2022年3月31日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

  「爆弾が二つも、一か所に落ちない。」僕は言ったものの自動的に、それはしばしば誤りを立証して来た迷信の一つだったから。

 「貴方は怪我をしているのね。」

 「僕は、歯を二本失くした、それだけ。」

 「こっちに来て。貴方の顔を私が洗ってあげるわ。」彼女は、僕がもう一つのの異議を行う間もなく、―手当てを終えた。僕が嘗て知り合った女は、同じように速く手当てができない、彼女は僕の顔をゆっくりと注意深く洗った。

 「貴女は床の上で何をしていたの?」僕は尋ねた。

 「祈っていたの。」

 「誰のことを?」

 「生きとし生けるもの全てのことを。」

 「階下に降りた方が、もっと気が利いていたよ。」

 彼女の真剣さは、僕を驚かせた。僕は彼女をそのことから離れてからかいたくなった。

 「私はそうしたのよ。」彼女が言った。

 「僕は貴方に聞いていなかったよ。」

 「そこには誰もいなかった。ドアの下から伸びている貴方の腕を見るまで、私には貴方が見えなかった。私は貴方が死んだと思った。」

 「貴女はやって来て試してみたってよかった。」

 「私はそうした。私はドアを持ち上げられなかった。」

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