BOOK FOUR
Ⅰ
僕は、もう少しも先を読めなかった。繰り返し繰り返し何度も、一説が、僕を酷く傷付ける時は、僕は飛ばして読んだ。僕はダンスタンのことを見付けようとしながら、極力それを見付けたくなかった。しかし今やっと、先を読み進めていた、それは、歴史の未確定の日付に似て、時を追ってかなり後迄、滑るように引き返した。それが、目下の重大事という訳でもなかった。僕が共に残された記載は、たった一週間古いだけの記載だった。「私にはモーリスが欠けている。私には、普通の堕落した人間の愛情が欠けている。」
それなら、僕は貴方に上げられる。と僕は思った。僕は、何か他の類の愛情のことは分からないが、もし貴女が思うのなら、貴方は間違っているということの全てを、僕は不意にした。そこには、僕たち二人の暮らしの為に十分残されている。そして僕は、彼女が彼女のスーツケイスを一杯にしたあの日のことを考えた。幸福が、間近に迫っていることも知らず、僕はここで仕事をしながら座っていた。僕は知らなくて良かったし、僕が知ったとしても、僕は嬉しかった。
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