2023年2月2日木曜日

The Quiet American/Graham Greene  成田悦子訳

僕は僕のタイと僕の靴を脱いだ。幕間劇は終わった。夜はそれがあった時とほぼ同じになった。フォンはベドゥの端にしゃがみ、ラムプを点けた。我が子よ、我が女兄弟よー琥珀の色を剥げよ。その穏やかな故郷の半島。

 「フォン、」僕は言った。彼女は彼女の手に針を持ち、集中しようとしながら、眉を寄せながら子供のように僕を見上げた。「貴方が言った?」

 「パイルは死んだ。暗殺。」

 彼女は針を下に置き、僕を見ながら彼女の踵(かかと)の上に後退(ずさ)りして座った。そこにはどんな場面もなく、涙もなく、唯一思いだけがあったー人生の全方向転換を迫られる誰かの延々と続く一人だけの思いが。

 「貴女は今夜ここにいた方がいい、」僕は言った。

 彼女は頷き、針を持ち上げ、また阿片を熱し始めた。その夜、僕はそうした阿片の短く深い眠りの一つ、10分程の、から目覚めた、それは一晩の休息のように思えたが、僕の手を、それが何時も夜あった、彼女の脚の間に、見付けた。彼女は眠ってはいたが、僕には彼女の息がほとんど聞こえなかった。何ヶ月も後に今一度僕は一人きりではなかった。

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