2022年5月6日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 1944.7月9


 ヘンリと一緒に8.30に間に合った。空席の目立つ一等客室。ヘンリは、イギリス委員会の議事録を声を出して読んだ。パディントンでタクシを捕まえ、ヘンリを省で降ろした。今夜家にいるよう、彼に約束させた。タクシ乗務員は、間違って、私を14番を過ぎた南側に運んだ。ドアは修繕し、正面の窓が板張りしてあった。死を連想するのは怖い。誰でも、とにかく、もう一度生きているという実感が欲しい。私が北側に着くと、そこには、「何も転送しないで。」と、彼らに話した為に、転送されなかった古い手紙があった。古書のカタログ、古い請求書、「緊急、転送請う」と記された手紙があった。私は、それを開けたくなり、だからこそ、仮にも、未だ私は生きているのに、私はそれをカタログと一緒に引き千切った。



1944.7月10


 もしたまたま、共有地で私がモーリスの所へ駆け込んでも、私は私の約束を破ることにはならないと思った。そこで私は、朝食後と、昼食後に又、そしてもう一度夕方にうろうろ歩き回ったが、彼を見ることはなかった。私は、六時以降、ヘンリが夕食に客を招いたから、外にいられなかった。演説家が、六月にいたように、又そこにいた。そして痣のある男は、今尚、クライストゥ教を攻撃していたが、誰も気にしていなかった。喩え単に、誰かの為に約束を守ろうとしなくて良い、と彼が私を納得させられても、奇跡は起こらないということを、貴方は信じない。そして私は行って、しばらくの間、彼に耳を傾けたが、ずうっと折に触れ、モーリスが、目に入るかも知れない、と辺りを見回していた。

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