https://naritaetuko.jp成田悦子の翻訳テキストとちょっとしたこと

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2022年6月30日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 


 翌数日、僕は賢明になるには、大きな努力を要した。僕は目下、僕たち二人の為に励んでいた。朝、僕は、最低七百五十語を自分自身で組み立てたが、大抵、11時近くには、一千を処理し終えた。希望の効果、それには驚いている。昨年中、すっかり引きずってしまった小説は、その結末に向かって走った。ヘンリは、9時30分辺りに仕事に出かけるということを、僕は知っていたから、電話して彼女と向き合うおおよその時間は、その時と12時30分の間だった。ヘンリは、昼食の為に帰宅し出した(そういうふうにパ―キスは、僕に話した)3時以前に、もう一度彼女に電話する機会は、総じて皆無だった。僕は、一日の仕事を校正し、12時30分までつづりを確認し、そうしてその後、どんなにうんざりしようとも、期待から僕は解放された。2時30分まで、大英博物館の閲覧室で、the life of General Gordonの為の覚書を作りながら、時間内に置くことが出来た。僕は、僕自身読むことにも、覚書を引用することにも夢中になれなかった。

そこで、サラーの思いが、僕とチャイナでの宣教師暮らしの合間合間にちらついた。何故僕は、この伝記を書く為に招聘されたのか?僕はおおよそ不可解だった。彼らは、ゴードンの神を信仰する筆者を選んだ方が、より上手く事が運ぶのだろう。ハートゥームでの執拗な態度―国内での無難な行政官の憎悪を、僕は察するに容易だった―何れにせよ、机上のバイブルは、僕のものと距離があり、他の思考の世界に属した。多分、ゴードンのクライストゥ教信仰の皮肉な扱いは、スキャンダルの成功を呼び覚ますだろうということを、出版社は、半ば望んだのである。

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2022年6月29日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

  人は、困らせること、企むことの限界に向かって獲得する。僕は僕の耳のその訴えで、続けられなかった。僕は、彼女の堅く、結び目の多い髪の彼女にキスして、遠ざかりながら、僕は、僕の口の隅で、彼女の唇が滲んで塩辛いのに気付いた。「神は貴方を祝福する。」彼女は言い、僕は、それは、ヘンリ宛の彼女の手紙で、彼女が横線を引いたことだと思った。その人がスマイズでさえなければ、人は、他の人のグドゥ‐バイにグドゥ‐バイと言い、彼女に彼女の祝福をお返しに繰り返した時、それは無意識の行いだった。しかし教会を後にして振り返りながら、蝋燭の‐灯の縁のそこに、乞食が暖を求めて入っているような体を丸めた彼女を見ながら、僕は、神が彼女を祝福すること、又、神が彼女を愛することを想像出来た。僕は、僕たちの物語を末尾に向かって書き始めた時、嫌悪の記録を書いていると思ったが、何故か、嫌悪は置き忘れられ、ぼくが知っている全ては、彼女の過ちであり、彼女の不確実性であるにも関わらず、そうなる。彼女は、大多数より好ましかった。僕たちの内の誰かは、彼女を信じる。彼女は、彼女自身をそうしたことはなかった。

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2022年6月28日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「貴女は、疲れているんだね?」僕は聞いた。

 「とても疲れた。」

 「貴女は、あのように僕から急いで離れるべきではなかった。」

 「私が急いで距離を置いたのは、それは貴方からではなかった。」彼女は、彼女の肩を動かした。「どうか、モーリス、もう行って。」

 「貴女は、ベドゥに入っていなきゃいけない。」

 「私は、直ぐにそうするわ。私は、貴方と一緒に帰りたくない。私は今ここで、グドゥ‐バイを言う方がいいの。」

 「貴女はずっとここにいない、と約束するね。」

 「私は約束する。」

 「じゃあ、貴女から僕に電話を掛ける?」

 彼女は頷いたが、彼女の手を見下ろすと、それは、何か何処かへ投げられた物のように、彼女の膝の中、そこにあった。

彼女が彼女の指を交差させたのを、僕は見た。僕は怪しんで彼女に聞いた。「貴女は、僕に真実を話している?」僕は、僕のもので彼女の指を解いて言った。「貴女は、又、僕から逃げようと思っていない?」

 「モーリス、親愛なるモーリス、」彼女は言い、「私は、その強さを貰わなかった。」

彼女は、子供がするように、彼女の目の中に握り拳を押し付けながら泣き始めた。

 「私は、すまないと思っているの、」彼女は言い、「今直ぐ何処かへ行って、どうか、モーリス、ほんの少しだけ慈悲をちょうだい。」

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2022年6月27日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 子供たちは睡眠中、彼らに何を囁くかに左右されると思われるが、僕もサラーに囁き始めた。言葉が催眠状態で彼女の無意識の心に落ちるよう願いながら、彼女を起こさないよう十分声を落として。「僕は、貴女を愛している。サラー。」僕は囁いた。「誰も、前にこれ程貴女を愛した者はいなかった。僕たちは、幸せになろうね。ヘンリは、彼のプライドゥに関らない限り気にもせず、プライドゥは、直ぐに甦る。彼は、貴女の居場所を掴む為に、新しい習性を探すだろう―多分彼はギリシャのコインを集めるだろう。僕たちは他所へ行こう、サラー、僕たちは他所へ行こう。もう誰もそれを止められない。貴女は、僕を愛している、サラー。」僕は新しいスートゥケイスを買うべきかどうか迷い始めたように、僕は冷静そのものだった。その時、彼女は咳き込みながら目覚めた。

 「私は、眠ってしまった。」と彼女が言った。

 「貴女は直ぐに家に帰らなきゃあ。貴女は、風邪をひいている。」

 「それは、家じゃないの、モーリス。」彼女は言った。「私は、ここから他所へ行きたくない。」

 「それは風邪だよ。」

 「私は、風邪のことはどうでもいいの。それに暗いわ。私は暗闇の中でなら、何でも信じられるの。」

 「只、僕たちのことを信じればいい。」

 「それは私が言おうとしたことよ。」彼女は、又目を閉じ、塑像を見上げながら僕は勝利と共に考えた。殆ど彼が生きているライヴァルかのように、お前は見ている―これが勝つという口論だ、そしてそっと彼女の胸を十文字に僕の指を動かした。

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2022年6月26日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「私も。」僕がそれに不慣れな者であれば、僕はそれを聞き取りようもない程、彼女は酷く低く話したが、それは、パディントン・ホテルでの最初の愛の‐確認から、僕たちの結び付きの全てを貫いて響き渡ったサイン入りの調べのようだった。「私も」孤立、悲しみ、落胆、喜びと絶望、全てを分かち合おうとする要求故の。

 「お金は、乏しくなるだろう。」と僕は言った。「しかし、そんなに乏しいという程でもない。『a Life of Gneral Gordon』をやることを依頼され、その前金は、三か月間、不自由なく、僕たちの暮らしを維持するのに十分だ。その時までに、小説に手を付け、それに関する前金が入る。本は両方共、今年出るだろうから、それで、次の現金まで、僕たちはやって行ける。僕は、貴女と一緒にそこで仕事が出来る。貴女なら分かるでしょ、こうなればどんな時も、僕は乗り越えてみせるよ。僕は、延々と大衆的成功のままだろうし、貴女は、それを嫌がり、僕はそれを避けようとするだろうが、どうせ物を買い、浪費し、それも又、僕たちが一緒であれば、楽しからずやだろう。

 ふと、僕は彼女が眠っていると気付いた。彼女の高揚によって疲れ、彼女は、タクシで、バスで、公園の‐座席で、あれ程数ある機会のように、僕の肩で熟睡した。僕はじっと座り、彼女の為すがままにした。暗い教会のそこには、彼女を妨げるものは何もなかった。聖母マリアの周りに、蠟燭が揺れ、そこには他の誰もいなかった。彼女の重みがかかる僕の上腕の痛みが、ゆっくりと増してゆくことは、僕が今までに知った最高の喜びだった。

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2022年6月25日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「何が貴方にあったの、モーリス?貴方は、この前の昼食の時のようじゃないわ。」

 「僕は、心を痛めた。貴女が僕を愛していると気付かなかった。」

 「どうして私がそうなんだと思うの?」彼女は尋ねたのに、彼女は、僕の手を彼女の膝の上で弄んだ。僕は次に、パ―キスさんが、どうやって彼女の日記を盗んだか、彼女に打ち明けた―僕は、もはや、僕たちの間にどんな嘘も、望まなかった。

 「それは、していいことじゃなかったわ。」彼女は言った。

 「良くないわ。」彼女は再び咳き込み、それから疲れて、彼女は彼女の肩を僕に傾けた。

 「僕の愛しい人、」僕は言い、「もう、何もかも終わりだよ。待つこと、を言っているんだよ。僕たちは一緒に遠くへ行くんだ。」

 「いいえ、」彼女は言った。僕は、僕の腕を彼女に回し、彼女の胸に触れた。「これが、僕たちがもう一度始める場所だよ、」僕は言った。僕は酷い恋人だった、サラー。そうしたのは、それは不安だった。僕は貴女を信用していなかった。僕には、貴方が十分わかっていなかった。しかし今は、僕は安心している。」

 彼女は何も言わなかったが、彼女は尚も、僕に凭れていた。それは、承諾に似ていた。僕は言った。「どんなにそれがある方がいいか、僕は貴女に言いたい。家に戻って、二、三日ベドゥに横になるといい―そんな風邪をひいていたのでは、貴女は旅行もしたくない。僕は毎日電話をして、貴女がどんな具合か見よう。貴女が十分よくなれば、僕は真っ先に駆け付け、貴女が荷造りをするのを手伝おう。僕たちは、ここに居てはいけない。僕にはドーセトゥにいとこがいて、彼は僕たちが使える空いたカティジを持っている。僕たちは、そこに二、三週滞在し、休息しよう。僕は、僕の本を聞き終えられるだろう。僕たちは、その後弁護士に面会出来る。僕たちは休息を必要としている、僕たち二人共。僕は疲れ、貴方なしでいることの断罪に僕は病んでいる、サラー。」

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2022年6月24日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 物語の結末を知った今、僕は何年でも待つことが出来た。僕は、寒くて、濡れてはいても実に幸せだった。そこにちらついている供物台や塑像に向かって、慈愛の眼差しで見ることさえ出来た。彼女は、僕たちを二人共愛している、と僕は思ったが、そこに、想像と一人の男の間の不一致があるべくしてあるにしても、誰が勝とうとしているか、僕には分かる。彼女の腿に僕の手を、或いは、彼女の胸に僕の口を置けたらいい。彼は、供物台の後ろに閉じ込められ、彼の弁明を訴えようにも、身動き出来なかった。

 突然、彼女は咳き込み始め、彼女の手で彼女の方に押さえた。彼女は、苦しんでいると納得し、、そして僕は、苦しむ彼女を一人のままにして置くことが出来なかった。僕は近付き、彼女の側に座って彼女が咳をしている間、彼女の膝に僕の手を置いた。僕は思った。単に誰かが触れるだけで、それは治せることもあった。発作は治まった時、彼女が言った。「どうか、貴方は、私を放って置いてくれない?」

 「僕は、貴女を放って置けない。」と僕は言った。

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2022年6月23日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

僕は既にゲイムに勝っていると思い、僕の生贄に対して、確かな哀れみを感じる余裕が出来た。僕は彼女に言いたかった、心配しないで、心配しなくていい、何処にも恐れるものは何一つなく、僕たちは二人で直ぐに幸せになろう。悪夢は、殆ど乗り越えた。

 そして次に彼女を失った。僕は、確信し過ぎ、その上、僕は彼女に余りにも寛大なスタートゥを許した。彼女は、僕の二十ヤードゥ先で、道路を渡り(階段を上っている内に、又、僕は遅れをとった)、路面電車が間に割り込んで走り、彼女は行ってしまった。ハイ・ストゥリートゥを下って左折したのか、或いはパーク・ロウドゥを下った先を直進したのかも知れなかったが、僕は彼女を見ることは出来なかった。僕は余り心配しなかった―僕が彼女を今日探せなかったら、僕は次にする。今、僕は全く馬鹿げた誓いの物語を理解し、今、僕は彼女の愛を確信した。僕は彼女を安心させられる。二人が愛し合えば、彼らは一緒に眠る。それは数学の公式で、人の経験によって、試され、証明された。

 ハイ・ストゥリートゥのその場所には、A.B.Cがあり、僕は、それを試みた。彼女はそこにはいなかった。次に、僕は、パークロウドゥの隅の教会を思い出し、僕はそこに来たことは、直ぐに分かった。 僕は辿った、彼女が聖母マリアの柱状の、酷く醜い塑像に近い通路側の一つ、そこに座っていたことは、十分間違いなかった。彼女は祈ってはいなかった。彼女は、彼女の目を閉じて、そこに座っていただけだった。僕は只、塑像の前のキャンドゥルの灯で彼女を見た。その場所辺りは酷く暗かったから。僕は、パーキスさんのように彼女の後ろに座り、待った。

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2022年6月22日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

僕の戦時の懐中電灯を、僕の手に持って来ていればなあ。北側の家に着くのに、僕なら八分も時間がかかってしまうから。ドアが開き、サラーが外に出た時、僕は渡ろうとして、ちょうど舗道から離れ、歩を進めようとしていた。僕は幸せと共に思った。僕は今彼女を自分のものにしている。夜が尽きる前に、僕たちは、又一緒に眠るのは当然だということが、絶対の確信と共に、僕は分かった。そして、それは一旦、新たに始められたからには、何事があろうと構わなかった。僕は、以前、彼女を全く知らず、今まで僕は、彼女をそこまで深く愛したことはなかった。僕たちは、知れば知る程更に、僕たちは愛し合う、と僕は思った。僕は、信頼の領域に戻った。

 彼女は、霙を突いて広い道路を横切り、僕を見る為に、随分急いでいる様子だった。彼女は、左に曲がり、急いで歩き去った。僕は思った、彼女は、何処か座る場所を必要とするだろう。それに僕は彼女を罠にかけた。僕は、二十ヤードゥ後ろを付いて行ったが、彼女は、決して後ろを振り返らなかった。彼女は、共有地の端を通った。彼女は地下鉄に向かっているかのように、池や爆弾投下の本屋を過ぎた。さて、もしそれが必要だったら、混み合った列車の中で、彼女に話すことも良しとした。彼女は、地下鉄⊶階段を降り、出札口に向かったものの、彼女は、彼女の手にバッグを抱えていなかったので、彼女は、ポキトゥの中のどちらにもざら銭がないと思った―三半ペンスさえなく、それでは、深夜まで、あちこち旅に出ることも出来なくなりそうだった。階段を再び上り、路面電車が走る道を横断した。或る俗事は、止められてしまったが、もう一つは、明らかに、心の中に現れた。僕の勝ちだった。彼女は、恐れたが、彼女は、僕を恐れたのではなかった。彼女は、彼女自身を恐れ、僕たちが会った時、何かが起ころうとしていた。

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2022年6月21日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「貴女は、僕を愛している。」

 「どうして決め付けるの?」 

 「深く考えないで。僕は、僕と一緒に遠くへ行くよう貴女に頼みたい。」

 「でも、モーリス、私は、電話でも上手に答えられるわ。答えは、いいえ。」」

 「僕は、電話で貴女に触れることは出来ない、サラー。」

 「モ-リス、私の愛しい人、どうか。貴方は来ないと約束して。」

 「僕は出掛けるよ。」

 「聞いて、モーリス。私は、酷く具合が悪いと思うの。」

 「それに今夜は痛みが酷いの。私は起きたくない。」

 「貴女が、そうする必要はない。」

 「私が起きて、服を着て、家を出ることにします、もし貴方が約束しないのなら・・・」

 「このことは、サラー、僕たち二人には風邪より大切だ。」

 「どうか、モーリス、どうか。ヘンリが間もなく家に戻るの。」

 「彼をいさせるといい。」僕は、電話を切った。

 それは、僕が一か月前ヘンリに会った時より、悪天候の夜だった。この時、それは雨の代わりに霙(みぞれ)だった。それは、雪への途中で、縁取られた滴りが、誰かのレインコウトゥのバトゥンホウルを抜けて、中へとその道を切り取るかのようだった。それは、共有地のラムプを覆い隠した。だから、それだけで、走るのは難しく、僕の足では、とうてい速く走れる筈がない。

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2022年6月20日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「かえっていいじゃないか。」

 「馬鹿なことを、モーリス。私は具合が悪いと言う意味よ。」

 「それなら、貴女は僕を一目でも見る方がいい。何が気懸かりなの、サラー?」

 「オウ、何も。性質の悪い風邪なの。聞いて、モーリス。」彼女は女性家庭教師のようにゆっくりと、彼女の言葉の間隔を開け、それは僕を怒っていた。「どうか来ないで。私は貴方を見ることは出来ない。」

 「僕は、貴女を愛している、サラー。だから行くよ。」 

 「私は、ここにいられなくなるわ。私が起きます。」僕は思った、共有地を走って横切れば、そりゃあたった四分もあればいいだろう。彼女は、その時間内に服を着ることは出来ない。「僕はメイドゥに誰も中に入れないように話すつもりだ。」

 「彼女は、解雇の体を成さない。それで僕が解雇されざるを得ないようにする、サラー。」

 「どうか、モーリス…お願いだから。私は、長い間貴方に何もお願いしたことはないわ。」

 「一度だけの昼食を除いて。」

 「モーリス、私はあまり体の調子が良くないの。私は、只今日だけは、貴方を見られないの。来週・・・」

 「そこには、恐ろしい程何週間もあるようだよ。僕は貴女を今夜見たい。」

 「どうして、モーリス?」

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2022年6月19日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

僕は今が行動の時だ。ダンスタンなんか、関係なかった。空襲長官も関係なかった。僕は電話に向かい、彼女の番号を回した。

 メイドゥが出た。僕は言った。「こちらは、ベンドゥリクスです。僕は、マイルズ婦人に話しがありまして。」彼女は、そのままでいるよう僕に話した。僕がサラーの声を待っている時、僕は長距離レイスの終盤であるかの如く、僕は息切れを覚える程だったのに、

届いた声は、マイルズ婦人は、お出かけです。と僕に話すメイドゥのものだった。何故僕は彼女を信じなかったのか、分からない。僕は、五分待まって、それから僕のハンカチフで送話口を覆うように、きっちり広げ、僕は、もう一度掛け直した。

 「マイルズ氏は、いらっしゃいますか?」

 「いいえ、サー。」

 「それなら、マイルズ夫人に話せますか?こちらは、サー・ウイリアム・マロックです。」

 「サラーが返事をするまでに、そこに、単なるほんのちょっとした間があった。「今晩わ、こちらは、マイルズの妻です。」

 「僕だよ、」僕は言い、「僕は貴女の声が分かる、サラー。」

 「貴方・・・と私は思いはしたわ。」

 「サラー、」僕は言い、「僕は、貴女を見る為に出掛けるつもりだ。」

 「いえ、どうしてもだめ。聞いて、モーリス。私はベドゥにいるの。今そこから私は話しているの。」

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2022年6月18日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 BOOK FOUR



僕は、もう少しも先を読めなかった。繰り返し繰り返し何度も、一説が、僕を酷く傷付ける時は、僕は飛ばして読んだ。僕はダンスタンのことを見付けようとしながら、極力それを見付けたくなかった。しかし今やっと、先を読み進めていた、それは、歴史の未確定の日付に似て、時を追ってかなり後迄、滑るように引き返した。それが、目下の重大事という訳でもなかった。僕が共に残された記載は、たった一週間古いだけの記載だった。「私にはモーリスが欠けている。私には、普通の堕落した人間の愛情が欠けている。」

 それなら、僕は貴方に上げられる。と僕は思った。僕は、何か他の類の愛情のことは分からないが、もし貴女が思うのなら、貴方は間違っているということの全てを、僕は不意にした。そこには、僕たち二人の暮らしの為に十分残されている。そして僕は、彼女が彼女のスーツケイスを一杯にしたあの日のことを考えた。幸福が、間近に迫っていることも知らず、僕はここで仕事をしながら座っていた。僕は知らなくて良かったし、僕が知ったとしても、僕は嬉しかった。

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2022年6月17日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

私は疲れ、私はもう何の苦しみも欲しくない。私は、モーリスが欲しい。私は、普通の堕落した人間の愛情が欲しい。親愛なる神よ、私は貴方の苦しみを貰いたいのですが、今は、それが欲しくはありません。暫くそれを持ち去って、他の時にそれを与えて下さい。

2022年6月16日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 1946・2月12日

 二日前、私はあれ程の平穏と静けさと慈しみの感覚を持った。暮らしは、又幸せの方向に向かっている。しかし昨夜、最上階でモーリスに会うために、長い階段を上っている夢を見た。私が階段の最上階に着いた時、私たちは愛を育むことにしていたので、私はまだ幸せだった。私が来た、と彼に呼び掛けたが、答えたそれは、モーリスの声ではなかった。道に迷った船に警告する霧笛のように、大声で伝え、私を怯えさせたそれは、見知らぬ人のものだった。私は考えた、彼は、彼のフラトゥを貸し、いなくなってしまった。彼が何処にいるのか、私は知らない。そして再び階段を降りようとすると、私の腰より水位が上がり、ホールは、霧でどんよりしていた。その時、私は目覚めた。私は、もう内心穏やかではなかった。私は只、過ぎた日に何時もそうであったように、彼が欲しい。私は、彼と一緒にサンドゥウイチを食べていたい。私は、バーで彼と一緒に飲んでいたい。

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2022年6月15日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

私が貴方を愛する前と同じくらい有り余る程、モーリスを愛しましたか?それとも、私が何時も愛したのは、それは、実は貴方でしたか?私が彼に触れた時、私は貴方に触れましたか?私が先に彼に触れなかったら、私は貴方に触れることが出来ましたか?私は、ヘンリにも、誰にも触れもしなかったので、彼に触れました。そして彼は私を愛し、彼は、他のどんな女にもしなかったように、

私に触れました。彼が愛した、それは、私だったのか、それとも貴方?貴方が、好き嫌いをする物事を、私の中で、彼が嫌がりました。彼はそうとは知らず、何時も貴方の側にいました。貴方は、私たちの別離を望みましたが、彼も又それを望みました。彼は、彼の怒りと彼の嫉妬を抱えたまま、それに向かって動きました。彼は、私に有り余る程の愛情を注ぎ、ですから、私も、彼に有り余る程の愛情で答え、間もなく、貴方なしで、私たちが終わろうとする時、そこには何一つ残されていなかったのです。私たち二人の為に。私は一時(いっとき)有りもしない愛情を費やしながら、ここからあちらへ、この男からあれへとそれを遣り繰りしながら、命ある時を握り潰しました。それなのに、その最初の時でさえ、パディントン近くのホテルで、私たちは、私たちが持つ全てを、使い果たしました。お金持ちに貴方が諭すように、私たちに浪費することを勧めながら、貴方はそこにおられた。ですから、それは、或る日、この貴方の愛以外、私たちは、何一つ残っていなくても構わなかった。けれど、貴方は、私に大変よくして下さる。私が、痛みをと請う時、貴方は安らぎを授け、彼にもそれを上げて下さい。彼に私の安らぎを上げて下さい―彼は、それをもっと必要としています。

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2022年6月14日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

私は、一瞬奇形ではないかと危ぶみ、私は、血の気が引く思いがした。そして彼は、静かに座り、彼にキスを私にさせた。そこで私は、痛みにキスをしています、幸せが決して貴方のものにならない限り、痛みは貴方そのものだと思いました。私は、貴方の痛みに入り込んで、貴方を愛します。私は、その肌に殆ど金気と塩気を味わえ、私は感心して、何ていい味わいでしょう貴方は。貴方は、幸せと共に私たちを殺しても良かったのに、貴方は、痛みの中にある貴方と共に、私たちを生き永らえさせます。

 私は不意に動いて離れる彼を感じ、私は、私の目を開けた。彼は言った。「グドゥ‐バイ。」

 「グドゥ‐バイ、リチャドゥ。」

 「戻って来ないで、」彼は言い、「僕は、貴方の哀れみに耐えられない。」

 「それは、哀れみじゃないわ。」

 「僕は、自信の愚かさに輪を掛けてしまった。」

 私は、去った。あれでは、そのままいても何もいいことはない。私は、彼があんな風に痛みの印を身に付けて、あちこち持ち歩きいているのを、私たちが美と呼ぶものを、この鈍感な人間の代わりに、毎日鏡の中に貴方を見ているのを羨んだ、と彼に言い出せなかった。


1946・2月10

 私は貴方に書く、或いは話す必要性を感じない。それは、少し時を遡って、貴方宛てにどのように手紙を始めるかであり、私は自らを恥じて、私はそれをすっかり引き千切った。それが私の心の中に届く前に、何もかも知っている貴方に手紙を書くこと、それが酷く馬鹿げたことのように思えたから。

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2022年6月13日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「御免なさい。」私は言った。

 「僕がその全てを遠ざけるくらいなら、僕はもっと貴方を愛します。僕が貴女による子供を設けたら、僕は、彼らを貴女に悪の道に導かせます。」

 「貴方は、そんなことを言ってはいけないわ。」

 「僕は、お金持ちの男ではない。僕の教義を捨てることを申し出られもしますが、それは単なる餌に過ぎません。」

 「私は、他の誰かと恋愛中です、リチャドゥ。」

 「もし貴女があの馬鹿げた誓いによって、制約を感じているのなら、貴女は、手放しで彼を愛せない筈だ。」

 私は、心侘びしく言った。「私はそれを破る為に、私のべストゥを尽くしたけれど、それは上手くは行かなかった。

 「貴女は僕を馬鹿だと思いますか?」

 「何故、私が?」

 「こんな物を持った男を貴女に愛して欲しいと願っているから。」彼は、彼の傷んだ頬を私の方に向けた。「貴女は。神を信じる、」彼は言い、「その方が楽だから。貴女は奇麗だし。貴女は、どんな欠点も持たない。それなのに、こんな物をたかが子供に付けた神を、何故、僕は愛さなければならない?」

 「親愛なるリチャドゥ、」私は言って「そこには、何もそんなに酷く傷んだ所はないわ・・・」私は、私の目を閉じ、その頬に私の口を置いた。

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2022年6月12日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「はい、リチャドゥ、勿論、」私は言い、「そうでなければここにはいません。」

 「貴女は僕と結婚しますか?」彼は尋ね、私がもう一杯お茶を飲みたいかどうか、聞いているかのように、彼のプライドゥは、彼にそう尋ねさせた。

 「ヘンリは、反対するかも知れない。」私は言った、それを一笑に付そうとして。

 「何ごとも、貴女にヘンリの下を去らせはしないでしょ?」そして私は腹立たしく思った。喩え、私がモーリスの為に彼の下を去らなかったにしても、何故貴方の為に彼の下を去るよう期待されなければならないの?

 「私は結婚しています。」

 「そんなことは、僕にも貴女にも大した意味のあることではない。」

 「オウそうなの、それもそうね。」私は言った。私は何れ彼に話そうと思っていた。「私は、神を信じるわ、」私は言い、「そして安息そのものを。貴方は私に教えて来た。貴方とモーリスが。」

 「僕には分からない。」

 「貴女は何時も、牧師が貴女に信じないように教える、と言った。ところで、それじゃあ、どっちみち上手く行かない。」

 彼は彼の美しい手を見た―彼はその左側を自分の物とした。彼は、随分ゆっくりと「僕は、何を貴方が信じても気にしません。貴女は、僕が気にするその馬鹿げた手品の鞄を、丸ごと信じても構わないんだよ。僕は貴女を愛している、サラー。」

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2022年6月11日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 私は、貴方の釘の痛みの心構えは整っていても、地図とミシュラン・ガイドゥの24時間を、私は耐えられない。親愛なる神よ、私はまるで機能しない。私は今尚、意気地なしの格好つけ。私をこの状態の外に追い遣って下さい。


1946・2月6

 今日、私はリチャドゥと空恐ろしいシーンを演じた。彼は、クライストゥ教会の矛盾について、私に話していた。そして私は、一生懸命聞こうとしていたのに、物の見事に成功していなかった。その内、彼はそれに気付いた。彼は突然私に言った。「貴女は、何をしにここに通っているの?」そして、私は自分自身を確認出来る前に、私は言った。「貴方を見る為に。」

 「僕は、貴方は学ぶ為に来ていると思っていました。」と彼は言い、私は彼に、それが私が言いたいことだと話した。彼は私を信じていない、と私には分かった。それに、彼のプライドゥは、傷付くだろうし、彼は怒るだろう、と私は思ったのに、彼は全く怒らなかった。彼は、彼の木綿更紗の椅子から立ち上がって近付き、彼の頬を見せない側の木綿更紗の椅子に、私と一緒に座った。彼は言った。「毎週貴女を見ること、それは、僕には多くを意味する。」その時、彼は私に恋をし始めている、と私は知った。彼は、私の手首に彼の手を置き、尋ねた。「貴女は、僕が好きですか?」

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2022年6月10日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

私が耐えられない、それは彼らの痛みだ。私の痛みは、上へ上へと募らせて下さい。が、彼らのは止めて下さい。親愛なる神よ、暫く貴方が貴方の十字架から降りられるのであれば、代わりに私の身を起こして下さい。もし私が貴方のように苦しめば、私は貴方のように癒せるでしょう。


1946・2月4

 ヘンリは、仕事を離れ一日を手に入れた。私は、何故か知らない。彼は私に昼食を御馳走し、私たちは、ナショナル・ギャラリへ行って、速い夕食を摂り、劇場に向かった。彼は学校を休行かせず、子供を外に連れ出している片親のようだった。それにしても、彼の方が子供だった。


1946・2月5

 ヘンリは、私たちのために春に海外での休日を計画している。ルワーのお城と、爆撃下のドイツの士気に関する報告書を作成出来るドイツとの間で、彼は彼の心を決め兼ねている。私は、春になって欲しくない。そこへ私はもう一度行く。私は望む。私は望まない。もし私が貴方を愛せたら、私はヘンリを愛せたでしょう。神は、男を造られた。彼は、彼の乱視眼を持つヘンリ、彼の痣を持ったリチャドゥ、モーリスだけはなかった。私がハンセン病患者の痛みを愛せたら、私はヘンリの退屈さを愛せないのか?何れにせよ、私は、彼がここにいたら、ハンセン病患者に背を向けようとする、私がヘンリと隔たり、我が身を閉ざすに連れ、と私は思う。私は、何としてでも劇的であってほしい。

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2022年6月9日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「私は、貴方を置いて行きはしないわ。私は約束します。」守ろうとするもう一つの誓い、そして私がそれを形にした時、私は、これ以上彼と一緒にいることに、耐えられなくなった。彼は勝ち、モーリスは敗れた。そして私は、彼の勝利故に、彼を憎んだ。私は、彼ゆえに、モーリスを憎むだろうか?私は二階へ上がり、手紙を極小さく千切り、誰にも二度とそれを繋ぎ合わせられないようにして、私は、荷物を解き始めるには、疲れ過ぎていた為に、スートゥケイスをベドゥの下に蹴った。そして私はこれを埋めて行った。モーリスの痛みは、彼の書いたものの中に詰まっている。彼の文を通して疼くその神経が、貴方には聞こえる筈です。さて、もし痛みが一人の小説家を作られるのなら、私も又、モーリスに教えられています。私は、一度だけでも貴方に話せたらと思います。私はヘンリに話せない。私は誰にも話せない。親愛なる神よ、私に打ち明けさせて下さい。


 昨日、十字架像、安物の不格好なものを買った。私は速くそれをしたくなったから。それを頼む時、私は頬を赤らめた。誰かが、店の中で私を見たかも知れない。彼らは、ゴム製品店のように、ドアの中に曇りガラスを嵌めるべきである。私は私の部屋のドアに鍵を掛けると、私は、宝石箱の底からそれを取り出せる。祈り手、それは私、私、私ではない、と私に分かっていたらと思う。私を救って下さい。私をもっと幸せにして下さい。私を、私を、私を直ぐにでも死なせて下さい。 リチャドの頬のあの悍(おぞ)ましい痣について私に考えさせて下さい。涙が流れるヘンリの顔を、私に見せて下さい。私に我を忘れさせて下さい。親愛なる神よ、私は愛そうとして、それをこんなに支離滅裂にしました。もし私が貴方を愛せたら、彼らをどんな風に愛したらいいのか、私にも分かったでしょう。私は、伝説を信じます。私は、貴方が生まれたことを信じます。私は、貴方が私たちの為に死んだ事を信じます。私は、貴方が私達の神であることを信じます、私に愛すことを教えて下さい。私は、私の痛みを気にしません

173

2022年6月8日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

  「そりゃあ、時には立ち止まってもいいのよ。」私は言った。「どんな結婚でも。私たちはいい友達同士だわ。」そのくらいが、私の逃げ口上の限界であるべきだった。「彼が同意した時には、私は彼に手紙を出そう。私が何をしようとしていたのか、彼に打ち明けよう。私は家から出て行こう。何れにせよ、彼は、彼のきっかけを見失い、私は未だここにいて、ドアは、再びモーリスを遮断した。只、私は、今回は神に責任を負わせることは出来ない。私は自らドアを閉ざした。ヘンリは言った。「僕は、お前のことを、友達のようには思えない。お前は、友達なしでもやって行ける。」そして彼は、鏡から振り返り、私を見て、彼は言った。「僕を一人にしないで、サラー。もう二、三年我慢して。僕も努力する・・・」それにしても彼が何を努力しようとしても、 オウ、そりゃあ、私が彼の下を何年も前に去っていれば、私達どちらにも、もっと良かっただろうに。しかし、私は彼がそこにいる時には、私は彼に打撃を与えられない。彼の惨憺が、どのようであるかを、私は見てしまったから、今や、彼は何としてでもそこにいるだろう。

 「私は、貴方を置いて行きはしないわ。私は約束します。」守ろうとするもう一つの誓い、そして私がそれを形にした時、私は、これ以上彼と一緒にいることに、耐えられなくなった。彼は勝ち、モーリスは敗れた。そして私は、彼の勝利故に、彼を憎んだ。私は、彼ゆえに、モーリスを憎むだろうか?

172

2022年6月7日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「お前がいなければやって行けない。」彼は言った。オウそう。貴方には出来る。私は異議を唱えたかった。それは不便になるでしょうが、貴方には出来る。貴方は貴方の新聞を、一度変えたけれど、貴方は直ぐにそれに慣れてしまったわ。これは言葉、型通りの夫の型通りの言葉で、それは全く何事も意味しない。それから私は、鏡の中の彼の顔をまじまじと見て、

 「ヘンリ、」私は言った。「何が気に入らないの?」

 「何も。僕はお前に話した。」

 「私は貴方を信じない。何か役所であったの?」

彼は馴染みのない辛さと共に言った。「何がそこで起こってしまったの?」

 「ベンドゥリクスが、何らかの方法で貴方の心を弄んだの?」

 「勿論、違う。どうして彼に出来るの?」

 私は彼の手を避(よ)けたかった。彼はそれをそこに置いたままにした。私は、彼が次に何を言い出そうとしているのか、不安に思った。私の分別の上に耐え難い重荷を広げている。モーリスは、今は家にいるだろう。もしヘンリが入って来なかったら、五分で彼の下に行ったのに。惨憺の代わりに、私は幸せを目の当たりにしただろうに。貴方は惨憺を目の当たりにしなければ、貴方はそれを信じない。貴方は離れた所から、誰にでも苦痛を与えられる。ヘンリが言った。「僕の愛しい人よ、僕は、多くの夫のようではなかった。」

 「私は貴方が何が言いたいのか分からない。」私は言った。

 「僕はお前には退屈だ。僕の友人たちは、退屈している―僕たちはもう―お前も分かっている―どんな事も一緒にはやっていけない。」

171

2022年6月6日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 私は彼の為に暖炉に火を点けた。私は言った。「私は、少々ヴェンガニンを手に入れて来ます。」

 「心配しなくていい。」彼は言った。「もうそれは良くなっている。」

 「どのような一日を、貴方は過ごしたの?」

 「オウ、殆どいつもと同じ。ちょっと疲れた。」

 「貴方の昼食の約束は誰だったの?」

 「ベンドゥリクス。」

 「ベンドゥリクス?」私は言った。

 「何故、ベンドゥリクスじゃいけない?彼は、彼のクラブで昼食を僕に御馳走した。」

 私は彼の背後に回って彼の額に私の手を当てた。永遠に彼の下を去ろうとする寸前にしていることにしては、それは妙な具合だった。私たちが結婚したての頃、彼は何時も私にそういう風にしてくれていた。それは何も思うように行かなくて、私は、恐ろしく神経過敏な頭痛持ちだった。私は只、一瞬その症状が改善される振りをしようとするのを忘れた。彼は、彼自身の手を上げて、彼の額に強く押し付けて、私のを押さえた。「僕はお前を愛している。」彼は言った。「お前はそれが分かっているの?」

 「そうね。」私は言った。私は、そんなことを言うなんて、彼が厭になりもするわ。それじゃあ要求のようだわ。私は思うのだけれど、もし貴方が本当に私を愛していたら、他の傷付けられた夫のように、貴方は振舞うに決まっているわ。貴方は怒りを覚え、そうして貴方の怒りは、私を自由にするのに。

170

2022年6月5日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

その時私は、Loveと記入したかったが、その言葉は、それは本当だと分かっていても、不適当な響きがあった。私は私の使い古した方法でヘンリを愛した。

 私は封筒に手紙を入れ、非常に個人的とそれに記した。誰かの面前でそれを開かないようヘンリに警告するだろう、と私は思った―彼が友人を家に連れて来ても、私は彼の自尊心を傷付けたくなかったから。私がスートゥケイスを引っ張り出して詰め始めるやいなや、私は不意に思った。私は、手紙をどこに置いたかしら?私はそれをすぐに見付けたものの、その時私は考えた。私はホールにそれを置くのを忘れていて、ヘンリは待つ、家に帰ろうとして私を待つ、と私の慌て振りを思う。そこで私は、ホールにそれを置く為に階下に下りた、私の荷造りは殆ど終わった―片付けるのは、イヴニングドゥレスだけ、それにヘンリは、後三十分は帰って来ない。

 私が、まさにホール・テイブルの午後の郵便物の一番上にそれを置いたその時。私はドアに入るキーの音を聞いた。私はもう一度それをさっと取り上げた。私は訳が分からない、するとその時、ヘンリが入って来た。彼は具合が悪く、疲れ切っているようだった。彼は、「オウ、お前は何でこんな所にいるの?」といっれ、私の横をさっと擦り抜け、彼の書斎に入った。私は一瞬たじろぎながらも、直ぐに従った。私は、今彼に私の手で手紙を渡そうと思い付いた。その内もっと思い切りが必要になって来る。私がドアを開くと、暖炉の側の彼の椅子に座っている彼を私は見た。彼は明かりも付けず、それに泣いていた。

 「一体どうしたのヘンリ?」私は彼に尋ねた。彼は言った。「何も、僕は酷い頭痛がして、それだけ。」

169

2022年6月4日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

私は、共有地を歩きながら神に言った。貴方が実在するのかどうか、或いは貴方は実在しないのかどうか、貴方が二度目のチャンスをモーリスに与えるのかどうか、或いは私は全てのことを予測したのかどうか。多分これは二度目のチャンスになる、と私は。彼に縋(すが)った。私は彼を幸せにするつもりだ。それは、私の二つ目の誓いです。神よ、そして貴方に出来るのなら私を止めてみなさい、貴方に出来るのなら、私を止めてみなさい。

 私は、私の部屋へと階段を上り、私はヘンリ宛に書き始めた。ダーリンヘンリ、私は書いたものの、それには偽善的響きがあった。最も親愛なる方では、嘘になった。つまり、それでは知人のようになりかねなかった「親愛なるヘンリ」そこで「親愛なるヘンリ」、と私は書き、「これは貴方にはかなり衝撃になるのではないか、と心穏やかではありませんが。この五年、私はモーリス・ベンドゥりクスと恋愛関係にありました。二年近くに亘り、私たちはお互いに目を合わせたこともなく、又文面に依(よ)ったこともなく、それにしても、そんなことでは上手く行きません。私は彼なしで幸福に暮らせません。ですから私は、離れて行きます。私は長い間、一妻に属する多くを経ずに来ましたし、その上私は、1944年六月から、全てにおいて夫人とは言い難かった。そう、周りから反れると、誰でも、最悪に陥る、と私は分かっています。私は嘗て思いました、私は、この恋愛沙汰を、まさにものに出来るわと。それは、徐々に満足して疲れ切ってしまうだろうに、それは、その道を閉ざしてしまった。私は1939年にそうだった以上に、モーリスを愛しています。私は子供じみていた、と私は思いますが、今は遅かれ早かれ、人は選ぶしかなく、又人は、あらゆる方向に窮地を作る、と私は悟っています。グドゥ‐バイ。神が貴方を祝福しますよう。」「神が貴方を祝福しますよう。」私は深く深く横線を引いた。だからそこは、読まれる筈はなかった。それは、自己満足の感がありはするが、何にしても、ヘンリは神を信じない。

168

2022年6月3日金曜日

The End of theAffair/Graham Greene 成田悦子訳

私は入口に立ってバーに上がる彼を見守った。もし彼が振り返って私を見れば、私は神に打ち明けた、私は中に入りますと。しかし彼は振り向かなかった。私は家へと歩き出したが、私は私の心の外に彼を置いたままには出来なかった。二年近くに亘って、私たちは知らない者同士だった。一日の僅かな特別の時間に、彼が何をしていたか、私には分からなかったが、今は彼はもう見知らぬ人ではなかった。何処に彼がいても、昔のように私は知っていたから。彼はもう一杯ビアを飲み、それから書く為に慣れ親しんだ部屋へ戻る。彼の一日の習慣は、今尚同様で、誰かが古いコウトゥを愛するように、私はそれをを愛した。私は彼の習慣によって守られていると感じた。私は知らないことを求めたことはない。

 そして私は思った、私は彼をどれ程幸せに出来るか、どれ程楽々と。私は、幸せと共に笑う彼を、もう一度見たかった。ヘンリは外に出ていた。彼は官職の後、昼食の約束を持っていた。彼は、七時までには間に合いそうにないと言う為に電話した。私は六時半まで待つことにして、その後モーリスに電話する。私は言おう、私は今夜と他の全ての夜の為に来ていると。私は、貴方なしでいることに参っています。私は、大きな青いスートゥケイスと小さな茶色のものに荷造りしよう。私は一か月の休日に十分な衣服を持って行こう。ヘンリは啓蒙されているから、月の終わりまでに、法的側面は、決着をつけられるだろう。辛い事は終わり、家から、私が必要とした何か他の物は、都合の良い時に取りに来られる。そこには、そんなに直面する辛い事がある筈がない。そりゃあ私たちは、未だに恋人同士のよう、ではなかった。結婚は、友情になり、少ししも仲が良ければ、前と同様にやって行けるだろう。

 唐突に私は解放感と居心地の良さを感じた。私は、もうこれ以上、貴方のことをあれこれ気に病まなくていい。

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2022年6月2日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 私は、彼を視界に留めながら、彼の後をずっとつけた。私たちは、ポンテフラクトゥ・アームズへ、何度も繰り返し二人で出かけたものだ。彼がどのバーへ向かい、彼が何を注文したか、私は知っていた。私は彼を追って入ろうかしら、そして私のものを注文し、彼の方を振り向くと、何もかもが、飛び越えてもう一度始まるのに?ヘンリが出かけたら直ぐ、彼に電話出来たから、朝は、希望に満ち溢れていたし、そこには、彼が帰宅が遅くなると告げると、期待する夜があった。そして今なら多分、ヘンリの下を去るだろう。私は私の最善を尽くして来た。私はモーリスに上げるお金を持っていないし、彼の本は、彼自身を維持するのに十分で、それ以上殆ど稼がなかったが、一人でタイプを打つのを、手伝って私と一緒にしたところで、私たちは、一年に55パウンドゥ  私は貧乏を恐れない。時には、貴方が作ったベドゥの上の嘘より、貴方のコウトゥを布を間に合わせる為に切ることの方が、それは気楽だわ。

 私は入口に立ってバーに上がる彼を見守った。もし彼が振り返って私を見れば、私は神に打ち明けた、私は中に入りますと。しかし彼は振り向かなかった。

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2022年6月1日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 私は気付かれずに泣きたかった。それから私はナショナル・ポートゥレイトゥ・ギャラリに行ったが、その日は学生たちの日だったーそこには大勢の人々いた。それで私はメイドゥン・レインに引き返し、教会の中に、そこは何時も酷く暗く、貴方の近所の人を見なくていい。私はそこに座った。そこには、私と、入って来て静かに後ろの席で祈る小さい男以外全くいなかった。私は、そうした教会の一つに初めて入った時を覚えていたが、私はそこがどれだけ厭だったか。私は祈らなかった。私は嘗てはかなり頻繁に祈って来た。私は神に言った。私が私の父に言っても差し障りのないように、もし私が今まで誰かを自分のものにしたことを思い出せたら、親愛なる神よ、私は飽き飽きする。


1946・2月3

 今日、私はモーリスを見たが、彼は私を見なかった。彼は、ポンテフラクトゥ・アームズへの途上にあり、私は彼の後をつけた。私は、シェダ・ロウドゥで一時間を費やした―可愛そうなリチャドゥの論拠に追随しようとして、時間を長びかせながら、ひっくり返された信仰という意味を、ひたすらそれから汲み取りながら。誰がそこまで生真面目で、一つの伝説についてそこまで論争的であることが出来るだろう?私が全体で何かしら理解した時、彼のケイスを殆ど救えないように私には見える、と私が気付かなかった何か不思議な実体が、そこにはあった。そこにクライストゥと呼ばれた一人の男がいたという証拠のように。私は疲れ、つまらないという感情を表に出した。私は、迷信から私を抜け出させるために、彼の所に出かけたが、その都度、私は迷信を更に深く作り直した彼の狂信をなぞった。私は彼を救っていたが、彼は私を救っていなかった。一時間、私は殆どモーリスのことを考えなかった。しかしその後、そこに突然彼がいた。通りの端を横切りながら。

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