2022年10月7日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 僕は、ヘンリに呼び掛けた。「僕は、準備が出来たよ。」そして僕たちは、ポンテフラクトゥ・アームズへと公有地を越え、並んで歩いた。灯火が伸び、恋人たちは、道路が交差する所で待ち合わせ、草の生えたもう一方の側には、壊された階段のあるその家があり、彼の人は、この希望のない手足の不自由な暮らしを、僕に返した。

 「僕は、僕たちのこうした夕方の散歩の度に前向きになる、」ヘンリが言った。

 「そうだね。」

 僕は思った、朝の内に僕は、医者に電話を掛けて、宗教的治療が可能かどうかを、彼に尋ねよう。するとそこで僕は思った、ましではないが、誰も知らなければ、誰でも無数の治療を予想出来る・・・僕は、ヘンリの腕に僕の手を乗せ、それをそこにそのままにした。僕は、今こそ僕たち二人の為に、強くなる。彼は、未だ真剣に心配していなかった。

 「それは、必ず僕が前に目を向ける唯一の事だ、」ヘンリが言った。

 僕は、初めに、これは憎悪の記録になると書いた。夕方のグラスのビアの為に、ヘンリの側でそこを歩きながら、僕は、冬の気配を添えるように感じる一つの願い事を思い付いた。オウ神よ、十分にして下さった、十分僕を身包み剝がして頂きました。僕は、愛する事を学ぶには、疲れ果てて、年も取りました、ずうっと、僕を一人で放って置いて下さい。




2022年10月7日金20時27分、

「The End of the Affair」の翻訳が終わりました。

今日で終わりました。

次の翻訳は、2年がかりです。

もう決めました。

何をされても、どうなっても、その小説の翻訳をします。


私は、翻訳というものを変えています。

私が全てを変えようと思っています。


私は、誰より翻訳したものを読み、誰より影響を受けました。

それは、読んだ本の名前や数の事を言っているのではありません。

2022年10月6日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 僕は、紙の剥ぎ取り式ノウトゥを見た。それは、頭髪の切れ端以上に人格を持たなかった。貴女は、貴女の唇や指で髪に触れられ、そして僕は、心の死に直面し、参っている。僕は彼女の体を求めて暮らし、僕は彼女の体が欲しかった。それなのに、日記は、僕が持つ全てだった。だから食器戸棚の中に戻して、それを閉じ込めた。彼女が居なくても、それを葬り、もっと完全に僕の手元に残して置く事、それは、彼の人にとって更なる勝利にならなかったのでは?僕は、サラーに言った、これでいい、それで貴女の行く道を手に入れなさい。僕は、貴女が生きていて、彼の人は実在すると信じる。愛へと、この彼の人の憎悪を変えようとする貴女の願い以上に、それは奪ってしまう。彼は僕を身包み剥ぎ取り、あの王のように、僕の中の彼の人が欲しがるものを僕は彼の人を身包み剥がすでしょうと貴女は書いた。憎悪は、僕の脳の中にあり、僕の胃の中、或いは僕の皮膚にもない。それは、発疹や痛みのように除去されようがない。僕は、貴女を愛する程に、貴方を憎んだ?それに、僕は僕自身を憎みはしない?

292

2022年10月5日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 僕は思った、貴女は、そこを間違った、サラー。少なくとも貴女の願いの一つは、叶えられなかった。貴女,貴女以外の者に、僕はどんな安らぎも覚えないし、僅かな愛情も抱かない。僕は彼女に言った、僕は憎しみの内にある男だ。しかし僕は、さほど憎悪の虜になっていないのに、僕は、他の人々をヒスティアリア状態だと言って憚らなかったが、僕の遣う言葉は、過剰だった。僕は、彼等の不誠実を見て取れた。僕が主として感じた何かは、不安より憎しみの方が負けていた。もしこの神が存在するなら、僕は考えた、そしてもし貴女でさえ―貴女の性欲や、貴女の姦通や、貴女が何時も口にする弱気な嘘で、このように変われるのなら、僕たちは、アナタが急いで行くように、急いで行けば、目を閉じれば、一度、皆の代わりに急いで行けば、皆死人になれるだろう。もし貴女が聖人なら、聖人になる事、それはそんなに難しくない。それは、彼が、僕たちの誰かを要求し、急いで行くことが出来る何かだ。しかし僕は急いで行きたくない。僕は、僕のベドゥに座って、神に言った、貴方は、彼女を奪ったが、貴方は、未だ僕を手に入れていない。僕は、貴方の狡猾さを知っている。高みへと僕たちを持ち上げ、僕たちに全世界を提供する、それは、貴方だ。貴方は、僕たちを急いで行くように誘っている悪魔、神だ。何れにせよ僕は、貴方の安らぎが欲しくない、僕は貴方の愛が欲しくない。僕は、何かしら実に単純で、実に安易なものが欲しかった。僕は、生きている限り、サラーが居なくてはならなかったのに、貴方は、彼女を何処かへ連れ去った。貴方の見事な計画で、収穫農機具が、鼠の巣を潰すように、僕たちの幸福を潰す。僕は、貴方を憎む、まるであなたが実在するかのように、僕は貴方を憎む、神よ。

291

2022年10月4日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

僕は、二階の僕の引き出しの中の日記を思い出し、僕は考えた、あれも始末しよう、あれは、彼らのいいように解釈されてしまうから。彼女を救う事、それは、自らの為に僕たちが一つづつ彼女の特徴を壊そうとするかのようだった。彼女の子供の頃の本も、危険だと分かっていた。そこには写真があった―一枚はヘンリが持って行った。報道機関は、それを持っていなければならない。モードゥは信用するに値するか?僕たちは二人は、一緒に暫定的な家を築き上げようとして来たのに、それも中断される事になる。

 「僕たちの酒飲みは、どうする?」ヘンリが言った。

 「僕は、もうちょっとで加わるよ。」

 僕は、僕の部屋に上り、その日記を取り出した。僕は、カヴァを裂いて剥がした。それは、丈夫だった。綿の裏張りは、繊維状になって外れていた。それは、翼を引き裂かれている一羽の鳥のようで、ベドゥの上のそこに、日記が横たわっていた。紙の剥ぎ取り式ノウトゥ、羽のない、傷付いた。最後の頁が上向きになっていたので、僕は、又それを読んだ、「貴方は、そこで消耗するように、私を導いていた、そうして、或る日、私たちは、この貴方の愛以外、何も残っていなくてもよくなってしまった。それにしても貴方は、私には立派過ぎます。辛くて、私が貴方に縋(すが)る時、貴方は、私に安らぎを下さった。それを彼にも授けて下さい。彼にこの安らぎを授けて下さい―彼は、もっとそれを必要としています。」

290

2022年10月3日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「彼は、何を欲しがったの?」

 「彼の顔が治った、それだけ、僕はその専門家の名前を僕に知らせるように頼んだ。僕には、友達がいて・・・」

 「電気療法?」

 「僕には、確信がない。 は、元はヒステリク状態だと、僕は、どこかで読んだ事がある。精神医学とラディウムの混合。」それは、もっともらしく聞こえた。多分、結局、それが真実だ。他の符合、同じナムバ プレイトゥの二台の車、そして僕は、飽き飽きした感じで思った、どれだけ多くの符合が、そこにあればいいというのか?葬式での彼女の母親、その子供の夢。これが、毎日毎日続くというのか?僕は、彼の強靭さを遥かに‐超えて、潮流が彼自身より優勢だと知っている泳ぎ手のような気がしたが、喩え僕が溺死しても、僕は、最後の瞬間までヘンリを支え続けるつもりだった。喩えこの事が論ぱくされなくても、喩えそれが新聞に載っても、何処でそれが終わるのか誰もそれを語れないのだから、結局、それは、友人の義務ではなかったのか?僕は、マンチェスタのバラを思い出した―あの詐欺は、それはどういう事かを承認されるのに長い時間がかかった。人々は、当時、酷くヒステリク状態だった。そこには、遺品‐漁り、祈りをする人々、行列があるのかも知れなかった。ヘンリが、知られていなくても、醜聞は凄まじい。おまけに、二人の生活の事を質問し、ドーヴィル近くの洗礼の奇妙な物語をほじくり返す新聞雑誌記者連中。宗教的報道機関のその低俗さ。僕には、見出しが想像出来ないし、見出しは更なる「奇跡」を産み出すだろう。僕たちは、しょっぱなに、この事を葬らなければならなかった。 

289

2022年10月2日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「どのようにして?僕は未だ知らない・・・」

 彼は陰謀の恐ろしい雰囲気で言った、「貴方と僕は道理が分かる。その周辺、そこはどうにもなっていません。それは、そこを陰気にしている僕の右ではありません。それは、・・・でした。」しかし、それは、「符合」に向かう二者択一だったというあの馬鹿げた新聞の言葉を使える前に、僕は、受話器を置いた。僕は、彼の握り締めた右手を覚えていたし、僕は、死者がそうして包み込まれ、彼らの衣服のように分けられてもいいのかという僕の怒りを覚えていた。僕は思った、彼は、非常に誇り高く、彼は、何時も或る種の啓示を授からずにはいられない。一、二週間の内に、彼は、それについて共有地で話し、彼の治った顔を見せようとするだろう。それは、新聞に登場するだろう。「合理主義者の演説家、奇跡的治癒によって転向した。」僕は、符合に、ありったけの僕の信条を結集しようとしたが、僕は考えた挙句、妬みを伴うそれは、僕には何の遺品もなかったから、彼女の髪の上に、夜に、横向きになっている潰れた頬だけだった。

 「それは誰なの?」ヘンリが尋ねた。僕は、彼に話すべきかどうか、瞬間、躊躇いはしたが、ふと、僕は思った、だめだ。僕は彼を信用していない。彼とクロムプトン神父は一緒になるだろう。

 「スマイズ、」僕は言った。

 「スマイズ?」

 「サラーがよく訪ねたあいつ。」

288

2022年10月1日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

僕は、彼の肩からふけの数粒を払った。「オウ、大丈夫、ヘンリ・・・」するとその時、僕たちが動こうとする前に、ベルが又鳴り始めた。

 「そんなの放って置こう、」僕は言った。

 「僕は、出た方がいい。貴方には分からない・・・」彼は彼の靴‐紐をぶら下げたまま起き上がり、彼の机の方へ向かった。「今日は、」彼は言った、「マイルズが話しています。」彼は、僕に受話器を渡して安心して言った、「それは貴方へだ。」

 「はい、」僕は言った、「ベンドゥリクスです。」

 「ベンドゥリクスさん、」男の声が言った、「貴方に電話を掛ける事にしようと思いました。僕は、今日の午後、貴方に真実を打ち明けなかった。」

 「貴方はどなた?」

 「スマイズ、」その声が言った。

 「僕は、分からない。」

 「僕は、私設療養所へ行ったと貴方に話しました。そこに僕は行っていません。」

 「実際、それは、僕に関係などある筈がない。」

 彼の声は、電話を通して僕に届いた。「もちろん、それは関係あります。貴方は、僕に耳を傾けようとしない。誰も僕の顔を取り扱っていません。それは。すっかり奇麗になりました、或る夜に、突然。」

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