「それは、彼が今までこのくらいは婦人に近付いた事があるという事だと僕は言うべきだろう。」
「彼は随分下手に踊るのね。」彼女が言った。
「そうだね。」
「私、少しの間貴方と座っていていい?私の友達はとても退屈なの。」
音楽が止まり、パイルはフォンにかたぐるしそうにお辞儀をした、それから彼女を後ろに導き、彼女の椅子を引き出した。彼の形式ばった行為は彼女を喜ばせたと僕は話して置こう。僕に対して彼女が話している事の中に、彼女がどれほど淋しい思いをしたかと僕は考えた。
「これはフォンの姉妹、」僕はパイルに言った。「ヘイさん。」
「僕は貴方に会えてとても嬉しい、」彼は言い、顔を赤らめた。
「貴方はニューヨークからいらっしゃったの?」彼女が尋ねた。
「いいえ。ボストンから。」
「それも合衆国の中にありますか?」
「オウ、そう、そう。」
「貴方のお父様はビジネスマンですか?」
「いいえ、実のところ。彼は教授です。」
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