2022年5月3日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 私は、何故「親愛なる神」と書くのか?彼とは親しくない―私にとってではなく、彼はそうではない。もし彼が実在するなら、その時には、彼は、私の心の中にこの誓いという考えを入れ込み、だから私は、その所為で彼を遠ざける。数分毎に、灰色の石造りの教会や酒場がその輪郭を崩して後方に駆け抜ける。不毛の地は、教会と酒場が溢れている。それに複合的な店、それに自転車に乗った男達、それに草と牛、そして工場の煙突。貴方は、タンクの水を通して魚のように砂じゅうに、それらを見る。そしてヘンリも、タンクの中で待つ、私のキスの為に彼の鼻を持ち上げながら。

 私たちは、あのサイレンに注意を払いもしなかった。それに関心がなかった。私たちは、そんな風に死ぬことを、恐れなかった。しかしその時は、急襲が次から次へと続いた。それは、普通の急襲ではなかった。新聞は、未だに発言を許されていないのに、誰も彼も知っている。これは、私たちが警告されていなかった新たな事態だった。モーリスは、もしも地階のそこに誰かがいたら、と階下へ見に行った―彼は私を気遣い、私は彼を気遣った。私には、何かが起ころうとしているのが分かった。

 彼は、通りのそこで爆発があった時、二分も経ってはいなかった。彼の部屋は、裏にあり、ドアが巻き込まれて開く以外、何も起こらなかったが、幾らか石膏が落ち、私は、爆弾が落ちた時、彼は建物の前にいた事を知った。私は、階段を下った。そこいら中、がらくたと壊れた手すり子で散らかり、玄関ホールは、凄まじい散乱の最中にあった。初め、モーリスは目に入らなかったが、その後私は、彼の腕がドアの下から外に出ているのを見た。私は彼の腕に触れた。私は、それは死んだ手だったと誓ってもいい。

136