的論争や歴史学的証拠です。

 私は彼が続けて行く為に、何らかの回避的な返事をでっち上げなければならなかったと思う。

「それは実に重要です。私たちは、私達の敵を侮ってはならない。彼らは、一つの箱を持っています。

 「彼らが持っている?」

 「それは、しっかりしたものです。上辺を除けば。それはもっともらしい。」

 彼は心配そうに私を見つめた、私は、いなくなってしまうそうした者の一人ではないか、と彼は不安に思っていたと私は考える。 

156

2022年5月22日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

歪めたり美しく見せたりする鏡について彼が話す時、私は何について私たちが話していたかを思い出せなかった。思春期以来その年代全ての思い故に、彼は鏡を覗き、それらを美しく見せよう、歪めることなくと心がけて来た。地道にその方法で、彼は彼の頭を持ち上げた。何故彼は、顎髭を痣を隠す程、十分長く伸ばさないのかしら?体毛はそこでは伸びなかったのか、それとも彼がごまかしたくないからだったのか?私は、彼が心底真実を追い求める男だという考えに至りはしたが、そこにはもう一度やり直すというあの言葉があり、それは只、余りにも明らかで、いかに多くの欲求に埋もれて、彼の真実への愛着は、易々(やすやす)と引き裂かれたことか。彼の誕生の損傷の為の埋め合わせ、権力への欲求、もっともっと全てを賞賛されたいという願い、つまり、みすぼらしく祟られた顔は、肉体の欲望の根拠を必ず奪おうとする。私は、この手でそれを確かめ、その傷のように永続的に、慰めたいという非常に強い意志を持った。それは、ドアの下のモーリスを見た時に似ていた。私は祈ろうした。只、彼が癒され得るなら、何か法外の犠牲を捧げるにしても、今そこには、私の為に捧げるどんな犠牲も残されていなかった。

 「私の親愛なる人よ、」彼は言った。「神という概念をこれから外しましょう。それは、まさに貴女の愛する人と貴女の夫の問題です。物事を幻想と混同しないで。」

 「でも私はどんな方法で決めますか―もしそこに愛のようなそんなものがなければ?」

 「長い走程にあって、貴女は何が最も幸福であるか、決めたくなります。」

 「貴方は幸福を信条としますか?」

 「私はどんな完全も、信じません。」

 私は、彼が何時までも手にする唯一の幸福は、これだと思った。彼は慰め、助言し、救うことが出来るという着想、彼は有用たり得るという思い。

155

2022年5月21日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「彼らの情緒が揺り動かされると、人々は、物事が合理的であること、それを必要としない。恋人同士は、合理的ではないでしょ?」

 「貴方は又、愛情抜きで説明できますか?」

 「オウ、はい、」彼は言った。「或る者に入り込んで独占したいという欲求、強欲と言われるまでに。他の者に入り込んで入れ込みたい、責任感をかなぐり捨てたいという欲求、褒められたいという願い。時には、話が出来ればと、耐えられない誰かに貴方自身荷を下ろしたいう願い切実。父か母を再び探し出したいという欲求。そして勿論、その根底にあらゆる生物学的動機が。

 私は思った。それは皆、真実だ。でもそこに何か覆っているものはないのか?私は、私自身の中で、モーリスの中でも、その全てを掘り返した。しかし未だに鋤(すき)は岩に触れなかった。「それでは、神の愛は?」私は彼に尋ねた。

 「それは皆同じことです。人は彼自らの想像の内に神を作りました。ですから彼が彼を愛してしまうのは、そりゃあ当たり前です。貴女は定期市でそこにある歪める鏡ご存知ですね。人は美しく見える鏡も作り、その中で、彼は、彼自身が魅力的で、逞しく、公正で、賢明に見えます。彼を笑わせるだけの歪める鏡の中よりいとも簡単に、彼自らを識別しますが、彼は他者の中で彼自身をどれ程大切に思うことでしょう。」

154

2022年5月20日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

  何故って、本当に?私は、ドアの下のモーリスと私の誓いについて彼に打ち明けられなかった。駄目だ、未だ私には出来ない。その上、それは全体の核心ではなかった。生まれながらにして、私はどれだけの数の誓いをしては破ったっていうの。何故、友人がくれた不格好な花瓶のように、この誓いは留まるのか、それを壊しそうなメイドゥを誰かさんは待ち詫び、来る年も来る年も、彼女は誰かが評価する物を壊し、ついにその不格好な花瓶は残る。私は、実際今まで彼の言う疑問に立ち向かったことはなく、追って彼はそれを繰り返そうとした。

 私は言った。「私には、信仰心がないのですが、いいとは思えません。かと言って、私はそうしたいわけではありません。」

 「私に話して下さい。」彼は言いながら彼自身の手の美しさを忘れ、彼の醜い頬を私に向けた。救おうとする一心で我を忘れ、私は打ち明けている自分自身に気付いた―あの夜と爆弾落下と馬鹿げた誓いについて。

 「それで、貴女は実は信仰している。」彼は言った。「それは多分・・・」

 「はい。」

 「今祈っている世界中の何千人もの人々について考えて下さい。彼らの祈りは相手にされない。」

 「パラスタインで、そこに死にかけた何千もの人々がいた。その時ラザラスは・・・」

 「私たちは、そんな作り話を信じないでしょ。貴女も僕も?」彼は一種連座を押し付けて言った。

 「勿論そう。何れにせよ、何万もの人々が持っています。彼らは、それを道理に適っていると思うしかなかった。」 

153

2022年5月19日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 私は木綿更紗のソウファに座り、彼はかなり固い椅子に、彼の膝の上の猫と一緒に座った。彼は猫を撫で、彼は奇麗な手を持ち、私はそれを好まなかった。私は、押し並(な)べて痣をかなり好んだが、彼は、彼の見栄えの良い頬だけを私に見せながら座ることを選んだ。

 私は言った。「そこには神はいないと、何故あなたはそんなに決め付けるのか、貴方は私に話せますか?

 彼は猫を撫でながら、彼自身の手を見詰め、彼は彼の手で自尊心を維持しているのか、と私は彼を不憫に思った。彼の顔が、印を付けられていなければ、彼はどんな自尊心も持ち合わせなかっただろう。

 「貴女は共有地で話す私に耳を傾けて下さった?」

 「はい、」私は言った。

 「私はあそこではごく簡素に物事を留め置くよう、心掛けています。自分自身の為に考えるよう、人々に風穴を開ける為に。貴女は、自分自身の為に考えることを始めましたか?」

 「私はそう思っています。」

 「どんな教会に、貴女は取り込まれましたか?」

 「何処にも。」

 「ならば、貴女はクリスチャンではないのですか?」

 「私は洗礼は施されています―それは、社会的通念でしょ?」

 「貴女がどんな宗教も持たないのなら、どうして貴方は私の助けが欲しいのですか?」

152

2022年5月18日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 1945・9月10


 私は賢明さを取り戻した。私は二日前、私の古いバグを片付けていた。―ヘンリは突然、「平和のプレズントゥ」として、新しいものを私に与えた―それは、彼にたくさんのお金を遣わせてしまった。私は、「リチャドゥ・スマイズ16スィダ・ロウドゥ4-6毎日個人的相談を、どなたでも歓迎。」と伝えているカドゥを見つけた。考えると、私は十分長く引きずって来た。私は、別の薬を飲もう。もし彼が私に買えれば、何事も起こらなかったし、私の約束は、勘定に入れなかった、とモーリスに書いて、もし彼がもう一度やり直したければ、と彼に尋ねよう。おそらく私は、ヘンリの下を去りもしよう。私は分からない。それでも第一、私は賢明さを取り戻した。私はもうこれ以上ヒステリクになるまい。私は聞き分けが良くなるわ。そこで、私は出かけて、スィダ・ロウドゥのベルを鳴らした。

 今、私は何が起こったか、思い出そうとしている。ミス・スマイズは、お茶を作り、お茶の後、彼女は出かけて、私を彼女の兄弟と一緒に、一人残した。彼は、私に何が私の困難か尋ねた。

151

2022年5月17日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 Ⅴ

1945・5月8

 夕方のセイントゥ・ジェイムズ・パークへ、イウアラプ戦勝記念日を祝う彼らを見に下った。それは、近衛騎兵隊と宮殿に挟まれた投光照明の水域の側で、とても静かだった。誰も大声を出さず、歌わず、酔っぱらうこともなかった。人々は、二人ずつ、手を取り合い、草の上に座った。私は、これが平和であり、何処にももう爆弾はなかったから、彼らは幸せだと思った。私は、ヘンリに言った。「私は、平和と寄り添えない。

 「僕は、情報省から、何処へ選抜されるか、あれこれ考えている。」

 「情報省?」私は、興味深そうに尋ねた。

 「いや、いや、僕は、それを引き受けたくない。」

 「それは、俄か作りの国民の奉仕者だらけだよ。お前は、内務省はどれ程いいと思っているの?」

 「何かが、ヘンリ、それは、貴方を満足させたわ。」と私は言った。その後、ロイアル・ファミリが、バルカニに登場し、群衆は、非常に礼儀正しく歌った。

彼らは、ヒトゥラ、スターリン、チャーチル、ルーズベルトゥのようなリーダではなかった。彼らは、誰にも,どんな危害も加えない只の家族だった。私は、私の側にモーリスが欲しかった。私は、もう一度やり直したかった。私も、家族という者の一員になりたかった。

 「とても感動的だね。」ヘンリが言った。「そうね、私たちは皆、これで夜ぐっすり眠られるわ。」私たちは、夜に、今まで何か他にしたのにぐっすり眠ったかのように。

150


2022年5月16日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

  昨夜、彼が寝ていた時、私は、ヘンリを見た。私が、法律が有罪の当事者だと考える何かである限り、私は彼を愛情を持って見守ることが出来た。彼が私の保護を必要とする子供だったかのように。今や、私は、彼らが無知と呼ぶ者だった。私は、彼によって延々と気持ちを正常に動かなくされた。彼は、家まで彼に電話をして来る秘書を持っていた。彼女は、言ってのける。「オウ、ミスィズ・マイルズ、H.M.は中に?」秘書は皆、そんな耐え難いイニシアルを使った。親しいだけではなく、馴れ馴れしい。H.M.、眠る彼を見ながら、私は思った。H.M.彼(か)の陛下と彼の陛下の配偶者。時々、彼の睡眠中、彼は微笑んだ。普通の、簡潔な、国民の奉仕者の笑顔、口にすれば限りなく、そう、実に滑稽。とはいうものの、今や、私たちは仕事と寝た方が良かったんじゃない?

 私は彼に一度言った。「貴方は、今まで秘書に対して関心を持ったことはなかった?」

 「関心?」

 「恋愛感情」

 「いや、勿論ない。何が、お前にそんなことを思わせるの?」

 「僕は、分からない。僕は全く考えられない。」

 「僕は誰か他の女を愛したことはない。」彼は言って夕刊を読み始めた。私は 余りにも魅力がなくて、どんな女も嘗て彼を欲しがったことがないのが私の夫だ、と不可解に思わざるを得なかった。私以外、勿論。私は求めずにはいられなかった、一筋に、一度は、それなのに私は何故かを忘れ、私が、選ぼうとしたものを知るには若過ぎた。それでは、余りにも不当だ。私がモーリスを愛した間、私はヘンリを愛した。そして今私は、彼らがいいと称するものだ。私は、誰かを全く愛さない、そして貴方を全ての中で、最も愛さない。

149

2022年5月15日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 Ⅳ

1944・9月12

 ピータ・ジョウンズで昼食を摂り、ヘンリの勉学の為に新しいラムプを買った。他の婦人たちに囲まれた取り済ました昼食。何処にも男はいない。それは、大勢の内の一部分になることに似ていた。殆ど平和といった感じ。その後、ピカディリの新しい映画に行って、ノーマンディの喪失とアメリカの政治家の到着を見た。ヘンリが帰る筈の七時まで何もすることがない。一人で二杯のお酒を飲んだ。それが間違っていた。私はお酒を飲むことも止めなきゃ。私が何もかも払い除ければ、私はどうなる?私はモーリスを多少愛し、男達に同行し、私なりのお酒を満喫した身だった。貴方が私を作る物事全てを振るい落とせば、何が起こる?ヘンリが入って来た。彼は何だかとても嬉しそうだった。彼は、それが何なのか、明らかに彼に尋ねることを私に望んだが、私はしなかった。それで終に、彼は私に話すことにした。「彼らはO.B.E.大英帝国勲章 に僕を推薦している。」

 「それは何?」私は尋ねた。

 私が知らなかったということで、彼はかなり落胆させられた。彼が彼の課の長になった時、一、二年以内に次の段階は、C.B.E.になるだろう。そしてその後、彼は言った。「僕が退職する時、彼らは、おそらく僕にK.B.E.を与えようとしている。」

 「それでは面食らってしまうわ。」私は言った。「

貴方は同じ文字に、突き刺されなかったの?」

 「お前は、レイディ・マイルズになりたくないの?」ヘンリは言い、私は怒って、この世で私が欲しいものは皆、ミスィズ・ベンドゥリクスであるが故で、これまでの間、その頼みとするところを、手放さなかった。レイディ・マイルズ―愛人を持たず、お酒を飲まないけれど、サー・ウイリアム・マロックに年金について話す。その時ずっと、私は何処に居ればいいの?

148

2022年5月14日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

  国王は、彼の約束をどのように守ったか?私は思い出せたらと願う。私は、べキットゥの墓の上で修道士に彼を鞭打たせるよりもっと、彼について何も思い出せない。それは、答えのような響きがない。それは、前に起こらなければならなかった。

 ヘンリは今夜又、家を離れている。私がバーに馴染んで男を摘まみ取り、浜辺に彼を連れて行き、砂丘の間で彼と横になれば、私は、貴方が最も愛するものを貴方に失わせはしないのか?それでもそれは進展しない。それはもはや進展しない。私がそれから僅かでも楽しみを得なければ、私は貴方を傷付けられない。不毛の地のそうした人々のように、私は、おまけに私自身にピンを突き刺しても良かった。不毛。私は満喫し、それが多少でも貴方を傷付けようとすることをしたい。私を信じて下さい、神よ、私は貴方を信仰しない未だに、私は貴方を信仰しない未だに。

147


2022年5月13日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

彼がそれを愛せれば、それには、心惹かれるに違いない。私の心の中、そこに少しでも心惹かれるものがあるということ、それは、余りにも多くを私に信じるよう求めている。私は、私を称賛する男が欲しいが、それは、貴方が学校で学ぶ癖です―目の動き、声音、肩とか頭の上の手の感触。もし彼らが思えば、貴方は彼らを褒めるでしょう。貴方の立派な好み故に、彼らは貴方を称賛しようとする。そして彼らが貴方を褒める時、貴方は、束の間、そこに褒めるべき何かがあるという幻想を抱く。今までずっと、その幻想―私が意地悪でペテン師だということを忘れさせる鎮痛剤に浸ってで生きようとして来た。意地悪でペテン師の中に、そんな時、愛すべき何を貴方は思い浮かべられます?そうしたことが物語る不道徳な魂を、貴方は何処に見い出しますか?人皆の内、この心惹かれるものを、私の心の中の―私の心の中の何処に貴方は見ますか?ヘンリの中に貴方はそれを見いだせる、とすると私は納得出来ます―つまり私のヘンリ。彼は紳士で、善良で、忍耐強い。貴方は、それを彼が嫌い、愛す常に愛すと思うモーリスの中に見出せます。彼の敵でさえ。それなのにこの意地悪でペテン師の中の何処に、貴方は何か愛すべきものを見出せますか?

 それを私に話して下さい、神よ、そして私は、永遠に貴方にそれを失わせるようにします。

146

2022年5月12日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

貴方は、私にD.と一緒に逃げ出そうとさせながら、それを楽しむことを、私には許さない。貴方は、私に愛を外へ追い払わせ、その後で貴方は言う。そこにも又、貴女が求める渇望はない。貴方はいま、私にどうして欲しいのか、神よ?私は、ここから何処へ向かうのか?

 私が学校にいた頃、私は国王について学んだ―ヘンリの一人、べキトゥを殺した人物―彼の敵によって焼かれた彼の生誕の地を彼が見た時、彼は誓った。何故なら神は彼にそういうことをしてしまったから、「何故なら貴方は、私に私が最も愛した町を、私が生まれ育てられた地を、私に失わせたから。私は貴方に貴方が私の中で最も愛するものを失わせます。」奇妙でどういう訳か、私は十六年後のその祈り手を思い出した。国王は、彼の馬に乗って、それを七百年前誓い、そして私は、海上のビグウエル―ビグウエル・レジスのホウテルの部屋の中で、それを今祈る。私は、貴方に失わせようとしています、神よ、貴方が私の中で最も愛するものを。私は、今まで心からの主の祈り手を知らなかったが、私は、人が―それ、祈り手であるということを思い起こす。貴方が私の中で最も愛すことの。

 貴方は何を最も愛しますか?私が貴方を信じていれば、不道徳な魂を信じようと思いますが、それは、貴方の愛ですか?貴方は、皮膚の下のそこに、それを実際に見ることが出来ますか?神は、何か存在しないものを愛せず、彼は、何か彼に見えないものを愛せない。彼が私を見る時、彼は、何か私に見えないものを、見るのですか?

145

2022年5月11日水曜日

The End of the Affair/ Graham Greene 成田悦子訳

  私が、私の肩に挟み込んだ受話器を取ると、交換手は言った。「私共は、只今貴方の番号にかけています。」私は神に言った。もし彼が応答すれば、私は、明日戻ります。電話は、彼のベドゥの傍の何処に置いてあるかを、私は正確に知っていた。一度私はそれを私の睡眠中にぶつかって落とし、げんこつですっかり打撃を与えたことがある。女の声は、「もしもし」、するとすんでのところで電話を切ろうとした。私は、幸せになるには、モーリスを欠いていたが、私は、本当にそんなに素早く、彼に幸せを見つけて欲しかったの?論理が私の手助けをしてくれるまで、胃に少しばかり違和感を覚え、私は私の頭に私と言い争わせた―何故彼はしないのか?お前は彼を置き去りにした。お前は、彼に幸せになって欲しい。私は言った。「ベンドゥリクスに話せますか?」しかし何もかもフラトゥを出てしまっていた。おそらく彼は、今や私の約束を破ることを私に望もうとさえしない。おそらく彼は、誰か彼と一緒に居て、彼と食事して、彼と何処にでも一緒に行って、彼とそれが心地良く習慣的になるまで、来る夜も来る夜も共に眠り、彼に代わって彼の電話に答えようとする人を見つけてしまった。その時その声は、言った。「ベンドゥリクスさんは、ここにはいません。彼は二、三週間遠くへ出かけました。私は、フラトゥを借りました。」

 私は電話を切った。ともかく私は幸せだったのにその後、又惨めになった。私は、彼が何処にいるか、知らなかった。私たちは触れもしなかった。同じ不毛の地で、同じ水源を探しながらも、おそらく景色の外、何時も一人。私たちは一緒に居れば、そこは不毛の地になりようもないから。私は神に言った。私は貴方を信じ始めています。私が貴方を信じれば、私は貴方を遠ざけます。私は私の約束を破ろうとする自由意志を持っているでしょ。でも私はそれを破ることによって何かを得る能力がありません。貴方は私に電話をさせながら、その後、貴方は私の面前でドアを閉ざす。貴方は、私を罪に走らせながら、貴方は私の罪の果実を持ち去る。

144

2022年5月10日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

ヘンリは、市長やエンジニアと一緒に二等私室の中に先頭に立って入って行ったが、私はその長官を引き止めた。彼の腕に触れ、スチールの寝棚に関し、そこに既婚者用のダブルの寝棚がなかったのは何故かについて、何か馬鹿げたことを彼に質問しながら。私は、私にキスをして欲しい、と言おうとした。彼は、寝棚に凭れて私をぐるっと捩じった。それで金属が私の背中を横切る痛みの線を作り、そして私にキスをした。その時、彼は随分驚いたようだったので、私は笑い、彼にキスを返した。それなのに、何事も進展しなかった。それは、二度と進展しないのだろうか?市長がヘンリと一緒に帰って来た。彼は言っていた。「切羽詰まっても、僕たちは、二百年間は、部屋を見付けられます。」その夜、ヘンリが公式の夕食にいた時、モーリスの電話番号を手に入れようとして、長距離電話を頼んだ。私は、ベドゥでそれが繋がるのを待ちながら横になった。私は六週間、私の約束を守りました、と私は神に言った。私は貴方を信じられず、愛せもしませんが、私は私の約束を守りました。もし私が再び生き生きと蘇らなければ、私はだらしない女に、只のだらしない女になるつもりです。私は全く故意に、自らを壊そうと思います。年毎に、私はますます使い古されます。もし私が私の約束を破れば、貴方は、より以上に少しでもそれを好みますか?私は、余りにも笑い過ぎて、彼女たち相手の、肉体関係がなくても彼女たちに触れている三人の男を持つバーのあの婦人たちのようになるでしょう。私は、既に粉々に砕け落ちています。

143 

2022年5月9日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 只、私が動こうとするという意識を持てば、彼はそれに応える。私は、何故しようとしないのかしら?私は見知らぬ人と約束したことはなく、モーリス一筋だった。ヘンリと一緒にわたしの残りの人生を、一人寂しく過ごせない、誰も私を認めず、誰も私に刺激されず、ヘンリが他の人と話す事に耳を傾け、チェダ洞窟のあの山高帽のように、会話の滴りの下で化石化する。


1944.7月15

 ダンスタンとJardin des Gourmetsで昼食をとった。彼は言った・・・


1944.7月21

 家でダンスタンと一緒に飲む。その間、ヘンリを待った。全て・・・へ向かう


1944.7月22

 Dと夕食をとった。彼は、もっと飲もうとして、その後、家に来た。何れにせよ、それは、進展しなかった、それは、進展しなかった。


1944.7月23-1944.7月30

 D.が電話した。私は出かけると言った。ヘンリと旅立った。南英に於ける民間防衛。チーフ行政区長官たちと行政区エンジニアとの会議。爆風問題。深刻なシェルタ問題。生きている振りをするという問題。墓の上の人形のように、来る夜も来る夜も並んで眠っているヘンリと私。海上の‐ビグウエルの新たに補強されたシェルタの中で、そのチーフ・長官は、私にキスをした。

142

2022年5月8日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

ヘンリは、寡婦年金が、それが十年前と同じ重さに達する、もう一シリング上げられるかどうかについて統計だらけのマロックとの長い議論を始めた。彼らは、生活費について争い、それは、非常に学究的論争だった。彼らは揃って、国は、ともかく、それを値上げする余裕がない、と言った。国家安全省のヘンリのチーフに話し掛けようとしたが、Vis以外のことを話すにしても、何も思い付く筈がなかった。すると私は突然、誰彼となく階下に降りたことや埋もれたモーリスを見付けたことについて、無性に話したくなった。勿論、私は全裸だった、と私は口にしたかった。何故なら私は、服を着る余裕がなかった。サー・ウイリアム・マロックは、振り返るぐらいはしただろうか、或いはヘンリは聞こうとしただろうか?彼は、手持ちの対象以外、何事にも耳を傾けようとしない素晴らしい得意技を持っていて、あの時期の手持ちの対象は、1943年の間の生活費の目録だった。私は、全裸だった、と私は口にしたかったのは、モーリスと私は、夜通し愛を育んでいたから。私はヘンリのチーフを見た。彼はダンスタンと呼ばれた男だった。彼は、崩れた鼻を持ち、彼の殴られた顔は、陶工の間違い―輸出を拒絶された面構えのように見えた。彼は、しようとする何事も、思うに、笑顔で通した。彼は、不機嫌でも無関心でもあるまいとする―彼は人間という者が何かしでかしたことのように、それを受取ろうとする。

141

2022年5月7日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 彼は、福音書の書かれた年代に関して話し、如何に早いものであろうと、クライストゥが生まれて百年以内に書かれてはいない。私はそうしたものが、それ程早いと認めたことはなかった。それにしても、私は、伝説が始まった時、それは、実に重要だということを見ようがなかった。次に彼は私達に、福音書の中で、ガドゥであることを主張したことはない、と話したが、一体、そこにクライストゥのような、そんな男がいたのか、ともかく福音書は、モーリスがやって来るのを待ち、見ることもないこの閉塞感に比べたら、何が重要なのか?銀髪の婦人は、彼の名、リチャードゥ・スマイズとシェダー・ロウドゥの彼の住所が印刷された小さなカードゥを配った。そこには、訪問し、個人的に彼に話す者への招待書きがあった。大半の人がカードゥを受取ろうとせず、婦人が会費を請求したかのように、立ち去り、草の上にそれを捨てる者もいた(私は、幾つか拾う彼女を見た、節約のためだと私は思った)。それは、とても悲しそうだった―悍ましい痣、誰も興味を示さないことについて語ること、そして捨てられたカードゥは、折り返された親睦の申し込みのようだった。私は、私のポキトゥにカードゥを押し込み、そうする私を彼が見るのを望んだ。

 サー・ウイリアム・マロックが、夕食に来た。彼は、ロイドゥ・ジョージの国民保険のアドゥヴァイザの一人で、極めて老練で有力だった。ヘンリは、勿論年金ともはや関わりはなかったが、彼は、その種に関心を持ち続け、当時を思い出したがった。モーリスと私が初めて夕食を共にし、全てが始まった時、彼が働いていたのが、寡婦年金ではなかったか?

140

2022年5月6日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 1944.7月9


 ヘンリと一緒に8.30に間に合った。空席の目立つ一等客室。ヘンリは、イギリス委員会の議事録を声を出して読んだ。パディントンでタクシを捕まえ、ヘンリを省で降ろした。今夜家にいるよう、彼に約束させた。タクシ乗務員は、間違って、私を14番を過ぎた南側に運んだ。ドアは修繕し、正面の窓が板張りしてあった。死を連想するのは怖い。誰でも、とにかく、もう一度生きているという実感が欲しい。私が北側に着くと、そこには、「何も転送しないで。」と、彼らに話した為に、転送されなかった古い手紙があった。古書のカタログ、古い請求書、「緊急、転送請う」と記された手紙があった。私は、それを開けたくなり、だからこそ、仮にも、未だ私は生きているのに、私はそれをカタログと一緒に引き千切った。



1944.7月10


 もしたまたま、共有地で私がモーリスの所へ駆け込んでも、私は私の約束を破ることにはならないと思った。そこで私は、朝食後と、昼食後に又、そしてもう一度夕方にうろうろ歩き回ったが、彼を見ることはなかった。私は、六時以降、ヘンリが夕食に客を招いたから、外にいられなかった。演説家が、六月にいたように、又そこにいた。そして痣のある男は、今尚、クライストゥ教を攻撃していたが、誰も気にしていなかった。喩え単に、誰かの為に約束を守ろうとしなくて良い、と彼が私を納得させられても、奇跡は起こらないということを、貴方は信じない。そして私は行って、しばらくの間、彼に耳を傾けたが、ずうっと折に触れ、モーリスが、目に入るかも知れない、と辺りを見回していた。

139

2022年5月5日木曜日

The End of the Affair/GrahamGreene 成田悦子訳

 私は、膝まづき、ベドゥに頭を乗せ、私が帰依出来たらと願った。親愛なる神よ、と私は言った―何故親愛なる、何故親愛なるか?―私に信仰させる。私は信仰する筈がない。私を作り替えて下さい。私は言った。私は意地悪でペテン師で、私は自らを退けます。私は私自身のことは何も成し得ません。私に信仰させて下さい。私はきつく私の目を閉じ、私の爪を私の手の掌の中に、痛み以外、何も感じられなくなるまで、押し付けた。そして私は言った。。私は信じます。彼を生き返らせて下さい。その時、私は信じます。彼に機会を上げて下さい。彼に彼ならではの幸福を感じさせて下さい。 これをして下されば、私は信じます。が、それだけでは十分ではなかった。信じれば傷付かない。だから私は言った。私は彼を愛していますから、もし貴方が彼を生き返らせて下されば、私は何か致します。私はとてもゆっくりと言った。私は、永遠に彼を諦めます。只、見込みがあれば、彼を生き返らせて下さい。そして私は押し当て、押し当て、やっと皮膚を突き破れた。そして私は言った。人々は、互いを見もしないで愛せるでしょ。彼らは、全生涯を通じて、貴方を見もせずに、貴方を愛します。するとその時、彼が、ドアから入って来た。その上、彼は生きていた。そして私は、今、彼なしで始まることの苦しみを思いながらも、私は、彼が、再びドアの下で無事に死んでくれたらと思った。

138

2022年5月4日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

二人が互いに愛し合った時、彼らは、キスに於ける愛情の欠如を偽装出来ず、彼の手に触れて、そこに残されたその僅かな息遣いがあるかどうか、見極めようとしなかったのか?もしも私が彼の手を取り、それを私の方に引けば、それは、ドアの下から、全て自ずと隔たろうとすると分かっていた。今やっと私は、これが、ヒスティアリアだったと分かる。私は、騙された。彼は、死んでいなかった。ヒスティアリア発症時に、人が取り決めることに、人は責任があるのか?又、どんな取り決めを、人は打ちのめすのか?私は、今、ヒスティアリア気味で、全てをここに洗いざらい書いている。しかしそこには、僕は不幸だ、と誰にでも何処ででも、言ってのけられる一人の人物がいるわけではなく、彼らは私に何故と質問し、その質問が決まって始まり、そして私は必ず行き詰まる。私は行き詰まっている場合じゃない、ヘンリを守らなければならない。オウ、地獄へ、ヘンリと一緒に地獄へ。私は、私という者の真実を受け入れようとする誰かを求め、保護は要らない。もし私が、意地悪で、ペテン師なら、意地悪でペテン師を愛する人は、そこには一人もいない?

 私は、床に膝まづいた。私がそんなことをするなんて、分別を失くしていた。私は、今まで、子供のようにそんなことをしようとしたことさえなかった―私の両親は、私以上に祈りを盲信しなかった。私にはまるで口にすべき思いが、胸になかった。モーリスは死んだ。死滅した。魂のようなそんなものは、そこにはなかった。私が彼に上げた半分の幸福さえ、血のように彼の外に流れ出た。彼は二度と幸せになる機会を得ようとはしない。誰かと一緒に、と私は考えた。誰か他に彼を愛し、彼を私が出来る以上に幸せに出来たら。それなのに、今、彼は、その機会を持とうともしない。私は、膝まづき、ベドゥに頭を乗せ、私が帰依出来たらと願った。

137

2022年5月3日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 私は、何故「親愛なる神」と書くのか?彼とは親しくない―私にとってではなく、彼はそうではない。もし彼が実在するなら、その時には、彼は、私の心の中にこの誓いという考えを入れ込み、だから私は、その所為で彼を遠ざける。数分毎に、灰色の石造りの教会や酒場がその輪郭を崩して後方に駆け抜ける。不毛の地は、教会と酒場が溢れている。それに複合的な店、それに自転車に乗った男達、それに草と牛、そして工場の煙突。貴方は、タンクの水を通して魚のように砂じゅうに、それらを見る。そしてヘンリも、タンクの中で待つ、私のキスの為に彼の鼻を持ち上げながら。

 私たちは、あのサイレンに注意を払いもしなかった。それに関心がなかった。私たちは、そんな風に死ぬことを、恐れなかった。しかしその時は、急襲が次から次へと続いた。それは、普通の急襲ではなかった。新聞は、未だに発言を許されていないのに、誰も彼も知っている。これは、私たちが警告されていなかった新たな事態だった。モーリスは、もしも地階のそこに誰かがいたら、と階下へ見に行った―彼は私を気遣い、私は彼を気遣った。私には、何かが起ころうとしているのが分かった。

 彼は、通りのそこで爆発があった時、二分も経ってはいなかった。彼の部屋は、裏にあり、ドアが巻き込まれて開く以外、何も起こらなかったが、幾らか石膏が落ち、私は、爆弾が落ちた時、彼は建物の前にいた事を知った。私は、階段を下った。そこいら中、がらくたと壊れた手すり子で散らかり、玄関ホールは、凄まじい散乱の最中にあった。初め、モーリスは目に入らなかったが、その後私は、彼の腕がドアの下から外に出ているのを見た。私は彼の腕に触れた。私は、それは死んだ手だったと誓ってもいい。

136

2022年5月2日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

私は自分のをしょっちゅう忘れる。フロイトは言うだろう、それも、ヘンリの番号だから、それを忘れようとするのだ。しかし私はヘンリを愛す。私は、ヘンリに幸せになって欲しい。私は、只今日、彼を避けるだけ、彼は幸せで、私は背を向け、モーリスは背を向ける、つまり彼は物事を知ろうとしない。彼は、私が疲れているようだねとか、それは祟りだと思うよとか言う―彼はもはや、あの頃の伴侶を維持しようとして悩もうともしない。

 今夕はサイレンが鳴った―私は、勿論昨夕のことを言っているが、それは何と関係があるのか?不毛の中、そこにはどんな機会もない。不毛の外に、私が望めば出て行ける。私は明日、帰途の列車を捕まえ、彼に電話でベルを鳴らせる。ヘンリは、おそらく未だ田舎にいるだろうから、私たちは一緒に夜を過ごせる。誓いが全てではない。あの大切な―誓い、私が今まで全く知らなかった誰かへの、私が心底信じてはいない誰かへの。私が誓いを破ったのを、私と彼以外、誰も知らない。―それに彼はいないでしょ?彼はいられない。貴方は、慈悲深い神も、この絶望も持てない。

 もし私が帰ったら、私たちは何処にいるのでしょう?サイレンが鳴る前に、その前の年、私たちが、昨日いた場所。終わりを恐れる互いに対して苛立つといい、そこに何も残っていなかった時、命と共に何をすべきか思い巡らしながら。私はもうこれ以上あれこれ考えなくていい。―そこには恐れるものは何もない。これが終わり。それでも親愛なる神よ、愛に向かうこの欲求を抱え、私はどうしましょう。

135

2022年5月1日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene  成田悦子訳

 昨日、私が彼を待っている間に、共有地のとある場所に演説者が現れた。I.L.P.(独立労働党)と共産党、それに冗談ばかり言う男、又、そこには、クライストゥ教を攻撃している一人の男がいた。南ランダン合理主義者協会、或いはそれに似た何らかの名称。彼は、片頬を覆った痣さえなかったら、美貌だったろうに。彼の聴衆は、ほんの少人数で、ヤジを飛ばす人はいなかった。彼は既に死んだ何ものかを攻撃していたが、何故、彼が面倒を引き受けるのか、私は不可解だった。私は、数分立ち止まり、耳を傾けた。彼は神の論争に対して主張していた。私は実際は分からなかったが、そこには―私が一人きりではないと思う、この臆病な窮乏を除く何かがあった。

 私は、心変わりして、彼は家に戻るよと言う電報を送ったかも知れない、と唐突な不安を抱いた。私が何を最も恐れるのか私には分からない―私の落胆か、或いはモーリスの落胆か。それは、私たち二人同時に、同じ様に動かす。私たちは、口論で荒捜しをする。私は私自身に腹が立つし、彼は私に腹が立つ。私は家に戻ってみたが、そこに電報はなく、その上、モーリスに会うのに、十分遅れ、彼の怒りに触れそうで、イライラが募って行った、ところがその時、予期せぬことに、彼は私に優しかった。

 私たちは、以前、こんなにも長い一日を過ごしたことはなく、一緒にいる為に、そこには丸一晩があった。私たちは、レティスにロウルパンにバタ‐割当量を買った―私たちは、たくさん食べられなかった、それは、もう暑かった。それは今も暑い。誰も彼も口々に言う、何て心惹かれる夏かしら、それに私は、ヘンリと落ち合うために田舎へ向かう汽車の中。やがて全て通り過ぎる、未来永劫。私は怯える。これが不毛だ。そこには、辺り一面、誰もいない、何もない。もし私がランダンに居たら、直ぐに潰されるかも知れない。何れにせよ、もし私がランダンに居たら、電話に向かい、私が愛情で分かる唯一の番号のベルを鳴らそうとする。

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