僕は、彼の肩からふけの数粒を払った。「オウ、大丈夫、ヘンリ・・・」するとその時、僕たちが動こうとする前に、ベルが又鳴り始めた。
「そんなの放って置こう、」僕は言った。
「僕は、出た方がいい。貴方には分からない・・・」彼は彼の靴‐紐をぶら下げたまま起き上がり、彼の机の方へ向かった。「今日は、」彼は言った、「マイルズが話しています。」彼は、僕に受話器を渡して安心して言った、「それは貴方へだ。」
「はい、」僕は言った、「ベンドゥリクスです。」
「ベンドゥリクスさん、」男の声が言った、「貴方に電話を掛ける事にしようと思いました。僕は、今日の午後、貴方に真実を打ち明けなかった。」
「貴方はどなた?」
「スマイズ、」その声が言った。
「僕は、分からない。」
「僕は、私設療養所へ行ったと貴方に話しました。そこに僕は行っていません。」
「実際、それは、僕に関係などある筈がない。」
彼の声は、電話を通して僕に届いた。「もちろん、それは関係あります。貴方は、僕に耳を傾けようとしない。誰も僕の顔を取り扱っていません。それは。すっかり奇麗になりました、或る夜に、突然。」
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