ドアの下から抜け出し、埃を払った。僕は地下室に向かって呼び掛けたが、そこには誰もいなかった。爆破された出入口を通り越し、僕は灰色の朝の光を見ることができた。崩壊したホールから外に伸びているそこはかと知れない喪失感に見舞われた。僕は木だと悟った。それは明かりを締め出して来た一本の木が、単に存在に終止符を打ったに過ぎず―そこには倒れた幹さえ跡形もなかった。かなり離れて、管理人が口笛を吹いていた。僕は二階に上がった。最初の飛行は、手すり子を失わせ、石膏に深く足部がめり込んでいた。それにしても家屋は、実際、あの当時の標準では、酷く痛手を受けてはいなかった―真面(まとも)な爆風を受けたのは、僕たちの隣人だった。僕の部屋のドアは開けっ放しで、僕にサラーが見えた通路伝いに襲来していた―彼女はベッドゥから離れ、床に蹲っていた。―恐怖から、と僕は思った。
彼女は馬鹿馬鹿しい程、有りのままの子供のように、幼く見えた。僕は言った。「あれは接近した一撃だった。」
彼女はさっと振り向き、恐怖で僕を見つめた。僕は、ドゥレシング‐ガウンは破れ、石膏で全身粉だらけだったのに、気付いていなかった。僕の髪は、それで白くなり、僕の唇や頬は血に塗れていた。「オゥ神様。」彼女は言った。「貴方は生きているのね。」
「貴女は、がっかりしたようだね。」
彼女が床から起き上がると、彼女の衣服に手が届いた。僕は彼女に告げた。「貴女が去っても、今は、何もいいことはない。」「間もなく警報解除があるに違いない。」
「私は帰る方が良かったのね、」
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