ヘンリの書斎の中同様、これまで利用されたにしても、極めて稀だった、と僕は直ぐに感じた。ギボンのセットゥは、嘗て開かれたか、またスコットゥのセットゥは、只そこにあるだけかどうか、僕は疑った。なぜならそれはーおそらくーディスカス・スラウアのブロンズの模造品のように、彼の父親のものだったから。それにしても、彼の利用しない部屋の中では、彼は余計幸せそうだった。単にそこは彼のもの、彼の所有物という理由だけで。僕は辛辣さと羨望と共に思った。もし人が一つの物を確実に所有したら、人はそれをどうしようと自由だ。
「フイスキ?」ヘンリが聞いた。僕は彼の目を思い出し、昔日やった以上に飲んでいるのだろうかと怪訝に思った。確かに彼が注ぎ出すフイスキは、気前のいいダブルだった。
「何が貴方を悩ませているの、ヘンリ?」僕はその古参の文官に関する小説を、とっくに放棄してしまっていた。僕はもはや、コピイを探ろうともしなかった。
「サラー。」彼は言った。
二年前、と丁度そんな言い回しで、彼が言っていたら、僕はぎくっとしただろうか?いや、僕は大いに喜んだと思うー人は確かにどうしようもなく、騙すことが嫌になる。
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