2022年9月5日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 僕は、その後サラーの夢を見て、僕たちは、南側の懐かしい部屋で、又恋人に戻ったが、何も起こる事はなかった。この時だけ、事実そこにどんな悲しみもなかった。僕たちは、幸福だった上に後悔もなく。

 僕の寝室の食器戸棚を引っ張って開け、古い子供たちの本の積み重ねを見付けた、それは、その後二、三日経ってからだった。ヘンリは、この食器戸棚をパ―キスの若い者の為に荒さなければならなかったんだ。それぞれ色の付いたカヴァに包まれたAndrew Langのお伽話、数多いBeatrix Pottersの五、六冊が、そこにはあった。The Children of the New Forest、The Golliwog at the North Pole、そしてまたもっと古い一、二冊。―Captain Scott`s Last ExpeditionやPoem of Thomas Hood、それが台数に於ける熟達の為、サラー・バトゥラムに授与されたというラベルの付いた学校用皮革に閉じられた極め付け。代数!人の何と変わる事よ。

 その夕方、僕は仕事が出来なかった。僕は何冊も本を抱えて床に寝転び、サラーの一生の内、白紙の時間に少なくとも二、三その輪郭を追おうとした。愛する人が、父や兄弟も又、いて欲しいと願った時代が、そこにあった。彼が分かち合えなかった年月を、彼は妬む。The Golliwog at the North Poleは、おそらくサラーの初めての本で、それは、前頁に亘って走り書きされていた、この道、またあの道、無意味に、破壊的に、カラのチョークで。Beatrix Pottersの一つに彼女の名前が、鉛筆で綴られていた。一つの大文字が間違って配列してあり、そうそれは、どう見ても・・・だった。The Children of the New Forestに、彼女は実にきちんと、綿密に、「Sarah Bertram Her Book」記と彼女は語った。借りるにはどうか許しを請うて下さい。そしてもし貴方がそれを盗めば、その時は、貴方の悔恨となるでしょう。それらは、今まで生きた全ての子供の目印だった。人が冬に見る鳥の鉤爪の印同様、特徴のない。僕がその本を閉じた時、直ぐに、それらは時の流れによって覆われた。

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