https://naritaetuko.jp成田悦子の翻訳テキストとちょっとしたこと

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2022年10月7日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 僕は、ヘンリに呼び掛けた。「僕は、準備が出来たよ。」そして僕たちは、ポンテフラクトゥ・アームズへと公有地を越え、並んで歩いた。灯火が伸び、恋人たちは、道路が交差する所で待ち合わせ、草の生えたもう一方の側には、壊された階段のあるその家があり、彼の人は、この希望のない手足の不自由な暮らしを、僕に返した。

 「僕は、僕たちのこうした夕方の散歩の度に前向きになる、」ヘンリが言った。

 「そうだね。」

 僕は思った、朝の内に僕は、医者に電話を掛けて、宗教的治療が可能かどうかを、彼に尋ねよう。するとそこで僕は思った、ましではないが、誰も知らなければ、誰でも無数の治療を予想出来る・・・僕は、ヘンリの腕に僕の手を乗せ、それをそこにそのままにした。僕は、今こそ僕たち二人の為に、強くなる。彼は、未だ真剣に心配していなかった。

 「それは、必ず僕が前に目を向ける唯一の事だ、」ヘンリが言った。

 僕は、初めに、これは憎悪の記録になると書いた。夕方のグラスのビアの為に、ヘンリの側でそこを歩きながら、僕は、冬の気配を添えるように感じる一つの願い事を思い付いた。オウ神よ、十分にして下さった、十分僕を身包み剝がして頂きました。僕は、愛する事を学ぶには、疲れ果てて、年も取りました、ずうっと、僕を一人で放って置いて下さい。




2022年10月7日金20時27分、

「The End of the Affair」の翻訳が終わりました。

今日で終わりました。

次の翻訳は、2年がかりです。

もう決めました。

何をされても、どうなっても、その小説の翻訳をします。


私は、翻訳というものを変えています。

私が全てを変えようと思っています。


私は、誰より翻訳したものを読み、誰より影響を受けました。

それは、読んだ本の名前や数の事を言っているのではありません。

2022年10月6日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 僕は、紙の剥ぎ取り式ノウトゥを見た。それは、頭髪の切れ端以上に人格を持たなかった。貴女は、貴女の唇や指で髪に触れられ、そして僕は、心の死に直面し、参っている。僕は彼女の体を求めて暮らし、僕は彼女の体が欲しかった。それなのに、日記は、僕が持つ全てだった。だから食器戸棚の中に戻して、それを閉じ込めた。彼女が居なくても、それを葬り、もっと完全に僕の手元に残して置く事、それは、彼の人にとって更なる勝利にならなかったのでは?僕は、サラーに言った、これでいい、それで貴女の行く道を手に入れなさい。僕は、貴女が生きていて、彼の人は実在すると信じる。愛へと、この彼の人の憎悪を変えようとする貴女の願い以上に、それは奪ってしまう。彼は僕を身包み剥ぎ取り、あの王のように、僕の中の彼の人が欲しがるものを僕は彼の人を身包み剥がすでしょうと貴女は書いた。憎悪は、僕の脳の中にあり、僕の胃の中、或いは僕の皮膚にもない。それは、発疹や痛みのように除去されようがない。僕は、貴女を愛する程に、貴方を憎んだ?それに、僕は僕自身を憎みはしない?

292

2022年10月5日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 僕は思った、貴女は、そこを間違った、サラー。少なくとも貴女の願いの一つは、叶えられなかった。貴女,貴女以外の者に、僕はどんな安らぎも覚えないし、僅かな愛情も抱かない。僕は彼女に言った、僕は憎しみの内にある男だ。しかし僕は、さほど憎悪の虜になっていないのに、僕は、他の人々をヒスティアリア状態だと言って憚らなかったが、僕の遣う言葉は、過剰だった。僕は、彼等の不誠実を見て取れた。僕が主として感じた何かは、不安より憎しみの方が負けていた。もしこの神が存在するなら、僕は考えた、そしてもし貴女でさえ―貴女の性欲や、貴女の姦通や、貴女が何時も口にする弱気な嘘で、このように変われるのなら、僕たちは、アナタが急いで行くように、急いで行けば、目を閉じれば、一度、皆の代わりに急いで行けば、皆死人になれるだろう。もし貴女が聖人なら、聖人になる事、それはそんなに難しくない。それは、彼が、僕たちの誰かを要求し、急いで行くことが出来る何かだ。しかし僕は急いで行きたくない。僕は、僕のベドゥに座って、神に言った、貴方は、彼女を奪ったが、貴方は、未だ僕を手に入れていない。僕は、貴方の狡猾さを知っている。高みへと僕たちを持ち上げ、僕たちに全世界を提供する、それは、貴方だ。貴方は、僕たちを急いで行くように誘っている悪魔、神だ。何れにせよ僕は、貴方の安らぎが欲しくない、僕は貴方の愛が欲しくない。僕は、何かしら実に単純で、実に安易なものが欲しかった。僕は、生きている限り、サラーが居なくてはならなかったのに、貴方は、彼女を何処かへ連れ去った。貴方の見事な計画で、収穫農機具が、鼠の巣を潰すように、僕たちの幸福を潰す。僕は、貴方を憎む、まるであなたが実在するかのように、僕は貴方を憎む、神よ。

291

2022年10月4日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

僕は、二階の僕の引き出しの中の日記を思い出し、僕は考えた、あれも始末しよう、あれは、彼らのいいように解釈されてしまうから。彼女を救う事、それは、自らの為に僕たちが一つづつ彼女の特徴を壊そうとするかのようだった。彼女の子供の頃の本も、危険だと分かっていた。そこには写真があった―一枚はヘンリが持って行った。報道機関は、それを持っていなければならない。モードゥは信用するに値するか?僕たちは二人は、一緒に暫定的な家を築き上げようとして来たのに、それも中断される事になる。

 「僕たちの酒飲みは、どうする?」ヘンリが言った。

 「僕は、もうちょっとで加わるよ。」

 僕は、僕の部屋に上り、その日記を取り出した。僕は、カヴァを裂いて剥がした。それは、丈夫だった。綿の裏張りは、繊維状になって外れていた。それは、翼を引き裂かれている一羽の鳥のようで、ベドゥの上のそこに、日記が横たわっていた。紙の剥ぎ取り式ノウトゥ、羽のない、傷付いた。最後の頁が上向きになっていたので、僕は、又それを読んだ、「貴方は、そこで消耗するように、私を導いていた、そうして、或る日、私たちは、この貴方の愛以外、何も残っていなくてもよくなってしまった。それにしても貴方は、私には立派過ぎます。辛くて、私が貴方に縋(すが)る時、貴方は、私に安らぎを下さった。それを彼にも授けて下さい。彼にこの安らぎを授けて下さい―彼は、もっとそれを必要としています。」

290

2022年10月3日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「彼は、何を欲しがったの?」

 「彼の顔が治った、それだけ、僕はその専門家の名前を僕に知らせるように頼んだ。僕には、友達がいて・・・」

 「電気療法?」

 「僕には、確信がない。 は、元はヒステリク状態だと、僕は、どこかで読んだ事がある。精神医学とラディウムの混合。」それは、もっともらしく聞こえた。多分、結局、それが真実だ。他の符合、同じナムバ プレイトゥの二台の車、そして僕は、飽き飽きした感じで思った、どれだけ多くの符合が、そこにあればいいというのか?葬式での彼女の母親、その子供の夢。これが、毎日毎日続くというのか?僕は、彼の強靭さを遥かに‐超えて、潮流が彼自身より優勢だと知っている泳ぎ手のような気がしたが、喩え僕が溺死しても、僕は、最後の瞬間までヘンリを支え続けるつもりだった。喩えこの事が論ぱくされなくても、喩えそれが新聞に載っても、何処でそれが終わるのか誰もそれを語れないのだから、結局、それは、友人の義務ではなかったのか?僕は、マンチェスタのバラを思い出した―あの詐欺は、それはどういう事かを承認されるのに長い時間がかかった。人々は、当時、酷くヒステリク状態だった。そこには、遺品‐漁り、祈りをする人々、行列があるのかも知れなかった。ヘンリが、知られていなくても、醜聞は凄まじい。おまけに、二人の生活の事を質問し、ドーヴィル近くの洗礼の奇妙な物語をほじくり返す新聞雑誌記者連中。宗教的報道機関のその低俗さ。僕には、見出しが想像出来ないし、見出しは更なる「奇跡」を産み出すだろう。僕たちは、しょっぱなに、この事を葬らなければならなかった。 

289

2022年10月2日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「どのようにして?僕は未だ知らない・・・」

 彼は陰謀の恐ろしい雰囲気で言った、「貴方と僕は道理が分かる。その周辺、そこはどうにもなっていません。それは、そこを陰気にしている僕の右ではありません。それは、・・・でした。」しかし、それは、「符合」に向かう二者択一だったというあの馬鹿げた新聞の言葉を使える前に、僕は、受話器を置いた。僕は、彼の握り締めた右手を覚えていたし、僕は、死者がそうして包み込まれ、彼らの衣服のように分けられてもいいのかという僕の怒りを覚えていた。僕は思った、彼は、非常に誇り高く、彼は、何時も或る種の啓示を授からずにはいられない。一、二週間の内に、彼は、それについて共有地で話し、彼の治った顔を見せようとするだろう。それは、新聞に登場するだろう。「合理主義者の演説家、奇跡的治癒によって転向した。」僕は、符合に、ありったけの僕の信条を結集しようとしたが、僕は考えた挙句、妬みを伴うそれは、僕には何の遺品もなかったから、彼女の髪の上に、夜に、横向きになっている潰れた頬だけだった。

 「それは誰なの?」ヘンリが尋ねた。僕は、彼に話すべきかどうか、瞬間、躊躇いはしたが、ふと、僕は思った、だめだ。僕は彼を信用していない。彼とクロムプトン神父は一緒になるだろう。

 「スマイズ、」僕は言った。

 「スマイズ?」

 「サラーがよく訪ねたあいつ。」

288

2022年10月1日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

僕は、彼の肩からふけの数粒を払った。「オウ、大丈夫、ヘンリ・・・」するとその時、僕たちが動こうとする前に、ベルが又鳴り始めた。

 「そんなの放って置こう、」僕は言った。

 「僕は、出た方がいい。貴方には分からない・・・」彼は彼の靴‐紐をぶら下げたまま起き上がり、彼の机の方へ向かった。「今日は、」彼は言った、「マイルズが話しています。」彼は、僕に受話器を渡して安心して言った、「それは貴方へだ。」

 「はい、」僕は言った、「ベンドゥリクスです。」

 「ベンドゥリクスさん、」男の声が言った、「貴方に電話を掛ける事にしようと思いました。僕は、今日の午後、貴方に真実を打ち明けなかった。」

 「貴方はどなた?」

 「スマイズ、」その声が言った。

 「僕は、分からない。」

 「僕は、私設療養所へ行ったと貴方に話しました。そこに僕は行っていません。」

 「実際、それは、僕に関係などある筈がない。」

 彼の声は、電話を通して僕に届いた。「もちろん、それは関係あります。貴方は、僕に耳を傾けようとしない。誰も僕の顔を取り扱っていません。それは。すっかり奇麗になりました、或る夜に、突然。」

287

2022年9月30日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「妙な一致、貴方が言えば何でもそうだ。」

 前に一度、ありったけの強さでヘンリの代役を務めた事があった、僕は、今、彼をへこませるつもりはなかった。「僕は、見知らぬもの同士の一致を知った。」僕は続けた。「去年中、ヘンリ、僕は、実にうんざりさせられる程、僕は車のナムバを集めた。それは、符合について貴方に教え導く。一万もの有り得る番号、そして神は、どれ程多くの組み合わせがあるか知っているのに、未だに僕は、繰り返し、交通障害で並んだ同じ型の二台の車に目が行く。」

 「そうだね。それはそんな風になってしまうものだと僕も思う。」

 「僕は、一致の内に、僕の自信を失くしてしまう事はない、ヘンリ。」

 電話は、二階で微かに鳴っていた。僕たちに今までそれが聞こえなかったのは、 スイチが書斎で消してあったから。

 「オウ大事な人、オウ大事な人、」ヘンリが言った。「もしそれが又、あの人だったら、僕は少しも驚かないのに。」

 「彼女に鳴らさせて置け。」すると僕が話すと同時に、ベルが止まった。「それで僕が卑劣だという事にはならない。」ヘンリが言った。「十年で百パウンドゥ以上、彼女が借りたとは思わない。」

 「外に出て、一杯やろう。」

 「もちろん。オウ、僕は、僕の靴を履いてなかった。」彼がその上に折れ曲がると、彼の頭の王冠に禿げた継ぎ当てが見えた。それは、彼の心配事が尽きなかったかのようだった―僕は、彼の心配事の一つだった。「僕は、貴方がいないと何をしたらいいのか、分からない、ベンドゥリクス。

286

2022年9月29日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「そう。彼女は10パウンドゥ欲しかった―彼女の何時もの作り話、一日街で、買い物をして、走りに走る、銀行は閉まった…ベンドゥリクス、僕は卑しい男ではないが、僕は、彼女が仕出かす遣り方に、随分いらいらさせられる。彼女は、年に二千も彼女のものとして懐に入れた。それは、僕が稼ぐのとほぼ同額だ。」

 「貴方は、それを彼女にあげたの?」

 「オウそう。誰でも決まってそうするが、困った事に、僕は説教をせずにはいられなかった。それが彼女を怒り狂わせた。何度、彼女がそんな事をして、何度、僕に返したか、僕は彼女に話した―それは、最初、簡単だった。彼女は、彼女の小切手綴りを取り出して、彼女は、僕に、そこやその時全部の代償に全部小切手に書くつもりだと言った。彼女は非常に腹を立てたので、僕は彼女はそうするつもりだと確信した。彼女は、彼女の最後の小切手を使ってしまったという事を、本当に忘れていた。彼女は僕に恥をかかせようとしたのに、彼女は、只、自ずと恥をかく事に成功しただけだった、可哀そうな女。当然、それが、事を悪化させた。

 「彼女は、どうしたの?」

 「サラーに相応しい葬式をしてやらなかった事で、彼女は僕を責めた。彼女はおかしな話を僕にした・・・」

 「僕は、それなら知っている。彼女は、二杯のポートゥの後、僕にそれを打ち明けた。」

 「彼女が、嘘を吐いていると貴方は思う?」

 「いや。」

 「それは、有り得ない一致でしょ?二歳で洗礼を施され、そしてあの時、貴方が覚えてもいられない事に、後戻りし始める事・・・それじゃあ、まるで伝染病のようだ。」

285

2022年9月28日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

彼は彼の街用と彼の田舎用靴を持ち、共有地は、彼の見る限り田舎だった。彼は、彼の紐の上に折れ曲がった。そこには彼が解けない結び目があって―彼は、何をしても彼の指使いが下手だった。彼は、奮闘する事に疲れ果て、靴をもぎ取った。僕はそれをつまみ上げ、彼の為に結び目を解いた。

 「貴方には感謝する、ベンドゥリクス。」おそらくそれ程些細ではあっても、仲間付き合いの一つの振る舞いは、彼に信用を与えた。「あまり嬉しくない事が、今日役所であったんだ。」彼は言った。

 「僕に話すと言い。」

 「バトゥラムさんが、電話をして来た。貴方は、バトゥラムさんを知ってると、僕は思わない。」

 「オウ、そう。僕は、他日、彼女に会った。」妙な言葉―他日、その一日以外、全ての日は、同じだったかのようで。

 「僕たちは、そんなに上手く一緒にやって行った事がない。」

 「そういう風に彼女は言っていた。」

 「サラーは、それを何時も非常にうまくこなした。彼女はあの人を遠ざけていた。」

 「彼女は、お金を借りに来たの?」

284


2022年9月27日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

彼らは、それによって無条件で、陰謀の外側に留まる。しかし僕たちは、四方を押されてしまう。僕たちは、不在の執拗さを持つ。僕たちは、脱出出来ずに陰謀に縛られ、物憂げに神は僕たちに強いる、こちらでもあちらでも、彼の意図に従って、詩情もなく、自由意志もない人物、彼の重要性だけが、その何処かに、何らかの折にあり、僕たちが、多分彼らの自由意思にとって好機を手にした死者を提供しながら、その中で、生きている人物が動き、話すシーンを入れ込むのに役立つ。

 僕は、ドアが閉まり、ホールの中のヘンリの足音が聞こえた時、嬉しかった。止める事、それが謝罪だった。その人物は、今尚、朝まで無気力のままでもいい。その時は、ついにポンテフラクトゥ・アームズへ向かう時間だった。僕は、彼が上に呼び掛けるのを待った。(既に一か月の内に、何年も一緒に暮らして来た二人の独身者と同じように、僕たちの成り行き任せだった。)しかし彼は声を掛けず、僕は、彼が彼の書斎の中に入るのを耳にした。少しして、僕は、彼の後を

追った。僕は僕の酒を飲み損うところだった。

 僕が、最初、彼と一緒に戻って来た時、僕は、その時の事が思われた。彼は、そこに、緑色の円盤投擲の側に座っていた。

しかし、今、彼を見守りながら、僕は、羨望も喜びもどちらも感じなかった。

 「飲むか、ヘンリ?」

 「そう、そう。もちろん。僕は、只、僕の靴をかえようとしただけだ。」

283

2022年9月26日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「心霊治療?」

 「僕には信仰はありません。僕は、医者に行ったことがありません。」

 「それじゃ何?蕁麻疹?」

 彼は、その話題を終えようとして漠然と言った。「近代的方法。電気。」

 僕は帰宅して、再び、僕は僕の本に身を入れようとした。何時も、僕は書き始めると、そこにしつこく息づかない一つの人物がいるのに気付く。彼に関して心理的誤りは、そこには何もないのに、彼は身動きが取れず、彼は周りに押されてしまう、言葉が彼に向かって探り当てられようとする、僕が勤勉な歳月を通して得た、あらゆる技術的スキルは、彼を僕の読者に息づいて見えるように組み立てる事に使われて欲しい。時に、僕は、物語の中で最も‐引き摺られた人物として彼を批評家が褒めると、僕は腐った満足を得る。喩え彼が引き摺られなかったとしても、彼には確かに引き摺り込まれた。彼は、重く僕の心に横たわる、僕が仕事をし出すと必ず胃の上の殆ど消化されない食事のように、彼が登場するどんなシーンにも、創造の喜びから僕を遠ざけるばかりで。

 彼は、期待されなかった事はせず、彼は僕を驚かせもせず、彼は手数料も取らない。他の人物皆が助ける、彼は只々邪魔をする。

 それでも尚、誰も彼なしで振舞えない。僕は、僕たちの何人かについては、その道筋そのものに神の思いを想像出来る。死者は、人はきっと思う、ある認識の中に自らを創造する。彼らは息を吹き返す。彼らは、驚くほどの演技、或いは言語能力を持つ。

282

2022年9月25日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「それで貴方は家庭‐指導は未だしているんですか?」僕はからかった。

 「いいえ。僕はそれも止めました。」

 「貴方の見解は変わらなかった、と僕は願う?」

 彼は憂鬱そうに言った、「僕は、何を信じていいか分かりません。」

 「何にもない。きっと、それが核心だった。」

 「そうでした。」彼は、群衆の外の方へ少し動き始め、僕は、自ずと彼の悪い方に目が行った。僕は、もう少し彼をからかおうとせずにはいられなかった。「貴方は、歯痛になったの?」僕は尋ねた。

 「いいえ、どうして?」

 「それは、そんな風に見えたから。そのハンカチーフで。」

 彼は答えずに、ハンカチーフを取った。そこには隠す醜さは全くなかった。一つの小さいシミ以外、彼の肌は、実に新鮮で若々しかった。

 「彼は言った、「僕は、僕が知る人に会う時、説明するのに飽きてしまいました。」

 「貴方が、除去法を見付けたの?」

 「はい。僕は何処かにいたと貴方に話しました。」

 「施設療養所へ?」

 「はい。」

 「手術を?」

 「正確ではありません。」彼は嬉しくなさそうに付け加えた、「それは、手を触れて行われました。」

281

2022年9月24日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 Ⅷ

僕の本は上手く行っていなかった(書くという行為は、何と時間の浪費に思える事か、しかし他にどう使い果たされよう?)演説者の話を聞く為に共有地を横切って歩いた。そこに僕が覚えている一人の男がいて、彼は戦前の日々、僕を何時も楽しませてくれた。僕は、彼の投球場所に無事戻り、彼を見て嬉しかった。彼は、政治的、宗教的演説者のように、伝えたいメシジをまるで持っていなかった。彼は  で、彼は只物語を伝え、詩の一片を暗唱した。彼は、詩の何かの断片をと頼んで、彼に間違いを指摘する、彼の聴衆に挑もうとした。「The Ancient Mariner」誰かが叫ぶ、と直ぐに、大層な強勢で、彼は僕たちに4行詩を披露するのだ。一人のお調子者が言った、「Shakespear’s Thirty-Second Sonnet」すると彼が無作為に四行を暗唱し、お調子者が異議を唱えると、彼は言った、「貴方は、酷い版を手に入れたんだね」僕は、僕の同僚のリスナをぐるっと確認してから、スマイズを見た。おそらく彼は先に僕を見付けた、というのも、彼は、彼の顔のハンサムな方、サラーがキスをしなかった方を、僕に向けたから、しかし喩えそうでも、彼は僕の目を避けた。

 何故僕は、サラーが知っていた誰彼に、何時も話し掛けたがるのか?僕は、彼の方へと僕の意志を押し通して言った、「こんにちわ、スマイズ。」彼は、彼の顔の醜い方にハンカチーフを乗せたまま、僕の方を向いた。「オウ、ベンドゥリクスさん。」彼は言った。

 「僕は、葬式以来、貴方を見かけませんでした。」

 「僕は、離れていました。」

 「貴方は、もうここで話していないのですか?」

 「いいえ。」彼は躊躇い、嬉しくなさそうに付け足した、「僕は、公開演説を止めました。」

280

2022年9月23日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 その夜、朝の二時にすっかり目が覚めた。僕は食料貯蔵室へ降り、何枚かのビスキトゥと一杯の水を、自分で取って来た。僕は、ヘンリの前で、サラーの事をあんな風に話してしまって申し訳なく思っていた。牧師は、或る死者がしなかったということ、そこには僕たちが出来る事は何もないと言った。それは、殺人や姦通、目を見張る程の罪の真実かも知れないが、一人の死者はずっと妬みと卑劣という有罪のままでいいのか?僕の憎悪は、僕の愛情同様、箸にも棒にもかからなかった。僕は静かにドアを開け、ヘンリを覗き見た。彼は、明かりを点け、彼の目を彼の腕が隠したまま、ぐっすり眠っていた。隠された目と共に、そこには、全身について匿名の、人がいた。彼は男そのものだった―僕たちの内の一人。彼は、男が戦場で出くわす初めての敵の兵士のようで、死んで、見分けがつかない、白でも赤でもなく、しかし彼自身のように人間そのもの。僕は、彼が目が覚めたらと、彼のベドゥの側に2枚のビスキトゥを置き、明かりを消した。

279

2022年9月22日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 僕の片机の引き出しから、僕は貴女の日記を取りそれをでたらめに捲りながら、去年の一月の日付に沿って僕は読んだ。「オウ神よ、私は貴方を実際嫌える、それにどんな意味があるのか?」そして僕は思った、サラーを憎む事は、ひたすらサラーを愛す事、自らを嫌う事は、ひたすら自らを愛す事^―モーリス・ベンドゥリクス、The Ambitious Host,The Crowned Image,The Grave Water-frontの著者。ベンドゥリクス乱筆家―サラーでなくとも―もし貴方が実在すれば、貴方以外、僕たちの憎悪に価値を見出す事はない。そこで僕は考えた、時に僕はモーリスを憎んだが、喩え僕が彼をも愛さなかったところで、僕は彼を憎むに至るだろうか?オウ神よ、喩え、僕が貴方を、心底憎めたにしても・・・

 どのように彼女は信じなかった神に祈ったか、僕は覚えていた、と今、僕はサラーに話し掛ける、僕は信じなかったのに。僕は言った、生きる事に僕を連れ戻そうとして、一度は僕たち二人揃って、貴方は犠牲にした。貴女なしで、これが、どんな人生足り得るか?神を愛する事、それは貴女にとっては全て実に好都合だ。貴女は、彼を我がものにしている。僕は生きる事に喘いでいる、僕は健全である事に気が塞ぐ。もし僕が神を慈しみ始めると、僕はまさに死ねもしない。僕は、その事で何かをしようとした。僕は僕の手で貴女に触れずにはいられない、僕は僕の舌で貴女を味わわずにいられなかった。誰も愛せないし、何一つ出来ない。夢の中で貴女が一度したように気にしないでと貴女が僕に話し掛ける事、それも何の役にも立たない。もし僕が永遠にそのように愛したら、それで、何もかも終焉に至るだろう。貴女を愛してさえいれば、僕は何も食べなくても良かった、他のどんな女にも萎えてゆく欲望を感じた。ともかく彼を慈しんだところで、そこは遠くて、何事の中にも、まるで彼と共にある事の喜びは見出せない。僕は僕の仕事でさえ捨てたくて、僕はベンドゥリクスである事を止めたい。サラー、僕はどうしようもない。

278

2022年9月21日水曜日

The End of the affair/Graham Greene 成田悦子訳

 僕は、僕からあの娘を救うように貴女に頼み、貴女は貴女の母親を僕たちの間に押し付けた―或いはそう彼らが言ってもいい。しかし、もし僕が信じ始めれば、その時貴女の神を僕は信じるようとするに決まっている。僕は貴女の神を愛そうとする。僕は、いっそ貴女と寝た男たちを愛す方がましだ。

 僕は理性的になる事にした、僕は二階に行くよう自分に言い聞かせた。サラーは、死んでいないまま、もう長い時が過ぎた。誰も、この激しさで死者を愛し続けない、唯一生者だけは。彼女は生きていない、彼女が生きている筈がない。彼女が生きていると想い込んではいけない。僕は、僕のベドゥに横になり、僕の目を閉じて、僕は理性的になるよう努めた。僕が時になるように、もし僕が彼女を、そんなに身を余す程嫌えば、どうして彼女を愛せる?人は、心底憎み愛せるか?又、僕が心底憎むのは、それは、僕自身だけだ。僕がそれらのありふれた取るに足りぬ技術書いた本に、僕は嫌気がさす。僕の中の職人気質は、原稿の為には随分貪欲で、彼女が僕に与えられる情報が欲しくて、僕が愛さなかった女を引き籠らせようと調整した。心ゆくまで楽しんだところで、それにしても、心が何を思うかを表現するには、不十分であるこの体を、僕は疎んじた。そして僕は、僕の信頼しようとしない心が疎ましい。それは、ドアベルに粉を振ったり、神屑籠を荒らしたり、貴女の秘密を盗んだりしたパ―キスを腕時計にセットした。

277

2022年9月20日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「僕に貴方を求めよ、神父?神父、僕は無作法でありたいとは思わないが、僕は、サラーがいなくても僕だ,サラーがいなくても。」

 ヘンリは、困り果てて言った、「僕は申し分けなく思います、神父。」

 「貴方がそうである必要はない。どんな時に男が苦痛の中に納まるか私は知っています。」

 僕は、彼の自己満足の堅い皮膚を貫けなかった。僕は、僕の椅子を後ろに押して言った、「貴方は間違っている、神父。これは苦痛のように何か微妙なものではない。僕は、苦痛の中にいるのではない。僕は、憎しみの中にいる。僕はサラーを憎む、彼女は小さいタートゥだったから、僕はヘンリを憎む、彼女は、彼にくっついて離れないから、そして僕は、貴方と貴方の想像上の神を憎む、貴方は、僕たち皆から彼女を何処かへ連れ去ったから。」

 「貴方は、善良な憎みたがり屋です、」クロムプトンが言った。

 涙が、僕の目で行き場を失くした、彼等の何れかを傷付けるにしても、僕は力を頼りにする気はなかったから。「その貴方の饒舌さを持ったまま地獄へ。」僕は言った。

 僕は、ドアを僕の背でバタンと閉め、二人揃って彼らを閉じ込めた。ヘンリへの彼の高徳な博識を、彼に撒き散らせるといい、僕は思った、僕は一人だ。僕は一人になりたい。喩え貴女を僕が自分のものに出来ても、僕はあくまで一人になろうとする。オウ、次の男と同程度の信頼の能力が、僕にはある。僕は、延々と、ひたすら僕の心の眼差しを締め出すしかないのだ、そして僕は、貴女が、夜、安らぎを運ぶ貴方の感触と共に、パ―キスの少年の所へ出かけたという事を僕は信じられるのに。

276

2022年9月19日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「彼女は、彼女がなかった何かである振りはしなかった。」

 「僕は、彼女の唯一の愛人ではなかった―」

 「彼を一人にさせなさい、」クロムプトン神父は言った。「かわいそうな男に譫言(うわごと)を言わせて置きなさい。」

 「貴方の専門的な哀れみを僕によこすな、神父。それを貴方の罪を悔いている人の為に、取って置きなさい。」

 「貴方は、僕が誰を哀れもうと、僕に押し付ける事は出来ない、ベンドゥリクスさん。」

 「どんな男でも彼女を所有出来た。」僕は、僕が何を言おうと信じようとしたのは、その時、そこに間違えるか後悔する事は何一つないに決まっていた。彼女が何処にいても、僕は、もう彼女に縛られようとは思わなかった。僕は自由になるんだ。

 「そして貴方は、懺悔に関して、何を以てしても私を説き伏せられないベンドゥリクスさん。私は、告白の25年と共にあった。そこには、私たちが、私たちの前でしなかった死者の内の何人かに、私たちが出来る事は何一つありません。」

 「失敗以外、僕は懺悔すべき事に囚われる事はなかった。貴方を待つの人々の処へ戻りなさい、神父、貴方の血みどろの小さな箱と貴方のロザリオに戻りなさい。」

 「貴方が私をと望むなら、如何なる時もそこで、貴方は私に気付くでしょう。」

275

2022年9月18日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「聖オーガスティンは、時は何処から来たかと尋ねました。彼は、それは未だ存在しなかった未来から現れ、全く継続性を持たない現在の中へ、やがて存在を終えた過去の中で消えたと言いました。私たちは、子供より時を多少よく理解出来るという事を、私は知りません。」

 「僕には意味が分からなかった・・・」

 「オウそうですね、」と彼は言い、立ち上がりながら、「貴方は、まともにこの事に囚われてはいけません、マイルズさん。それでは、貴方の奥様がどんなに善良な方だったかを、見せびらかす事にしかなりません。」

 「それは、僕には何の救いにもならないんですね?彼女は、実在する事を終えた過去の一部です。」

 「その手紙を書いた男は、彼の中に多くの意図を持っていました。それらの為にと同じように、死者に祈る事の中に、そこには全く害はありません。」彼は、彼の言葉を繰り返した。「彼女は善良な女性でした。」

 全く突然、僕は僕の自制をなくした。彼の自己満足に主に悩まされた、と僕は信じている。知性などまるでないという感じは、これまで彼を困らせた筈だった。彼は数時間か、数日の間に知ったのは、僕たちが、何年もの間分かっていた誰かの親密な精通の掌握だけだった。僕は言った、彼女には、その種の事は何もなかった。」

 「ベンドゥリクス、」ヘンリは抜け目なく言った。

 「彼女はどんな男にでもまばたきをする人で、」僕は言った、「牧師にでも。彼女は、彼女の夫を騙したように、彼女は貴方を騙しただけです、神父。それに僕を。彼女は類稀な嘘吐きだった。」

274

2022年9月17日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「本、」僕は言った。「貴方がパ―キスにそれを上げる前に、そこにサラーが何を書いたか読んだの?」

 「いや、どうして?」

 「偶然の一致、それが全て。偶像崇拝である事へのクロムプトン神父の説得に加担する、それは貴方には必要ないように思う。」僕は、ヘンリに手紙を与えた。彼はそれを読み、それから、クロムプトン神父にそれを手渡した。

 「私は、それは好きではありません。」とヘンリは言った。「サラーは死にました。僕は、彼女が噂を立てられるのを見聞きするのは嫌です・・・」

 「僕は、貴方が何を言いたいのか分かる。僕もそう思う。」

 「それは、見も知らぬ人々に彼女の事を、あれこれ言われるのを聞いているようだ。」

 「彼らは、彼女の事を何も悪く言おうとしてはいません。」クロムプトン神父が言った。彼は手紙を下に置いた。「もう私は行かなければなりません。」しかし彼は、テイブルの上の手紙を見るばかりで、動こうとしなかった。彼は尋ねた、「それで碑文?」

 僕は、彼の方へ本を横切って押した。「オウ、それは、何年も前に書かれた。彼女は子供皆と同じで、このような事を彼女の本の多くに書きました。」

 「時は、不思議なものです、」クロムプトン神父は言った。

「もちろん、子供というものは、それが過去にすっかり為された事と理解しようもないのです。」

273

2022年9月16日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 今、もし成長した男がそういう事をする事が出来れば、ベンドゥリクスさん、貴方には私の幼気な子供が想像している事が理解出来ます。今朝、私が目覚めますと、彼の体温が99度で、彼は少しの痛みもなく、医者が来ると。そこには残された僅かな虚弱さもなかったものですから、私たちは、暫く待つ方がいいと彼は言いましたが、子供は一日中全く正常でした。只、来て痛みを拭い去ってしまったのは、それは、マイルズ婦人でした―胃の右側を、彼に触れながら、もし貴方が無作法を許して下されば―そして彼女は、彼の為に本に書き込んだ、と医者に打ち明けました。しかし医者は、彼は、この上なく安静を保たれなければいけない、本は彼を興奮させると言いますから、こんな状況の下では、私は家の中に本がない方が寧ろいいのです・・・」

 僕がその手紙を上に向けると、そこに追伸があった。「本の中のあちこちに何か書いてありますが、マイルズ婦人が少女だった頃で、それは何年も前だったという事は、誰でも見ると分かります、只、私はその事を、痛みが戻って来るかも知れないと不安に思うが故に、私の幼気な子供に説明出来ません。敬意を込めて、A.P。」私は見返しの方を向けて、そこに 他の本の中で以前見たのとちょうど同じ消せない鉛筆の形にならなかった走り書きがあり、その中に、子供だったサラー・バトゥラムが、彼女の座右の銘を書いていた。

 「私が病気になった時、私の母は、私にラングによるこの本を私に与え      ました。

 もし誰か丈夫な人がそんなものを盗めば、彼は、凄絶な轟音を喰らうで         しょう。

 けれども、もし貴方が病気で床に伏せているのなら、その代わりに

 貴方は、それを読む為に、手に取ることが出来ます。」

 僕は、食堂の中に僕と一緒にそれを戻した。「それは何だったの?」ヘンリが尋ねた。

272

2022年9月15日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 彼女は、一度、彼に話し掛けただけでしたが、どういう分けか、彼の母親は彼女に似ていたという考えを持ってしまった、と僕は思います。只、彼女も、彼女の途上にあって、十分誠実な婦人ではなかったのに、私は私の人生の日々を見失っています。それで、彼の体温が、彼のような少年にしては高い、103だった時、通りで彼がした、ちょうどその通りに、マイルズ婦人に話し始めましたが、彼の年齢でさえ専門家としてのプライドゥを持ちながら、もちろん彼はしたくないのに、彼女を見張っていた、と彼女に打ち明けました。その内、彼は、彼女が何処かへ行ってしまって泣き出し、それから彼は眠ったにもかかわらず、彼が起きた時には、彼の体温は、まだ102のままでした。彼は、彼女が夢の中で彼に約束したプレズントゥを頼みました。そう、それが、何故私がマイルズ氏を悩ませ、彼を騙したのかであり、幼気な私の子供だけで、そこに専門家としての理由がない事が、私は恥ずかしい。

 私が本を貰って、それを彼に与えると、彼は少し穏やかになりました。しかし、もうこれ以上危険を選ぶ事はなく、彼は、水曜日には病院に行く予定で、もしそこで空いたベドゥがあったら、彼は、その夜、彼を送るつもりだ、と医者が言いましたから、私は心配でした。私の可哀そうな妻と私の幼気な子供だからこそ私は気懸かりで、それにメスが怖くて眠れなかったのは、貴方が見ての通りです。私は、随分一生懸命祈ったと貴方に打ち明けても、気にはなりません、ベンドゥリクスさん。私は神に祈り、もし天国のそこに誰かがいれば、今彼女は天国にいるのだから、彼女が出来る事をして欲しい、と私の妻に祈り、私は、マイルズ婦人に、もし彼女がそこにいたら、彼女も又出来る事なら何でもして欲しい、と頼みました。

271

2022年9月14日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「親愛なるベンドゥリクス氏、私は貴方に書いています、嘆かわしい団体とはいえ、私共の終わり故に貴方の同情を確信しているマイルズ氏ではなく、想像力のある、未知の出来事に慣れた文学の紳士貴方に。貴方は、私の所の若い者が、最近、彼の胃の酷い痛みは悪化する一方で、アイス・クリームの所為ではない事を御存知です。私は、虫垂炎を心配しています。医者は、手術を申し渡し、それには殆ど危険性はあり得ないとはいえ、私の幼気(いたいけ)な子供にメスとは、どれだけ恐ろしい事か、彼の母親は、不注意によりその最中に死んだ事を私は確信しています。この上、もしも同じ事で私の子供を失う嵌(は)めになったら、私はどうすればいいでしょう?私は全く一人になってしまいます。つまらぬ事はひらに許して下さい、ベンドゥリクスさん、しかし私の職業では、私たちは順番に物事を片付けるよう訓練され、重要な事を真っ先に説明します、だから裁判官は、事実を分かり易く提供しなかったと不平を言えない。それで私は、月曜日に医者に言いました、私たちが確信するまで待ちましょうと。只、マイルズ婦人の家の外で、待ちかまえ、見張っていた、そういう事をした、これは風邪だと時々僕は思います、一人放って置かれても致し方ない底なしの寛大さを持つ女性だったと僕が言っても、貴方は私を許すでしょう、貴方は、私の仕事の中身をほじくり返し、選別するけれども、メイドゥン・レインでのあの最初の日から今まで。私が見張っていた、それが、誰か他の女性だったらいいのにと願いました。ともかく、僕の所の若い者は、どんな風にその可哀そうな女の人が死んで行ったのか、彼が聞いた時、恐ろしく取り乱しました。

270

2022年9月13日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「彼が本を返そうとしてるんじゃないかと僕は思う。」

 「こんな時間に?その上、それには僕の宛先が書いてある。」

 「そうだね、それで、それは何なの?」僕は小包を開けたくなかった。僕たちは、僕たち二人共が、忘れようとする痛みを伴った過程の最中(さなか)にあったのではないか?サヴィジ氏の取次店への僕の訪問で、僕は十分罰せられて来たのではないかと僕は思った。僕は、「私は、もう席を外しましょう、マイルズさん。」と言うクロムプトン神父の声を、僕は聞いた。

 「それはまだ早い。」

 僕は思った、僕が部屋の外に留まれば、僕は、ヘンリの客への礼儀に適わなくてもいい、彼はもう間もなく帰るかも知れない。僕は包みを開けた。

 ヘンリが正しかった。それは、アンドゥルー・ラングの童話集の一冊だった。しかし、頁の間に一枚の折り畳んだメモ用紙が突っ込んであった。それは、パ―キスからの手紙だった。

 「親愛なるベンドゥリクス氏、」僕は読んだ、又、それは感謝の主旨だと思いながら、僕の目は、最後の文章に我慢出来ずに引き付けられた。「つまりこの状況の下で、僕は、いっそ家に本がない方がいいし、貴方の立場上、そこには本当に恩知らずはいない、と貴方がマイルズ氏に説明して下さることを望んでいます、アルフレドゥ・パ―キス。」

 僕は、ホールに座り込んだ、僕はヘンリが話すのを聞いた、「僕は、僕の心を閉ざしてしまったと考えないで下さい。クロムプトン神父・・・」そうして僕は、パ―キスの手紙を初めから読むことにした。

269

2022年9月12日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 一瞬、それが僕たちの家政婦だと僕は思った、「 貴方は、ベンドゥリクスさんですか、サー?」と彼女が言うまで。

 「はい。」

 「私は、これを貴方に差し上げなければなりません、」すると彼女は、そこに何か爆発物でも入っているかのように、僕の手に素早く包みを押し込んだ。

 「それは、誰からですか?」

 「パ―キスさん、サー。」

 「僕は、当惑してそれを裏返した。彼が僕に手渡そうとするには、今はもう遅過ぎる何らかの証拠を、誤って取って置いた、そういう事が僕の身にまで振り掛かった。僕は、パ―キスさんを忘れたかった。

 「良ければ受領書を私に戴けますか、サー?私は、包みを貴方自身の手に入れ込まなければなりませんでした。」

 「僕は、鉛筆を持っていない―それに紙も。僕は本当に悩まされる覚えがない。

 「パ―キスさんは、記録をどうしているか、貴方は知ってらっしゃる、サー。私は、私のバグに鉛筆を入れています。」

 使用済みの便箋の背に、僕は、彼女の為に受領書を書いた。彼女は、それを用心してしまい込み、その次に可能な限り遠くへ、彼女に出来る限り速く手に入れたかったかのように入口の方へ慌てて走った。

僕は、僕の手の中の物の重さを測りながらホールに佇んだ。ヘンリが、食堂から僕に呼び掛けた。「それは何、ベンドゥリクス?」

 「パ―キスからの小包、」僕は言った。その文句は、早口言葉のように響いた。

268

2022年9月11日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「どんなものでも、何もないよりはいい。それは、ともかく神の力の承認で、それが賛美というもの、と私は思います。」僕は、夕食が始まってから、余りにも彼の話に耳を傾けていなかった。

 「僕は、考えもしなかった。」僕は言った、「それは、森に触れる事か、舗装道路上の線を避ける事にかなり似ていた。あの年齢では、どっちみち。」

 「オウそうです、」彼は言った、「私はちょっとした偶像崇拝にも逆らいません。それは、この世界が全てではないという考えを、人々に齎します。」彼は、僕に鼻を下げて顔をしかめた。「それは、知恵の始まりに成り得ましょう。」

 「貴方の教会は、確かに大筋から言って偶像崇拝を求めて入ります―聖ヤヌアリウス、血を流す像、処女の理想像―その類の事。」

 「私共は、それらを選り分けて除外しようとしました。何があってもいいと開き直る事、その方がずっと賢明さに欠けるのでは・・・?」

 ベルが鳴った。ヘンリは言った、「僕は、彼女はべドに行っていいよ、とメイドゥに言ってある。」

 「貴方は、僕の退席を許して下さいますか、神父?」

 「僕が行くよ、」僕は言った。僕は、その苛酷な同席から逃げ出す方が嬉しかった。彼は答えにも、励ましがあった。素人には、先ず彼を拒む事を期待出来ず、彼は彼の名に値する技術によって、人に耐え得る手品師のようだった

僕が玄関ドアを開けると、包みを抱えた喪服の頑丈な女が目に飛び込んだ。

267

2022年9月10日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「どんな開けた場所でも、貴方は、それを事件にする。それにどっちみちそりゃあ冬ですもの。」そうして、それはがそれはを締め出した。

 「もう幾つかチーズを、神父?」

 「いえ、貴方に感謝します。」

 「僕は思います、このような地区で、貴方はお金を集める数多(あまた)の苦労を抱えていらっしゃる―慈善の為に、と僕は申しますが?」

 「皆様は、彼らに出来ることなら何でも施して下さる。」

 「貴方のカフィと一緒にブランディは?」

 「いいえ、貴方に感謝します。」

 「貴方は、気にしないで下さい、喩え僕たちが・・・」

 「もちろん僕は気にしません。僕はそれを飲むと眠りに落ちられません、それだけです、それに僕は六時に起きることにしています。」

 「一体何の為に?」

 「祈り。貴方はそうする習慣が身についてますね。」

 「恐縮ですが、僕はたくさんは先ず祈れません。」ヘンリが言った、「僕は少年だった頃から、二軍のXV(ラグビー))に入りたくて何時も祈りました。」

 「それで貴方は入りましたか?」

 「僕は三軍に入りました。僕は不安ですが、祈りというものは、非常に優れている訳ではないんでしょ、神父。」

266

2022年9月9日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「貴方まで、信仰を変えるんじゃないでしょ、ヘンリ?」

 「もちろん変えない。彼らには、僕たちが持つ程度の、彼らの見解に対する真剣さはある。」

 そうこうして彼は夕食に遣って来た。醜い、目の落ちくぼんだ、トルケマダのような鼻の、彼は、僕からサラーを守ったその男だった。一週間で忘れられて当然の、ばかげた誓いに閉じ込め、彼は、彼女を支えて来た。彼女が雨の中歩いて、避難所を探したのも、その代わりに「彼女の死を受け止める事になった」のも、そりゃあ、彼の教会に向かっていたからだ。ありのままの礼儀正しさでさえ示すのは、僕にとってそれは難しく、ヘンリは、夕食の重荷を肩に背負うことにした。神父クロムプトンは、何時もは、外で食事をしなかった。彼の意向を保つ為にそれを懸命に探す事、これは義務だという印象を、人は持った。彼は、非常に限られた些細な話をし、彼の答えは、木のように道を横切って倒れ掛かった。

 「貴方は、ここら辺に多くの貧困者を抱えている、と僕は思いますが?」

ヘンリは言った、かなり疲れて、一面のチーズに。彼は随分いろんな事に挑戦した―本や映画の影響、最近のフランス訪問、第三次戦争の可能性。

 「それは、問題ではありません。」神父クロムプトンは返事をした。

 ヘンリは一生懸命務めた。「不道徳?」彼は、僕たちがこんな言葉では、避けて通れないいささか捨て鉢な調子で尋ねた。

 「それは、嘗て問題であった例がありません。」神父クロムプトンが言った。

 「僕は思いました、多分―共有地―誰でも気付きます、夜・・・」

265

2022年9月8日木曜日

The End of the Affair Graham Greene 成田悦子訳

 Ⅶ

「貴方は何処にいたの、ヘンリ?」僕は尋ねた。彼は、普段、最初に朝食に着き、時には、僕が下りる前に、彼は家を出たのに、今朝は、彼のお皿が触れられないままで、僕は彼が現れる前に、静かに玄関ドアが閉まるのを耳にした。

 「オウ。ちょうど下りて来たね、」彼はごまかすように言った。

 「一晩中外にいたの?」僕は尋ねた。

 「いや。もちろんいない。」彼が僕に本当の事を言うそんな義務を、彼自身に明瞭にする為に。「神父クロムプトンは、今日、サラーの為のマース(ミサ)を唱えた。」

 「彼は、未だにその事に関わっているの?」

 「ひと月に一度。ちょっと覗く、それが礼儀だろうと僕は思った。」

 「貴方がそこにいても彼が気付く、と僕は思わない。」

 「僕は、後でお礼を言いたくて、彼に面会した。実を言うと、僕は彼を夕食に招待した。」

 「それなら僕は出掛けるよ。」

 「貴方は、そうしないで欲しい、ベンドゥリクス。」

 「とりあえず、彼の身になると、彼は、サラーの友人だった。」 

264    

2022年9月7日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

僕はその紙切れを上に向け、23 7月 1926のプログラムを読んだ。the Water Music of Handelミス・ダンカンによる演奏、R.C.M。「I wanted lonely as a cloud」ベアトリス・コリンズ。チュダ・アイレス男子学生クラブによる。A flat Chopin‘s Waltsメアリ・ピピトゥによる。二十年前の長い夏の午後は、僕へとその影を伸ばし、僕は、そう、悪い方向へ僕たちを変えるこの世を憎んだ。僕は思った、僕の初めての小説を始めた、その時だった。僕は、仕事をしようと腰掛ける時、そこには有り余る程の興奮、野心、希望があった。僕は辛くはなく、僕は幸福だった。僕は読まれなかった本の中に紙切れを戻して置き、GolliwogとBeatrix Pottersの下の食器戸棚の後ろに一冊突っ込んだ。たった十年、僕たちの間の数郡を共にしただけでも、僕たちは二人共幸福だったが、何の明瞭な目的もなく、しかし数え切れない程の傷を互いに与える為に、一緒になるには少し遅かった。僕は、Scott`s last Expeditionを持ち上げた。

 あれは、僕自身の好きな本の一つだった。今デイトゥするなど奇妙に思えた。敵に対する氷だけを持ったこのヘロウイズム、人の所有を超えて、何人の死も巻き込まない自己犠牲、二つの戦争が僕たちと彼らの間に立ち尽くした。僕は、写真を見た。顎髭があり、目をむいている、雪の小さな積み上げたもの、、ユーニアン・ジャック、縞を付けた岩の間の時代‐遅れの調‐髪のような、長いたてがみを持ったポウニ。死でさえ「終止符」であり、「終止符」どころか、頁に線、感嘆符で印を付けた女学生がいて、彼女は、Scott`s last letter homeの余白に小奇麗に書いた。「そうして次はどうなるの?それが神ですか?Robert Browning。」その時でさえ、僕は思った、彼は彼女の心の中に入り込んだ。彼は、愛人同様に秘密で、束の間のムードゥの優勢を選び、彼のありそうにない事と伝説で、僕たちをヒアロウのように誘う。僕は、最後の本を戻し、錠を下ろして鍵を回した。

263

2022年9月6日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

彼女が、前にフドゥの詩を読んだことがあったかどうか、僕は疑う。本は、校長か有名な訪問者によって彼女に手渡された時と変わらず、どの頁もきれいだった。実際、それを食器戸棚に戻して置こうとした時、一枚のプリントゥが床に落ちた―おそらくその真の賞授与の書類。手書きの内、僕が承認可能だったのは(しかし僕たちの手書きでさえ、始まって日が浅く、時勢の古臭いアラビア模様上を占領している)言い回し「何と戯言を発する」だった。僕は、校長が彼女の席に着き、親たちによって恭しく拍手されている時、サラーはそれを書き下ろし、彼女の隣にそれを見せたのだと想像出来た。僕は、何故、彼女のもう一つの輪郭が、僕の頭の中に入ったのか、何時、その苛立ち、その無理解やその確信全てを持ったその女学生の言い回し「私は詐欺師でペテン師です。」を、僕が見知ったのか分からない。僕の手の下のここは、無知だった。彼女は彼女自身について、そういう事を思う為にだけ、もう一人の二十歳を生きて来たというのでは、余りに哀れなような気がした。詐欺師でペテン師。怒りの一瞬に、僕は彼女を利用した、それは説明になったのか?彼女は何時も、僕の批評を匿(かくま)った。それは雪のように彼女から滑り落ちた一途な賞賛だった。

262 

2022年9月5日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 僕は、その後サラーの夢を見て、僕たちは、南側の懐かしい部屋で、又恋人に戻ったが、何も起こる事はなかった。この時だけ、事実そこにどんな悲しみもなかった。僕たちは、幸福だった上に後悔もなく。

 僕の寝室の食器戸棚を引っ張って開け、古い子供たちの本の積み重ねを見付けた、それは、その後二、三日経ってからだった。ヘンリは、この食器戸棚をパ―キスの若い者の為に荒さなければならなかったんだ。それぞれ色の付いたカヴァに包まれたAndrew Langのお伽話、数多いBeatrix Pottersの五、六冊が、そこにはあった。The Children of the New Forest、The Golliwog at the North Pole、そしてまたもっと古い一、二冊。―Captain Scott`s Last ExpeditionやPoem of Thomas Hood、それが台数に於ける熟達の為、サラー・バトゥラムに授与されたというラベルの付いた学校用皮革に閉じられた極め付け。代数!人の何と変わる事よ。

 その夕方、僕は仕事が出来なかった。僕は何冊も本を抱えて床に寝転び、サラーの一生の内、白紙の時間に少なくとも二、三その輪郭を追おうとした。愛する人が、父や兄弟も又、いて欲しいと願った時代が、そこにあった。彼が分かち合えなかった年月を、彼は妬む。The Golliwog at the North Poleは、おそらくサラーの初めての本で、それは、前頁に亘って走り書きされていた、この道、またあの道、無意味に、破壊的に、カラのチョークで。Beatrix Pottersの一つに彼女の名前が、鉛筆で綴られていた。一つの大文字が間違って配列してあり、そうそれは、どう見ても・・・だった。The Children of the New Forestに、彼女は実にきちんと、綿密に、「Sarah Bertram Her Book」記と彼女は語った。借りるにはどうか許しを請うて下さい。そしてもし貴方がそれを盗めば、その時は、貴方の悔恨となるでしょう。それらは、今まで生きた全ての子供の目印だった。人が冬に見る鳥の鉤爪の印同様、特徴のない。僕がその本を閉じた時、直ぐに、それらは時の流れによって覆われた。

261

2022年9月4日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 Ⅵ

そうこうして僕は、共有地の北側に転居した。僕は一週間の家賃を無駄にした。ヘンリが直ぐに来て欲しいというものだから。僕は五パウンズ僕の本や衣服を運ぶヴァンの為に支払った。僕は、客間を持ち、ヘンリは、書斎としてがらくた―部屋を片付け、階上には、床の上、そこにバスがある。ヘンリは、彼の衣裳‐部屋に移り、彼らが冷たいトゥイン・ベドゥを共有した部屋は、訪れない客の為に残された。二、三日後、ヘンリは空っぽになる事のない家によって、何をどうするつもりなのか、僕は見ることにした。僕は、大英博物館でそれが閉まるまで仕事をし、その後、僕は戻って、ヘンリを待ち、普段は出掛けて、ポンテフラクトゥ・アームズで少し飲んだ。一度、ヘンリがボーンマウスの会議で、数日間不在だった時、僕は女の子を拾い、彼女を連れ帰った。それは、微塵もいい事はなかった。僕は、直ぐにそういう気がした、僕は、性的不能者で、彼女の気持ちを救う為に、他の誰かとこういう事をしない、と僕は、僕が愛した或る女に誓ったんだ、と彼女に打ち明けた。彼女は、非常に気持ちよく、それを理解した。売春婦は、感傷への大いなる畏敬の念を抱く。僕の心の中、そこにどんな復讐心もなかったこの時、僕があんなにも繰り返し楽しんだ何かを諦める事への悲しみを、僕は感じただけだった。

260 

2022年9月3日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「貴方を味方につけて、地上の何を彼は欲しがったのか?」

 「彼のところの少年に彼女は親切だった、と彼は言った―神は、その時を御存知だ。その若者は病気だ。形見に彼女の物を欲しいように思えた。彼女の昔の子供達の本の一、二冊を彼にあげた。彼女の部屋、そこにはたくさんそういうものがあり、どれにも鉛筆で、一面、走り書きがあった。それは、そういうものを片付けるのに良い方法だった。誰もフォイルズにそういうものをまさか送られない、誰か出来る?僕はその中にどんな害も見えない、貴方はどう?」

 「いや。それは、サヴィジの探偵取次事務所から、彼女を見張る為に置いた男だった。」 

 「善良な神、もし僕が知っていたら…しかし彼は、実際、彼女を好きな感じではあった。」

 「パ―キスは人間だ。」僕は言った。「彼は、簡単に触った。」僕は、僕の部屋を見回した―どこからヘンリが来ても、サラーのものは、もうそれ以上そこにないように。多分どころではなく、彼女は、そこで薄められるだろうから。

 「僕は、来て貴方と一緒にいよう、ヘンリ、だが貴方は、僕に幾らか家賃を払わせなきゃいけないよ、ヘンリ。」

 「僕はとても嬉しい、ベンドゥリクス。それで、家屋は、自由保有不動産だ。貴方は、料金の内、貴方分を払えばいい。」

 「又結婚して、新しい当てこすりを探す方がいいと貴方が気付く『三ヶ月』。」

 彼は僕の言う事を、実に真面目に受け取った。「僕は、そんな事をもうする気はない。僕は、結婚する類じゃあない。僕が彼女と結婚したばっかりに、サラーに負わせたのは、そりゃあ大きな傷だった。僕は、今ようやくそれが分かった。」

259

2022年9月2日金曜日

The End of the Affair/ Graham Greene 成田悦子訳

彼女がそこにいなかった時は何時も、あの最期の月、僕が帰宅した時、手紙が僕を待っているのを見るのを惧れた。『親愛なるヘンリ』・・・彼らが小説の中で書くような事だと貴方は知っている。」

 「そう。」

 「しかし今は、あんな風に家が空虚には思えない。僕は、それをどう表現すべきか、分からない。彼女は何時も何処かにいる。彼女はこれまで何処にもいない。貴方は、彼女が他の何処にも、これまでいた例(ためし)がないのを見ている。彼女は、誰かと昼食を摂っていない、彼女は、貴方と映画館にいない。そんな場所は、彼女のいるべき場所ではなく、それにしても家だって。」

 「じゃあ、何処に彼女の家庭はあるの?」僕は言った。

 「オウ、貴方は僕を許そうとした、ベンドゥリクス。僕は神経が細く、疲れている―僕は十分寝ていない。彼女に話し掛けるのに次の最高の手法は、彼女について語る事だし、そこには貴方だけがいる、と貴方は分かっている。

 「彼女は、多くの友人を持っている。サー・ウイリアム・マロック、ダンスタン・・・」」

 「僕は、彼らに彼女の事を語れない。あの男、パ―キス以上に。」

 「パ―キス。」僕は叫んだ。彼は僕たちの暮らしの中に、永遠に、彼自身を滞めてしまったのか?

 「僕たちが催したカクテイル・パーティに彼はいた、と彼は僕に話した。」

 「見知らぬ人々を、サラーは選んだ。彼は、貴方も彼を知っていると言った。」

258

2022年9月1日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 ヘンリは言った、「そこには残った悪い‐感情は全くない。そこにあるの、ベンドゥリクス?僕は、貴方のクラブで貴方に怒られた―あの男の事で。しかし、今、それはどうでもいいじゃないか?」

 「僕が悪かった。彼は、単なる幾分狂気じみた桶をどんどん打つ、彼の論理を以(もっ)て彼女に興味を抱いた合理主義者だった。そんなことは忘れた方がいい、ヘンリ。」

 「彼女は善良だった、ベンドゥリクス。人々は噂するが、彼女は善良だった。まあ、僕が彼女を適切に愛せなかった、それは、彼女の落ち度ではない。貴方も知ってる、僕は恐ろしく分別があり,慎重だ。僕は愛人を作るタイプではない。彼女は、貴方のような誰かを求めた。」

 「彼女は僕の許を去った。彼女はその気にさせ続けた、ヘンリ。」

 「僕は、一度、貴方の著作の一つを呼んだのを知ってる?―サラーが僕に見繕った。貴方は、その中で女が死んだ後の家を描写した。」

 「The Ambitious Host。」

 「それがその題名だった。その時には、それで全くいいように思った。僕はそれを尤もらしいとは思ったが、貴方は、それを全く間違っていることにした。貴方は、どのように夫は、その家が酷く空虚だと気付くかを描写した。椅子を移し、そこにいるもう一人の動作の効果を出そうとして、彼は、部屋をあちこち替えた。時々、彼は、二つのグラスに飲み物を、彼自身注ごうとする。」

 「僕は、そういうことは忘れる。そうだとちょっと文学的な響きがある。」

 「それじゃあ、目的からずれる、ベンドゥリクス。悩みは、家が空虚に思えない処にある。貴方は見ている、しばしば随分前には、僕が役所から帰宅すると、彼女は何処かに出掛けている―おそらく貴方と一緒に。僕が呼ぶのに、彼女は答えようとしない。その時、家は空っぽだった。僕は、危うく家具がなくなっているのを見つけることを期待するところだった。僕は、僕の範疇で彼女を愛したんだと貴方も分かっている、ベンドゥリクス。

257

2022年8月31日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「じゃあ、私であると証明してみなさい。ヘンリ。僕が神を論ぱく出来る以上に、僕の物語を、貴方は論ぱく出来ない。が、僕の物語は嘘だと貴方は知っている、まさにそのように、僕は彼がぺてんだとよく知っている。」

 「もちろん、そこには論拠がある。」

 「僕の物語の為に、哲学的論拠を僕はでっち上げてもよく、僕は敢えて言う、アリスタトゥルに基づいた。」

 ヘンリは、不意に話題を元に変えた。もし貴方が来て居てくれたら、それは貴方を少しは救うだろう。サラーは何時も言った、貴方の本は、それらは、あるべき程の成果を上げていないと。」

 「オウ、成功の影は、その上に投げ掛けられようとしている。」僕は、ウォタベリの記事を思った。僕は言った、「賞賛の為に大衆的批評家が、彼らのペンをちょっと浸しているのが聞かれる時、ある瞬間は訪れる―次の本が書かれる前でさえ。それは、皆時機に問題がある。」僕は、僕の心を決めていないから、と話した。

 ヘンリは言った、「そこには残った悪い‐感情は全くない。そこにあるの、ベンドゥリクス?僕は、貴方のクラブで貴方に怒られた―あの男の事で。しかし、今、それはどうでもいいじゃないか?」

256

2022年8月30日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

彼は、急いで続け、彼自らの提案が実際興味深いものではないかのように、マガジンの頁を捲った。「よくそれを考えてみて欲しい。貴方は、今、決める必要はない。」

 「それだから、貴方はとても善良だ。」

 「貴方は僕に好意を示そうとする、ベンドゥリクス。」

 僕は思った、何故そうしないのか?作家は、型に嵌らないと見做(みな)す。僕は、上級官吏よりずっと典型的なのか?

 「僕は、昨夜、夢に見た、」ヘンリが言った、「僕たちの何もかもを。」

 「そう?」

 「僕は、大抵、覚えていない。僕たちは、一緒に飲んでいた。僕たちは、幸せだった。僕は目覚めた時、彼女は死んでいないと思った。」

 「僕は、今は、彼女の夢は見ない。」

 「僕たちが、あの牧師に彼の道を貫かせていたらなあと思う。」

 「そんな馬鹿げた、ヘンリ。彼女は、もう貴方より僕よりずっと、カサリクとは言えない。」

 「貴方は、残存を信じるの、ベンドゥリクス?」

 「もし貴方が個人的残存を言おうとしているのなら、いいえだ。」

 「人は、それに論ぱく出来ない、ベンドゥリクス。」

 「何か論ぱくする、それはほとんど不可能だ。僕は、物語を書く。その中で、何事も起こらなかったと、その登場人物は現実にはいないと、貴方はどう証明出来る?聞いてくれ。僕は、今日、共有地で三本足の男に会った。」

 「何とおぞましい。」ヘンリは真剣に言った。「出来損い?」

 「それに、魚のうろこでそれは覆われていた。」

 「貴方は冗談を言っている。」

255

2022年8月29日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 あんなに僕を怒らせたタトゥラの悦に入った写真から、どんな長い道程を旅して来たのか。僕は、机の上に倒した、スナプ写真から引き伸ばしたサラーの写真を持っていた。彼は、それを上に向けた。「僕はそれを撮ったのを覚えている、」彼は言った。サラーは、写真は女友だちに撮られた、と僕に話した。彼女は、僕の気持ちを救う為に嘘を吐いたんだと僕は思う。写真では、彼女はより若く、より幸せそうだったが、僕が彼女を知った数年の内よりずっと愛らしく見えなかった。僕は、そのあたりを彼女に見せられたらなあと願いはしたものの、彼の情婦の周囲の配役に似て、強固になるばかりの不幸を見詰める事、それは愛人の宿命だ。ヘンリが言った、「僕は、彼女を笑顔にしようとして、自分自身、愚かなことばかりしていた。「将軍ゴードンは、興味深い性質?」

 「なかなかのくせもので。」

 ヘンリは言った、家が、この頃、非常に奇妙に感じる。僕は、出来るだけ力を尽くしてそれから守ろうとしている。貴方は、クラブでの夕食で、侭ならないと僕は思うが?」

 「僕は、終えなければならないたくさんの仕事を貰った。」

 彼は、僕の部屋を見回した。彼は言った、「貴方は、ここでは貴方の本のスペイスを十分とれない。」

 「いや。ベドゥの下にその内の幾らかは、置くことにしている。」

 彼は、ウォタベリが、彼の仕事の一例を見せる為に、インタヴュウ前、僕に送ったマガジンを抜き取り、言った、「僕の家には、部屋がそこいらにある。貴方は、実際、貴方自身向けにフラトゥを持てたりする。」僕は、答えようにもあまりにもびっくりし過ぎていた。

254

2022年8月28日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 

ヘンリが彼の家を共有することを、僕に頼んでもいいと思った時、それは、僕の気味の悪い冗談だった。僕は、提供を実際は期待しなかったし、その時が遣って来た時、僕は、驚きに心奪われた。葬式一週後、彼の訪問も、驚きだった。彼は、以前、僕の家に来たことは一度もなかった。僕は、彼が今までに、雨の中、共有地で彼に会ったその夜より南側に、ずっと近くまで来たことがあるのではないかと疑った。僕は訪問者と顔を合わせたくなくて、僕のベルが鳴るのを聞くと、窓の外を見た―それは、シルヴィと一緒のウオタベリかも知れないちう考えが浮かんだ。鈴懸の‐木の側のラムプは、歩道の上にヘンリの黒い帽子を浮かび上がらせた。僕は階下へ向かい、ドアを開けた。「僕は、ちょうど側を通り掛かったんだ。」ヘンリは嘘を吐いた。

 「入ってくれ。」

 僕が食器戸棚から僕の飲み物を取り出している間、彼は、突っ立って決まり悪そうにオロオロしていた。彼は言った、「貴方は、将軍ゴードンに興味があるように思います。」

 「彼らは、Lifeを遣って行く為に僕を欲しがっている。」

 「貴方は、そうするつもりなの?」

 「僕は、そう考えている。この頃、僕は大抵、仕事のように思わない。」

 「それは、僕と同じだ。」

 「王室委員会に未だ席があるの?」

 「そう。」

 「それは何か考えるべきことを貴方に許すの?」

 「それがですか?そう、僕はそう思っている。僕たちが昼食を止めるまで。」

 「とにかく、それは大事な仕事だ。ここに貴方のシェリがある。」

 「それは、独身気分に僅かなりとも見当違いをさせまいとする。」

253

2022年8月27日土曜日

THe End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 僕は、僕の背中の上に横たわり、僕の天井で動く共有地の高木の影を見守った。それは、まさに符合だ、僕は思った、恐ろしい程の符合、それは、殆ど最後には貴方に彼女を返したことになる。貴方は、一生に備え、僅かな水と一人の祈り手と一緒になって、二歳の子供に印を付けてはいけない。もし僕がそれを信じ始めたら、僕は、肉体や血を信じられただろうに。貴方は、この数年来、彼女を所有しなかった。僕は、彼女を所有した。貴方は、終わりの時に勝った。貴方は、それを僕に念を押す必要はない。彼女が僕と一緒に、このベドゥの上に、彼女の背中の下のこの枕と共に、ここに横たわった時、彼女は、貴方共々僕を騙していた。彼女が眠ると、僕は彼女と一緒になった、貴方とではなく。それは、彼女を貫いた僕だった、貴方ではなく。

 灯は皆消え、闇がベドゥの上にあった、直ぐに僕は夢を見た、僕の手の中に銃を持ち、僕はフェアにいた。僕は、それがグラスで作られたかのように見える瓶を撃っていた。しかしそれはスティールで覆われているかのようで、僕の弾丸は、それを外して跳んで行った。僕は発砲し又発砲して、ひびを入れられたのは瓶ではなかった、そうこうして僕の頭の中に同じ思いを抱えたまま、朝の五時に、僕は目覚めた。この数年の間、貴女は僕のものだった、彼のものではなく。

252

 


2022年8月26日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

  しかしその賢明さは、ビーチ近くの狡猾な儀式で、出来る事が何もなかった。それは「受け容れた」貴方ではなく、僕は、僕が信じなかった神を、語った。サラーが考えた想像上の神は、僕の命を救い(想像可能な何らかの目的の為に)、僕が、嘗て経験した唯一の深い安らぎを、彼の非実在にあってさえ、破滅させた。オウ、いや、受け容れたのは、それは貴方ではなかった。それは呪文だったし、僕は、貴方を信じるくらいなら呪文でも信じる方がましだ。呪文は、貴女の十字架であり、貴女の肉体の復活であり、貴女の神聖なカサリク教会、貴女の聖人の親交だ。

251

2022年8月25日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

  「それは、貴女と同様、多くを『受け容れられた』ようには思えません。」僕は、言うことには抵抗出来なかったが、彼女は、立腹しなかった。「オウ、」彼女は言った、「私の人生には、限(きり)のないほどの誘惑がありました。事態は、終わりまでに好転するだろうと期待しています。サラーは、私と一緒に随分我慢をしました。彼女は、いい娘(こ)でした。誰も私がしたように、彼女に感謝する者はいなかった。彼女は、更に何杯かポートゥを飲み、話した、「貴方だけでも、彼女をよくよく知って下さっていれば。何故(なにゆえ)に、もし彼女がちゃんとした様子の中で育てられていたら、もし私があんな卑しい男たちと決まって結婚しなかったら、彼女は聖人になれたのに、と私は真剣に決め込んでいます。

 「しかしそれは、まるで受け容れなかった。」僕は、荒々しく言い放ち、それから僕は、勘定書きを持って来させる為にウェイタを呼んだ。僕たちの未来の墓所の上を飛ぶあれらの灰色の雁の片翼は、僕の背中の下に隙間風を送ったのか、それとも他に、もしかして、僕は、凍った地面の中の死ぬほどの寒気を捕えてしまった。もしそれが、只、サラーのような死ぬほどの寒気で有り得たら。

 「それは受け容れなかった。僕は、マライルボウンでバトゥラム婦人を下ろした後、家への道すがら、地下鉄の中で僕自身に繰り返した。彼女にもう三パウンズ貸すと「明日は水曜日で、私は、雑役の為に、中に居なきゃいけませんから。」可哀そうなサラー、「受け容れられた」何かは、夫や継父というその一続きだった。彼女の母親は、彼女に効果的に十分教えた、一生の内に、一人の男では足りないと、しかし彼女は、彼女自身、彼女の母親の結婚の虚構を通して見て来た。彼女がヘンリに嫁いだ時、彼女は暮らしの為に嫁いだ、僕が絶望的に分かったように。

250

2022年8月24日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「もちろん、それ程のことは、ビーチで起こらなかった。私たちはその道のりを歩いた、と只言おうとしているだけです。」私はドアの側にサラーを置いて、牧師を探しに行きました。私は、二、三、彼に嘘を吐こうと思いました―成り行き次第の罪のないそれを―事情を説明する為に。私は、その全てを私の夫に押し付けました、当然。彼は結婚する前、約束したのに、その後、彼は彼の約束を破った、と私は言いました。フランス語をたくさん話せない事、それが命運を分けました。貴方が正直な理(ことわり)を知らなければ、貴方には恐ろしく真実に聞こえる。何はともあれ、彼はそこでその時、それを行い、私たちは、昼食に間に合うように帰りのバスを拾いました。

 「何をしました?」

 「彼女にカサリクの洗礼を施しました。」

 「それで終わりですか?」僕はほっとして尋ねた。

 「まあ、それは、サクラメントゥです―そうとも彼らは言います。」

 「サラーは、カサリクそのものだ、と貴女は言いたいのではないか、と直ぐに思いました。」

 「まあ、貴方は見ていますね、彼女はそういう人でした。只彼女はそれを知りません。私は、ヘンリが適切に埋葬してくれていたらと願います。」バトゥラム婦人は言い、再び異様な涙の滴下を始めた。

 「喩えサラーが知らなかったにしても、貴女は彼を責めることは出来ない。」

 「私は、何時も、それは『受け容れる』だろうという願いを持っていました。ワクチン接種のように。」

 「それは、貴女と同様、多くを『受け容れられた』ようには思えません。」僕は、言うことには抵抗出来なかったが、彼女は、立腹しなかった。

248

2022年8月23日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「復讐?僕はあまりよく貴女が分からない、バトゥラムさん。」

 「私の夫への、もちろん。それは単に、彼の最初の妻の所為だけではありません。私は貴方に話したでしょ、彼は、私をカサリクにならせないということを?オウ、そこにはこんなシーンがありました、もし私がマス(ミサ)に行こうとさえしなければ。

そこで私は思いました、サラーはカサリクになろうとしている、そうして彼は知りもせず、私が実際に怒りを買わなければ、私は彼に話そうともしない。」

 「それで、貴女はそうしなかったんですか?」

 「彼は去り、その後一年、私を置き去りにしました。」

 「だから貴女は、もう一度、カサリクになれた?」

 「オウ、まあ、私は多くを信じなかった、貴方が見ての通り。その後、私はユダヤ人と結婚しました。そして彼も又、難しかった。ユダヤ人は、恐ろしく寛大だ、と彼らは貴方に言います。貴方は、それを信じてはいけない。オウ、彼は、卑しい人でした。」

 「それにしてもビーチで何かあったのですか?」

2022年8月22日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「僕は、貴女が仰っていることが分かりません。」

 「サラーは、私がカサリクだと貴方に話しませんでした―一度も?

 「いいえ。」

 「私はそれにあまり立ち入っていません。 貴女にも見当が付くでしょうが、私の夫は、全てのビズニスを嫌いました。私は、彼の三番目の妻で、最初の年、私は彼の持つ十字架を貰った時、私たちはきちんと結婚していない、と事あるごとに申しました。彼は、卑しい人でした、」彼女は機械的に付け加えた。

 「貴女がカサリクである事は、サラーをそれにしない。」

彼女は、もう一口、彼女のポートゥを飲んだ。彼女は言った、「私は、他の指導者を口にしたことはなかった。私は少し酔ったと私は思います。私は酔っていると貴方は思いますか、ベンドゥリクスさん?」

 「もちろん、思いません。もう一杯ポートを飲んで下さい。」

 僕たちがそれを待つ間、彼女は、話を切り替えようとしたのに、僕は、彼女を情け容赦なく連れ戻した。「貴女は何を言い出すんです―サラーがカサリク?」

 「貴方はヘンリに話さない、と約束して下さい。」

 「僕は約束します。」

 「私たちは、一度、ノーマンディの海外にいたことがあります。サラーは、ちょうど二つを越えていました。私の夫は、ドービルに何時も出掛けました。そう彼は言っていましたが、彼が、彼の最初の妻を見舞うことを、私は知っていました。私は大層な十字架を頂きました。サラーと私は、砂浜に沿って歩いて向かいました。サラーは、座りたいと頼み続けたのに、私は、彼女に一休みさせ、その後も、私たちは少しでも歩こうとしました。『これは、貴女と私の秘密よ、サラー。』その時でさえ、彼女は内緒ごとが上手でした。―彼女はそうしたかったかどうか。私は、貴方に話せるなんて、びっくりします。でも、それは立派な復讐ですものね?」

247 

2022年8月21日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 彼女の会話は、地下鉄システムのようだった。それは、円や輪の中で動いた。僕は、カフィによって、繰り返されている駅に気付き始めた。ヘンリの卑しさ、彼女自身の清算の高潔、サラーへの彼女の愛情、葬式に伴う彼女の不満、偉く大きな全て―そこは、ヘンリに向かう不可避な列車が進み続ける所だった。

 「それは、随分おかしかったわ。」彼女が言った。「私は笑いたくなかった。誰も私が愛した以上にサラーを愛した者はいません。」僕たちは皆、僕たちが他の舌の上で、そういうことを聞くと、何時も、それに主張したり、怒られたりする。「しかしヘンリは、それを理解しようとしません。彼は冷たい人です。」

 僕は、目盛りを切り替える為に、測り知れない努力をした。「他にどんな種類の式を、僕たちが催せたのか、僕には見当が付きません。」

 「サラーは、カサリクでした。」彼女が言った。彼女は、彼女の、ポートゥのグラスを手に取り、一気にその半分を飲んだ。

 「ばかな、」僕は言った。

 「オウ、」バトゥラム婦人が言い、「彼女は、そのことを彼女自身知りませんでした。」

 突然、説明しがたく、僕は、殆ど完全な罪を犯してしまった男のように、恐れをなし、彼のペテンの壁に、初めての予期せぬ亀裂を見付ける。亀裂は、どれ程深く入るのか?それは、何とか塞がれるといいが?

246

2022年8月20日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「それは、適当だったと思います。結局、そこには祈り手がいました。」

 「あの牧師―彼は牧師でしたか?」

 「僕は、彼を見なかった。」

 「彼は、偉く大きな全体について話しました。私は、ずうっと分からずじまいでした。彼は偉く大きな海雀を言っているんだと思いました。」彼女は、彼女のスープの中に、又、垂らし始めた。彼女は言った、「私は、吹き出しそうでした、するとヘンリが私を見ました。私は、私の勘定書きにそれを見積もると、見て取れました。」

 「貴女は離れて、それに打撃を与えない?」

 「彼は、とても卑しい人です。」彼女は言った。彼女は、彼女のナプキンで目を拭い、それからスープの中で、猛烈に彼女のスプーンで、彼女はヌードゥルを掻き雑ぜながら、カチカチ音を立てた。「私は、一度、彼から十パウンズ借りなければならなくなりました。と申しますのも、私は滞在する為にロンドンへ来ようとして、私のバグを忘れました。それは、誰にでも起こり得ることです。」

 「もちろん、それは有り得ます。」

 「私は、何時も世間で借金しないことを、自分自身誇っています。」

245

2022年8月19日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「私はそれでいいわ。」彼女は、彼女の手を出し、言った、「グドゥ‐バイ。」時を逸してしまったということ、それは様々な事情の一つだ、と彼女には分かっている、と僕は言えはする。神に感謝、そんな事は、どうでも良かった―地下鉄駅と同じ程度に遠い微かな後悔と好奇心、バートクを覆うウォタベリへの意地悪な言葉。バトゥラム婦人の方へ後戻りしながら、僕は、又、サラーに話し掛けている僕自身に気付いた。貴女は見ている、僕は貴女を愛している。しかし、憎悪が持つのと同程度の、聞かれているという確信を、愛情は持たない。僕たちが火葬場入口に近付くに連れ、パ―キスが消え去ったということに僕は気付いた。僕は、彼が行くのを見なかった。今頃はもう、僕が彼を必要としない、と悟っていなければならなかった。

 バトゥラム婦人と僕は、イゾラ・ベラで夕食を食べた。僕は、僕がサラーと一緒に前に行ったことのある何処にも、行きたくなかった。それにもちろん直ぐに。一緒に訪れた他の全てと、このレスタラントゥを僕は比べ始めた。サラーと僕は、キアンティを飲んだことがなく、そして今は、それを飲んでいるという行為が、あの頃の実情を僕に思い起こさせた。僕は、僕たちの好みのクラレトゥを飲んだ方がずっとましだった、僕は、もう彼女について考えられなかった。空虚でさえ、彼女で混み合った。

 「私は、官公庁業務が好きではなかった、」バトゥラム婦人は言った。

 「僕は気の毒に思います。」

 「それは、非常に非人間的です。ベルトゥ・カンヴェイアのよう。」

 244

2022年8月18日木曜日

The End of the affair/Graham Greene 成田悦子

 「そうです、バトゥラム婦人、」僕は言った。

 「それで私は、私の黒いバグの中にお金を入れ替えるのを忘れました。」

 「僕に出来ることなら、何なりと。」

 「もしよろしければ、貴方が一パウンドゥ私に貸して下さればいいのですが、ベンドゥリクスさん。私は、私は出る前に、町で何か夕食を摂ろうと思います。グレイトゥ・ミセンデンでは、それは早く閉まります、」それから彼女は、話しながら、もう一度彼女の目を拭った。何か彼女に纏わることは、僕にサラーを思い起させた。彼女の悲しみ、多分曖昧さ、の中の現実ーのー物事。彼女は、一度でもヘンリに頻繁過ぎる程「触れた」ことがあったのか?「僕と一緒に、早い夕食を摂りましょう。」

 「貴女は、くよくよしようとしてはいけない。」

 「僕はサラーを愛していました、」僕は言った。

 「そう、私も。」

 僕は、シルヴィアの所に戻り、説明した。「あれは、彼女の母親だ。僕は、彼女の夕食を御馳走したい。僕は申し訳なく思う。僕は貴女に電話して、他の日を設けてもいい?」

 「もちろん。」

 「貴女は、電話帳にある?」

 「ウォタベリがあります。」彼女は悲観的に言った。

 「次の週。」

243

2022年8月17日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「貴方は、ベンドゥリクスさん?」彼女は尋ねた。

 「はい。」

 「サラーが私に話していました、」彼女は始めた、彼女が躊躇している間に、彼女は、伝えたいことがあるという、死者は語り掛けるという乱暴な期待が僕に湧いて来た。

 「貴方は、彼女の最高の友人だ―彼女は、よく私に話していました。」

 「僕は、彼らの中の一人でした。」

 「私は、彼女の母親です。」僕は、彼女の母が生きていると気に掛けもしなかった。あの数年の内、そこには、僕たちの間について話すことは何時も随分たくさんあったのに、僕たち二人の暮らしの全空間は、大昔の地図のように白紙だった、後(のち)に埋められるべく。

 彼女は言った、「貴方は、私についてご存じなかったんでしょ?」

 「現実の事柄としては・・・」

 「ヘンリは、私をよく思わなかった。それがそれをかなり気まづくしました。ですから私は、距離を保ちました。」彼女は穏やかな理性的様子で話した、そして尚も、独立の効果で、彼女の目から涙が溢れ出た。男たちと彼らの妻は、皆、一掃された。見知らぬ人々が、僕たち三人の間を、礼拝堂の中に入る彼らの道を選んだ。パ―キスだけは、考え事をしながら、居残っていた。僕は思う、彼は、より疎遠な情報を提供することで、未だ僕の役に立つのかも知れないが、彼は、彼の距離を保っていた、承知の上で、彼は、彼の立場を話してしまおうとするように。

 「私は貴方のことを聞いて、大変好意を持っています、」サラーの母親は言った。僕は、彼女の名前を思い出そうとした―カメロン、チャンドゥラ、それは、C.で始まった。「私は、今日、グレイトゥ・ミセンデンからこんなに大急ぎでやって来ました・・・」彼女は、浴用タウアルを使っているかのように無頓着に、彼女の目から涙を拭った。バトゥラム、僕は、それが名前、バトゥラムだったと思った。

242

2022年8月16日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

夕べの終わりに、僕は無様に愛を育もうとする、僕の酷い無様さ、僕の性的不能でさえ、もし僕が性的不能と判明すれば、ごまかせばいい、又、僕は専門的に恋愛をしようとしたり、僕の経験も手伝って、彼女を夢中にさせても構わなかった。僕は、サラーに懇願した、これの外へ僕を逃して、それの外へ僕を逃して、僕のではなく、彼女の為に。

 シルヴィアは言った、「私の母が具合が悪いと言う事も出来るわ。」彼女は、嘘を吐く用意をした。それは、ウォタベリの終わりだった。気の毒なウォタベリ。その初めての嘘と共に、僕たちは共犯者になる外ない。彼女は、彼女の黒いズボンを履いたままそこに立っていた。凍った水溜まりの間、そして僕は思った、これが、全ての長い前途が始まる場所だ。僕は、サラーに懇願した。その外へ僕を逃して。僕は、再びその全てを始めて、彼女を傷付けたくない。僕は、愛せない。貴女以外、貴女以外、すると青褪めた老婦人が、薄い氷をバリバリ音を立てながら僕の方へ逸れた。

241

2022年8月15日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

  「シルヴィア、」僕は呼んだ、サラーが僕に耳を傾けるといいのにと

、「貴女は、今晩何処かで食事をするの?」

 「私は、ピータと約束しています。」

 「ピータ?」

 「ウォ―タベリ。」

 「彼を忘れて。」

 貴女は、そこにいるの?僕はサラーに言った。貴女は、僕を見守っている?見て、貴女がいなくても、僕は直ぐに手に入れられる。それは、そんなに難しくはない。僕は彼女に言った。僕の憎悪は、彼女の生存を当てにすれば良かった。彼女が死んだ鳥以上に、影も形も消え失せたと分かった、それは、単に僕の執着に過ぎなかったのだ。

 新たな葬式が、人を集めようとしていたが、鉄道の側のその女は、入って来る見知らぬ人々の様子に、混雑の中、立ち上がった。彼女は、すんででのところで間違った火葬に捕えられそうだった。

 「僕は。電話を掛けるといい、と思う。」

 嫌悪が、倦怠のように、夕闇を覆い、行く手に横たわっていた。僕は、僕自身を追い詰めた。執着もなく、僕は恋の真似事を押し通してしまう。僕が、罪を、僕の迷宮の中に純潔を引きずり込むという罪を犯す前に、罪悪感が疼いた。性の行為は、どうということはないにしても、貴女が僕の年齢に達する頃、どんな時も、全てであることを、それが証明してしまう、と貴女は学ぶ。僕は安心していたが、僕は求めてもいいのに、この子供の中のどんな神経症に、誰が話し掛けられよう?

240

2022年8月14日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳 

 「私は、知りもしません、サー、しかし彼女がそうした遣り方―オウ、そこに、彼女のような人は、多くはいなかった。僕の若い者も・・・彼は何時も彼女のことを話しています。

 「貴方の所の若者はどうしてる、パ―キス?」

 「よくありません、サー。全くよくありません。かなり激しい胃痛が。」

 「貴方は医者に診せたの?」

 「未だ診せていません。私は、自然に物事を委(ゆだ)ねることを良しとしています。或る程度まで。」

 僕は、皆が皆サラーを知っている見知らぬ人々のグループを、見回した。僕は言った、「ここにいる人々は、誰、パーキス?」

 「僕の知らない若い女性、サー。」

 「彼女は僕と一緒だ。」

 「僕は貴方の許しを乞います。サー・ウイリアム・マロックは、地平線上に只一人です、サー。」

 「僕は、彼を知っている。」

 「水溜まりを今避けた紳士は、サー、マイルズ氏の局の主席です。」

 「ダンスタン?」

 「それが、名前です、サー。」

 「貴方は、何とも大勢知っているね、パ―キス。」僕は、嫉妬は全くもって息絶えたと思った。僕は、自ら進んで世界中の男と彼女を分かち合おうと思った、但(ただ)し、彼女が再び息を吹き返せれば。それなのに、ダンスタンの趣(おもむ)きが、古い憎しみを、瞬間、目覚めさせた。 

239

2022年8月13日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 一人の女が、「カータ家は、十日の週末に備えて、私たちに頼んだの。」と言うのを聞いた。

 「貴方は、私について行って欲しい?」シルヴィアが尋ねた。

 「いや、いや、」僕は言い、「僕は、貴女がそこら辺をぶらぶらしていて欲しい。」

 「僕は、礼拝堂のドアに向かい、中を見た。炉に向かう通路は、目下誰もいなかったが、古い花輪が運び出され、新しいものが運び入れられた。初老の夫人が、カートゥンの予期せぬ巻き上げによって捕らえられた他のシーンからの俳優のように場違いに膝まづきながら、祈っていた。聞き慣れた声が、僕の背後でした、「ここで貴方に会えた、そのことは、悲しい中での喜びです、サー、ここでは、過去のことは、あくまで過去のことです。

 「貴方は来たんだね、パ―キス、」僕は避難がましく言った。

 「ザ・タイムズの広告を見ました、サー、それで私は、午後暇を取る為に、サヴィジの許可を求めました。」

 「貴方は、貴方の関わった人々を、これ程遠くまで追跡するの?」

 「彼女は、実に素敵な女性でした、サー、」彼は言った、咎めるように。「彼女は、一度、通りで僕に道を尋ねました、その辺りにいる僕の理由を、勿論、知りもしないで。それにカクテイル・パーティで、彼女はシェリのグラスを僕に手渡しました。」

 「南アフリカのシェリ?」僕はこれみよがしに言った。

238

2022年8月12日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 僕たちが礼拝堂に着くと、皆、出て来るところだった。ウォタベリの意識の流れに関する質問は、実際余りにも長く、僕を手間取らせた。僕は、月並みな悲しみの刺し傷を持った―僕は、結局サラーの最期に見(まみ)えなかった。そこで僕はぼんやりと思った、郊外の庭園の上になびいていたそれは、彼女の煙だったんだ。ヘンリが、無目的に一人で外に出て来た。彼は泣いていた。そして彼は、僕を見なかった。サー・ウィリアム・マロック以外、他に誰も知らなかった。彼は、シルクハトゥを被っていた。彼は、僕に反感の一瞥を与え、先を急いだ。そこには半ダースの公務員の雰囲気を持つ男たちがいた。そこにダンスタンはいたか?それは、あまり重要ではなかった。何人かの妻たちは、彼女たちの夫に同伴した。彼女たちは、少なくとも儀式に満足していた―貴方は彼女たちの帽子で、殆どそれを物語ることが出来た。サラーの消失は、どの妻もより安全なままにした。

 「私は、申し訳なく思います。」

 「それは、貴女の落ち度ではない。」

 僕は思った、もし僕たちが彼女を記憶に留められたら、安全ではなかったでしょう。彼女の死体でさえ、彼らを裁く基準を与えただろう。

 スマイズは、外に出て、いない者に話しかけながら、水溜まりの中をどんどん急いで、水を飛び散らした。

237

2022年8月11日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 僕は、シルヴィアに与えるものはなかった。僕は、彼女の教師の一人になろうとはしない、しかしだから僕は次の半時間を、僕の孤独を詮索している、僕のサラーとの関係がどうだったか、誰が誰を捨てたか、僕の態度から探ろうとしているその表情を懼れた。僕は、僕を支える彼女の美しさを必要とした。

 「でも。こんな服では入れないわ、」僕が彼女に同行を求めた時、彼女は不満を表した。僕は、彼女に僕と一緒にと望んだ、そのことを、どれ程彼女が嬉しがったか、僕は話してもいい。あそこであの時、ウォタベリから彼女を奪える、と僕には分かった。彼の砂は、既に流れ出た。もし僕が選んだら、彼は一人でバータクに耳を傾けるだろう。

 「僕たちは後ろに立とう。」僕は言った。「貴女は、歩き回っている単に見知らぬ人になるといい。」

 「少なくとも彼らは黒い服よ。」彼女のズボンに言及して、彼女は言った。タクシの中で、僕は僕の手を約束のように彼女の足の上に置いたままでいたが、僕は、僕の約束を守るつもりはなかった。火葬場の塔は、煙を上げ、砂利の歩道に半ば凍った水溜まりに水が横たわっていた。大勢の見知らぬ人々が、側を通った―前の火葬からの、僕は思った、飽き飽きするパーティを後にして、今やっと「前に進む」ことが出来る人々の元気な清々しさが彼らにはあった。

 「それは、この道です。」シルヴィアが言った。

 「貴方は、その場所を随分よく知っているね。」

 「ダディは、二年前、ここで済ませました。」

236

2022年8月10日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳


 Ⅳ

「ハムプステドゥは、次の停留所よ、」シルヴィアは言った。
 「貴女は、貴女のお母さんを見に行くんだったね?」
 「私は、ゴウルダズ・グリーン迄付き合って、貴方を案内しましょう。私は、普段、今日は彼女を見に行きません。」
 「開始の列に遅れても、そんなことは、問題ない、と僕は思うよ。」
 彼女は、駅の中庭まで僕を見送り、その後彼女は戻ろうとした。彼女が随分たくさん悩みを抱えているということ、それが僕には不思議に思えた。女の人に対して好きになるような僕の中のどんな性質も見せびらかしたことはなく、今までより以上に今は少ない。悲しみや落胆は、嫌悪に似ている。それは、自己憐憫や難儀と共に男達を穢れさせる。そしてそれも又、如何に僕たちを利己的にすることか。
235

2022年8月9日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「当然、私は受け入れない。私は、私の理由を既に貴方に話しました。もしそれらがマイルズ氏に対して十分説得力がないようであれば、そこには、もはや話の一つもない。」彼が彼の椅子から身を起こすと、何とも不格好な男だった、彼は座ってさえいれば、少なくとも権力的外見は持っていた。しかし彼の足は、彼の体にしては短過ぎ、彼が立ち上がると、意外に小さかった。それは、まるで突然、彼が長い道のりの向こうに行ってしまったかのようだった。

 ヘンリは言った、「貴方がもう少し早くいらっしゃればなあ、神父。どうか考え込まないで下さい・・・」

 「私は、貴方のことを何も悪く思っていません、マイルズさん。」

 「僕のことは、多分、神父?」僕はわざと無礼を承知で尋ねた。

 「オウ、気にしないで下さい、ベンドゥリクスさん。貴方が出来ることは何一つなく、直ぐに彼女に影響を及ぼします。」懺悔は、憎悪を認めることを人に教える、と僕は思う。彼は、ヘンリに彼の手を差し出し、彼の背を、僕に向けた。僕は、彼に言いたかった、貴方は、僕のことを勘違いしている。僕が遠ざける、それはサラーではない。それに貴方はヘンリについても勘違いしている。僕ではなく、彼が不純な奴だ。僕は、僕自身を、守りたかった、「僕は彼女を愛した、」確かに懺悔の中で、彼らは、そうした感情を認めることを学ぶのだから。

234

2022年8月8日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

  「貴方に言うのは、それは異常で失礼な事のように思いますが、マイルズさん、貴方の奥様が、何とも善良な女性だったということを貴方は分かっているとは思いません。」

 「彼女は、僕に対して何もかもあるがままでした。」

 「実に多くの方々が、彼女を愛しました。」僕は言った。

 「クロムプトン神父は、鼻を垂らした子供から、教室の後ろで、妨害音を耳に挟む校長のように、僕の上に彼の目を向けた。

 「多分、十分ではありません。」彼は言った。

 「十分、」僕は言った、「僕たちが話し合っていたことに戻るべき。僕たちは、今となっては物事を変えられるとは思いません、神父。それも又、話しの大げさな取り扱いのもとになります。貴方は、世評を好まないでしょ、ヘンリ?」

 「いいえ、オウいいえ。」

 「そこには、ザ・タイムズの掲載があります。僕たちは、訂正を加えざるを得ない。人々は、その類のことに敏感です。それでは、あれこれ評判されるだけです。何はさておき、貴方は、無名ではない、ヘンリ。それから、電報は、送られてしまうでしょう。」大勢の方々が、既に、火葬場へ花輪を配達してしまったでしょう。貴方は、僕の意味するところに目が行きます、神父。」

 「私がすることを、僕は口に出来ない。」

 「貴方が尋ねるどんな事も、合理性に欠けます。」

 「貴方は、一連の非常に奇妙な価値観を持っているように思えます。、ベンドゥリクスさん。」

 「それにしても確かに貴方は、肉体の復活に影響する火葬を受け入れない。」

233

2022年8月7日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 クロムプトン神父は言った、「私は、貴方がたに割り込むなど夢にも見ません、マイルズさん、ちゃんとした理由もないのに。」

 「私は、彼女が死ぬ前、一週間以内に書いたマイルズ婦人からの手紙を持っています、」僕は、彼に打ち明けた。「貴方が彼女を見てから、それでどの位経ちますか?」

 「おおよそ同じ頃です。5、6日前。」

 「それは、僕には極めて妙な気がしますが、彼女は、彼女の手紙の中で、その話題に触れてもいません。」

 「おそらく、ミスタ:::ベンドゥリクスさん、貴方は彼女の信頼を得ていなかった。」

 「おそらく、神父、貴方は結論へと少し性急に飛躍し過ぎます。必然的にカサリク信者になろうとするのでもないのに、人々が、貴方がたの教義に興味を持っても、それについて質問してもいい。」僕は、素早くヘンリに続き、「今更、何もかも変えるなんて、それは馬鹿げている。案内は、出してしまった。友人たちは招待してしまった。サラーは、一度も狂信的であったことはない。彼女は、出来心があって引き起こす何らかの面倒を、最後に必要としたのでしょう。後の祭り、」ヘンリの上に、僕の目を釘付けにしたまま、僕は更に追い詰め、「それは、クライストゥ教徒の儀式になります。あのサラーは、クライストゥ教徒でさえなかった。僕たちはともかく、それについて何の兆しも見なかった。しかし貴方は、何時でもクロムプトン神父にマス(ミサ)の代金を差し上げられる。」

 「それは、必要ではありません。私は今朝そのことを申しました。」彼は、彼の膝の中の彼の両手で身振りをした。真っ先に彼の硬直に分け入る。それは、爆弾が落ちた後、替えて寄り掛かる頑丈な壁を眺めているかのようだった。

 「僕のマス(ミサ)の中で、毎日、彼女を追悼します。」

 ヘンリは、それで物事の決着がついたかのようにほっとして言った。         「貴方については、非常に好ましい、神父、」そして煙草の‐箱を動かした。

232

2022年8月6日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「そんな、どうして?」

 「教会は、特権を、マイルズさん、責務同様十分に奉(たてまつ)ります。 そこには、我々の死に備えて特別なマスィズ(ミサ))が用意されています。祈りが本式に唱えられます。私たちは、私たちの死を追悼します、」彼は付け加え、僕は腹立たしく思い、貴方はどういう風に彼らを追悼するのか?貴方の論理は、全く正しい。貴方がたは、個人の重要性を説く。僕たちの毛は、皆、番号が付けられている、と貴方がたは言う、が僕は、僕の手の甲で、彼女の頭髪を感じられる。彼女が僕のベドゥに顔を伏せると、彼女の背骨の付け根に、ヘアの上質の亡骸を思い出すことが出来る。僕たちは、僕たちの死をも思い出す、僕たちなりに。

 ヘンリが気弱になるのを見守りながら、僕は、断固として嘘を吐いた、「彼女がカサリクになろうとしたと信じる理由を、僕たちは全く持っていません。」

 ヘンリは始めた、「勿論、看護婦が言ってはいました、」僕は彼を遮った、「彼女は、最後にうわ言を言ったんだ。」

231

2022年8月5日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「もし私が知っていれば、貴方がたの手を煩わさずに、悉(ことごと)く何でも引き受ける用意がありましたのに。」

 僕がヘンリを嫌った時、そこには時機があった。僕の嫌悪は、今思うとつまらない。僕が犠牲者だったと同様、酷な程、ヘンリも犠牲者で、勝者は、大層な襟を着けたこのぞっとするような男だった。僕は言った、「貴方は、確かにそれを殆ど出来なかった。貴方は、火葬に不賛成だった。」

 「私は、カサリク式土葬を準備出来ました。」

 「彼女は、カサリクではなかった。」

 「彼女は、それになる意志を表明していました。」

 「彼女をそれにするのに、それだけで十分ですか?」

 クロムプトン神父は、決まった遣り方を演出した。彼は、それを銀行通帳のように、下に広げた。「私たちは、要請があればバプティズムを認めます。」

 「それは、僕たちの間のそこに、摘まみ上げられるのを待ちながら、置いてあった。誰も動かさなかった。クロムプトン神父は言った。「貴方がたの準備を撤回する時間は、未だそこそこあります。」彼は繰り返した、「私は、貴方がたの手を煩わさず全て引き受けます、」彼はマクベス婦人に話しかけ、彼女にアラビアのパーヒューム以上に彼女の手を甘くする、或る非常にいい方法を、彼女に期待させるかのように、それを訓戒調で繰り返した。

 ヘンリは、突然言った、「それは、本当に大きな差を作るんですか?勿論、僕はカサリクではありません、神父、しかし僕は見当が付かない・・・」

 「彼女は、もっと居心地が良かっただろう・・・」

230

2022年8月4日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 Ⅲ

午後を前にして、ヘンリは、迷っていた。彼は、来て欲しいと僕に頼む為に電話をして来た。サラーが去ると共に、僕たちが如何に近付いたか、それは、妙だった。彼は、前にサラーに頼っていたように、今、僕をかなり頼る―僕は、およそ幾らか家に精通している者ではあった。葬式が終わった時、彼が家を共有するよう僕に頼みたいのか、どんな答えを僕は彼に与えたいのか分からない振りもした。サラーを忘れるという見地から、二つの家の間で選ぶ事、そこには何一つなく、彼女はどちらにも属して来た。

 僕が着いた時、彼は彼の薬で未だぼんやりしていて、或いは、僕は、彼にもっと面倒を掛けるのかも知れなかった。一人の牧師が、書斎の肘掛け椅子の縁にこわばって座っていた。僕がサラーを最後に見た暗い教会で、日曜日に地獄から出て来て仕える、多分レデムプトリストゥの一人、気難しい瘦せこけた顔を持つ男。彼は明らかに鼻っからヘンリに反感を持たせ、それは、役に立った。

 「こちらは、ベンドゥリクス氏、作家の、」ヘンリが言った。「クロムプトン神父。ベンドゥリクス氏は、僕の妻の大切な友人です。」クロムプトン神父は、それを既に知っているという印象を僕は持った。彼の鼻は、控え壁のように、彼の顔を走って下り、僕は思う、おそらくこれが、サラーの上の希望のドアを、バタンと閉めたその男だ。

 「申し分のない午後ですね、」クロムプトン神父は、ベルやカンドゥルが、遠く離れていないと感じた、そんな悪‐意を持って言った。

 「ベンドゥリクス氏は、準備全てに大いに対処して僕を助けてくれました、」とヘンリは説明した。

229

2022年8月3日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「僕が今まで生きて来て、これが初めての葬式です、」僕は、話を仕切り直す為に言った。

 「貴女のお父さんとお母さんは、生きているの、唐突だけど?」

 「私の父は。私の母は、私が学校で離れていた時、死にました。私は、2、3日の休暇を貰おう、と思いしましたが、私の父は、それでは私の心を乱すと考え、ですから私は、その外にいて全く何事にも関らなかった。外され、私は準備を放免されました。その夜そのニュースは、届きました。」

 「私は火葬されたくありません。」

 「貴女は、虫の方がいいの?

 「はい、私はその方が。」

 僕たちの頭は、どちらからともなく随分接近して、僕たちは、僕たちの声を高く上げずに話せたが。人混みの所為で互いを見ることは出来なかった。僕は言った、「或る方式でも他でも、それは、僕には関心はないよ、」そして直ぐに、何故僕は嘘を吐く為に悩んで来たのか、と不思議に思った。そのことに関心があった、そのことに関心がなければならなかった。埋葬に反対してヘンリを説得して来たのは、それは、最終的に僕だったから。

228

2022年8月2日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

僕たちは、一緒にトッテナム・コートゥ・ロウドゥの瓦礫の中に入って行った。僕は言った、「パーティを散々にしてくれてありがとう。」

 「オウ、私は貴方は逃げ出したがっていると分かりました、」彼女は言った。

 「貴女のもう一つの名前は何?」

 「ブラック。」

 「シルヴィア・ブラック、」僕は言った、「それは、いい組み合わせだ。殆ど言う所が無さ過ぎ。」

 「それでは、大の親友ですか?」

 「そう。」

 「女の人?」

 「そう。」

 「私は気の毒に思います。」彼女は言い、そして僕は、彼女がそういうつもりだという印象を持った。彼女は多くを学ばなければならなかった、本や音楽の道で、又、如何に装い話すかを。しかし彼女は人間らしさを学ぶ必要はない。彼女は僕と一緒に混み合った地下鉄へと下り、僕たちは、並んで吊革に掴まった。僕に寄り掛かる彼女を感じながら、僕は、欲望を思い起こした。それは、今、是が非でも事実になろうとするのだろうか?

欲望ではなく、しかし単にそれを思わせるだけのもの。彼女は、グジ・ストゥリートゥで、新しい人に道を作ろうして向きを変えた。それで、誰でもずっと前に起こった何かに気付くように、僕は、僕の足に触れた彼女の大腿骨に気付いた。

227

2022年8月1日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「しかし貴方は5分ここにいただけです。この記事をまともなものにすること、それが大切です。」

 「僕にとっては、ゴウルダズ・グリーンに遅れないこと、それが本当に大切です。」

 「僕は、その理屈は眼中にありません。」

 シルヴィアは言った、「私は、ハムプステドゥと同じくらい遠くへ、私自身行くつもりです。私は、貴方の目的地に貴方を置いてきぼりにしますが。」

 「君は僕に話してないじゃないか。」ウォタベリは、疑って言った。

 「私が、何時も水曜日に私の母を見に行くのを、貴方は知っています。」

 「今日は、火曜日だよ。」

 「どうしても明日行く必要はありません。」    「それは、貴女にも非常に好都合です、」と僕は言い、「僕は、貴方の連れが気に入りそうだ。」

 「貴方は、貴方の作品の一つにある意識の趨勢(すうせい)を利用しましたね、」ウォタベリは、必死な慌て振りで言った。「何故貴方は、あの方式を捨てたのですか?」

 「オウ、僕には分かりません。誰もが、何故フラトゥを変わるのか?」

 「それには欠陥がある、と貴方は思ったんですか?」

 「僕の作品全てについて、僕はそれを感じています。さて、グドゥ‐バイ、ウォタベリ。」

 「僕は、記事のコピを貴方に送ります。」彼は、まるで脅しを表明するかのように言った。

 「ありがとう。」

 「遅れるなよ、シルヴィア。それでは、6時30分に三番のバートク プログラムですよ。」

226

2022年7月31日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

  「貴方は、40分は覚悟して置いた方がいいでしょう。」シルヴィアが言った。「貴方は、エヂウエア列車を待つことになります。」

 「フォースタ、」ウォタベリは、苛々して繰り返した。

 「その駅から貴方はバスに乗るしかありません。」シルヴィアは言った。

 「実際、シルヴィア、ベンドゥリクスはゴウルダズ・グリーンへの着き方について話す為にここに来て貰ったんじゃないんだよ。」

 「私は、済まなく思います、ピータ、私は本当に思います・・・」

 「思う前に6数えなさい、シルヴィア、」ウォタベリは言った。「それではさて、僕たちはE.M.フォースタに戻せますか?」

 「僕たちに必要ですか?」僕は尋ねた。

 「貴女はこんな色々な学校に属しているので、そりゃあ面白いだろうね・・・」

 「彼は、学校に属しているの?僕がしたことを、僕は分かってもいなかった。貴女は、教科書を書いて

いるの?」

 シルヴィアは微笑み、彼はその笑みを見た。僕は、その瞬間から、彼は、彼の取引の武器を鋭く研いではいるが、そのことは、僕には重要ではなかった。無関心と誇りは、大変よく似て見える上に、彼は多分僕のことを自慢げだと思った。僕は言った、「僕は、本当に行くことになっているんです。」

225

2022年7月30日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

  「ゴウルダズ・グリーンで葬式、」ウォタベリは叫んだ。何と貴方自身の品位の一端らしい。それならゴウルダズ・グリーンにいなければならないでしょ?

 「僕は、場所を選ばなかった。」

 「芸術を模写している暮らし。」

 「それは友人ですか?」シルヴィアが、同情して尋ねると、ウォタベリは、睨みつけて彼女の見当違いを表した。

 「はい。」

 彼女は、あれこれ思い巡らしていたと、僕には見受けられた―男?女?どんな種類の友人?そしてそれは、僕を満足させた。僕は、彼女に対して人間で、小説家ではなかったから。友人が死んで、彼らの葬式に出席する、満足と痛みを感じる、慰安さえ必要としてもいい、多分仕事は、モーム氏のものよりずっと卓越した共感を得、熟練工そのものではなく、勿論、同じくらい高くそれを位置付けられないが、一人の男だった。

 「貴方は、フォースタをどう思いますか?」

 「フォースタ?オウ、申し訳ないが、ゴウルダズ・グリーンまで、それがどれだけかかるか、僕にはまるで分からない。」 

224

2022年7月29日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

ウォタベリは、トッテナム・コートゥ・ロウドゥ外れのシェリ‐バーで待っていた。彼は、黒いコーデュロイのズボンを履き、安い煙草を吸い、彼より桁違いに背が高く、見栄えのいい、同じ感じのズボンを履き、同じ煙草を吸う女を、彼の側に連れていた。彼女は随分若く、彼女はシルヴィアと呼ばれた。専(もっぱ)らウォタベリ付きで始まった勉強の長いコース上にあって―彼女は、彼女の教師を見習う段階だった。そうした見せかけ、そうした用心深い天性の有能な眼差しと髪、イルーミネイシャンの金を持つ、僕はどことなく不思議に思った。彼女は、けりをつけるだろう。彼女は、十年の内にウォタベリを、トッテナム・コートゥ・ロウドゥ外れのバーを思い出したりするのだろうか? 僕は彼を気の毒に思った。彼は、今は大層自信ありげで、僕たち二人に大層なパトロン気取りだが、衰退して行く側にいた。何故、僕は思った、意識の流れに関する彼の特に独りよがりなコメントゥで、僕のグラス越しに彼女の眼差しを捕えながら、今直ぐにでも彼女を彼から手に入れることが出来ると。彼の記事は、新聞に閉じられたが、僕の本は、布地で製本された。彼女は、僕からはもっと学べると知っていた。そして未だに、哀れな悪魔、時に、彼女が素朴な人間の知的ではないコメントゥをすると、彼は、彼女をわざと無視するような神経を持っていた。僕は、彼に虚しい未来と戒めたかったのに、僕は、もう一杯飲み、言った、「僕は長くはいられません。ゴウルダズ・グリーンの葬式に行くことになっています。」

223 

2022年7月28日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 僕は、彼の記事の仰々しい表現を、余りにもよく知り過ぎていた。彼は、僕が気付かなかったことを発見し、欠陥は、正視すると嫌気が差す。挙句の果てに贔屓にしても、彼は、僕を位置づけようとする―おそらくモームの少し上に、モームは、世間に広く行き渡っているから、それに僕は、未だその罪は犯していなかった―未だしてない、しかし不成功というささやかな排他性を維持し、そのちょっとした書評は、賢い刑事のように、その道すがら、嗅ぎ付けてしまう。

 何故僕は、コインを投げる程、今まで悩んだのか?僕は、ウォタベリに会いたくなかったし、僕は確かに色々書かれたくなかった。僕は、今や、僕の興味の限界に達していたから。誰も賛辞で僕をひどく喜ばせたり、或いは、非難して僕を傷付けたり出来ないから。僕が、今尚興味を持つ官吏に関するその小説を始めた時、しかしサラーが僕を残して逝った時、僕の仕事、それは何の為だったか―何週、何年中、何かを得ようとして、煙草同様、何の役にも立たない薬物のような。僕たちが死によって消滅するのなら、僕は尚も信じようとしても、瓶や衣服や、安い宝石以上に、何冊かの本を後世に残すことに、そこに何の利点があるのか?そしてもしサラーが正しいのなら、重要な芸術の全ては、如何に重要ではないのか。僕はコインを放り投げて決めたのは、僕は、単に、孤独からだけだと思う。葬式の前、僕は何もすることがなかった。僕は一、二杯の酒で元気付けたかった。(誰でも自分の仕事を心配しなくなるのはいいが、誰でも集会を気にしなくなり、一人前の男が、人前で取り乱してはいけない。)

222                              

2022年7月27日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

  そこには、もう何もなかった。彼女は、それらが話される前でさえ、彼女の祈りに答えて貰うコツを持っていたように思うのは、彼女が雨の所為で入って来て、ヘンリと一緒の僕を見つけたあの夜、彼女は、死ぬことにとりかかったのではなかったか?もしも僕が小説を書いていたら、僕は、それをここで終わろうとしただろう、僕は何時も思う、何処かで終わることにしなければ、と、しかし僕は、僕の実在主義は、この何年もずっと、欠陥のままだった、と信じ始めている。今や、人生に於ける何事も、何れ終わるように思えるものはないのに。化学者は、決して物質は完全に破壊されない、と貴方に話し、数学者は、もし貴方が部屋を横切ろうとして各歩調を二等分すると、貴方は何時までも反対側の壁に達さないだろうと貴方に話す。この物語がここで終わると考えたとしたら、僕は何と楽観主義者なのだろう。只々、サラーのように、僕が馬並みに強くない方がいいのだが。



僕は、葬式に遅れた。或るちょっとした書評に、僕の作品に関する記事を書こうとしていたウォタベリという男に会いに、街中に出掛けてしまった。僕は彼に会おうか、どうしようか、コインを投げて決めた。

221

2022年7月26日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

私が貴方を愛すように、以前、私は愛したことはなかった。私が今信仰するように、以前、私は何かを信じたことはなかった。私は確信しています。私は、何かにつけ、以前、確信がなかった。貴方が、貴方の顔を血まみれにして、ドアの所に入って来た時、私は確信するに至りました。一時(いちどき)に何から何まで。喩え、その時、私がそれを知らなかったにせよ。私は、愛と格闘するよりずっと長く、信じることと格闘しましたが、私には、どんな闘争心も残っていません。

 モーリス、親愛なる人、怒らないで。私を可哀そうだと思って、でも怒らないで。私はいんちきでぺてんだとしても、これは、いんちきでもぺてんでもありません。私は、私自身のことを、確かだと当たり前のように思っていたので、何が正しくて間違っているのか、貴方は私に確信しないように教えました。貴方は、私の嘘の全てと自己‐欺瞞を、それらが、道伝いにやって来る誰か、大切な誰かの為に、瓦礫の道を奇麗にするが如く、取り去り、そして今、その人がやって来ましたが、貴方は、その道、貴方自身を身綺麗にしました。貴方が書く時、貴方は正確であろうとし、貴方が真実を追い求めるように、と私に教え、そうして貴方は、私が真実を語ろうとしなかった時、貴方は、私に話しました。貴方は、本当にそう思うのか、貴方は言おうとして、或いは、貴方がそう思うと思っているだけなのか。そう、それは、皆貴方の欠陥、モーリス、皆貴方の欠陥だ、と貴方には見て欲しい。こんな風に、私を生き続けさせようとしない、彼の人、神に、私は祈ります。

220

2022年7月25日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

あらゆる機会に、私がこんな希望を持つ不可思議を、彼に問いました。それは、新しい家の鎧戸を開けることに、その見晴らしに目を向けることのようで、すると全ての窓は、まさに白地の壁に面していました。いいえ、いいえ、いいえ、彼は言いました、私は貴方と結婚出来ない、私は貴方の顔を見続けることは出来ない、もし私がカサリクになるつもりがなければ。私は、思いました、彼らの全運命もろとも地獄へ、そして私が彼と面会していたその部屋から、私は歩いて外に向かい、私が牧師連中について思う何かしらを知らしめる為に、ドアをバタンと閉めました。彼らは、私たちと神の隔たりになると私は思いました。神はもっと慈悲心を持ちます。それから私は教会の外に出て、彼らがそこに持つクライストゥ磔刑像(たっけいぞう)を見て、私は思いました、勿論、彼は慈悲心を手に入れました、只それはこんなにも或る種可笑しな慈悲心です。それは、時に罰の様相を帯びます。モーリス、私の愛する人、私は、嫌な頭痛がします。私は、死ぬような気がします。私は、馬ほど丈夫ではなくて良かった。私は、貴方なしで生きたくない、それに私は知っている、私が貴方に共有地で会い、その後、私は、ヘンリも、神も、どんなことについての罵りの言葉も気にしない一日を。それにしても、何が善でしょう、モーリス?そこいらに神はいると信じます。―欺瞞の鞄丸ごと、私は信じます、そこいらに、私が信じないものは何一つありません。彼らは、一ダズンの断片に、三位一体を細分出来ます。すると私は信じます。クライストゥは、彼自身を宣伝して売り込ませる為に、ピラトゥによって創案されたことを証明する記録を、彼らは掘り起こせます、すると私は信じます、全く同様に。私は、病気のように信仰に感染しました。私は、私が恋に溺れたように、信仰の中で溺れました。

219

2022年7月24日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「最愛の人モーリス、」彼女は書いた、貴方が去った後、あの夜、私は貴方に書こうとしたけれど、私が家に着いた時、私は、かなり具合が悪いと感じ、又ヘンリは私のことで気を揉みました。私は、電話する代わりに書きます。私は、貴方と一緒に遠くへ行くつもりはない、と私が口にすると同時に、気が変になりそうで、私は電話を掛けて貴方の声を聞けない。だから私は貴方と一緒に遠くへ行くつもりはないの、モーリス、最愛の人モーリス。私は、貴方を愛しているのに、私は、もう一度、貴方に会うことは出来ない。この痛みの最中を、私はどう生きようとすればいいのか、私には分からず、思い焦がれるだけで、私は、時間の許す限り、彼が私に厳しくしないようにと、彼が私を生き続けさせないようにと、神に祈っています。親愛なるモーリス、私は私のケイクを手に入れたい、それを食べたい、他の皆のように。貴方が私に電話を掛ける以前、二日前に、私は牧師のところに赴き、私は、カサリクになりたい、と彼に話しました。私は、私の誓いや貴方について、彼に打ち明けました。私は言いました、私は、実際、もうヘンリに添い遂げられないと。私たちは一緒に眠らない―貴方との最初の一年からではなく。それは、本当に結婚ではなかった、私は言いました、貴方が、出生登録事務所を結婚式場と呼べなかったと。私は彼に、私はカサリクになって、貴方と結婚出来ないか、と尋ねました。貴方が、官公庁事業をすり抜けても気にしない、と私は知っていました。

218

2022年7月23日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

僕たちは恋の向こう側を見るようになったが、僕たちが御されていた方角に気付いたのは、それは、僕だけだった。爆弾が一年早く落ちていたら、彼女は、あの誓いを立てなくて済んだ。彼女は僕を開放しようとして、彼女の爪を引き剝がそうとした。僕たちが人間の終わりに手を掛ける時、僕たちは神の信仰へと、僕たち自身を欺こうとする、彼の食物に添える、より複雑なソースを追い求める美食家のように。僕はホールを見た、独房のようにすっきりとした、グリーンのペイントゥにぞっとする、そこで僕は思った、彼女は、僕に二度目のチャンスを与えたがったが、それは、ここにある、虚しい暮らし、無臭、防腐、刑務所の暮らし、そうして僕は、彼女の祈りが、実際、変化をもたらしてしまったかのように、彼女を責めた。暮らしに向けて、貴女が僕に有罪判決を下したくなるような何を、僕は貴女にした?階段と手すりは、階上のあちこち新しさに軋んだ。彼女は、一度もそれらを歩いて上ることはなかった。家屋の修復でさえ、忘却の課程の役目を担った。全てが変わる時、覚えていること、それには、時とは別に神を要する。僕は未だ愛していたのか、或いは、僕は、只愛したことを悔いていただけなのか?

 僕は、僕の部屋の中に入り、机上に、サラーからの一通の手紙を置いた。

 彼女は、24時間死んだ状態で、それよりずっと長い間、意識を失っていた。細長い共有地を横切るのに、どうしたらそんなに長くかかってしまうのか?その時、僕は、彼女が僕の番号を間違って置いたということを見て知った。すると少々懐かしい苦々しさが、滲み出した。彼女は、二年前、僕の番号を忘れる筈がなかった。

 彼女が書いたものを見る思い、そこには、随分多くの痛みがあったから、僕は、ガス‐火へと向かうその手紙を、それでもどうにかこうにか持ち堪えた。何れにせよ、好奇心は、痛みより強くなり得る。それは、鉛筆で書いてあった。彼女がベドゥで書いたからだ、と僕は思う。

217

2022年7月22日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「貴方は、少しは祈りの言葉を知っていますか?」

 「いいえ。」

 「貴方が信仰しない神に祈ること、それは好ましいとは思えない。」

 僕は、家から出て、彼に付いて行った。ヘンリが起きるまで残っても、そこには、何の利点もなかった。多少早くとも遅くとも、彼は、彼自身に基づいて存在することに直面するしかなかった、まさに僕がそうして来たように。僕は、僕の前を、スマイズが共有地を横切って、彼の道を急にせかせか動くのを見守った。そこで僕は思った、ヒステリカルなタイプだと。不信仰は、まさに信仰同様、多くは興奮の所産である筈。大勢の人々の通行が、それを溶かしてしまった所の雪の泥濘(ぬかるみ)が、僕の靴底からじわじわ滲みて、僕の夢の雫を僕に思い起こさせはしたが、「気を遣わないで、」と言っている彼女の声を思い出そうとした時、僕が音の響きを求めても、空虚な記憶を抱き締めるだけと気付いた。僕は、彼女の声を真似られなかった。僕は、それを風刺さえ出来ず、僕はそれを思い出そうとした時、それは、匿名だった―まるで何処かの婦人の声。彼女を忘れることの手順は、整った。僕たちは、写真を保存するように、蓄音機レコードゥも保存すべきだ。僕は、ホールの中へと、壊れた階段を上った。何一つなくとも、ステインドゥ・グラスは、1944のあの夜と同じだった。誰ということではないが、何らかの兆しに感付く。サラーは、彼女が僕の死体を見た時、終わりが来た、とまともに信じた。終わりは、随分前に始まっていた、と認めようとはせず、この、或いはあの不十分な理由の為に、益々減った電話の呼び出し音、恋の終わりという危険を、僕が察知したために僕が彼女に仕掛けた口論。

126

2022年7月21日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

「それで全部です。」彼は言った。

 「貴方は、どんな権利も持っていない。」

 「オウ、彼女は、今はもう誰にも属さない、」彼は言い、すると突然、僕は彼女を見たような気がした、何の為に、彼女は―片付けられるのを待っているだけの廃物の小片になったのか、もし貴方が僅かな頭髪を必要としたら、貴方は、それを手に入れ、彼女の爪を切り取ることも出来た、もしも爪を切り取ったものが、貴方に価値があれば。聖者のもののように、彼女の骨は、ばらばらに分けられても仕方なかった―もしも誰彼となくそれらを求めたら。彼女は、間もなく焼却されようとしていた、そう彼が真っ先に欲しがったものを、何故誰もが自分のものにしようとしてはいけないのか?何としてでも、僕が彼女を所有したその姿を描くのに、三年もの間、何と愚か者だったことか。僕たちは、僕たちそのものでさえない、誰でもないものによって所有される。

 「僕は済まなく思う、」僕は言った。

 「彼女が僕に何を書いたか知っていますか?」スマイズは尋ねた。「あれは、ほんの四日前でした、」そこで僕は悲しくなった、僕に電話することもなく、彼女は、彼に書く時間を持つしかなかったんだ。「彼女は書きました―私の為に祈って下さい。それは変だと思いませんか、彼女の為に祈るよう、僕に頼むのは?」

 「貴方は、何をしたの?」

 「オウ、」彼は言った、「彼女が死んだと僕が聞いた時、僕は祈りました。」


215

2022年7月20日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「それで、そのことで僕は何をすればいいの?」

 「彼女は、彼女の夫は貴方に大いなる敬意を払っている、と何時も言っていた。

 彼は、不条理のスクルーを、余りにも遠くまで回していた。僕は、笑い声で、この埋もれた部屋の死の状態を粉砕しようと思った。僕は、ソウファに座り、僕は、そうして揺さぶり始めた。僕は、二階のサラーの死体と、彼の顔に愚かな笑みを浮かべたヘンリと、彼のドア‐ベルに粉を振り掛ける為に、パ―キス氏を雇って来た恋人と葬式を論じている痣を持った恋人を思った。僕が笑っている内に、僕の頬に涙が走り落ちた。一度だけ、急襲の最中、僕は、彼の妻子が生き埋めにされた彼の家の外で、一人の男が笑っているのを見た。

 「僕には分からない、」スマイズは言った。彼の右の握り拳は、彼が彼自身を守る準備が整ったかのように閉じた。そこには、僕たちが理解しない多くのことがあった。痛みは、僕たちを揃って投げ飛ばす説明しがたい爆発に似ていた。「僕はそろそろ行きます、」彼はそう言って、彼の左手でドア‐ノブに手を掛けた。唐突な考えが、僕に浮かんだ、彼は、左利きだと信じる理由は、まるでなかったから。

 「貴方は、僕を許すしかない、」僕は言った。「僕はガタピシしている、僕たちは、何もかもガタピシしている。」僕は、僕の手を彼の方へ伸ばした。彼は、躊躇いながらも、それに左手で触れた。「スマイズ、」僕は言った、「貴方は、そこで何を手に入れたの?彼女の部屋から何か持って来たの?」彼は、彼の手を開き、切り取った髪の毛を見せた。」

214

2022年7月19日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「僕は道理を弁えなかった。」彼は言った、「僕は彼女を見られる、と思いませんか?」そして僕は、葬儀屋の重いブーツが下りて来るのを聞いた、僕は、同じ段が軋むのを、耳にしたことがある。

 「彼女は、二階で横になっている。左の最初のドア。」

 「もしマイルズ氏が・・・」

 「貴方は、彼を起こさないで。」

 僕は、彼が又、下りて来る時までに、僕の服を身に付けて置いた。彼は言った、「貴方に感謝します。」

 「僕に感謝しないで。僕は、貴方がそうするよりずっと彼女を自分のものにしてはいない。」

 「僕には、尋ねる権利さえ得ていなかった、」彼は言った、「しかし、僕は、貴方がそうするのを望みます―貴女は、彼女を愛した、僕には分かります。」彼は、彼が苦い薬を呑んでいるかのように付け加えた、「彼女は、貴方を愛した。」

 「貴方は、何を言おうとしているの?」

 「僕は、貴方が彼女の為に、何かしたらいいのに、と思っています。」

 「彼女の為に?」

 「彼女に、彼女のカサリク葬式を催させて上げて下さい。彼女は、それを好んだでしょう。」

 「いったい、それは、何が違っているんですか?」

 「彼女の為に少しでも、と僕は思わない。何れにせよ、それで、何時も、彼女が鷹揚であるが故に、僕たちに代償を支払う。」

213

2022年7月18日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「途方もない。」

 「彼女は僕に書きました。彼女は彼女の心を決めました。僕が、口を挟めなかったことで、少しはましになったでしょう。彼女は始めていました―Instruction(指導)を。それは、彼らが使う言葉ではありませんか?」つまり、彼女は未だ秘密を持っていた、と僕は思った。彼女は、彼女の日記にそれを載せていなかった、彼女が、彼女の病気について載せなかった以上に。どれだけもっと多くの発見すべきことが、そこにあったのやら?その思いは、絶望に近かった。

 「それは、貴方にとって衝撃だったんじゃないの?」僕は、僕の負傷を転嫁しようとして、彼をあざけた。

 「オウ、僕は勿論、怒りました。しかし、僕たちは誰しも、同じ物事を信じられはしない。」

 「それは、貴方が何時も主張することではない。」

 彼は、僕を見た、まるで僕の敵意で困惑したかのように。彼は言った、「どんな場合でも,貴方の名前は、モーリスですか?」

 「そうです。」

 「彼女は、僕に貴方のことを話しました。」

 「そして僕は、貴方のことを読んだ。彼女は、僕たち二人をこけにした。」

2Ⅰ2

2022年7月17日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 彼は言った、「僕は、帰ります、」そして侘びし気にあちらに向きを変えた、つまり、彼の醜い頬は、僕の方に向けられたということ。僕は思った、それは、彼女の唇が静止した側だった。彼女は、何時も哀れみから、罠に掛けられがちだ。

 彼は、呆けたように繰り返し、「僕が、マイルズ氏

を一目見たくて遣って来ましたのは、何と気の毒なと言いたくて・・・」

 「書くこと、それが、このような機会には、より一般的です。」

 「僕も何か役に立てればいいのに、と僕は思いまして、」彼は、弱々しく言った。

 「貴方は、マイルズ氏を改宗させる必要はありません。」

 「改宗?」彼は気楽に不幸を尋ね、狼狽した。

 「そこには、彼女に関して残されているものは何もないという事実。終わり。全滅。」

 彼は、突然打ち明けた、「僕は、彼女を見たかった。それが全てです。」

 「マイルズ氏は、貴方が存在するのを、知りもしない。そりゃあ、あまり貴方に思い遣りがあるとは言えない、スマイズ、ここに来るなど。」

 「葬式は、何時ですか?」

 「ゴウルダズ・グリーンで明日。」

 「彼女は、それを望んでいなかった、」彼は言い、驚きによって僕に取り入った。

 「彼女は、何ものも信じなかった。貴方がすることに貴方が主張するよりずっと。

 彼は言った、「貴方は、少しも知らないのですか?彼女は、カサリクになろうとしていました。」

211

2022年7月16日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「彼は、マイルズ婦人の友人とのことです。」彼女は言ったが、唯一の機会故、僕たちの卑劣な協力への彼女の貢献を容認した。

 「貴女は、彼を通した方がいい。」僕は言った。僕は、スマイズに対して、今や優越を感じていた、サラーの客間に座りながら、ヘンリのパジャーマズを着て、彼が僕について何も知らない間に、随分たくさん調べ上げて。彼は、途惑いながら僕を見て、寄せ木細工の床の上に雪を滴らせた。僕は言った、「僕たちは一度会っています。僕は、マイルズ婦人の友人です。」

 「貴方は、貴方と一緒に若い方を連れていました。」

 「その通りです。」

 「僕は、マイルズ氏を一目見たくて遣って来ました。」

 「貴方は、ニュースを聞きましたか?」

 「それが、僕が来た理由です。」

 「彼は、眠っています。医者が、彼に丸薬を服用させました。それは、僕たちの誰にも酷い衝撃でした。」僕は、馬鹿みたいに付け加えた。彼は部屋をぐるりと見詰めていた。シーダ・ロウドゥで、何処にも出かけることなく、彼女には、広がりがないようだった、と僕は思った、夢のように。しかしこの部屋は、彼女に厚みを与えた、それも又サラーだった。雪は、ゆっくりとスペイドゥから鋳型のように窓敷居に乗った。部屋は、サラーのように埋もれていた。

210

2022年7月15日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

朝食時間に、ヘンリは未だ眠っていた。パ―キスがそそのかしたメイドゥが、トゥレイに載せて、僕の為にコーフィとトウストゥを持って入って来た。彼女がカートゥンを引くと、霙は、突然雪に変わった。僕は未だ眠気と、僕の夢の中身でぼんやりしていたが、僕は、彼女の目が時を経た涙で、赤く見えて驚いた。「何か心配があるの、モードゥ?」僕は尋ね、空っぽの家と空っぽの世界に、僕が当たり前のように目覚めて現れたので、トゥレイを下に置き、猛烈な勢いで歩いて出た。僕は、上に行って、ヘンリを覗いた。彼は未だ、犬のように笑みを浮かべながら、薬を服用した深い眠りの最中にあり、僕は彼が羨ましかった。それから下に行って、僕のトウストゥを食べることにした。

 ベルが鳴り、メイドゥが誰かを二階に案内しているのを、僕は聞いた―葬儀屋、僕は思った、客—室のドアが開くのが聞こえたから。彼は、彼女の死体を見ていた。僕は未だだったが、他の男の腕の中の彼女を見ることを望むよりもっと、僕にはまるで意向はなかった。男には、その方がかえって元気付けられる者もいるのかも知れない。誰も、死人の為に僕に売春の仲介をさせない。僕は僕の心を取り出し、僕は考えた、今に、何もかも本当に終わるのだと、僕は又遣り直すことになってしまった。僕は嘗て恋に溺れたが、それは再び為され得る。それでも僕は納得しなかった、それは、僕が遠ざかって抱いた性の全てを、捧げつくしたような気がしたから。

 又ベルが。何と多くのビズニスが、ヘンリが睡眠中に、家の中で繰り広げられるのだろう。今度は、モードが僕の所に遣って来た。彼女は言った、「実は。マイルズ氏に尋ねたいことがあるという紳士が階下にいますが、私は彼を起こしたくありません。」

 「それは、誰なの?」

209


2022年7月14日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

僕はオクスフォードゥ・ストゥリートゥを上りながら、僕はプレズントゥを買おうとして、僕は、悩んでいた。どの店にも、安い宝石は沢山あった。隠された照明の下(もと)、 きらきら輝いている安い宝石なら沢山あった。今もあの頃も何か美しい物を見ると、僕はガラスに近付きたくなるが、僕が近くで宝石を見ると、それは、他の全て同様、人工的だ。―おそらくぞっとする緋色の目を持った緑色の鳥は、ルービの感じを与えるつもりだ。時間がなかったので、僕は店から店へと急いだ。その時、或る店の外に、サラーが遣って来た。彼女は、僕の役に立とうとするのは僕は分かっていた。「貴女は、何か買ったの、サラー?」「ここではないけど、」彼女は言い、「でも、もっと行ったら、そこに幾つも可愛い小瓶があるわ。」

 「僕は、時間がない、」僕は彼女に頼んだ、「僕を助けて。明日の誕生日の為に、僕は何か見付けようと

していたところ。」

 「気を遣わなくていいのよ、」彼女は言った。「どんな物でもきっと気に入るわ。気を遣わないで。」すると僕は、突然、心配がなくなった。オクスフォードゥ・ストゥリートゥは、その境界線を広大な鉛色の霧の原野に伸ばしていた、僕の足は裸足で、僕は露の中を歩いていた。一人で、浅い轍(わだち)によろけながら、僕は目を覚ました、未だ聞こえていた「気を遣わないで。」耳に閉じ込められた囁きのように、子供の頃にあった夏の音。

 朝食時間に、ヘンリは未だ眠っていた。パ―キスがそそのかしたメイドゥが、トゥレイに載せて、僕の為にコーフィとトウストゥを持って入って来た。彼女がカートゥンを引くと、霙は、突然雪に変わった。

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2022年7月13日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

ヘンリは、それから何を成そうとするのか、つまり僕たちの誰も気にも留めないリカーの小瓶や、海水で磨かれたグラスの欠片、そして僕がノッチンガムで見付けた小さな木の兎。僕は、僕共々、これらの物を皆、持ち去った方がいいのか?そうでもしなければ、ヘンリが片付ける為に、そこいら中、手を付ける時、それらは、紙―屑籠の中に入ってしまうだろうが、僕は、それらの同行に耐えられるだろうか?

 僕は、それらを見ていたら、ブランキトゥを背負って、ヘンリが入って来た。「僕は、言い忘れた、ベンドゥリクス、もしそこに貴方が持って行きたい物があれば・・・彼女は遺書を残した、と僕は思わない。」

 「それは貴方らしい。」

 「僕は今、彼女を愛した誰も彼も、感謝している。」

 「良ければ、僕はこの石を持って行きたい。」

 「彼女は変な物を持っていた。僕は、貴方に僕のパジャーマ一揃いを持って来た、ベンドゥリクス。」

 ヘンリが枕を持って来るのを忘れたので、クションに僕の頭を預けながら、彼女の香りを嗅ぐことが出来たら、と僕は空想した。僕が二度と持つ筈のない物を、僕は望んだ―そこには代わりの物はなかった。僕は眠れなかった。僕は僕の爪を僕の掌に押し付けた、彼女が彼女のものでそうしたように、だから、その痛みが、僕の脳が作動するのを妨げるといいと、僕の願望の振り子は、嫌になる程、向かっては逆戻りして振れた、忘却への願望、記憶への願望、死ぬことへの、そして生き続けることへの、差し当たって。そしてその後、やっと僕は眠った。

207 

2022年7月12日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

彼女は、今彼女が死んでいるように、あの頃も、彼女は死んだも同然だった。今年一、二カ月間、亡霊は、僕を希望を餌に苦しめたが、亡霊は横たえられ、苦しみは、間もなく終わろうとしている。僕は、日に日に少しずつ、より死にたくなるにしても、僕はそれをどれだけこらえようと切に願うか。人が、人が生きるのを煩わせる限り。

 「ベドゥに行きなさい、ヘンリ。」

 「僕は、サラーの夢を見るのが心配だ。」

 「医者の丸薬を飲めば、見ないよ。」

 「貴方もそれが欲しいか、ベンドゥリクス。」

 「いや。」

 「貴方は、要らないんだね。貴方は、一晩いてくれるの?そりゃあ外は、汚い。」

 「僕は天気を気にしない。」

 「貴方は、大変な好意を僕に示してくれている。」

 「当たり前だよ、僕はいるよ。」

 「僕は、シートゥとブランキトゥを、持って下りるよ。」

 「気にしなくていいよ、ヘンリ、」しかし彼はいなくなった。僕は、寄せ木細工の床に目をやると、彼女の泣き声そのままの音色を思い出した。彼女が、彼女の手紙を書いた机の上には、散らかった物があり、どれも符号のようで、僕は解釈可能だった。僕は思った、あの小石でさえ、捨てていなかった。僕たちはその形を笑い、そこにそれは未だある、文鎮として。

 206

2022年7月11日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

  「僕は、この祈りと墓‐掘りの騒動の全てが嫌だが、サラーがそれを良しとしたら、僕は、それを手配させよう。」

 「彼女は、彼女の結婚式を出生登録書ですることにした、」僕は言った、「彼女は。彼女の葬儀が、教会になればいい、と思いもしない。」

 「いや、僕は、それが本音だと思わないよね。」

 「登録と焼却は、」僕は言い、「それらは、共にℍ運び、」すると暗がりで、ヘンリは彼の頭を持ち上げ、まるで彼は僕の皮肉を疑うかのように、僕の方をじっと見詰めた。

 「貴方の手を煩わせないで、その全てを僕に任せてくれ。僕は仄めかした、まさに同じ部屋の中、同じ炉火の側、僕は仄めかして来た、彼の所為でサヴィジ氏を訪ねていると。

 「そうすることが、貴方もいいんだね、ベンドゥリクス。」彼は、極めて慎重に、公平に、僕たちのグラスに最後のフイスキを流し込んだ。

 「真夜中だ、」僕は言い、貴方は少し睡眠を取らなきゃいけない。出来るなら。」

 「医者が、僕に少し丸薬を残してくれた。」しかし彼は、未だ一人切りになることを望まなかった。僕は、彼がどんな気持ちでいるか、正確に知っている。何故なら、僕も又、サラーと一緒だった一日後、出来るだけ長く、僕の部屋の寂しさを先に延ばそうとする。

 「僕は、彼女が死んでいるのを思い出さないようにしている、」とヘンリが言った。そして僕は、それをも経験してしまった。1945中ずうっと―悪い年―忘れながら、僕たちの恋愛‐事件は終わったと、電話が彼女以外のどんな声でも運べばいいのにと、僕が目覚めた時。

205

2022年7月10日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「オウいや、ヘンリ。彼女は、貴方や僕以上に、何かを拠り所としてはいなかった。」僕は、彼女が妬き尽く去れたらと願い、僕は言えたらと望んだ、貴方に出来るものなら、その体を復活させてみなさいと。僕の嫉妬は、尽きなかった。ヘンリのそれに似て、彼女の死を以てしても。それは、彼女が未だに生きているかのように、彼女が僕に対して望む恋人という関係のにあった。僕は、彼らの永遠性を中断する為に、パ―キスを彼女の後に送れたらと、どれだけ願っただろう。

 「貴方は、本気か?」

 「本気だよ、ヘンリ。」僕は思った、僕は慎重になってしまった。僕は、リチャドゥ・スマイズのようになってはいけない、僕は嫌がってはいけない、何故なら、もし僕が心底嫌ってしまったら、僕は信じようとし、もし僕が信じようとしたら、貴方と彼女の為にどんな勝利が。ここは、演技をすることだ、復讐や嫉妬について語り合いながら。それは、まさに何か脳を満たすものだ。だからこそ、絶対的な彼女の死を忘れられる。一週間前、僕は、何の気なしに彼女に言った、「貴女は、あの初めて二人揃った時を、それにミータの代金一シリングを、どうにもこうにも僕が手にしていなかったのを覚えている?、だからそのシーンは、僕達二人の為に、そこになくてはならない。今は、只僕だけの為に、それはそこにある。彼女は、僕たちの思い出の全てを見失った、永遠に、そしてそれは、死ぬことに託(かこつ)けて、彼女は、僕自身の一部を僕に失わせたのだ。僕は、僕一個の体裁を失いつつあった。それは、腕木のように、剥がれて落ちる思い出、僕自身の死の初舞台だった。

204

2022年7月9日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

彼女がうわ言を言った時(勿論、彼女に責任はなかった)、看護婦は、彼女は牧師にずっと聞いていた、と僕に教えた。少なくとも彼女は、ファーザ(父である神)、ファーザ、と言い続けた、そしてそれは、彼女自身である筈がなかった。彼女は、彼を理解したことがなかった。勿論看護婦は、僕たちがカサリクではないと知っていた。彼女は、実に賢明だった。彼女は、彼女を宥めた。しかし僕は、悩んでいる、ベンドゥリクス。」

 僕は、怒りと苦々しさと共に考えた、貴女は、不憫なヘンリを一人残して去ってもいいんだろう。僕たちは、貴女を手放して何年も遣って来た。何故貴女は突然、あらゆる立場の中に割り込み始めるはめになってしまったのか、対蹠地から見知らぬ親族が戻って来たように。

 ヘンリは言った、「誰でも、ロンドンに住んでいれば、火葬が、最も拘りのない方法なんだが。看護婦が、それを僕に言うまで、僕は、それをゴウルダズ・グリーンで執り行おうと計画していた。葬儀屋は、火葬場に電話を掛けた。彼らは、明後日サラーを納める。」

 「彼女は、うわ言を言っていた」と僕は言い、「貴方は、話しの中で、彼女が何と言おうと受け止める必要はない。」

 「僕は、そのことについて牧師に聞くべきかどうか迷った。つまり、彼女は、カサリクになってもよかったと僕は理解しているから。彼女は、最近、何だか妙だった。」

203

2022年7月8日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「僕は、医者が助けたと思う。」

 「彼は、この冬、忙しくしていた。彼が、葬儀屋に電話を掛けた。僕は、何処に行くべきか、調べようともしなかった。僕たちは、職業電話帳を持った例がなかった。しかし、医者は、彼女の衣服をどう処理すべきか、僕に話す筈がない―カバドゥ(食器戸棚)は、そうしたもので溢れている。カムパクトゥ、香水―誰でも、むやみやたらに捨てられない・・・只、もし彼女が、姉妹でも持っていれば・・・」正面のドアが開き、閉じた為に、彼は、突然止めた。まさにそれは、彼が「メイドゥ、」と言い、僕が、「あれはサラーだよ。」と言った、あの何時かの夜にも起こったように。僕たちは、二階に上がって来るメイドゥの足音に耳を澄ました。一つの家がどんなに空疎でも、その中に三人も一緒にいられるのは、それは、奇妙ではあった。僕たちは僕たちのフイスキを飲み、僕は、もう一杯注いだ。「僕は、家の中を大勢にした、」ヘンリが言った。「サラーは、新しい拠り所を見付けた・・・」そして、又止めた。彼女は、何処の細道の外れにも立っていた。そこには、一瞬の間さえ、彼女を避けようとする目当ては、まず見受けられなかった。僕は思った、何故貴方は、僕たちにこうしたことをしなければならなかったのか?彼女が貴方を信仰しなかったら、彼女は、今尚生きているに決まっていて、僕たちは当然、未だに恋人だった。この境遇を不満に思って来たと覚えているのは、それは悲しくもあり、可笑しくもあった。僕は、彼女を、今やっと幸せそうに、分かち合おうとしていた。

 「僕は言った、「それで葬儀は?」

 「ベンドゥリクス、僕は、どうしていいか分からない。何かかなり手こずらせる事態になった。

202

2022年7月7日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 


 僕たちお互いの為に、為すべきことは、そこには何もなかったが、もっとフイスキを注いでくれ。僕は何処までも追及する為に、パ―キスに支払った新参者のことを思った。新参者が、確かに最後に勝った。否、私は思った、僕はヘンリを嫌ってはいない。僕は、喩え貴方が存在しようと、貴方を憎む。僕は、彼女が何をリチャドゥ・スマイズに言ったか、僕が、信じることを教えたと、僕は忘れはしなかった。僕の命運に賭けても、僕は如何ようにも口を開くわけにはいかなかっただけでなく、僕が何を投げ出したたかについて考えることも又、僕を自己嫌悪に向かわせた。ヘンリは言った。「今朝、四時に彼女は死んだ。僕はその場にいなかった。看護婦は、間に合うように僕を呼ばなかった。」

 「看護婦は、何処にいるの?」

 「彼女は、彼女の仕事を、非常にきちんとこなし切った。」彼女は、他の緊急事態を受け持ち、昼食前にいなくなった。

 「僕は、貴方に対して、役に立てたら思う。」

 「貴方が、ここに只座っているだけでいい。そりゃあ、大変な日だった、ベンドゥリクス。貴方も知っている、僕は、捌(さば)かなければならない死人を抱えたことはなかった。僕が先に死ぬものと、僕はてっきり思い込んでいた―又、サラーなら何をすべきか知っていただろうにと。もしサラーが、あの長時間、僕の側にいてくれたらなあ。考えようでは、あれは女の仕事だものー赤子を抱いているような。」

201

2022年7月6日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

「僕は、分からない、ヘンリ。僕はそうだったと思うが、僕は分からない。」僕たちは、灯りも点けずに、彼の書斎に座っていた。ガス‐火は、互いの顔が十分見える程、強くしてなかった。だから僕が唯一話すことが出来たのは、ヘンリが、彼の声の調子でしくしく泣いた時だけだった。円盤投げ選手が、暗闇から僕たち両者を狙った。「こんなことがどうして起こったのか、僕に話してくれ、ヘンリ。」

 「貴方は、僕が共有地で貴方に会ったあの夜を覚えている?あれは、三週間前、或いは四、だったか?彼女は、酷い風邪をあの夜貰って来た。彼女は、それをどうにかしようともしなかった。僕は、彼女の胸に達したそれを知りもしなかった。彼女はその種のことを、誰彼となく、打ち明けることはない」―そして彼女の日記にさえ、と僕は思った。そこには病気関連の言葉は、全くなかった。彼女は、病気になる機会を持たなかった。

 「彼女は,仕舞に彼女のベドゥに向かった、」とヘンリは言って、「だけど誰も彼女をそこにじっとさせて置くことは出来なかったし、彼女は、医者に掛かろううとしない―彼女は、彼らを信じたことがない。彼女は、一週間前、起きて、外出した。神は、何処へ、又、何故かを知っている。彼女は、彼女には運動が必要だと言っていた。僕の方が先に家に帰り、彼女がいなくなっているのに気付いた。彼女は、九時まで、家に入らなかった。初めての時より酷くずぶ濡れになっていた。彼女は、雨の中を何時間も歩き回っていたに違いなかった。彼女は、一晩中熱に浮かされ、誰かに話し掛けていた、僕が知らない誰か、それは、貴方でも僕でもなかった、ベンドゥリクス。その後、僕は、彼女を医者に診せた。彼は、一週間早く、彼女がペニシリンを受っていたら、彼は、彼女を救えただろうに、と言った。」

200

2022年7月5日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 BOOK FIVE 



僕はヘンリとその夜いた。そういうことは、初めてだった。僕は、ヘンリの家で眠った。彼らは、一部屋ゲストゥ‐ルームを持ち、サラーは、そこに(彼女の咳でヘンリに迷惑を掛けないように、彼女は、一週間前にそこに移った)いた。それで僕は、僕が愛を育んで出来た客⊶間のソウファアで眠った。僕は、その夜、いたくはなかったが、彼は、僕に請うた。

 僕たちは、僕たちの隔たりに、一本半ものフイスキを飲まなければならなかった。僕は、ヘンリが言っていたのを覚えている、「そりゃあ、不思議だ、ベンドゥリクス、人は、死んでしまうと、どれ程も妬んではいられない。彼女が、只、二時間前に死んでるだけなのに、僕は僕の側に貴方を必要とした。」

 「貴方は、嫉妬だと大げさなことを言う程のこともない。そんなことは、随分前に何もかも終わった。」

 「僕は、今、どんな気休めも要らない、ベンドゥリクス。それは、貴方もどちらも終わらない。僕は幸運な男だった。僕は、ずうっとあの年月、彼女を自分のものにした。貴方は、僕を憎みますか?」

199


2022年7月4日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳 

 電話が鳴る前に、八日が過ぎた。それは、僕が期待した日時ではなかった。それは朝の九時前だったから。そして、僕が「ハロウ、」と言った時、答えたそれは、ヘンリだった。

 「そちらはベンドゥリクス?」彼は尋ねた。そこには、何か極めて妙な彼の声があり、彼女が彼に話したのか、と僕は動揺した。

 「はい、話しています。」

 「大変なことが起こってしまった。貴方は、知って置いた方がいい。サラーが死んだ。」

 僕たちはこんな瞬間にどう世間並みに振舞ったらいいのか?僕は言った、「実に残念だ、ヘンリ。」

 「貴方は、何か今夜しているの?」

 「いや。」

 「貴方が何とかして飲みにでも来てくれたらなあと思って。一人でいるなんて、想像もつかない。」

198

2022年7月3日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

  「人は、知っていますよ、サー。それが、がっかりさせていることです。僕がずっと掴もうとすると、遠のきました。公表されている離婚ケイスの証拠を禁止する法律は、僕の訪問者の男たちには打撃でした。裁判官は、サー、名前で僕たちに触れることはなく、彼は実に頻繁に専門家たちにえこ贔屓します。

 「それは、僕には打撃じゃあなかった、」僕は同情して言った。

 パ―キスでさえ、思慕の念を目覚めさせられた。僕は、サラーの思いなしに、彼を見ることは出来なかった。僕は、仲間への希望を抱いて、地下鉄で帰宅した。鳴り続ける電話の‐ベルの消え入りそうな期待に、寛いで腰を下ろしながら、僕は、僕の連れが、又離れてゆくのを感じた。それは今日ではないだろう。五時に、僕はその番号に電話を掛けたが、僕がベルが鳴る‐音を聞く間もなく、僕は受話器を元に戻した。おそらくヘンリが早く帰って、僕は勝者で、サラーは僕を愛し、サラーは彼と別れたがっている以上、僕は今、ヘンリに話せなかった。

197

2022年7月2日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「それは、感傷的な値打ちがあるだけ。」彼は囁き返した。

 「貴方の若者は、どうしてる?」

 「少し気難しくて、サー。」

 「僕は、貴方をここで見て驚いている。仕事?本当に、貴方は僕たちの内の一人を、監視してはいないの?」僕は、閲覧‐室の埃を被った収容者―暖を求めて、屋内で少しでも帽子やスカーフを身に付けた男たち、ジョージ・エリオトゥの完備した著作を骨を折って勉強していたインド人、又、同じ山積みの本の側で、横たえた彼の頭を抱えて毎日眠っていた男――性的妬みの戯曲に関心を持つことが出来る男など考えられなかった。

 「オウいえ、サー。これは、仕事ではありません。それは、今日は僕の休みで、若い者は、今日は学校に戻っています。」

 「貴方は、何を読んでいるの?」

 「The Times Law Reportsを、サー。今日、僕はラセル事件に関っています。それは、人の任務に背景のようなものを提供します、サー。展望を開けよ。それらは、日常の取るに足りない詳細から、一つの道を選び取ります。僕は、この事件の目撃者の一人を知っていました。僕たちは前に同じ事務所にいました。ところが、彼は、今や僕が背負い切れない程、歴史に飲み込まれてしまいました。」

196

 「オウ、貴方は全く分かっていない。パ―キス。」

2022年7月1日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

僕には彼を喜ばせる意図など微塵もなく、この神も又、サラーの神で、僕は、彼女が愛すものを彼女が信じた、どのような幻であろうと、石を投げる用意はなかった。僕はあの期間、彼女の神を多少なりとも毛嫌いしたことはなかった。だから、僕の方がより強固であると、最後まで証明しなかったのか?

 或る日、何故か決まって譲渡された僕の消えない鉛筆を手にして、僕が僕のサンドゥウイチを食べていると、懐かしい声が、向こう側で、フェロウ研究者への敬意から宥めるような語調で、デスクから僕に挨拶をした。「思いの外、今は、何もかも上手く行っているんですね、サー。もし貴方が個人的侵入を許して下さるなら。」

 忘れもしない口髭を、僕のデスクの背の向こうに見た。「とても上手くいってるよ、パ―キス、ありがとう。認められていないサンドゥウイチを食べる?」

 「オウいえ、サー、私は、とても戴けません・・・」

 「さあ、おいでよ。それは、実費の上乗せだと思ってくれ。」しぶしぶ彼は一つ取り、それを広げながら、まるで彼はコインで、しかもそれが金貨だと分かったかのように、或る種の恐怖と共に目を丸くした。「それは、本場のハムだよ。」

 「僕の出版社が、アメリカから缶詰の缶を僕に送ってくれたんだ。」

 「それは、貴方、とても良かったですね。」

 「僕は、今も灰‐皿を持っているよ、パ―キス。」

僕が囁いたのは、僕の隣人が、腹立たし気に僕を見上げていたから。

195

2022年6月30日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 


 翌数日、僕は賢明になるには、大きな努力を要した。僕は目下、僕たち二人の為に励んでいた。朝、僕は、最低七百五十語を自分自身で組み立てたが、大抵、11時近くには、一千を処理し終えた。希望の効果、それには驚いている。昨年中、すっかり引きずってしまった小説は、その結末に向かって走った。ヘンリは、9時30分辺りに仕事に出かけるということを、僕は知っていたから、電話して彼女と向き合うおおよその時間は、その時と12時30分の間だった。ヘンリは、昼食の為に帰宅し出した(そういうふうにパ―キスは、僕に話した)3時以前に、もう一度彼女に電話する機会は、総じて皆無だった。僕は、一日の仕事を校正し、12時30分までつづりを確認し、そうしてその後、どんなにうんざりしようとも、期待から僕は解放された。2時30分まで、大英博物館の閲覧室で、the life of General Gordonの為の覚書を作りながら、時間内に置くことが出来た。僕は、僕自身読むことにも、覚書を引用することにも夢中になれなかった。

そこで、サラーの思いが、僕とチャイナでの宣教師暮らしの合間合間にちらついた。何故僕は、この伝記を書く為に招聘されたのか?僕はおおよそ不可解だった。彼らは、ゴードンの神を信仰する筆者を選んだ方が、より上手く事が運ぶのだろう。ハートゥームでの執拗な態度―国内での無難な行政官の憎悪を、僕は察するに容易だった―何れにせよ、机上のバイブルは、僕のものと距離があり、他の思考の世界に属した。多分、ゴードンのクライストゥ教信仰の皮肉な扱いは、スキャンダルの成功を呼び覚ますだろうということを、出版社は、半ば望んだのである。

194


2022年6月29日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

  人は、困らせること、企むことの限界に向かって獲得する。僕は僕の耳のその訴えで、続けられなかった。僕は、彼女の堅く、結び目の多い髪の彼女にキスして、遠ざかりながら、僕は、僕の口の隅で、彼女の唇が滲んで塩辛いのに気付いた。「神は貴方を祝福する。」彼女は言い、僕は、それは、ヘンリ宛の彼女の手紙で、彼女が横線を引いたことだと思った。その人がスマイズでさえなければ、人は、他の人のグドゥ‐バイにグドゥ‐バイと言い、彼女に彼女の祝福をお返しに繰り返した時、それは無意識の行いだった。しかし教会を後にして振り返りながら、蝋燭の‐灯の縁のそこに、乞食が暖を求めて入っているような体を丸めた彼女を見ながら、僕は、神が彼女を祝福すること、又、神が彼女を愛することを想像出来た。僕は、僕たちの物語を末尾に向かって書き始めた時、嫌悪の記録を書いていると思ったが、何故か、嫌悪は置き忘れられ、ぼくが知っている全ては、彼女の過ちであり、彼女の不確実性であるにも関わらず、そうなる。彼女は、大多数より好ましかった。僕たちの内の誰かは、彼女を信じる。彼女は、彼女自身をそうしたことはなかった。

193

2022年6月28日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「貴女は、疲れているんだね?」僕は聞いた。

 「とても疲れた。」

 「貴女は、あのように僕から急いで離れるべきではなかった。」

 「私が急いで距離を置いたのは、それは貴方からではなかった。」彼女は、彼女の肩を動かした。「どうか、モーリス、もう行って。」

 「貴女は、ベドゥに入っていなきゃいけない。」

 「私は、直ぐにそうするわ。私は、貴方と一緒に帰りたくない。私は今ここで、グドゥ‐バイを言う方がいいの。」

 「貴女はずっとここにいない、と約束するね。」

 「私は約束する。」

 「じゃあ、貴女から僕に電話を掛ける?」

 彼女は頷いたが、彼女の手を見下ろすと、それは、何か何処かへ投げられた物のように、彼女の膝の中、そこにあった。

彼女が彼女の指を交差させたのを、僕は見た。僕は怪しんで彼女に聞いた。「貴女は、僕に真実を話している?」僕は、僕のもので彼女の指を解いて言った。「貴女は、又、僕から逃げようと思っていない?」

 「モーリス、親愛なるモーリス、」彼女は言い、「私は、その強さを貰わなかった。」

彼女は、子供がするように、彼女の目の中に握り拳を押し付けながら泣き始めた。

 「私は、すまないと思っているの、」彼女は言い、「今直ぐ何処かへ行って、どうか、モーリス、ほんの少しだけ慈悲をちょうだい。」

192

2022年6月27日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 子供たちは睡眠中、彼らに何を囁くかに左右されると思われるが、僕もサラーに囁き始めた。言葉が催眠状態で彼女の無意識の心に落ちるよう願いながら、彼女を起こさないよう十分声を落として。「僕は、貴女を愛している。サラー。」僕は囁いた。「誰も、前にこれ程貴女を愛した者はいなかった。僕たちは、幸せになろうね。ヘンリは、彼のプライドゥに関らない限り気にもせず、プライドゥは、直ぐに甦る。彼は、貴女の居場所を掴む為に、新しい習性を探すだろう―多分彼はギリシャのコインを集めるだろう。僕たちは他所へ行こう、サラー、僕たちは他所へ行こう。もう誰もそれを止められない。貴女は、僕を愛している、サラー。」僕は新しいスートゥケイスを買うべきかどうか迷い始めたように、僕は冷静そのものだった。その時、彼女は咳き込みながら目覚めた。

 「私は、眠ってしまった。」と彼女が言った。

 「貴女は直ぐに家に帰らなきゃあ。貴女は、風邪をひいている。」

 「それは、家じゃないの、モーリス。」彼女は言った。「私は、ここから他所へ行きたくない。」

 「それは風邪だよ。」

 「私は、風邪のことはどうでもいいの。それに暗いわ。私は暗闇の中でなら、何でも信じられるの。」

 「只、僕たちのことを信じればいい。」

 「それは私が言おうとしたことよ。」彼女は、又目を閉じ、塑像を見上げながら僕は勝利と共に考えた。殆ど彼が生きているライヴァルかのように、お前は見ている―これが勝つという口論だ、そしてそっと彼女の胸を十文字に僕の指を動かした。

191

2022年6月26日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「私も。」僕がそれに不慣れな者であれば、僕はそれを聞き取りようもない程、彼女は酷く低く話したが、それは、パディントン・ホテルでの最初の愛の‐確認から、僕たちの結び付きの全てを貫いて響き渡ったサイン入りの調べのようだった。「私も」孤立、悲しみ、落胆、喜びと絶望、全てを分かち合おうとする要求故の。

 「お金は、乏しくなるだろう。」と僕は言った。「しかし、そんなに乏しいという程でもない。『a Life of Gneral Gordon』をやることを依頼され、その前金は、三か月間、不自由なく、僕たちの暮らしを維持するのに十分だ。その時までに、小説に手を付け、それに関する前金が入る。本は両方共、今年出るだろうから、それで、次の現金まで、僕たちはやって行ける。僕は、貴女と一緒にそこで仕事が出来る。貴女なら分かるでしょ、こうなればどんな時も、僕は乗り越えてみせるよ。僕は、延々と大衆的成功のままだろうし、貴女は、それを嫌がり、僕はそれを避けようとするだろうが、どうせ物を買い、浪費し、それも又、僕たちが一緒であれば、楽しからずやだろう。

 ふと、僕は彼女が眠っていると気付いた。彼女の高揚によって疲れ、彼女は、タクシで、バスで、公園の‐座席で、あれ程数ある機会のように、僕の肩で熟睡した。僕はじっと座り、彼女の為すがままにした。暗い教会のそこには、彼女を妨げるものは何もなかった。聖母マリアの周りに、蠟燭が揺れ、そこには他の誰もいなかった。彼女の重みがかかる僕の上腕の痛みが、ゆっくりと増してゆくことは、僕が今までに知った最高の喜びだった。

190 

2022年6月25日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「何が貴方にあったの、モーリス?貴方は、この前の昼食の時のようじゃないわ。」

 「僕は、心を痛めた。貴女が僕を愛していると気付かなかった。」

 「どうして私がそうなんだと思うの?」彼女は尋ねたのに、彼女は、僕の手を彼女の膝の上で弄んだ。僕は次に、パ―キスさんが、どうやって彼女の日記を盗んだか、彼女に打ち明けた―僕は、もはや、僕たちの間にどんな嘘も、望まなかった。

 「それは、していいことじゃなかったわ。」彼女は言った。

 「良くないわ。」彼女は再び咳き込み、それから疲れて、彼女は彼女の肩を僕に傾けた。

 「僕の愛しい人、」僕は言い、「もう、何もかも終わりだよ。待つこと、を言っているんだよ。僕たちは一緒に遠くへ行くんだ。」

 「いいえ、」彼女は言った。僕は、僕の腕を彼女に回し、彼女の胸に触れた。「これが、僕たちがもう一度始める場所だよ、」僕は言った。僕は酷い恋人だった、サラー。そうしたのは、それは不安だった。僕は貴女を信用していなかった。僕には、貴方が十分わかっていなかった。しかし今は、僕は安心している。」

 彼女は何も言わなかったが、彼女は尚も、僕に凭れていた。それは、承諾に似ていた。僕は言った。「どんなにそれがある方がいいか、僕は貴女に言いたい。家に戻って、二、三日ベドゥに横になるといい―そんな風邪をひいていたのでは、貴女は旅行もしたくない。僕は毎日電話をして、貴女がどんな具合か見よう。貴女が十分よくなれば、僕は真っ先に駆け付け、貴女が荷造りをするのを手伝おう。僕たちは、ここに居てはいけない。僕にはドーセトゥにいとこがいて、彼は僕たちが使える空いたカティジを持っている。僕たちは、そこに二、三週滞在し、休息しよう。僕は、僕の本を聞き終えられるだろう。僕たちは、その後弁護士に面会出来る。僕たちは休息を必要としている、僕たち二人共。僕は疲れ、貴方なしでいることの断罪に僕は病んでいる、サラー。」

189


2022年6月24日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 物語の結末を知った今、僕は何年でも待つことが出来た。僕は、寒くて、濡れてはいても実に幸せだった。そこにちらついている供物台や塑像に向かって、慈愛の眼差しで見ることさえ出来た。彼女は、僕たちを二人共愛している、と僕は思ったが、そこに、想像と一人の男の間の不一致があるべくしてあるにしても、誰が勝とうとしているか、僕には分かる。彼女の腿に僕の手を、或いは、彼女の胸に僕の口を置けたらいい。彼は、供物台の後ろに閉じ込められ、彼の弁明を訴えようにも、身動き出来なかった。

 突然、彼女は咳き込み始め、彼女の手で彼女の方に押さえた。彼女は、苦しんでいると納得し、、そして僕は、苦しむ彼女を一人のままにして置くことが出来なかった。僕は近付き、彼女の側に座って彼女が咳をしている間、彼女の膝に僕の手を置いた。僕は思った。単に誰かが触れるだけで、それは治せることもあった。発作は治まった時、彼女が言った。「どうか、貴方は、私を放って置いてくれない?」

 「僕は、貴女を放って置けない。」と僕は言った。

188

2022年6月23日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

僕は既にゲイムに勝っていると思い、僕の生贄に対して、確かな哀れみを感じる余裕が出来た。僕は彼女に言いたかった、心配しないで、心配しなくていい、何処にも恐れるものは何一つなく、僕たちは二人で直ぐに幸せになろう。悪夢は、殆ど乗り越えた。

 そして次に彼女を失った。僕は、確信し過ぎ、その上、僕は彼女に余りにも寛大なスタートゥを許した。彼女は、僕の二十ヤードゥ先で、道路を渡り(階段を上っている内に、又、僕は遅れをとった)、路面電車が間に割り込んで走り、彼女は行ってしまった。ハイ・ストゥリートゥを下って左折したのか、或いはパーク・ロウドゥを下った先を直進したのかも知れなかったが、僕は彼女を見ることは出来なかった。僕は余り心配しなかった―僕が彼女を今日探せなかったら、僕は次にする。今、僕は全く馬鹿げた誓いの物語を理解し、今、僕は彼女の愛を確信した。僕は彼女を安心させられる。二人が愛し合えば、彼らは一緒に眠る。それは数学の公式で、人の経験によって、試され、証明された。

 ハイ・ストゥリートゥのその場所には、A.B.Cがあり、僕は、それを試みた。彼女はそこにはいなかった。次に、僕は、パークロウドゥの隅の教会を思い出し、僕はそこに来たことは、直ぐに分かった。 僕は辿った、彼女が聖母マリアの柱状の、酷く醜い塑像に近い通路側の一つ、そこに座っていたことは、十分間違いなかった。彼女は祈ってはいなかった。彼女は、彼女の目を閉じて、そこに座っていただけだった。僕は只、塑像の前のキャンドゥルの灯で彼女を見た。その場所辺りは酷く暗かったから。僕は、パーキスさんのように彼女の後ろに座り、待った。

187

2022年6月22日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

僕の戦時の懐中電灯を、僕の手に持って来ていればなあ。北側の家に着くのに、僕なら八分も時間がかかってしまうから。ドアが開き、サラーが外に出た時、僕は渡ろうとして、ちょうど舗道から離れ、歩を進めようとしていた。僕は幸せと共に思った。僕は今彼女を自分のものにしている。夜が尽きる前に、僕たちは、又一緒に眠るのは当然だということが、絶対の確信と共に、僕は分かった。そして、それは一旦、新たに始められたからには、何事があろうと構わなかった。僕は、以前、彼女を全く知らず、今まで僕は、彼女をそこまで深く愛したことはなかった。僕たちは、知れば知る程更に、僕たちは愛し合う、と僕は思った。僕は、信頼の領域に戻った。

 彼女は、霙を突いて広い道路を横切り、僕を見る為に、随分急いでいる様子だった。彼女は、左に曲がり、急いで歩き去った。僕は思った、彼女は、何処か座る場所を必要とするだろう。それに僕は彼女を罠にかけた。僕は、二十ヤードゥ後ろを付いて行ったが、彼女は、決して後ろを振り返らなかった。彼女は、共有地の端を通った。彼女は地下鉄に向かっているかのように、池や爆弾投下の本屋を過ぎた。さて、もしそれが必要だったら、混み合った列車の中で、彼女に話すことも良しとした。彼女は、地下鉄⊶階段を降り、出札口に向かったものの、彼女は、彼女の手にバッグを抱えていなかったので、彼女は、ポキトゥの中のどちらにもざら銭がないと思った―三半ペンスさえなく、それでは、深夜まで、あちこち旅に出ることも出来なくなりそうだった。階段を再び上り、路面電車が走る道を横断した。或る俗事は、止められてしまったが、もう一つは、明らかに、心の中に現れた。僕の勝ちだった。彼女は、恐れたが、彼女は、僕を恐れたのではなかった。彼女は、彼女自身を恐れ、僕たちが会った時、何かが起ころうとしていた。

186

2022年6月21日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「貴女は、僕を愛している。」

 「どうして決め付けるの?」 

 「深く考えないで。僕は、僕と一緒に遠くへ行くよう貴女に頼みたい。」

 「でも、モーリス、私は、電話でも上手に答えられるわ。答えは、いいえ。」」

 「僕は、電話で貴女に触れることは出来ない、サラー。」

 「モ-リス、私の愛しい人、どうか。貴方は来ないと約束して。」

 「僕は出掛けるよ。」

 「聞いて、モーリス。私は、酷く具合が悪いと思うの。」

 「それに今夜は痛みが酷いの。私は起きたくない。」

 「貴女が、そうする必要はない。」

 「私が起きて、服を着て、家を出ることにします、もし貴方が約束しないのなら・・・」

 「このことは、サラー、僕たち二人には風邪より大切だ。」

 「どうか、モーリス、どうか。ヘンリが間もなく家に戻るの。」

 「彼をいさせるといい。」僕は、電話を切った。

 それは、僕が一か月前ヘンリに会った時より、悪天候の夜だった。この時、それは雨の代わりに霙(みぞれ)だった。それは、雪への途中で、縁取られた滴りが、誰かのレインコウトゥのバトゥンホウルを抜けて、中へとその道を切り取るかのようだった。それは、共有地のラムプを覆い隠した。だから、それだけで、走るのは難しく、僕の足では、とうてい速く走れる筈がない。

185

2022年6月20日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「かえっていいじゃないか。」

 「馬鹿なことを、モーリス。私は具合が悪いと言う意味よ。」

 「それなら、貴女は僕を一目でも見る方がいい。何が気懸かりなの、サラー?」

 「オウ、何も。性質の悪い風邪なの。聞いて、モーリス。」彼女は女性家庭教師のようにゆっくりと、彼女の言葉の間隔を開け、それは僕を怒っていた。「どうか来ないで。私は貴方を見ることは出来ない。」

 「僕は、貴女を愛している、サラー。だから行くよ。」 

 「私は、ここにいられなくなるわ。私が起きます。」僕は思った、共有地を走って横切れば、そりゃあたった四分もあればいいだろう。彼女は、その時間内に服を着ることは出来ない。「僕はメイドゥに誰も中に入れないように話すつもりだ。」

 「彼女は、解雇の体を成さない。それで僕が解雇されざるを得ないようにする、サラー。」

 「どうか、モーリス…お願いだから。私は、長い間貴方に何もお願いしたことはないわ。」

 「一度だけの昼食を除いて。」

 「モーリス、私はあまり体の調子が良くないの。私は、只今日だけは、貴方を見られないの。来週・・・」

 「そこには、恐ろしい程何週間もあるようだよ。僕は貴女を今夜見たい。」

 「どうして、モーリス?」

184

2022年6月19日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

僕は今が行動の時だ。ダンスタンなんか、関係なかった。空襲長官も関係なかった。僕は電話に向かい、彼女の番号を回した。

 メイドゥが出た。僕は言った。「こちらは、ベンドゥリクスです。僕は、マイルズ婦人に話しがありまして。」彼女は、そのままでいるよう僕に話した。僕がサラーの声を待っている時、僕は長距離レイスの終盤であるかの如く、僕は息切れを覚える程だったのに、

届いた声は、マイルズ婦人は、お出かけです。と僕に話すメイドゥのものだった。何故僕は彼女を信じなかったのか、分からない。僕は、五分待まって、それから僕のハンカチフで送話口を覆うように、きっちり広げ、僕は、もう一度掛け直した。

 「マイルズ氏は、いらっしゃいますか?」

 「いいえ、サー。」

 「それなら、マイルズ夫人に話せますか?こちらは、サー・ウイリアム・マロックです。」

 「サラーが返事をするまでに、そこに、単なるほんのちょっとした間があった。「今晩わ、こちらは、マイルズの妻です。」

 「僕だよ、」僕は言い、「僕は貴女の声が分かる、サラー。」

 「貴方・・・と私は思いはしたわ。」

 「サラー、」僕は言い、「僕は、貴女を見る為に出掛けるつもりだ。」

 「いえ、どうしてもだめ。聞いて、モーリス。私はベドゥにいるの。今そこから私は話しているの。」

183

2022年6月18日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 BOOK FOUR



僕は、もう少しも先を読めなかった。繰り返し繰り返し何度も、一説が、僕を酷く傷付ける時は、僕は飛ばして読んだ。僕はダンスタンのことを見付けようとしながら、極力それを見付けたくなかった。しかし今やっと、先を読み進めていた、それは、歴史の未確定の日付に似て、時を追ってかなり後迄、滑るように引き返した。それが、目下の重大事という訳でもなかった。僕が共に残された記載は、たった一週間古いだけの記載だった。「私にはモーリスが欠けている。私には、普通の堕落した人間の愛情が欠けている。」

 それなら、僕は貴方に上げられる。と僕は思った。僕は、何か他の類の愛情のことは分からないが、もし貴女が思うのなら、貴方は間違っているということの全てを、僕は不意にした。そこには、僕たち二人の暮らしの為に十分残されている。そして僕は、彼女が彼女のスーツケイスを一杯にしたあの日のことを考えた。幸福が、間近に迫っていることも知らず、僕はここで仕事をしながら座っていた。僕は知らなくて良かったし、僕が知ったとしても、僕は嬉しかった。

182

2022年6月17日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

私は疲れ、私はもう何の苦しみも欲しくない。私は、モーリスが欲しい。私は、普通の堕落した人間の愛情が欲しい。親愛なる神よ、私は貴方の苦しみを貰いたいのですが、今は、それが欲しくはありません。暫くそれを持ち去って、他の時にそれを与えて下さい。

2022年6月16日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 1946・2月12日

 二日前、私はあれ程の平穏と静けさと慈しみの感覚を持った。暮らしは、又幸せの方向に向かっている。しかし昨夜、最上階でモーリスに会うために、長い階段を上っている夢を見た。私が階段の最上階に着いた時、私たちは愛を育むことにしていたので、私はまだ幸せだった。私が来た、と彼に呼び掛けたが、答えたそれは、モーリスの声ではなかった。道に迷った船に警告する霧笛のように、大声で伝え、私を怯えさせたそれは、見知らぬ人のものだった。私は考えた、彼は、彼のフラトゥを貸し、いなくなってしまった。彼が何処にいるのか、私は知らない。そして再び階段を降りようとすると、私の腰より水位が上がり、ホールは、霧でどんよりしていた。その時、私は目覚めた。私は、もう内心穏やかではなかった。私は只、過ぎた日に何時もそうであったように、彼が欲しい。私は、彼と一緒にサンドゥウイチを食べていたい。私は、バーで彼と一緒に飲んでいたい。

180

2022年6月15日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

私が貴方を愛する前と同じくらい有り余る程、モーリスを愛しましたか?それとも、私が何時も愛したのは、それは、実は貴方でしたか?私が彼に触れた時、私は貴方に触れましたか?私が先に彼に触れなかったら、私は貴方に触れることが出来ましたか?私は、ヘンリにも、誰にも触れもしなかったので、彼に触れました。そして彼は私を愛し、彼は、他のどんな女にもしなかったように、

私に触れました。彼が愛した、それは、私だったのか、それとも貴方?貴方が、好き嫌いをする物事を、私の中で、彼が嫌がりました。彼はそうとは知らず、何時も貴方の側にいました。貴方は、私たちの別離を望みましたが、彼も又それを望みました。彼は、彼の怒りと彼の嫉妬を抱えたまま、それに向かって動きました。彼は、私に有り余る程の愛情を注ぎ、ですから、私も、彼に有り余る程の愛情で答え、間もなく、貴方なしで、私たちが終わろうとする時、そこには何一つ残されていなかったのです。私たち二人の為に。私は一時(いっとき)有りもしない愛情を費やしながら、ここからあちらへ、この男からあれへとそれを遣り繰りしながら、命ある時を握り潰しました。それなのに、その最初の時でさえ、パディントン近くのホテルで、私たちは、私たちが持つ全てを、使い果たしました。お金持ちに貴方が諭すように、私たちに浪費することを勧めながら、貴方はそこにおられた。ですから、それは、或る日、この貴方の愛以外、私たちは、何一つ残っていなくても構わなかった。けれど、貴方は、私に大変よくして下さる。私が、痛みをと請う時、貴方は安らぎを授け、彼にもそれを上げて下さい。彼に私の安らぎを上げて下さい―彼は、それをもっと必要としています。

179

2022年6月14日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

私は、一瞬奇形ではないかと危ぶみ、私は、血の気が引く思いがした。そして彼は、静かに座り、彼にキスを私にさせた。そこで私は、痛みにキスをしています、幸せが決して貴方のものにならない限り、痛みは貴方そのものだと思いました。私は、貴方の痛みに入り込んで、貴方を愛します。私は、その肌に殆ど金気と塩気を味わえ、私は感心して、何ていい味わいでしょう貴方は。貴方は、幸せと共に私たちを殺しても良かったのに、貴方は、痛みの中にある貴方と共に、私たちを生き永らえさせます。

 私は不意に動いて離れる彼を感じ、私は、私の目を開けた。彼は言った。「グドゥ‐バイ。」

 「グドゥ‐バイ、リチャドゥ。」

 「戻って来ないで、」彼は言い、「僕は、貴方の哀れみに耐えられない。」

 「それは、哀れみじゃないわ。」

 「僕は、自信の愚かさに輪を掛けてしまった。」

 私は、去った。あれでは、そのままいても何もいいことはない。私は、彼があんな風に痛みの印を身に付けて、あちこち持ち歩きいているのを、私たちが美と呼ぶものを、この鈍感な人間の代わりに、毎日鏡の中に貴方を見ているのを羨んだ、と彼に言い出せなかった。


1946・2月10

 私は貴方に書く、或いは話す必要性を感じない。それは、少し時を遡って、貴方宛てにどのように手紙を始めるかであり、私は自らを恥じて、私はそれをすっかり引き千切った。それが私の心の中に届く前に、何もかも知っている貴方に手紙を書くこと、それが酷く馬鹿げたことのように思えたから。

178

2022年6月13日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「御免なさい。」私は言った。

 「僕がその全てを遠ざけるくらいなら、僕はもっと貴方を愛します。僕が貴女による子供を設けたら、僕は、彼らを貴女に悪の道に導かせます。」

 「貴方は、そんなことを言ってはいけないわ。」

 「僕は、お金持ちの男ではない。僕の教義を捨てることを申し出られもしますが、それは単なる餌に過ぎません。」

 「私は、他の誰かと恋愛中です、リチャドゥ。」

 「もし貴女があの馬鹿げた誓いによって、制約を感じているのなら、貴女は、手放しで彼を愛せない筈だ。」

 私は、心侘びしく言った。「私はそれを破る為に、私のべストゥを尽くしたけれど、それは上手くは行かなかった。

 「貴女は僕を馬鹿だと思いますか?」

 「何故、私が?」

 「こんな物を持った男を貴女に愛して欲しいと願っているから。」彼は、彼の傷んだ頬を私の方に向けた。「貴女は。神を信じる、」彼は言い、「その方が楽だから。貴女は奇麗だし。貴女は、どんな欠点も持たない。それなのに、こんな物をたかが子供に付けた神を、何故、僕は愛さなければならない?」

 「親愛なるリチャドゥ、」私は言って「そこには、何もそんなに酷く傷んだ所はないわ・・・」私は、私の目を閉じ、その頬に私の口を置いた。

177

2022年6月12日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「はい、リチャドゥ、勿論、」私は言い、「そうでなければここにはいません。」

 「貴女は僕と結婚しますか?」彼は尋ね、私がもう一杯お茶を飲みたいかどうか、聞いているかのように、彼のプライドゥは、彼にそう尋ねさせた。

 「ヘンリは、反対するかも知れない。」私は言った、それを一笑に付そうとして。

 「何ごとも、貴女にヘンリの下を去らせはしないでしょ?」そして私は腹立たしく思った。喩え、私がモーリスの為に彼の下を去らなかったにしても、何故貴方の為に彼の下を去るよう期待されなければならないの?

 「私は結婚しています。」

 「そんなことは、僕にも貴女にも大した意味のあることではない。」

 「オウそうなの、それもそうね。」私は言った。私は何れ彼に話そうと思っていた。「私は、神を信じるわ、」私は言い、「そして安息そのものを。貴方は私に教えて来た。貴方とモーリスが。」

 「僕には分からない。」

 「貴女は何時も、牧師が貴女に信じないように教える、と言った。ところで、それじゃあ、どっちみち上手く行かない。」

 彼は彼の美しい手を見た―彼はその左側を自分の物とした。彼は、随分ゆっくりと「僕は、何を貴方が信じても気にしません。貴女は、僕が気にするその馬鹿げた手品の鞄を、丸ごと信じても構わないんだよ。僕は貴女を愛している、サラー。」

176

2022年6月11日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 私は、貴方の釘の痛みの心構えは整っていても、地図とミシュラン・ガイドゥの24時間を、私は耐えられない。親愛なる神よ、私はまるで機能しない。私は今尚、意気地なしの格好つけ。私をこの状態の外に追い遣って下さい。


1946・2月6

 今日、私はリチャドゥと空恐ろしいシーンを演じた。彼は、クライストゥ教会の矛盾について、私に話していた。そして私は、一生懸命聞こうとしていたのに、物の見事に成功していなかった。その内、彼はそれに気付いた。彼は突然私に言った。「貴女は、何をしにここに通っているの?」そして、私は自分自身を確認出来る前に、私は言った。「貴方を見る為に。」

 「僕は、貴方は学ぶ為に来ていると思っていました。」と彼は言い、私は彼に、それが私が言いたいことだと話した。彼は私を信じていない、と私には分かった。それに、彼のプライドゥは、傷付くだろうし、彼は怒るだろう、と私は思ったのに、彼は全く怒らなかった。彼は、彼の木綿更紗の椅子から立ち上がって近付き、彼の頬を見せない側の木綿更紗の椅子に、私と一緒に座った。彼は言った。「毎週貴女を見ること、それは、僕には多くを意味する。」その時、彼は私に恋をし始めている、と私は知った。彼は、私の手首に彼の手を置き、尋ねた。「貴女は、僕が好きですか?」

175

2022年6月10日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

私が耐えられない、それは彼らの痛みだ。私の痛みは、上へ上へと募らせて下さい。が、彼らのは止めて下さい。親愛なる神よ、暫く貴方が貴方の十字架から降りられるのであれば、代わりに私の身を起こして下さい。もし私が貴方のように苦しめば、私は貴方のように癒せるでしょう。


1946・2月4

 ヘンリは、仕事を離れ一日を手に入れた。私は、何故か知らない。彼は私に昼食を御馳走し、私たちは、ナショナル・ギャラリへ行って、速い夕食を摂り、劇場に向かった。彼は学校を休行かせず、子供を外に連れ出している片親のようだった。それにしても、彼の方が子供だった。


1946・2月5

 ヘンリは、私たちのために春に海外での休日を計画している。ルワーのお城と、爆撃下のドイツの士気に関する報告書を作成出来るドイツとの間で、彼は彼の心を決め兼ねている。私は、春になって欲しくない。そこへ私はもう一度行く。私は望む。私は望まない。もし私が貴方を愛せたら、私はヘンリを愛せたでしょう。神は、男を造られた。彼は、彼の乱視眼を持つヘンリ、彼の痣を持ったリチャドゥ、モーリスだけはなかった。私がハンセン病患者の痛みを愛せたら、私はヘンリの退屈さを愛せないのか?何れにせよ、私は、彼がここにいたら、ハンセン病患者に背を向けようとする、私がヘンリと隔たり、我が身を閉ざすに連れ、と私は思う。私は、何としてでも劇的であってほしい。

174

2022年6月9日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「私は、貴方を置いて行きはしないわ。私は約束します。」守ろうとするもう一つの誓い、そして私がそれを形にした時、私は、これ以上彼と一緒にいることに、耐えられなくなった。彼は勝ち、モーリスは敗れた。そして私は、彼の勝利故に、彼を憎んだ。私は、彼ゆえに、モーリスを憎むだろうか?私は二階へ上がり、手紙を極小さく千切り、誰にも二度とそれを繋ぎ合わせられないようにして、私は、荷物を解き始めるには、疲れ過ぎていた為に、スートゥケイスをベドゥの下に蹴った。そして私はこれを埋めて行った。モーリスの痛みは、彼の書いたものの中に詰まっている。彼の文を通して疼くその神経が、貴方には聞こえる筈です。さて、もし痛みが一人の小説家を作られるのなら、私も又、モーリスに教えられています。私は、一度だけでも貴方に話せたらと思います。私はヘンリに話せない。私は誰にも話せない。親愛なる神よ、私に打ち明けさせて下さい。


 昨日、十字架像、安物の不格好なものを買った。私は速くそれをしたくなったから。それを頼む時、私は頬を赤らめた。誰かが、店の中で私を見たかも知れない。彼らは、ゴム製品店のように、ドアの中に曇りガラスを嵌めるべきである。私は私の部屋のドアに鍵を掛けると、私は、宝石箱の底からそれを取り出せる。祈り手、それは私、私、私ではない、と私に分かっていたらと思う。私を救って下さい。私をもっと幸せにして下さい。私を、私を、私を直ぐにでも死なせて下さい。 リチャドの頬のあの悍(おぞ)ましい痣について私に考えさせて下さい。涙が流れるヘンリの顔を、私に見せて下さい。私に我を忘れさせて下さい。親愛なる神よ、私は愛そうとして、それをこんなに支離滅裂にしました。もし私が貴方を愛せたら、彼らをどんな風に愛したらいいのか、私にも分かったでしょう。私は、伝説を信じます。私は、貴方が生まれたことを信じます。私は、貴方が私たちの為に死んだ事を信じます。私は、貴方が私達の神であることを信じます、私に愛すことを教えて下さい。私は、私の痛みを気にしません

173

2022年6月8日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

  「そりゃあ、時には立ち止まってもいいのよ。」私は言った。「どんな結婚でも。私たちはいい友達同士だわ。」そのくらいが、私の逃げ口上の限界であるべきだった。「彼が同意した時には、私は彼に手紙を出そう。私が何をしようとしていたのか、彼に打ち明けよう。私は家から出て行こう。何れにせよ、彼は、彼のきっかけを見失い、私は未だここにいて、ドアは、再びモーリスを遮断した。只、私は、今回は神に責任を負わせることは出来ない。私は自らドアを閉ざした。ヘンリは言った。「僕は、お前のことを、友達のようには思えない。お前は、友達なしでもやって行ける。」そして彼は、鏡から振り返り、私を見て、彼は言った。「僕を一人にしないで、サラー。もう二、三年我慢して。僕も努力する・・・」それにしても彼が何を努力しようとしても、 オウ、そりゃあ、私が彼の下を何年も前に去っていれば、私達どちらにも、もっと良かっただろうに。しかし、私は彼がそこにいる時には、私は彼に打撃を与えられない。彼の惨憺が、どのようであるかを、私は見てしまったから、今や、彼は何としてでもそこにいるだろう。

 「私は、貴方を置いて行きはしないわ。私は約束します。」守ろうとするもう一つの誓い、そして私がそれを形にした時、私は、これ以上彼と一緒にいることに、耐えられなくなった。彼は勝ち、モーリスは敗れた。そして私は、彼の勝利故に、彼を憎んだ。私は、彼ゆえに、モーリスを憎むだろうか?

172

2022年6月7日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「お前がいなければやって行けない。」彼は言った。オウそう。貴方には出来る。私は異議を唱えたかった。それは不便になるでしょうが、貴方には出来る。貴方は貴方の新聞を、一度変えたけれど、貴方は直ぐにそれに慣れてしまったわ。これは言葉、型通りの夫の型通りの言葉で、それは全く何事も意味しない。それから私は、鏡の中の彼の顔をまじまじと見て、

 「ヘンリ、」私は言った。「何が気に入らないの?」

 「何も。僕はお前に話した。」

 「私は貴方を信じない。何か役所であったの?」

彼は馴染みのない辛さと共に言った。「何がそこで起こってしまったの?」

 「ベンドゥリクスが、何らかの方法で貴方の心を弄んだの?」

 「勿論、違う。どうして彼に出来るの?」

 私は彼の手を避(よ)けたかった。彼はそれをそこに置いたままにした。私は、彼が次に何を言い出そうとしているのか、不安に思った。私の分別の上に耐え難い重荷を広げている。モーリスは、今は家にいるだろう。もしヘンリが入って来なかったら、五分で彼の下に行ったのに。惨憺の代わりに、私は幸せを目の当たりにしただろうに。貴方は惨憺を目の当たりにしなければ、貴方はそれを信じない。貴方は離れた所から、誰にでも苦痛を与えられる。ヘンリが言った。「僕の愛しい人よ、僕は、多くの夫のようではなかった。」

 「私は貴方が何が言いたいのか分からない。」私は言った。

 「僕はお前には退屈だ。僕の友人たちは、退屈している―僕たちはもう―お前も分かっている―どんな事も一緒にはやっていけない。」

171

2022年6月6日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 私は彼の為に暖炉に火を点けた。私は言った。「私は、少々ヴェンガニンを手に入れて来ます。」

 「心配しなくていい。」彼は言った。「もうそれは良くなっている。」

 「どのような一日を、貴方は過ごしたの?」

 「オウ、殆どいつもと同じ。ちょっと疲れた。」

 「貴方の昼食の約束は誰だったの?」

 「ベンドゥリクス。」

 「ベンドゥリクス?」私は言った。

 「何故、ベンドゥリクスじゃいけない?彼は、彼のクラブで昼食を僕に御馳走した。」

 私は彼の背後に回って彼の額に私の手を当てた。永遠に彼の下を去ろうとする寸前にしていることにしては、それは妙な具合だった。私たちが結婚したての頃、彼は何時も私にそういう風にしてくれていた。それは何も思うように行かなくて、私は、恐ろしく神経過敏な頭痛持ちだった。私は只、一瞬その症状が改善される振りをしようとするのを忘れた。彼は、彼自身の手を上げて、彼の額に強く押し付けて、私のを押さえた。「僕はお前を愛している。」彼は言った。「お前はそれが分かっているの?」

 「そうね。」私は言った。私は、そんなことを言うなんて、彼が厭になりもするわ。それじゃあ要求のようだわ。私は思うのだけれど、もし貴方が本当に私を愛していたら、他の傷付けられた夫のように、貴方は振舞うに決まっているわ。貴方は怒りを覚え、そうして貴方の怒りは、私を自由にするのに。

170

2022年6月5日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

その時私は、Loveと記入したかったが、その言葉は、それは本当だと分かっていても、不適当な響きがあった。私は私の使い古した方法でヘンリを愛した。

 私は封筒に手紙を入れ、非常に個人的とそれに記した。誰かの面前でそれを開かないようヘンリに警告するだろう、と私は思った―彼が友人を家に連れて来ても、私は彼の自尊心を傷付けたくなかったから。私がスートゥケイスを引っ張り出して詰め始めるやいなや、私は不意に思った。私は、手紙をどこに置いたかしら?私はそれをすぐに見付けたものの、その時私は考えた。私はホールにそれを置くのを忘れていて、ヘンリは待つ、家に帰ろうとして私を待つ、と私の慌て振りを思う。そこで私は、ホールにそれを置く為に階下に下りた、私の荷造りは殆ど終わった―片付けるのは、イヴニングドゥレスだけ、それにヘンリは、後三十分は帰って来ない。

 私が、まさにホール・テイブルの午後の郵便物の一番上にそれを置いたその時。私はドアに入るキーの音を聞いた。私はもう一度それをさっと取り上げた。私は訳が分からない、するとその時、ヘンリが入って来た。彼は具合が悪く、疲れ切っているようだった。彼は、「オウ、お前は何でこんな所にいるの?」といっれ、私の横をさっと擦り抜け、彼の書斎に入った。私は一瞬たじろぎながらも、直ぐに従った。私は、今彼に私の手で手紙を渡そうと思い付いた。その内もっと思い切りが必要になって来る。私がドアを開くと、暖炉の側の彼の椅子に座っている彼を私は見た。彼は明かりも付けず、それに泣いていた。

 「一体どうしたのヘンリ?」私は彼に尋ねた。彼は言った。「何も、僕は酷い頭痛がして、それだけ。」

169

2022年6月4日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

私は、共有地を歩きながら神に言った。貴方が実在するのかどうか、或いは貴方は実在しないのかどうか、貴方が二度目のチャンスをモーリスに与えるのかどうか、或いは私は全てのことを予測したのかどうか。多分これは二度目のチャンスになる、と私は。彼に縋(すが)った。私は彼を幸せにするつもりだ。それは、私の二つ目の誓いです。神よ、そして貴方に出来るのなら私を止めてみなさい、貴方に出来るのなら、私を止めてみなさい。

 私は、私の部屋へと階段を上り、私はヘンリ宛に書き始めた。ダーリンヘンリ、私は書いたものの、それには偽善的響きがあった。最も親愛なる方では、嘘になった。つまり、それでは知人のようになりかねなかった「親愛なるヘンリ」そこで「親愛なるヘンリ」、と私は書き、「これは貴方にはかなり衝撃になるのではないか、と心穏やかではありませんが。この五年、私はモーリス・ベンドゥりクスと恋愛関係にありました。二年近くに亘り、私たちはお互いに目を合わせたこともなく、又文面に依(よ)ったこともなく、それにしても、そんなことでは上手く行きません。私は彼なしで幸福に暮らせません。ですから私は、離れて行きます。私は長い間、一妻に属する多くを経ずに来ましたし、その上私は、1944年六月から、全てにおいて夫人とは言い難かった。そう、周りから反れると、誰でも、最悪に陥る、と私は分かっています。私は嘗て思いました、私は、この恋愛沙汰を、まさにものに出来るわと。それは、徐々に満足して疲れ切ってしまうだろうに、それは、その道を閉ざしてしまった。私は1939年にそうだった以上に、モーリスを愛しています。私は子供じみていた、と私は思いますが、今は遅かれ早かれ、人は選ぶしかなく、又人は、あらゆる方向に窮地を作る、と私は悟っています。グドゥ‐バイ。神が貴方を祝福しますよう。」「神が貴方を祝福しますよう。」私は深く深く横線を引いた。だからそこは、読まれる筈はなかった。それは、自己満足の感がありはするが、何にしても、ヘンリは神を信じない。

168

2022年6月3日金曜日

The End of theAffair/Graham Greene 成田悦子訳

私は入口に立ってバーに上がる彼を見守った。もし彼が振り返って私を見れば、私は神に打ち明けた、私は中に入りますと。しかし彼は振り向かなかった。私は家へと歩き出したが、私は私の心の外に彼を置いたままには出来なかった。二年近くに亘って、私たちは知らない者同士だった。一日の僅かな特別の時間に、彼が何をしていたか、私には分からなかったが、今は彼はもう見知らぬ人ではなかった。何処に彼がいても、昔のように私は知っていたから。彼はもう一杯ビアを飲み、それから書く為に慣れ親しんだ部屋へ戻る。彼の一日の習慣は、今尚同様で、誰かが古いコウトゥを愛するように、私はそれをを愛した。私は彼の習慣によって守られていると感じた。私は知らないことを求めたことはない。

 そして私は思った、私は彼をどれ程幸せに出来るか、どれ程楽々と。私は、幸せと共に笑う彼を、もう一度見たかった。ヘンリは外に出ていた。彼は官職の後、昼食の約束を持っていた。彼は、七時までには間に合いそうにないと言う為に電話した。私は六時半まで待つことにして、その後モーリスに電話する。私は言おう、私は今夜と他の全ての夜の為に来ていると。私は、貴方なしでいることに参っています。私は、大きな青いスートゥケイスと小さな茶色のものに荷造りしよう。私は一か月の休日に十分な衣服を持って行こう。ヘンリは啓蒙されているから、月の終わりまでに、法的側面は、決着をつけられるだろう。辛い事は終わり、家から、私が必要とした何か他の物は、都合の良い時に取りに来られる。そこには、そんなに直面する辛い事がある筈がない。そりゃあ私たちは、未だに恋人同士のよう、ではなかった。結婚は、友情になり、少ししも仲が良ければ、前と同様にやって行けるだろう。

 唐突に私は解放感と居心地の良さを感じた。私は、もうこれ以上、貴方のことをあれこれ気に病まなくていい。

167

2022年6月2日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 私は、彼を視界に留めながら、彼の後をずっとつけた。私たちは、ポンテフラクトゥ・アームズへ、何度も繰り返し二人で出かけたものだ。彼がどのバーへ向かい、彼が何を注文したか、私は知っていた。私は彼を追って入ろうかしら、そして私のものを注文し、彼の方を振り向くと、何もかもが、飛び越えてもう一度始まるのに?ヘンリが出かけたら直ぐ、彼に電話出来たから、朝は、希望に満ち溢れていたし、そこには、彼が帰宅が遅くなると告げると、期待する夜があった。そして今なら多分、ヘンリの下を去るだろう。私は私の最善を尽くして来た。私はモーリスに上げるお金を持っていないし、彼の本は、彼自身を維持するのに十分で、それ以上殆ど稼がなかったが、一人でタイプを打つのを、手伝って私と一緒にしたところで、私たちは、一年に55パウンドゥ  私は貧乏を恐れない。時には、貴方が作ったベドゥの上の嘘より、貴方のコウトゥを布を間に合わせる為に切ることの方が、それは気楽だわ。

 私は入口に立ってバーに上がる彼を見守った。もし彼が振り返って私を見れば、私は神に打ち明けた、私は中に入りますと。しかし彼は振り向かなかった。

166

2022年6月1日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 私は気付かれずに泣きたかった。それから私はナショナル・ポートゥレイトゥ・ギャラリに行ったが、その日は学生たちの日だったーそこには大勢の人々いた。それで私はメイドゥン・レインに引き返し、教会の中に、そこは何時も酷く暗く、貴方の近所の人を見なくていい。私はそこに座った。そこには、私と、入って来て静かに後ろの席で祈る小さい男以外全くいなかった。私は、そうした教会の一つに初めて入った時を覚えていたが、私はそこがどれだけ厭だったか。私は祈らなかった。私は嘗てはかなり頻繁に祈って来た。私は神に言った。私が私の父に言っても差し障りのないように、もし私が今まで誰かを自分のものにしたことを思い出せたら、親愛なる神よ、私は飽き飽きする。


1946・2月3

 今日、私はモーリスを見たが、彼は私を見なかった。彼は、ポンテフラクトゥ・アームズへの途上にあり、私は彼の後をつけた。私は、シェダ・ロウドゥで一時間を費やした―可愛そうなリチャドゥの論拠に追随しようとして、時間を長びかせながら、ひっくり返された信仰という意味を、ひたすらそれから汲み取りながら。誰がそこまで生真面目で、一つの伝説についてそこまで論争的であることが出来るだろう?私が全体で何かしら理解した時、彼のケイスを殆ど救えないように私には見える、と私が気付かなかった何か不思議な実体が、そこにはあった。そこにクライストゥと呼ばれた一人の男がいたという証拠のように。私は疲れ、つまらないという感情を表に出した。私は、迷信から私を抜け出させるために、彼の所に出かけたが、その都度、私は迷信を更に深く作り直した彼の狂信をなぞった。私は彼を救っていたが、彼は私を救っていなかった。一時間、私は殆どモーリスのことを考えなかった。しかしその後、そこに突然彼がいた。通りの端を横切りながら。

165

2022年5月31日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

しかし私は私の怒りと共に今、先に乗り込もうという願望は、微塵もなかった。他の多くの物事のように、怒りに向かう能力は、私の中で死に絶えた。私は、彼に会って、彼にヘンリのことを尋ねようとした。ヘンリは、最近おかしかった。外出して、モーリスとパブで飲む、そんなことは彼にはなかった。ヘンリは、家でとか、彼のクラブでしか飲まなかった。私は、彼がモーリスに打ち明けるといいと思った。もし彼が私のことを気に病んでいたら不思議。私たちが結婚した当初から、気に病む原因は、何処にも殆ど見当たらなかった。しかし私がモーリスと一緒だった時、彼と一緒だということを除いて、彼と一緒に居ようとする理由らしきものは、何処にも心当たりがなかったなかった。私は、ヘンリについて何事も探り出さなかった。今もその時も何時だって、彼は私を傷付けようとしながら、彼は、彼自身を実際傷付けていたから、彼は、成功し、私は、自らを傷付ける彼を見ることに耐えられない。

 私はあの昔の誓いを、モーリスと昼食を摂っている内に破ったのか?一年前、私はそう思おうとしたが、今私はそうは思わない。私は不安だったから、どんなこともそれが全てだったと私は知らなかったから、私は愛に信頼を持てなかったから、あの頃とても文学的だった。私たちはルールズで昼食を摂ったが、私はただ、彼と一緒にいるだけで、幸せだった。格子の上で、さよならを告げながらも私は、少しの間、不幸せだった。彼はもう一度、私にキスをする筈だと私は思い、私はそれを願った、ところがその時、咳の発作が私を襲い、手間取った。私には分かった、彼は遠ざかるにつれ、本当ではないようなことを皆、彼は背負い込んでしまい、それによって彼は傷付けられ、彼が傷付けられると私は傷付けられた。

164

2022年5月30日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

私は、雨の中貴方の窓の下を歩き、一晩中その下で待とうとした。何もかも終わり、私は愛することを学んでも良かったのに、又、貴方がそこにいたから幾分長く私は不毛を恐れずに済んだ。私が家に戻ると、ヘンリと一緒にそこにはモーリスがいた。それは二度目だった、貴方は彼を返してくれた。一度目、私はその所為で貴方が嫌になり、貴方が私の不信心を貴方の愛の中に誘って来たように、貴方は私の嫌悪を受け止めて来た、だから私たちは共に笑い合えた―私は時にモーリスを笑った、「私たちがどんなに馬鹿げていたか貴方は覚えているの・・・?」と言っては。



1946・1月18

 二年経ち、初めて私はモーリスと昼食を摂っていた。私が電話をして、私と会って、と彼に頼んだ―それなのに私のバスは、ストックウエルで通行に手間取り、私は十分遅れた。私はちょっとびくびくしていた。あの遠い日々、私は何時も感じた、何かが一日を台無しにするためにきっと起こるぞ、それは、彼が私に対する腹立たしさを抑え切れなくなるに決まってるぞ。

163

2022年5月29日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

山高帽を持ったあの男の孤立した実在を、十字架の金属を、私が祈られないこの手を信じるから、私は実在主義者か?神は実在したと想像する、彼は、あの世な肉体を持っていたと想像する、彼の体が私のものとまるで同じように実在したと信じることは、何が間違っているのか?もし彼が肉体を得なかったら一体誰が彼を愛し、或いは彼を遠ざけられたか?私はそれがモーリスであっても、蒸気を愛せない。それは粗雑で、それは野蛮で、それは実在主義者だ、と私は知っているが、何故私は、粗雑で、野蛮で、実在主義者であってはいけないのか?赤く燃える憤怒に、ヘンリの公然たる反抗、合理的なものの全て、私は、スペインの教会で人々が行う何を私は見て来たにしても、私が誘(いざな)った孤立に、教会の外へと歩いた。聖水、そう‐呼ばれた中に私は私の指を浸し、私の額に十字架のようなものを作った。



1946・1月10


私は今夜家庭に耐えられなかった。だから雨の中、外を歩いた。私が掌の中に私の爪を突き刺した時を、私は思い出した。私はそれを知らなかった、が、貴方は痛みに動いた。私は言った。「彼を生き返らせて下さい。」貴方を信仰することもなく、それに私の不信心は貴方にどんな差別もしなかった。貴方は貴方の愛の中にそれを受け入れ、供物のようにそれを食した。そして今夜、雨は私のコウトゥや私の衣服や私の肌の中をびしょ濡れにして、私は寒さで震え、そんなことは初めてで、まるで私は殆ど貴方を愛したかのようです。

162

2022年5月28日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

何時か私たちに何故かが分かるといい。それは腺の欠乏かも知れない。

 そこで今日、あの実在する十字架の上のあの実在する肉体を見て、私は不思議に思った。この世は、そこでどのように蒸気に釘を打てたのか?上記は、勿論痛みもなく、喜びも感じなかった。それは単に、それが私の祈りに答える筈と想像する私の迷信に過ぎなかった。親愛なる神よ、と私は言って来た、私は言うべきだった、親愛なる蒸気よと。私は貴方を遠ざけると私は言ったが、人は蒸気を遠ざけられるか?十字架の上のあの像を私の感謝の気持ちへのその主張と共に避けることは出来た―「私は貴方の所為でこんなことで苦しんだ。」しかし蒸気は・・・それにしてもリチャドゥは、蒸気以下でも信仰した。彼は寓話を嫌い、彼は寓話と戦い、彼はまともに寓話を受取った。私はハンスル・アンドゥ・グレトゥルを嫌えなくて、彼らの砂糖の家を、彼が神の伝説を嫌ったようには嫌えなかった。私が子供だった時、私はスノウ・フワイトゥの中の意地悪な女王を嫌いになれたが、リチャドゥは、彼のお伽⊶話のデヴルを嫌いではなかった。デヴルは存在せず、神は存在せず、それでも悉(ことごと)く彼の嫌悪は、いいお伽話の為にあり、意地悪なものの為ではなかった。どうして?私は、あの―過度に‐くだけた肉体を見上げた。想像上の苦痛で張り詰めた、眠る人のように項垂れている頭。私は、時にモーリスが嫌になった。が、もし私も、彼を愛さなくなったら、私は彼を避けようとするだろうか?オウ神よ、もしも私が心底彼を嫌ったとしたら、それは何を意味するのでしょう?

 すると結局、私は実在主義かしら?私は何か腺の欠乏があって、実際に重要な迷信ではない物事や目標に少しも興味がない―慈善委員、生活の指標、労働者階級の為のより良いカラリのように?

161

2022年5月27日金曜日

The End of the Affair/GrahamGreene 成田悦子訳

そこでは、目や手から緋色の絵具で、血が下方へ走っていた。それは、私の具合を悪くした。ヘンリは、私に12世紀の記念碑を称賛して欲しかったのに、私は具合が悪くて開けた所へ出て行きたかった。私は思った、こういう人々は、残忍さを好むのねと。蒸気は、血や叫びで貴方にショックを与えられない。

 私は広場へ出ると、私はヘンリに言った。「全くこんな風に塗った傷には耐えられないわ。」ヘンリはとても理性的だった―彼はいつも冷静だった。彼は言った。「勿論、あれは非常に物質主義的信仰ではある。魔力の代物(しろもの)・・・」

 「魔力って、物質主義的なの?」

 「そう。イモリの目や、カエルの足の指、出産で‐締め付けられた赤ん坊。お前はそれ以上に何か物質主義的なものを所有出来ない。聖体拝領ミサに於いては、彼らは、未だに全質変化を信仰する。」

 私はその全てを知りはしたが、勿論貧乏人の為を除いて、それは多かれ少なかれ宗教改革で絶滅したという一つの考えに至った。ヘンリは私をきちんとさせた(どんなにしょっちゅうヘンリは、私の混乱した考えを整理し直して来たことか)。「物質主義は、単に貧乏人向けの姿勢だけではない。」彼は言った。「どこまでも洗練された頭脳の者たちは、物質主義者で、パスクル、ニューマン。傾向という点で非常に微妙、他の点では非常に粗雑な迷信。

160


2022年5月26日木曜日

The End of the Affair Graham Greene 成田悦子訳

そこで私は思った。私は蒸気になる為に、あの体を求めるのか(私のものをはい、いや彼のものを?)又、永遠そのものを貫いて存在することを、あの傷跡に私は求めた、と私は分かっている。しかし私の蒸気はあの傷跡を愛せるか? その時私は、私が憎んだ私の体が欲しくなって来た。しかしそれは、単にあの傷跡を愛せたからに過ぎない。私たちは、只私達の心だけで愛せるか?愛情は、何時もその身を広げる。そうそれで私たちは私達の感覚のない爪でさえ愛せる。私たちは、私達の衣服でさえ愛する。そうそれで袖は袖を感じられる。

 リチャドゥは正しい。私は思った、私たちが肉体の復活を考案したのは、私たちが私達自身のの体を必要とするから、直ぐに私は彼が正しかったと、又、これは、私たちが慰めに互いに話すお伽話だったと認めた。私はもはやその塑像を、少しも嫌だとは思わなかった。それは、ハンス・アンダスンの中の汚い色の絵に似ていた。それは、下手な詩に似ていた。しかし誰かが、それを書くことを必要として来た。非常に誇り高く、彼の愚かさを曝け出すよりむしろ彼はそれを隠した誰か。私は教会に歩いて上った。それらを次から次へ眺めながら。全ての内、最も酷いもの―私は彼女が誰か知らない―中年の男が祈っていた。彼は山高帽を彼の脇に置き、山高帽の中に、新聞に包んだセラリの茎があった。

 そして勿論、供物台の上のそこにも、一体あったーそんなによく知られた肉体、モーリスのものよりもっとくだけた、肉体のあらゆる部分を持った肉体として、前に私を感動させたことはなかった。私はヘンリと訪れたスペインの教会の一例を覚えていた。

159

2022年5月25日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

何時か私も蒸気の役になろう―私は永遠に私自身を避けよう。そうしてその時、私はパーク・ロウドゥの暗い教会に入って全ての供物台の上の私の周りに立つ体を見た。その悦に入った顔を持った恐ろしい石膏の塑像、それで私は彼らが肉体の復活を信じていることを思い出した。私が永遠に葬られたい肉体の。私はこの体と共に、随分たくさん傷を負って来た。私は永久にその僅かでも保存することをどうして望めるのか?そこで突然私は、リチャドゥの名言を思い出した―その欲求を満たすために教義を考案する人間についての、そして私は、彼がどれだけ悪辣であるかを思った。私が教義を考案することになったら、肉体は二度と蘇らなかったということ、それは去年の害虫を道連れに腐ったということになるだろう。人間の心は後ろに前に揺れ動く。一つの極端からもう一つの極端へと。真実は、振り子の振幅の或る目盛で欺き、決して静止しない一つの目盛りで、弛んだ垂線の中ではなく、風のない旗のように、それが仕舞に何処でだらりと垂れるかが大切だ。しかし角度においては、他より一つの極端により近いのか?只、奇跡が60度の角度で振り子を止められたら、人は真実はそこにあったと信じるだろう。さて、振り子は今日も揺れ動き、私自身の体の代わりに、モーリスのを思った。私は、彼の著作の一行と同じくらい個性的な命が、彼の顔の上に置いた確かな輪郭を思った。私は、嘗て彼が、落下する壁から他の人の体を庇おうとしなかったら、そこにある由もない肩の新しい傷跡を思った。何故あの三日を病院で過ごさなかったのか、彼は私に打ち明けなかった。ヘンリが私に話した。あの傷跡は、彼の嫉妬と同程度の度を越した彼の性格の顕われだよ。

158

2022年5月24日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

彼が神経質に「週に一時間。それは大いに貴女を救います。」と言った時、頼むのは些細なことのように思った。それに、今、私は時間の全てを持っていないか?私は本を読んでもいい、又映画に行っても良く、私は言葉を解さず、又映像を思い出せない。私自身と私の持つ惨めさが、私の耳の中で太鼓を打ち、私の目に溢れる。この午後のちょっとの間に、私はそれを忘れた。「はい、」私は言った。「私は来ます。時間を割くのは、それは貴方にも望ましい。」私は言った。私は、彼の保護の中で私に可能な全ての望みをシャヴルで掬いながら、神に祈りながら、彼は、私を救済すると誓っていた、「私を彼に用いて下さい。」

 

1945・10月2

 今日、それはとても暑く、その上雨が滴り落ちていた。そこで私は、暫く腰を下ろす為に、パーク・ロウドゥの角の暗い教会の中に入って行った。ヘンリは家に居たが、私は彼を見たくなかった。私は、朝食時、優しいということを思い出そうとする、彼が家にいる昼食時の優しさ、夕食時の優しさ、そして時々私が忘れると、彼は逆に優しい。命ある限り互いに優しくあろうとする二人。私が入り、座って、辺りを見た時、そこは、石膏の塑像と悪趣味な美術品、写実主義的美術品で溢れ返ったロウマン教会だと悟った。私は、塑像やクライストゥ受難の像、あらゆる人体の強調を嫌った。私は人間の体から逃げ出そうとしていたし、全くそれが急務だった。私は私達自身とは無縁に生み出された或る種、神のようなもの、何か曖昧で無定形で、宇宙的なものを信じられると思った。それに対して、私は何かを誓い、そしてそれは、お返しとして私に何かを授けた―有形の人間の生命へと曖昧さの外へ伸びる椅子と壁の間を精力的に動く蒸気のように。 

157

2022年5月23日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

それは彼を毎週、共有地へ彼を行き着かせる。いなくなり、質問もせず、芝生の上に彼のカードゥを投げ捨てる人々に語り掛ける為に。私が今日来たように、どれだけの頻度で、誰かが実際に来るのか?私は彼に、「貴方はたくさん訪問者を持っていますか?」と尋ねた。

 「いいえ。」彼は言った。彼の真実への愛着は、彼の誇りより偉大だった。「貴女が最初です―随分長い時間で。」

 「貴方に打ち明けるのは、それは申し分ありません。」私は言った。「貴方は私の心を本当に随分整理して下さった。」それは誰彼となく彼に与えられる唯一の慰めだった―彼の幻に餌をやる為に。

 彼は内気そうに言った。「もし貴女が時間を割ければ、私たちは、現実的に開始し、物事の根源に向かえます。私が意味するのは、、哲学的論争や歴史学的証拠です。

 私は彼が続けて行く為に、何らかの回避的な返事をでっち上げなければならなかったと思う。

「それは実に重要です。私たちは、私達の敵を侮ってはならない。彼らは、一つの箱を持っています。

 「彼らが持っている?」

 「それは、しっかりしたものです。上辺を除けば。それはもっともらしい。」

 彼は心配そうに私を見つめた、私は、いなくなってしまうそうした者の一人ではないか、と彼は不安に思っていたと私は考える。 

156

2022年5月22日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

歪めたり美しく見せたりする鏡について彼が話す時、私は何について私たちが話していたかを思い出せなかった。思春期以来その年代全ての思い故に、彼は鏡を覗き、それらを美しく見せよう、歪めることなくと心がけて来た。地道にその方法で、彼は彼の頭を持ち上げた。何故彼は、顎髭を痣を隠す程、十分長く伸ばさないのかしら?体毛はそこでは伸びなかったのか、それとも彼がごまかしたくないからだったのか?私は、彼が心底真実を追い求める男だという考えに至りはしたが、そこにはもう一度やり直すというあの言葉があり、それは只、余りにも明らかで、いかに多くの欲求に埋もれて、彼の真実への愛着は、易々(やすやす)と引き裂かれたことか。彼の誕生の損傷の為の埋め合わせ、権力への欲求、もっともっと全てを賞賛されたいという願い、つまり、みすぼらしく祟られた顔は、肉体の欲望の根拠を必ず奪おうとする。私は、この手でそれを確かめ、その傷のように永続的に、慰めたいという非常に強い意志を持った。それは、ドアの下のモーリスを見た時に似ていた。私は祈ろうした。只、彼が癒され得るなら、何か法外の犠牲を捧げるにしても、今そこには、私の為に捧げるどんな犠牲も残されていなかった。

 「私の親愛なる人よ、」彼は言った。「神という概念をこれから外しましょう。それは、まさに貴女の愛する人と貴女の夫の問題です。物事を幻想と混同しないで。」

 「でも私はどんな方法で決めますか―もしそこに愛のようなそんなものがなければ?」

 「長い走程にあって、貴女は何が最も幸福であるか、決めたくなります。」

 「貴方は幸福を信条としますか?」

 「私はどんな完全も、信じません。」

 私は、彼が何時までも手にする唯一の幸福は、これだと思った。彼は慰め、助言し、救うことが出来るという着想、彼は有用たり得るという思い。

155

2022年5月21日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 「彼らの情緒が揺り動かされると、人々は、物事が合理的であること、それを必要としない。恋人同士は、合理的ではないでしょ?」

 「貴方は又、愛情抜きで説明できますか?」

 「オウ、はい、」彼は言った。「或る者に入り込んで独占したいという欲求、強欲と言われるまでに。他の者に入り込んで入れ込みたい、責任感をかなぐり捨てたいという欲求、褒められたいという願い。時には、話が出来ればと、耐えられない誰かに貴方自身荷を下ろしたいう願い切実。父か母を再び探し出したいという欲求。そして勿論、その根底にあらゆる生物学的動機が。

 私は思った。それは皆、真実だ。でもそこに何か覆っているものはないのか?私は、私自身の中で、モーリスの中でも、その全てを掘り返した。しかし未だに鋤(すき)は岩に触れなかった。「それでは、神の愛は?」私は彼に尋ねた。

 「それは皆同じことです。人は彼自らの想像の内に神を作りました。ですから彼が彼を愛してしまうのは、そりゃあ当たり前です。貴女は定期市でそこにある歪める鏡ご存知ですね。人は美しく見える鏡も作り、その中で、彼は、彼自身が魅力的で、逞しく、公正で、賢明に見えます。彼を笑わせるだけの歪める鏡の中よりいとも簡単に、彼自らを識別しますが、彼は他者の中で彼自身をどれ程大切に思うことでしょう。」

154

2022年5月20日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

  何故って、本当に?私は、ドアの下のモーリスと私の誓いについて彼に打ち明けられなかった。駄目だ、未だ私には出来ない。その上、それは全体の核心ではなかった。生まれながらにして、私はどれだけの数の誓いをしては破ったっていうの。何故、友人がくれた不格好な花瓶のように、この誓いは留まるのか、それを壊しそうなメイドゥを誰かさんは待ち詫び、来る年も来る年も、彼女は誰かが評価する物を壊し、ついにその不格好な花瓶は残る。私は、実際今まで彼の言う疑問に立ち向かったことはなく、追って彼はそれを繰り返そうとした。

 私は言った。「私には、信仰心がないのですが、いいとは思えません。かと言って、私はそうしたいわけではありません。」

 「私に話して下さい。」彼は言いながら彼自身の手の美しさを忘れ、彼の醜い頬を私に向けた。救おうとする一心で我を忘れ、私は打ち明けている自分自身に気付いた―あの夜と爆弾落下と馬鹿げた誓いについて。

 「それで、貴女は実は信仰している。」彼は言った。「それは多分・・・」

 「はい。」

 「今祈っている世界中の何千人もの人々について考えて下さい。彼らの祈りは相手にされない。」

 「パラスタインで、そこに死にかけた何千もの人々がいた。その時ラザラスは・・・」

 「私たちは、そんな作り話を信じないでしょ。貴女も僕も?」彼は一種連座を押し付けて言った。

 「勿論そう。何れにせよ、何万もの人々が持っています。彼らは、それを道理に適っていると思うしかなかった。」 

153

2022年5月19日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 私は木綿更紗のソウファに座り、彼はかなり固い椅子に、彼の膝の上の猫と一緒に座った。彼は猫を撫で、彼は奇麗な手を持ち、私はそれを好まなかった。私は、押し並(な)べて痣をかなり好んだが、彼は、彼の見栄えの良い頬だけを私に見せながら座ることを選んだ。

 私は言った。「そこには神はいないと、何故あなたはそんなに決め付けるのか、貴方は私に話せますか?

 彼は猫を撫でながら、彼自身の手を見詰め、彼は彼の手で自尊心を維持しているのか、と私は彼を不憫に思った。彼の顔が、印を付けられていなければ、彼はどんな自尊心も持ち合わせなかっただろう。

 「貴女は共有地で話す私に耳を傾けて下さった?」

 「はい、」私は言った。

 「私はあそこではごく簡素に物事を留め置くよう、心掛けています。自分自身の為に考えるよう、人々に風穴を開ける為に。貴女は、自分自身の為に考えることを始めましたか?」

 「私はそう思っています。」

 「どんな教会に、貴女は取り込まれましたか?」

 「何処にも。」

 「ならば、貴女はクリスチャンではないのですか?」

 「私は洗礼は施されています―それは、社会的通念でしょ?」

 「貴女がどんな宗教も持たないのなら、どうして貴方は私の助けが欲しいのですか?」

152

2022年5月18日水曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 1945・9月10


 私は賢明さを取り戻した。私は二日前、私の古いバグを片付けていた。―ヘンリは突然、「平和のプレズントゥ」として、新しいものを私に与えた―それは、彼にたくさんのお金を遣わせてしまった。私は、「リチャドゥ・スマイズ16スィダ・ロウドゥ4-6毎日個人的相談を、どなたでも歓迎。」と伝えているカドゥを見つけた。考えると、私は十分長く引きずって来た。私は、別の薬を飲もう。もし彼が私に買えれば、何事も起こらなかったし、私の約束は、勘定に入れなかった、とモーリスに書いて、もし彼がもう一度やり直したければ、と彼に尋ねよう。おそらく私は、ヘンリの下を去りもしよう。私は分からない。それでも第一、私は賢明さを取り戻した。私はもうこれ以上ヒステリクになるまい。私は聞き分けが良くなるわ。そこで、私は出かけて、スィダ・ロウドゥのベルを鳴らした。

 今、私は何が起こったか、思い出そうとしている。ミス・スマイズは、お茶を作り、お茶の後、彼女は出かけて、私を彼女の兄弟と一緒に、一人残した。彼は、私に何が私の困難か尋ねた。

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2022年5月17日火曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 Ⅴ

1945・5月8

 夕方のセイントゥ・ジェイムズ・パークへ、イウアラプ戦勝記念日を祝う彼らを見に下った。それは、近衛騎兵隊と宮殿に挟まれた投光照明の水域の側で、とても静かだった。誰も大声を出さず、歌わず、酔っぱらうこともなかった。人々は、二人ずつ、手を取り合い、草の上に座った。私は、これが平和であり、何処にももう爆弾はなかったから、彼らは幸せだと思った。私は、ヘンリに言った。「私は、平和と寄り添えない。

 「僕は、情報省から、何処へ選抜されるか、あれこれ考えている。」

 「情報省?」私は、興味深そうに尋ねた。

 「いや、いや、僕は、それを引き受けたくない。」

 「それは、俄か作りの国民の奉仕者だらけだよ。お前は、内務省はどれ程いいと思っているの?」

 「何かが、ヘンリ、それは、貴方を満足させたわ。」と私は言った。その後、ロイアル・ファミリが、バルカニに登場し、群衆は、非常に礼儀正しく歌った。

彼らは、ヒトゥラ、スターリン、チャーチル、ルーズベルトゥのようなリーダではなかった。彼らは、誰にも,どんな危害も加えない只の家族だった。私は、私の側にモーリスが欲しかった。私は、もう一度やり直したかった。私も、家族という者の一員になりたかった。

 「とても感動的だね。」ヘンリが言った。「そうね、私たちは皆、これで夜ぐっすり眠られるわ。」私たちは、夜に、今まで何か他にしたのにぐっすり眠ったかのように。

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2022年5月16日月曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

  昨夜、彼が寝ていた時、私は、ヘンリを見た。私が、法律が有罪の当事者だと考える何かである限り、私は彼を愛情を持って見守ることが出来た。彼が私の保護を必要とする子供だったかのように。今や、私は、彼らが無知と呼ぶ者だった。私は、彼によって延々と気持ちを正常に動かなくされた。彼は、家まで彼に電話をして来る秘書を持っていた。彼女は、言ってのける。「オウ、ミスィズ・マイルズ、H.M.は中に?」秘書は皆、そんな耐え難いイニシアルを使った。親しいだけではなく、馴れ馴れしい。H.M.、眠る彼を見ながら、私は思った。H.M.彼(か)の陛下と彼の陛下の配偶者。時々、彼の睡眠中、彼は微笑んだ。普通の、簡潔な、国民の奉仕者の笑顔、口にすれば限りなく、そう、実に滑稽。とはいうものの、今や、私たちは仕事と寝た方が良かったんじゃない?

 私は彼に一度言った。「貴方は、今まで秘書に対して関心を持ったことはなかった?」

 「関心?」

 「恋愛感情」

 「いや、勿論ない。何が、お前にそんなことを思わせるの?」

 「僕は、分からない。僕は全く考えられない。」

 「僕は誰か他の女を愛したことはない。」彼は言って夕刊を読み始めた。私は 余りにも魅力がなくて、どんな女も嘗て彼を欲しがったことがないのが私の夫だ、と不可解に思わざるを得なかった。私以外、勿論。私は求めずにはいられなかった、一筋に、一度は、それなのに私は何故かを忘れ、私が、選ぼうとしたものを知るには若過ぎた。それでは、余りにも不当だ。私がモーリスを愛した間、私はヘンリを愛した。そして今私は、彼らがいいと称するものだ。私は、誰かを全く愛さない、そして貴方を全ての中で、最も愛さない。

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2022年5月15日日曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

 Ⅳ

1944・9月12

 ピータ・ジョウンズで昼食を摂り、ヘンリの勉学の為に新しいラムプを買った。他の婦人たちに囲まれた取り済ました昼食。何処にも男はいない。それは、大勢の内の一部分になることに似ていた。殆ど平和といった感じ。その後、ピカディリの新しい映画に行って、ノーマンディの喪失とアメリカの政治家の到着を見た。ヘンリが帰る筈の七時まで何もすることがない。一人で二杯のお酒を飲んだ。それが間違っていた。私はお酒を飲むことも止めなきゃ。私が何もかも払い除ければ、私はどうなる?私はモーリスを多少愛し、男達に同行し、私なりのお酒を満喫した身だった。貴方が私を作る物事全てを振るい落とせば、何が起こる?ヘンリが入って来た。彼は何だかとても嬉しそうだった。彼は、それが何なのか、明らかに彼に尋ねることを私に望んだが、私はしなかった。それで終に、彼は私に話すことにした。「彼らはO.B.E.大英帝国勲章 に僕を推薦している。」

 「それは何?」私は尋ねた。

 私が知らなかったということで、彼はかなり落胆させられた。彼が彼の課の長になった時、一、二年以内に次の段階は、C.B.E.になるだろう。そしてその後、彼は言った。「僕が退職する時、彼らは、おそらく僕にK.B.E.を与えようとしている。」

 「それでは面食らってしまうわ。」私は言った。「

貴方は同じ文字に、突き刺されなかったの?」

 「お前は、レイディ・マイルズになりたくないの?」ヘンリは言い、私は怒って、この世で私が欲しいものは皆、ミスィズ・ベンドゥリクスであるが故で、これまでの間、その頼みとするところを、手放さなかった。レイディ・マイルズ―愛人を持たず、お酒を飲まないけれど、サー・ウイリアム・マロックに年金について話す。その時ずっと、私は何処に居ればいいの?

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2022年5月14日土曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

  国王は、彼の約束をどのように守ったか?私は思い出せたらと願う。私は、べキットゥの墓の上で修道士に彼を鞭打たせるよりもっと、彼について何も思い出せない。それは、答えのような響きがない。それは、前に起こらなければならなかった。

 ヘンリは今夜又、家を離れている。私がバーに馴染んで男を摘まみ取り、浜辺に彼を連れて行き、砂丘の間で彼と横になれば、私は、貴方が最も愛するものを貴方に失わせはしないのか?それでもそれは進展しない。それはもはや進展しない。私がそれから僅かでも楽しみを得なければ、私は貴方を傷付けられない。不毛の地のそうした人々のように、私は、おまけに私自身にピンを突き刺しても良かった。不毛。私は満喫し、それが多少でも貴方を傷付けようとすることをしたい。私を信じて下さい、神よ、私は貴方を信仰しない未だに、私は貴方を信仰しない未だに。

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2022年5月13日金曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

彼がそれを愛せれば、それには、心惹かれるに違いない。私の心の中、そこに少しでも心惹かれるものがあるということ、それは、余りにも多くを私に信じるよう求めている。私は、私を称賛する男が欲しいが、それは、貴方が学校で学ぶ癖です―目の動き、声音、肩とか頭の上の手の感触。もし彼らが思えば、貴方は彼らを褒めるでしょう。貴方の立派な好み故に、彼らは貴方を称賛しようとする。そして彼らが貴方を褒める時、貴方は、束の間、そこに褒めるべき何かがあるという幻想を抱く。今までずっと、その幻想―私が意地悪でペテン師だということを忘れさせる鎮痛剤に浸ってで生きようとして来た。意地悪でペテン師の中に、そんな時、愛すべき何を貴方は思い浮かべられます?そうしたことが物語る不道徳な魂を、貴方は何処に見い出しますか?人皆の内、この心惹かれるものを、私の心の中の―私の心の中の何処に貴方は見ますか?ヘンリの中に貴方はそれを見いだせる、とすると私は納得出来ます―つまり私のヘンリ。彼は紳士で、善良で、忍耐強い。貴方は、それを彼が嫌い、愛す常に愛すと思うモーリスの中に見出せます。彼の敵でさえ。それなのにこの意地悪でペテン師の中の何処に、貴方は何か愛すべきものを見出せますか?

 それを私に話して下さい、神よ、そして私は、永遠に貴方にそれを失わせるようにします。

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2022年5月12日木曜日

The End of the Affair/Graham Greene 成田悦子訳

貴方は、私にD.と一緒に逃げ出そうとさせながら、それを楽しむことを、私には許さない。貴方は、私に愛を外へ追い払わせ、その後で貴方は言う。そこにも又、貴女が求める渇望はない。貴方はいま、私にどうして欲しいのか、神よ?私は、ここから何処へ向かうのか?

 私が学校にいた頃、私は国王について学んだ―ヘンリの一人、べキトゥを殺した人物―彼の敵によって焼かれた彼の生誕の地を彼が見た時、彼は誓った。何故なら神は彼にそういうことをしてしまったから、「何故なら貴方は、私に私が最も愛した町を、私が生まれ育てられた地を、私に失わせたから。私は貴方に貴方が私の中で最も愛するものを失わせます。」奇妙でどういう訳か、私は十六年後のその祈り手を思い出した。国王は、彼の馬に乗って、それを七百年前誓い、そして私は、海上のビグウエル―ビグウエル・レジスのホウテルの部屋の中で、それを今祈る。私は、貴方に失わせようとしています、神よ、貴方が私の中で最も愛するものを。私は、今まで心からの主の祈り手を知らなかったが、私は、人が―それ、祈り手であるということを思い起こす。貴方が私の中で最も愛すことの。

 貴方は何を最も愛しますか?私が貴方を信じていれば、不道徳な魂を信じようと思いますが、それは、貴方の愛ですか?貴方は、皮膚の下のそこに、それを実際に見ることが出来ますか?神は、何か存在しないものを愛せず、彼は、何か彼に見えないものを愛せない。彼が私を見る時、彼は、何か私に見えないものを、見るのですか?

145

2022年5月11日水曜日

The End of the Affair/ Graham Greene 成田悦子訳

  私が、私の肩に挟み込んだ受話器を取ると、交換手は言った。「私共は、只今貴方の番号にかけています。」私は神に言った。もし彼が応答すれば、私は、明日戻ります。電話は、彼のベドゥの傍の何処に置いてあるかを、私は正確に知っていた。一度私はそれを私の睡眠中にぶつかって落とし、げんこつですっかり打撃を与えたことがある。女の声は、「もしもし」、するとすんでのところで電話を切ろうとした。私は、幸せになるには、モーリスを欠いていたが、私は、本当にそんなに素早く、彼に幸せを見つけて欲しかったの?論理が私の手助けをしてくれるまで、胃に少しばかり違和感を覚え、私は私の頭に私と言い争わせた―何故彼はしないのか?お前は彼を置き去りにした。お前は、彼に幸せになって欲しい。私は言った。「ベンドゥリクスに話せますか?」しかし何もかもフラトゥを出てしまっていた。おそらく彼は、今や私の約束を破ることを私に望もうとさえしない。おそらく彼は、誰か彼と一緒に居て、彼と食事して、彼と何処にでも一緒に行って、彼とそれが心地良く習慣的になるまで、来る夜も来る夜も共に眠り、彼に代わって彼の電話に答えようとする人を見つけてしまった。その時その声は、言った。「ベンドゥリクスさんは、ここにはいません。彼は二、三週間遠くへ出かけました。私は、フラトゥを借りました。」

 私は電話を切った。ともかく私は幸せだったのにその後、又惨めになった。私は、彼が何処にいるか、知らなかった。私たちは触れもしなかった。同じ不毛の地で、同じ水源を探しながらも、おそらく景色の外、何時も一人。私たちは一緒に居れば、そこは不毛の地になりようもないから。私は神に言った。私は貴方を信じ始めています。私が貴方を信じれば、私は貴方を遠ざけます。私は私の約束を破ろうとする自由意志を持っているでしょ。でも私はそれを破ることによって何かを得る能力がありません。貴方は私に電話をさせながら、その後、貴方は私の面前でドアを閉ざす。貴方は、私を罪に走らせながら、貴方は私の罪の果実を持ち去る。

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