背の悲曲
素焼きの植木鉢にあたる可視光線の角度や強度は変わらない
開けようとしたサッシュの止まった位置
私の中の竦(すく)み
算段したわけでもない戸惑いがこの日の蔭と日向をつくる
枯れていく季節の楽観的なひだまりに遊ぶ不運
私はここにいて
あなたは埒外(らちがい)にいて
ラスクは硬くて
私はバスの中のシートベルトに縛られて
あなたは重い荷物の理不尽に身動きできなくて
手を振った
いつからか涙ぐむことのできなくなった少女
あなたの長い影が
人の世のギブスに棲(す)む処罰に力なく微笑む
抱き締めたい
抱き締めても抱き締められない背の悲曲
踏みしだかれた秋(とき)の花壇に
終わりのない回り道に
あなたをさがす
駆け寄りたい
うなだれた肩を抱き寄せたい
私は白い黄昏にいて
あなたは上辺で薄情になれなくて
神さえ逃げたあの朝
私はバスの窓を開けて
あなたは残りの未練を捨てて
手を振った
2008年9月13日 土曜日23:31:06
2008.09.25 Thursday 04:00
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