2022年7月10日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「オウいや、ヘンリ。彼女は、貴方や僕以上に、何かを拠り所としてはいなかった。」僕は、彼女が妬き尽く去れたらと願い、僕は言えたらと望んだ、貴方に出来るものなら、その体を復活させてみなさいと。僕の嫉妬は、尽きなかった。ヘンリのそれに似て、彼女の死を以てしても。それは、彼女が未だに生きているかのように、彼女が僕に対して望む恋人という関係のにあった。僕は、彼らの永遠性を中断する為に、パ―キスを彼女の後に送れたらと、どれだけ願っただろう。

 「貴方は、本気か?」

 「本気だよ、ヘンリ。」僕は思った、僕は慎重になってしまった。僕は、リチャドゥ・スマイズのようになってはいけない、僕は嫌がってはいけない、何故なら、もし僕が心底嫌ってしまったら、僕は信じようとし、もし僕が信じようとしたら、貴方と彼女の為にどんな勝利が。ここは、演技をすることだ、復讐や嫉妬について語り合いながら。それは、まさに何か脳を満たすものだ。だからこそ、絶対的な彼女の死を忘れられる。一週間前、僕は、何の気なしに彼女に言った、「貴女は、あの初めて二人揃った時を、それにミータの代金一シリングを、どうにもこうにも僕が手にしていなかったのを覚えている?、だからそのシーンは、僕達二人の為に、そこになくてはならない。今は、只僕だけの為に、それはそこにある。彼女は、僕たちの思い出の全てを見失った、永遠に、そしてそれは、死ぬことに託(かこつ)けて、彼女は、僕自身の一部を僕に失わせたのだ。僕は、僕一個の体裁を失いつつあった。それは、腕木のように、剥がれて落ちる思い出、僕自身の死の初舞台だった。

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