僕は簡単に出そうもない、一冊の本を書こうとしていた。僕は僕の日常的五百語を駆使しても、その役儀は、どうしても生気が漲(みなぎ)らない。書くことの多くは、人の日々の皮相に依存する。人は買い物、所得税申告、思いがけない会話に心を奪われるかも知れないが、無意識の流れは、先行きを計算に入れながら、静かに澱みなく続く。人は不毛の下に蹲(うずくま)り、机上にて意気込みは消え失せる。が突然、言葉は空気からのように出て来て、絶望的行き詰まりに閉塞されたかに見えた情況が、前方へ揺るぐ。仕事は自分が眠り、買い物をし、友人と話していても、完成した。何れにせよこの憎悪と疑念、破壊に向かうこの激情は、その本より深く埋もれて行った。ー代わりに無意識が、それに作用した。或る朝、僕が目覚めて気付くまで、まるでそれを夜通し企みでもしたかのように、この日、僕はサヴィッジ氏を訪ねることにした。
何という風変りな所蔵品が、信頼された職業にあるのか。人は自分の弁護士を、自分の医師を、自分の聖職者を信用する、僕は提案する、もし、自分がカソリックなら、そのリストゥに自分の私設刑事を加えた。ヘンリの他の依頼人にじろじろ見られるという思いは、全く間違っていた。その事務所は、二つの待合室を持っていて、その片方に、一人で通された。それは、ヴィゴウ・ストゥリートゥで貴方が期待するものと、微妙にかけ離れていたーそこには一弁護士の所有する出張所の何となくだらけた雰囲気があった。むしろ歯医者に似ている待合室には、流行りの読み物の選りすぐりも備えてあった。
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