海に行って
ないな
わたしの部屋から
貴方の歌が消える
わたしの部屋の中の
貴方が消える
わたしの部屋の中の貴方は消えて
私の部屋の窓辺から伸ばした手が
鳥のように
羽を広げるように
幾つも
野を超え海をめざす
貴方が
四角い箱の中にいた
貴方が
心配をしてくれるだけの
貴方ではなく
善意だけの
ヒト
ではなく
打算や薄情や気紛れを持っていて
甦った
私の翼を
傷つけたりする
ヒトで
私は
虚しさだけを青い空に見るのでは
なく
貴方に
憧れるように
飛ぶ夢を見たり墜落して沈んだり
心が砂漠みたいって言ってみたり
失くしていた
熱い
血が
隠し切れない
今
海に行こう
2008年10月6日月曜日
背の悲曲
素焼きの植木鉢にあたる可視光線の角度や強度は変わらない
開けようとしたサッシュの止まった位置
私の中の竦(すく)み
算段したわけでもない戸惑いがこの日の蔭と日向をつくる
枯れていく季節の楽観的なひだまりに遊ぶ不運
私はここにいて
あなたは埒外(らちがい)にいて
ラスクは硬くて
私はバスの中のシートベルトに縛られて
あなたは重い荷物の理不尽に身動きできなくて
手を振った
いつからか涙ぐむことのできなくなった少女
あなたの長い影が
人の世のギブスに棲(す)む処罰に力なく微笑む
抱き締めたい
抱き締めても抱き締められない背の悲曲
踏みしだかれた秋(とき)の花壇に
終わりのない回り道に
あなたをさがす
駆け寄りたい
うなだれた肩を抱き寄せたい
私は白い黄昏にいて
あなたは上辺で薄情になれなくて
神さえ逃げたあの朝
私はバスの窓を開けて
あなたは残りの未練を捨てて
手を振った
2008年9月13日 土曜日23:31:06
2008.09.25 Thursday 04:00
詩 | - | -
2008年9月25日木曜日
2008年9月5日金曜日
空色の空間
空色に変わって行く
さまよってなんかいちゃ駄目だよって
わたしのいい人が教えてくれた
いい人はわたしの中に住んでいて
わたしの細胞のひとつなんだけど
たとえばこどものころ外は嵐で
空き缶が転がる音や
昼間遊んだ砂場のおままごと道具が
てんでばらばらに散らばった風景
にみょうちくりんなときめきを覚えたように
整理された有様よりでたらめな有様が好き
しあわせな景色よりふしあわせな景色が好き
それをかたちづくる人が好き
かたちづくる人の弱さのそばで
手を握り締めていることが好き
しあわせはわたしには退屈で
脂肪をたくわえた腹部のようで
怠慢でぶよぶよしていて
いのちに実感がなくて
だけど今日はあまりにも
取り乱した後だから
わたしの周りを空にして
わたしはいい人を呼び出して
この小さなお空で鳥のように飛んでみる
2004年8月31日21時16分
2008年8月21日木曜日
夕日が私の通(かよ)った道に沈んだ
2008年8月2日土曜日
感情の剰余
世渡りには時の配分と微調整
ねじはせっかちに巻く
ベッドをぐるりと囲む放りっ放しの目覚まし時計
手に負えないものを引きずり込んでは添い寝する
朝の光は散乱を映し
語り下手な私は
爪先立ちでくるくる回って見せる
船底に這いつくばって床を磨く
否定が組み込まれた背骨は切なく捩れて
饒舌な唇を放心して見つめたのは昨日の昼過ぎ
窓際に並んでゆく牛乳パックに
角ばった瞬間の詰まった怒りや涙の枯骨が
どんな風に訪れ葬られて行くのか
深い所にいて
私は眠っていたのか
絶望や希望が海を想わせたのは
まだ春で
乳白色の悔いがやたらこびり付いた
洗面器の中
一人だけの気配を慈しむほか
季節を遣り過ごす手立てもない
縮尺された地球儀の点ほどの居場所も得られない
この当て所ない漂泊
機械のような男の抱擁も
友のひたすらな手も
小窓から差し込む光が暴く幾つもの汚点を見つめた後では
ただ疲労が纏わりつくだけ
見つめれば空気が破れ手のつけようもなく溢れ出す
鬱積した感情の剰余
ねじはせっかちに巻く
ベッドをぐるりと囲む放りっ放しの目覚まし時計
手に負えないものを引きずり込んでは添い寝する
朝の光は散乱を映し
語り下手な私は
爪先立ちでくるくる回って見せる
船底に這いつくばって床を磨く
否定が組み込まれた背骨は切なく捩れて
饒舌な唇を放心して見つめたのは昨日の昼過ぎ
窓際に並んでゆく牛乳パックに
角ばった瞬間の詰まった怒りや涙の枯骨が
どんな風に訪れ葬られて行くのか
深い所にいて
私は眠っていたのか
絶望や希望が海を想わせたのは
まだ春で
乳白色の悔いがやたらこびり付いた
洗面器の中
一人だけの気配を慈しむほか
季節を遣り過ごす手立てもない
縮尺された地球儀の点ほどの居場所も得られない
この当て所ない漂泊
機械のような男の抱擁も
友のひたすらな手も
小窓から差し込む光が暴く幾つもの汚点を見つめた後では
ただ疲労が纏わりつくだけ
見つめれば空気が破れ手のつけようもなく溢れ出す
鬱積した感情の剰余