2023年1月31日火曜日

The Quiet American/Graham Greene 成田悦子訳

 「貴方がたは速く仕事をする。」

 「誰でもこの気候ではするしかありません。」

 彼らはトゥレイを奥へ押し、ドアを閉めた。ゴムが覆い被(かぶ)さった。

 「貴方は我々を全く助けられない?」ヴィゴが尋ねた。

 「全く役に立てません。」

 僕は僕のフラトゥへフォンと一緒に歩いて戻った。僕はもう僕の

品位の上にいなかった。死は虚飾を連れ去るー彼の痛みを見せてはいけない不貞な妻を持つ夫の虚栄心でさえ。彼女はまだそれが身辺に起こった事だと気付かず、僕は彼女にゆっくり話そうにも、まるで為す術を持ち合わせなかった。僕は通信員だった。僕は見出しに思いを馳せた。「サイゴンで忙殺された米国職員。」新聞紙上で働いていると、人は悪いニューズを駄目にする方法を学ばず、今でさえ僕は僕の新聞について考え、彼女に頼まずにはいられなかった、「海外電報局に立ち寄っても貴女はかまわない?」僕は通りに彼女を残して僕の電報を送り、彼女の所に戻った。それは単なる真似事に過ぎなかった。僕は、フランスの通信員は既に情報提供されているだろうという事を、十分過ぎる程知っていた。或いはもしヴィゴが公正に振舞っていたら(何れも可能だった)、その時検閲官達は僕の電報を、フランス人が彼らのものを受取るまで掴んで置くだろう。僕の新聞はパリス日付記入線の下に、先ずそのニューズを持って行くだろう。

21

2023年1月30日月曜日

The Quiet American/graham greene 成田悦子訳

 彼らは角氷のトゥレイのように彼を引っ張り出し、僕は彼を見た。外傷は途方もなく凍っていた。僕は言った、「貴方がたは知っている、それらは僕の面前で再び開く事はない。」

 「批評?」

 「それは対象の一つではないのですか?何か、或いは別の事による苦しい体験の?しかし貴方がたは彼をひどく凍らせてしまった。そういうものは中世には深く凍らせなかった。」

 「貴方は彼に見覚えがありますかますか?」

 「オウはい。」

 彼はこれまで以上に場違いに見えた。彼は故国に留まるべきだった。僕は家族のスナプショトゥ・アルバムで彼を見た、観光用牧場での乗馬、ロング・アイランドゥでの水泳、23階の或るアパートゥマントゥで彼の仲間達と撮ってあった。彼はあの摩天楼や高速エリヴェイタ、アイスクリームやドゥライ・マーティーニ、昼食のミルク、そして特急商船上のチキン・サンドゥウィチに属していた。

 「彼はこれで死んだのではありません、」ヴィゴは言った、胸の傷を指しながら。「彼は沼で溺死しました。私達は彼の肺の中に泥を見付けました。」

20

2023年1月29日日曜日

The Quiet American/Graham Greene 成田悦子訳

 「もめ事があった、」僕は言った、「彼は巻き込まれた。」

 「分かり易く話すように、」ヴィゴは言った、「私は全く気の毒には思いません。彼はたくさんの危険を冒していました。」

 「神は常に我々を救います、」僕は言った、「潔白や美徳から。」

 「美徳?」

 「そう、美徳。彼の流儀で。貴方はロウマン:カサリクです。貴方は彼の流儀を認めようとしない。それにともかく、ひどいイアンキ(米国人)でした。」

 「彼を確認する事を貴方は気になさいますか?私はすまなく思います。それが所定の手順で、非常に素晴らしい手順ではなく。」

 何故彼が米国公使館からの誰かを待たないのか、僕は彼に尋ねる気はなかった、僕はその理由を知っていたから。フランス方式は、我々の冷めた規範によると幾分時代遅れである。彼らは良心、罪の意識を信じ、彼は行き詰まり自らに背きもするから、罪人は罪と向かい合うべきである。僕は今一度自らに言い聞かせた、僕は潔白だと。彼がそこに向かって石段を下りる間中、冷凍装置が地下室で呻っていた。

19

2023年1月28日土曜日

The Quiet American/Graham Greene 成田悦子訳

 「何故貴方は彼を待っていたのですか?」

 「彼が僕に電話を掛けて来ました。彼は何か大切な物を僕に確認しなければと言いました。」

 「貴方は何か少しでも思い当たる事がありますか?」

 「いいえ。何事もパイルには重要でした。」

 「では彼のこの女の人は?ー貴方は何処に彼女がいたか知っていますか?」

 「彼女は、真夜中、外で彼を待っていました。彼女は心配していました。彼女は何も知りません。何故、貴方はまだ彼女が彼を待っていると見て分からないんですか?」

 「そうですね。」彼は言った。

 「それに僕が嫉妬のために彼を殺したと実際貴方は信じられないーならば彼女は何のために?彼は彼女と結婚するつもりでした。」

 「はい。」

 「貴方がたは彼を何処で見付けました?」

 「彼はダカウに向かう橋の下の水中にいました。」

 ヴュー・ムーランは端の傍らに位置していた。そこには橋の上に武装した警官がいて、レスタラントゥには手りゅう弾を締め出すために鉄格子があった。それで、夜、橋を渡っても安全だった、川の向こう側全てが暗くなってからは、ヴィエトウミンの手の内にあったから。僕は彼の死体の50ヤードゥ以内で食事をしてしまった。

19

2023年1月27日金曜日

The Quiet American/Graham Greene 成田悦子訳

 彼女は彼女の遣り方で彼を愛するしかなかったし、彼女は僕に好感を持っていたのではなかったのか、そして彼女はパイルのために僕を去ったのではなかったのか?彼女は若さや希望や真面目さに彼女自身愛着を持ち、今、それらは年齢や絶望よりもっと役に立たなくなってしまった。彼女はそこで僕達二人を見ながら座っていた、そこで彼女はまだ理解していないのだ、と、僕は思った。事実が自宅に着く前に、僕が彼女を連れ去る事が出来たらそのほうがいい事ではある。もし僕が急いで、どっちつかずに終わりに持って行けるのなら、どんな質問にも答える用意があり、だからそんな事は僕が彼女に後から話せばいい、そっと警官の目や堅い事務椅子や蛾が旋回する裸電球から離れて。

 僕はヴィゴに言った、「貴方は何時に興味があるんですか?」

 「6時と10時の間に」

 「僕は6時にカンティネンタルで飲みました。ウエイタ達が覚えているでしょう。6時45分に僕はアメリカの飛行機が荷降ろしされるのを見るために波止場に歩いて下りました。僕はAP通信社のウィルキンスをマジェスティクのドアの側で見ました。それから僕は隣のドアを映画館の中に入りました。彼らはおそらく覚えているでしょうー彼らは釣銭を渡そうとしました。そこから僕はヴュー・ムーランまで輪タクに乗りましたー僕はおよそ8時30分に着いたと僕は思いますーそして一人でディナをとりました。農民共済組合員がそこにいましたー貴方は彼に聞くことが出来ます。それから僕はおよそ10時まで15分前に輪タクに乗って引き返しました。貴方はその運転手をおそらく探せます。僕は10時にパイルを待っていましたが、彼は姿を見せなかった。」

18

2023年1月26日木曜日

The Quiet American/Graham Greene 成田悦子訳

おそらくほんの10日前、彼はボストンの下院を渡り歩いて戻って来た、彼の腕は本でいっぱいで、彼は極東と中国の問題に関して予め目を通して置いた。彼は僕が何を言っても耳を貸す事さえなく、彼は既に民主主義のディレマと西洋の責務に没頭していた、彼は決然としていたー僕は極めて早くそれを知ったー善を為す事、単なる個人にではなく、寧ろ国家、大陸、世界に対して。まあ彼は、今、改善すべき全宇宙を抱え込んで彼のいるべき所にいた。

 「彼は遺体安置室の中ですか?僕はヴィゴに尋ねた。

 「彼が死んだとどうして貴方は知りました?」

それは間抜けな警官の質問、パスカルを読むに値しない男、彼の妻をあそこまで妙に愛するにしても又値しない男だった。貴方は直感なしでは愛せない。

 「罪もないのに、」僕は言った。僕はそれは事実だと僕自身に言い聞かせた。パイルは何時も彼自身の筋を通したのではなかったのか?僕は自らの中の何らかの感情を探った、警官の疑いから来る憤りまで。しかし僕は何一つ見い出せなかった。何者でもなく寧ろパイルが責任を負った。僕達は皆、死ぬ方がましではないのか?阿片が僕の内側で説得した。しかし僕は注意深くフォンを見た、それは彼女には耐え難かったから。

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2023年1月25日水曜日

The Quiet American/Graham Greene 成田悦子訳

 「あれは手りゅう弾?」彼は動揺と願望から尋ねた。

 「最もありそうなのは車の排気ガス、」僕は言った、すると突然彼の落胆が気の毒になった。人はその人自身の未熟さをひどく性急に忘れる、嘗て僕は、彼らがニュースと呼ぶにより相応しい期間の何らかの不満のために、僕は僕自身に興味を持った。それにしても手りゅう弾は僕に放尿した、それらは何か地方紙の後方の頁に一覧表にされていたーサイゴンで昨夜夥しい数の、ショロンで夥しい数の、それらがイウアラプの新聞を構成する事はなかった。通りに可愛らしい平たい人影が現れたー白い絹のズボン、ピンクの長いぴったり合った上着、そして藤色の模様が腿で裂けていた。僕は、郷愁と共に彼女達を観察した、僕がいずれこれらの地域を離れる時、感じるに決まっていると僕には分かっている。「彼女達は可愛いでしょ?」僕は僕のビアを飲みながら言った、するとパイルは、彼女達がカティナ街の方へ向かう時、彼女達に視線をちらっと投げ掛けた。

 「オウ、確かに、」彼は無関心気に言った、彼は真面目なタイプだった。「公司は、これらの手りゅう弾に非常に関心を寄せています。そりゃあ極めて厄介です、彼が言うには、例えばそこで事件があればー僕たちの一人を巻き込む、と僕は言っているのですが。」

 「僕たちの一人を巻き込む?そう、僕はそうなると深刻だと思っています。国会はそれを良しとはしないでしょう。」何故人は無邪気な子供をからかいたがるのか?

16

2023年1月24日火曜日

The Quiet American/Graham Greene 成田悦子訳

阿片は機転の利く貴方を作るーおそらく単にそれが神経を和らげ感情を沈めるだけだから。何一つ、死さえさほど重要に思えない。フォンは、僕は思った、彼の語調を掴んでいなかった、鬱々として終わった事のような、それに彼女の英語は酷く下手だった。彼女が事務椅子のそこに座っている間、彼女は根気よくパイルをじっと待っていた。僕は、その瞬間、待つのを止めてしまった。そして僕は、ヴィゴがそれら二つの事実を受け入れつつあるのが自ずと分かって来た。

 「初め、どんな風に彼と出会ったのですか?」ヴィゴは僕に尋ねた。

 何故僕に会ったその人物がパイルだった、と僕は彼に説明すべきなのか?僕は去年の9月、カンティネンタルのバーへと四角い広場を横切って近付く彼を見掛けた、間違えようもなく若い、ダートゥのように僕に投げ付ける人慣れしない顔。彼のガング風の脚と彼のクルー・カトゥと彼の広いカムパス的凝視を持ち、彼は害悪を欠いているように見えた。路上のテイブルは、その殆どが満席だった。「ご迷惑でしょうか?」彼は正真正銘の礼儀正しさで尋ねて来た。「僕の名はパイルです。僕はここでは新米です、」そして彼は椅子を一周りして彼自身を折り畳み、ビアを注文した。その時、彼は強い正午の閃光を浴び、素早く上空を見た。

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2023年1月23日月曜日

The Quiet American/Graham Greene 成田悦子訳

 「貴方は彼の友人のようだ。」ヴィゴは言った、僕を通り過ぎてフォンを見ながら。現地の警官が3カプのブラックカフィを持って入って来た。

 「それともお茶の方がよかったでしょうか?」ヴィゴは尋ねた。

 「爆はただの友人です、」僕は言った。「どうして、いけませんか?僕は一日家に帰ろうとしてはいけませんか?僕は彼女を僕と一緒に連れて行く事は出来ません。彼女は、彼と一緒だと申し分ないのですが。それが道理をわきまえた解決です。それに彼は彼女と結婚するつもりだ、と彼は言います。彼はそうしても構わない、貴方も御存知だ。彼は彼なりにいいやつです。真面目で。あの騒々しいカンティネンタルの無礼なやつらの一人ではない。静かなアメリカ人、」僕は彼を正確に要約した、僕は「青い蜥蜴(とかげ)」、「「白い像」と言ってもよかったが。

 ヴィゴは言った、「はい。」彼は僕が言ったのと同じくらい正確に彼の真意を伝えようとして、彼の机の上の言葉を探しているように見えた。彼は、僕たちの一人が話すのを待ちながら熱い事務所のそこに座っていた。一匹の蚊が攻撃するためにブンブン呻り、僕はフォンを見つめた。

14

2023年1月22日日曜日

The Quiet American/Graham Greene 成田悦子訳

「私は貴方がたに2、3質問したいのですーパイルについて。」

 「貴方はその質問は彼にした方がよい。」

 彼はフォンの方を向き、フランス語で彼に鋭く尋問した。

「パイルさんとどのくらい暮らしました?」

 「ひと月ー私は分かりません、」彼女は言った。

 「彼は貴女に幾ら払っています?」

 「貴方には彼女にそれを聞く権利は全くない。」僕は言った。「彼女は売り物ではない。」

 「彼女は貴方と暮らした事もあったんじゃありませんか?」彼はぶっきらぼうに尋ねた。「2年間。」

 「僕は貴方がたの戦争を取材する事になっている記者ですー貴方が彼を許す限り。おまけに貴方のスカンダル・シートゥに寄稿するよう僕に頼まないで下さい。」

 「貴方はパイルについてどんな事を知っていますか?どうか質問に答えて下さい、ファウラさん。私はそれを尋ねたくありません。しかしこれは重大です。どうかそれが非常に重大だと僕を信じて下さい。」

 「僕は情報井提供者ではありません。パイルについて僕が貴女に話せる事なら何でも、貴方は御存知です。年齢32、経済援助私設団員、国籍アメリカ人。」

13

2023年1月21日土曜日

The Quiet American/Graham Greene 成田悦子訳

 それが、何故僕が公安でフランスの警官から煙草を拒んだかだった。三服目の後、僕は僕の気持ちが明瞭で敏感になったと思った。それで、主要な尋問を見落とす事もなく、簡単にこんな決定を下す

事が出来たー彼らは僕から何を欲しがるのか?僕はヴィーゴに何度か前にパーティで会ったー彼は、不釣り合いにも彼の妻と相思相愛の仲に見えたから、僕は彼に気付いた、彼を無視した、けばけばしく、上辺だけの金髪の女。今、時間は朝の2時で、緑色のサンバイダを着け、煙草の煙と酷い暑さの中に、疲れ、意気消沈して座り、彼は、暇潰しに彼の机の上にPascal一巻を開きっ放しにしておいた。僕抜きでフォンに尋問する事を、彼に許すのを僕が拒んだ時、彼は直ぐに譲歩した、溜息一つ吐いて、それはサイゴンに付きものの、熱さに付きものの、又あらゆる人間の具合に付きものの彼の疲労困憊を表していた。

 彼は英語で言った、僕が貴方に来るようにお願いする事にしました、僕は大変申し訳なく思っております。」

 「僕は懇願されたのではない。僕は命令されました。」

 「オウ、概して原住民の警官ー彼らは理解しない。」

彼の目はLes penséesの1頁上にあり、まるで彼がそうしたうんざりする議論に未だに夢中になるかのように。

12

2023年1月20日金曜日

The Quiet American/Graham Greene 成田悦子訳

 彼は、それらは彼の指揮権です、とただ繰り返した。

 「朝に僕が出掛けましょう。」

 「le chungについて、」彼は言った、少し、手際のいい、頑固な姿勢。そこに議論の余地はなく、だから僕は起きて、僕のタイと靴を身に着けた。ここで警官は最後の指示をした、彼は僕の通達の命令を取り消せた、彼らは記者会見から僕を締め出せた、彼らは、例えば彼らが選択すれば、僕に出国許可を拒めさえした、これらは開かれた合法の秩序だったが、法律遵守は戦時の国家において不可欠ではなかった。僕は、突然、訳も分からず、彼の料理人を失ってしまった一人の男を知っていたー彼は、ヴィェトゥナムの公安に彼を追ったが、そこの警官達は尋問後釈放したという事を彼に保証した。彼の家族は、再び彼を見る事はなかった。おそらく彼はカミュにストゥに加わったか、おそらく彼はサイゴン周辺で活躍する非公式の軍隊の一つに入隊したのだーホアハオとかカオダイストゥとかチェ軍司令官とか。おそらく彼はフランス刑務所にいた。おそらく彼は幸運にも中国郊外クーロンの少女達からお金を稼いでいた。おそらく彼らが尋問した時、彼の心が屈してしまった。僕は言った、「僕は歩く気はないよ。貴方がたは輪タクにお金を払う覚悟でしょ。」何者かは何者かの尊厳を保とうと覚悟した。

11

2023年1月19日木曜日

The Quiet American/Graham Greene 成田悦子訳

 「僕がパイルだったらなあ。」僕は声に出して言った、それでも苦痛は限られていて、我慢出来たー阿片はそのために経験した。誰かがドアを叩いた。

 「パイル、」彼女は言った。

 「いや、それはの彼のノックじゃない。」

 誰かが又情け容赦なくノックした。黄色い木を、再びその花びらを僕のタイプライタの上にそれが浴びせるように揺さぶりながら、彼女は素早く起き上がった。ドアが開いた。「ファウレアさん、」声が指揮権を帯びていた。

 「僕がファウラです、」僕は言った、僕は警官のために起きようとはしなかったー僕の頭を持ち上げなくても、僕には彼のカキ色のショーツが見えた。

 彼はほとんど理解出来ないヴィェトゥナム訛りのフランス語で、僕が直ぐに必要とされている、と説明したー直ぐにー大急ぎでー公安に。

 「フランスの公安にそれともヴィェトナムの公安に?」

 「フランスの。」彼の口の中でその言葉は「フランクン。」のように響いた。

 「どんな事で?」

 彼には分からなかった。僕を連行する事、それが彼の指揮権だった。

 「あんたも、」彼はフォンに言った。

 「貴方が夫人に話す時は、貴女と言ってくれ、」僕は彼に話した。「彼女がここにいるとどうして貴方がたは知ったのですか?」

10

2023年1月18日水曜日

The Quiet American/Graham Greene 成田悦子訳

 「僕は知りようがない。」

 「もし彼がお前と一緒に夕食を食べられなかったら、彼はここには来ないだろう、と彼は私に話したの。」

 「心配しないで。彼は来るよ。僕にもう一服パイプを作ってくれる?」彼女が炎の上に折れ曲がった時、ボドゥレイアの書いた詩が僕に浮かんだ。

 心ゆくまで愛そう

 愛しやがて死ぬ

 国はお前に似つかわしい

河岸に出て船に泊まった、「その気分は東方を流離う」もし僕が彼女の肌を嗅げば、それは阿片の気の遠くなりそうな香りがするだろうと僕は思い、彼女の色は小さな炎の色それだった。僕は北の運河の側の彼女のドゥレスの花を見た。彼女は草のように土着だった、そして僕は二度と故国に帰りたくなかった。

9

2023年1月17日火曜日

The Quiet American/Graham Greene 成田悦子訳

オルメイ街のそこには一軒いい家があるんだ。僕達イウアラプ人は何でもない事に騒ぎ立てる。貴女は喫わない男と暮らすべきではない、フォン。」

 「でも彼は私と結婚しようとしようとしているの。」彼女は言った。

 「今直ぐにでも。」

 「当然だ、それは別の問題だ。」

 「私、もう一度貴方のパイプを作りましょうか?」

 「うん。」

 もしパイルが来なければ、その夜、彼女は僕と一緒に眠る眠る事を承諾するだろうか、僕は思い巡らした。しかし4服目を喫ってしまった時、僕はもう彼女を欲しがらないという事は、僕が知っていた。勿論ベドゥの中で僕の傍らの彼女の腿を感じる事は乗り気ではあったー彼女は何時も仰向けに寝た、そして僕が朝起きた時、僕は一服と共にその日をスタートゥ出来た、僕自身の仲間と一緒ではなく。「パイルは今はもう帰らないよ。」僕は言った。「ここに居なさい、フォン。」彼女は僕にパイプを差し出し、彼女の頭を振った。その時までに、僕は阿片を喫い込んでしまっていた、彼女の存在、或いは不在など殆ど問題外だった。

 「何故パイルはここにいないの?」

 「どうして僕に分かる?」

 「彼はチェ軍司令官に会いに行きましたか?」

8



2023年1月16日月曜日

The Quiet American/Graham Greene 成田悦子訳

僕は僕のパイプが好きだった。真っ直ぐな竹2フィートゥ以上、どちらの端も象牙。丈の三分の二下は鉢で、昼顔のように逆向きになっていて、凸面の縁は阿片の常習的な練りによる光沢があリ、黒みがかっていた。今、手首の一振りと共に彼女は小さな空洞の中に針を突っ込み、阿片を放ち、炎の上に裏返した。僕に向けてしっかりとパイプを握りながら。僕が喫い込むと、阿片の数珠が静かに滑らかに泡立った。

 熟達した吸飲者は、一息でパイプ全体を引き下ろせる、しかし僕は何時も5、6服で喫う事にしていた。それから仰向けになった、皮の枕の上の僕の首と共に。その間に、彼女は2服目のパイプを用意した。

 僕は言った、「貴女は分かってる、実際、それで昼間と同じくらいすっきりする。パイルは僕がベドゥの前に2、3服喫うのを知っているが、彼は僕の邪魔をしたがらない。」

 「彼は朝には周囲にいるよ。」

 針を処分して、僕は2服目を喫った。僕がそれを下に置いた時、僕は言った、「何も心配する事はない、何も心配する事はない、全く。」僕はお茶を一口飲んで、僕の手を彼女の腕の窪みの中で保った。「貴女が僕を残して去った時、」僕は言った、「仰向けに倒れるために、僕にはこれがあった、それは幸運だった。

7

2023年1月15日日曜日

The Quiet American/Graham Greene 成田悦子訳

 「彼はそのまま、フォン?」

 彼女は笑った、それから僕は彼女がマチを擦るのを聞いた。「恋愛中?」ーおそらくそれは彼女が理解しなかったフレイズの一つだった。

 「貴方のパイプを作りましょうか?」彼女は尋ねた。

 僕が僕の目を開けた時、彼女はラムプに火を点け、トゥレイが既に用意されていた。ラムプの灯かりは、僅かな阿片のペイストゥを熱しながら、彼女の針をくるくる回しながら、彼女が集中して眉を寄せるに伴い、炎の上に折れ曲がると、彼女の肌を暗い琥珀の色に変えた。

 「パイルは未だ喫わないの?」僕は彼女に尋ねた。

 「いえ。」

 「貴女は彼に作らなくちゃ、それとも彼は戻って来る気がないの?」喫った愛人は、フランスからでさえ、必ず戻って来るに決まっているというそれは、彼女達の盲信だった。男の性的能力は、喫う事によって傷付けられるかも知れない、それにしても彼女達は何時も性的能力のある愛人に対する忠誠を好む。今、彼女は鉢の中高の縁の上に熱いペイストゥの小さな玉を練っていた、そして僕はその阿片を嗅ぐことが出来た。そこら辺にそれに似た匂いは全くなかった。ベドゥの側の僕の目覚まし‐時計が12時-20分を知らせたが、既に僕の緊張は切れていた。パイルは落としてしまった。ラムプは、彼女が長いパイプを手入れすると彼女の顔を照らし、彼女は子供に向けたかも知れない真剣な注意を払って、その上に折れ曲がった。

6

2023年1月14日土曜日

The Quiet American/Graham Greene 成田悦子訳

 「彼は長くはかからないでしょう、」彼女は、彼の不在に僕が慰めを必要とするかのように言った。

 彼女達は一緒にどんな話をするのか、と僕は不思議だった。パイルはとても真面目だったし、僕は極東に関する彼の講義を受けて来た、僕が数年抱え込んだのと同じ事を、何か月かの間に、彼は知ってしまった。民主主義は彼の別の主題だったー彼は断言し、アメリカ合衆国が世界のために何をしているかに関する、更に険悪化させる見解を持っていた。もう一方のフォンは、驚くほど無知で、 もしヒトゥラが会話の中に登場したら、彼女は彼が誰かを尋ねるために話の腰を折っただろう。彼女はドイツ人にもポウランドゥ人にも一度も会った事がなかったから、その説明は益々難しくなるだろうし、イウアラプの地理の非常に曖昧な知識だけは持っていた、しかしプリンセス・マーガレトゥについては確かに僕よりずっと彼女は知っていた。僕は、彼女がベドゥの端にトゥレイを置くのを耳にした。

 「彼は貴女にまだ夢中か、フォン?」

 貴方と一緒にベドゥへ安南人を誘う事は、小鳥を捕まえる事に似ている。彼女達は貴方の枕の上で震え歌う。そこには、僕がフォンのように歌う声をした者は彼女達の中に一人もいない、と思ったひと時があった。僕は僕の手を差し伸べて、彼女の腕に触れたーその骨もまた、鳥のもののように脆かった。

5

2023年1月13日金曜日

The Quiet American/Graham Greene 成田悦子訳

 「彼女達は何について話しているの?」

 「私が家に帰ったと彼女達は思っているの。」

 僕の部屋の中の僕が中国の新年のために何週間も前に準備した木は、その黄色い花の大半を落としてしまった。それは僕のタイプライタのキーの間に落ちていた。僕はそれをすっかり拾った。「貴方は動揺してるのね、」フォンが言った。

 「そりゃあ、彼に似つかわしくないもの。彼は時間を守る人だ。」

 僕は僕のタイと僕の靴を脱ぎ、ベドゥで横になった。フォンはガスストウヴに火を点け、お茶の水を沸かし始めた。それが六か月前だったらなあ。「貴方はもうすぐ遠くへ行こうとしている、と彼が言うの。」彼女は言った。

 「おそらく。」

 「彼は貴方がとても好きよ。」

 「何一つなくても彼に感謝する。」

 僕は彼女が彼女の髪を違う風にしていたのを見た、それが彼女の肩の上に、黒く真っ直ぐに落ちるにまかせて。僕はパイルが一度役人の娘になったかと思った手の込んだ整髪を非難したことがあったのを思い出した。僕がその目を閉じる、すると彼女は、彼女が居るのが当然だった頃と再び同じだった。彼女は湯気のシューっという音、茶碗のチリンと鳴る音だった。彼女は確かな夜という時間、休息という契りだった。

4

2023年1月12日木曜日

The Quiet American/Graham Greene 成田悦子訳

僕が隣の戸口で待つ女を見た時、僕は室内に入ろうとして向きを変えた。僕には彼女の顔は見えなかった、ただ、白い絹のズボンと長い花柄のロウブだけとはいえ、その全てで僕は彼女に気付いた。彼女はあんなにも度々、丁度この場所と時間に帰宅する僕を待っていたのだ。

 「フォン、」僕は言ったーそれはフィーニクスを意味するが、今日では伝説上のものと程遠く、その灰から甦るものは何一つない。彼女は、パイルも同じように待っています、と彼女が僕に打ち明ける機会を作る前に、僕は知っていた。「彼はここにはいない。」

 「私は知っています。窓際に貴方一人が見えました。」

 「貴女は良ければ二階で待つといい。」僕は言った。「彼は直ぐにやって来るよ。」

 「私はここで待つ方がいい。」

 「良くない。警官は貴女を捕まえるかも知れない。」

 彼女は二階へと僕に従った。僕は僕が作ってもかまわない幾つもの皮肉で不愉快な冗談を思い付いた。彼女の英語も彼女の仏語もどちらも、その皮肉を彼女なりに理解するには十分巧みとは言い難かった、それに、不思議な事に、僕には彼女を傷付けるどころか、僕自身を傷付ける事さえ全く眼中になかった。僕達が踊り場に着いた時、老婦人は皆、彼女達の頭の向きを変え、僕達が通り過ぎるとすぐに彼女たちの声は甦り、まるで彼女達が一斉に歌い出したかのようになった。

3

2023年1月11日水曜日

The Quiet American/Graham Greene 成田悦子訳

 PART ONE


1


夕食の後、僕は、カティナトゥ街を見渡す僕の部屋で、パイルを座って待っていた。彼は言った、「僕は、遅くても10時までには貴方と合流するつもりです、」そして真夜中が打った時、僕はそれ以上じっとしていられなくて、通りに下りた。黒いズボンの大勢の老婦人が、踊り場にしゃがんでいた。時は二月、ベドゥの中では彼女達にしても暑過ぎるよなあ。一人の輪タク運転手が、河畔の方へゆっくりとペダルを踏んで行き過ぎ、彼らが新しい米機を陸揚げした所で、ラムプが燃えているのが僕には見えた。長い通りの何処にも、そこら辺にパイルの痕跡は、まるでなかった。

 成り行きからすると、僕は自らに話し掛けた、彼は何か訳があって、米公使館で手間取っているのかも知れない、それにしても確かにそういう場合、彼はレスタラントゥに電話を掛けるだろうー彼は、僅かな礼儀正しさでさえ極めて細心の注意を払った。

2

2023年1月10日火曜日

The Quiet American/Graham Greene 成田悦子訳

The Quiet American

Graham Greene

成田悦子訳


僕は感動されるのを好まない、というのは、その根ざすところは興奮であり、及ぶところは実に危うい事態である。僕は何処か作為的である事、或る、心や非論理的過程の背信に身震いし、僕達は僕達の恐るべき義務感を伴ってこうした事態に平伏する。 A.H.Clough


「今日は、身体を葬る事に向かい、魂を救う事に向かう新しい創作の特権的時代であり、挙(こぞ)って最適な意図を以(もっ)て伝えている。」 Byron

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